日本製鋼所の新規マグネシウム合金射出成形機 マグネシウム合金射出成形機とは何か?新しい製品の特徴は?

この記事で分かること

  • マグネシウム合金射出成形機とは:チップ状のマグネシウムを加熱・攪拌し、半溶融(シャーベット)状態で金型に高速射出する装置です。プラスチック成形のような精密さと、金属の強度・軽さを両立できるのが最大の特徴です。
  • JLM1800-MGⅡeLの特徴:型締力1,800トンの中大型機で、EV向けディスプレイフレーム等の大型部品に対応します。電動型締装置の採用により、高い省エネ性と寸法精度を両立しています。
  • マグネシウムの用途:実用金属で最軽量という特性を活かし、自動車部品(ステアリング、EV用フレーム)や電子機器(ノートPC、カメラの筐体)の軽量化に多用されます。

日本製鋼所の新規マグネシウム合金射出成形機

 日本製鋼所(JSW)は、軽量化ニーズの高まりを受けてマグネシウム合金射出成形機(J-MGシリーズ)のラインナップ拡充と生産体制の強化を加速させています。

https://www.jsw.co.jp/ja/product/news/details/20260115150055.html

 JLM1800-MGⅡeLは特に自動車の電動化(EV化)に伴う「部品の軽量化」や、環境負荷低減に向けた「リサイクル性の向上」への貢献が可能となっています。

マグネシウム射出機とは何か

 マグネシウム射出成形機とは、「プラスチック成形のような手軽さと精度で、金属(マグネシウム)を形にする機械」です。

 世界的には、日本製鋼所(JSW)が実用化した「チクソモールディング(Thixomolding)」という技術がその代名詞となっています。


1. どんな仕組み

 従来の金属加工(ダイカスト法など)は、金属をドロドロの液体になるまで溶かして型に流し込みますが、マグネシウム射出成形機は異なります。

  1. 原料: マグネシウム合金を細かく砕いた「チップ(ペレット)」を投入します。
  2. 加熱・攪拌: シリンダーの中で加熱しながらスクリューでかき混ぜ、「半溶融状態(シャーベット状)にします。
  3. 射出: このペースト状になった金属を、プラスチックの射出成形と同じように、高精度・高速で金型へ一気に押し込みます。

2. なぜ注目されているのか

  • 圧倒的な軽さと強度: マグネシウムは実用金属の中で最も軽く(鉄の1/4、アルミの2/3)、それでいて高い剛性を持っています。
  • 安全でクリーン: 溶解炉で完全に溶かす必要がないため、マグネシウム特有の発火リスクが低く、地球温暖化係数の高い「防燃ガス(SF6など)」を使わずに成形できます。
  • 精密な仕上がり: プラスチック成形に近い感覚で加工できるため、薄肉(0.5mm程度)の部品や複雑な形状を、高い寸法精度で一度に作ることが可能です。

3. 主な用途

 もともとはパソコンやスマートフォンの筐体、カメラのボディなどに使われてきましたが、現在は自動車の軽量化の切り札として採用が広がっています。

分野主な製品例
自動車ステアリングホイール、メーターフレーム、シートフレーム、EV用バッテリー周辺部品
家電・ITノートPC筐体、一眼レフカメラ外装、プロジェクター部品
その他電動工具、医療機器部品、ドローンのフレーム

4. 課題と将来

 原料となるチップのコストがダイカスト用の地金より高めであることや、金型の消耗が激しいといった課題もありますが、日本製鋼所は現在、3,000トンクラスの超大型機を投入し、これまでアルミで作っていた巨大な自動車部品をマグネシウムに置き換える「メガキャスティング」に近い領域まで進化させています。

マグネシウム射出成形機とは、チップ状のマグネシウムを加熱・攪拌し、半溶融(シャーベット)状態で金型に高速射出する装置です。プラスチック成形のような精密さと、金属の強度・軽さを両立できるのが最大の特徴です。

JLM1800-MGⅡeLの特徴は

 日本製鋼所(JSW)が2026年1月に新たに発表した「JLM1800-MGⅡeL」は、急速に拡大するEV(電気自動車)向けの大型部品需要に応えるために開発された、超大型マグネシウム射出成形機です。

1. 自動車の大型部品に最適な「中・大型」サイズ

 これまで主流だった小型・中型機と、世界最大の3,000トン機の中間を埋める型締力17,700kN(約1,800トン)を備えています。

  • 最大ショット重量: 5kg以上(スクリュ径130mm)と、マグネシウム成形機としては非常に大きな吐出量を持ちます。
  • 対象部品: 自動車のメーターディスプレイ、大型のステアリングフレーム、シート部材など、1,300トン機では難しかったサイズの部品に対応します。

2. 「電動型締装置」の採用

 3,000トン機で培った技術を継承し、型を締め付ける機構を電動化しています。

  • 省エネ: 従来の油圧機に比べ、消費電力を大幅に削減しています。
  • 精度とクリーン: 油圧レスにより作動油の管理が不要になり、工場のクリーンな環境維持と、高い成形再現性を両立しています。

3. チクソモールディング法による安全性と環境性能

 JSW独自の「チクソモールディング(THIXOMOLDING®)」技術により、以下のメリットがあります。

  • SF6ガス不使用: 温室効果の高い防燃ガスを使わず、環境に優しい生産が可能です。
  • 溶解炉不要: 原料のチップをシリンダー内で直接溶かすため、ダイカストのような大規模な溶解設備がいりません。

型締力1,800トンの中大型機で、EV向けディスプレイフレーム等の大型部品に対応します。電動型締装置の採用により、高い省エネ性と寸法精度を両立。防燃ガス不要のクリーンな製法で環境負荷も低減します。

マグネシウムの用途にはどのようなものがあるか

 マグネシウムはその「軽さ」と「機能性」を活かし、自動車から日用品、医療まで幅広く使われています。主な用途を整理しました。

1. 輸送機器(軽量化が最大の目的)

 実用金属で最軽量(アルミの2/3)であるため、燃費や電費が重視される分野で不可欠です。

  • 自動車: ステアリングホイール、エンジンブロック、シートフレーム、EV用バッテリーケース。
  • 航空・宇宙: 機体構造材、エンジン部品、ドローンのフレーム。

2. 電子機器・家電(薄さと丈夫さ)

 プラスチックより放熱性が高く、電磁波を遮断する特性があるため採用されます。

  • IT機器: ノートパソコンの外装、スマートフォンの内部フレーム。
  • 光学機器: 一眼レフカメラのボディ、プロジェクターの筐体。
  • ホビー: ゲーミングマウス(軽量化のため肉抜き加工されることも)。

3. 医療・福祉(体への優しさ)

 金属でありながら生体親和性が高く、体内で分解される特性が注目されています。

  • 医療機器: 手術用器具、車椅子や杖(軽量化)。
  • 生体材料: 体内で溶けて吸収される「ステント」や「骨固定ボルト」の研究が進んでいます。

4. その他(化学的性質の利用)

  • スポーツ用品: テニスラケット、高級自転車のフレーム。
  • 防食: 船の船体や貯蔵タンクが錆びるのを防ぐ「犠牲陽極」。
  • 日用品: 燃えやすい性質を利用したキャンプ用の火起こし(ファイヤースターター)。

用途別の特性比較

分野求められる特性具体的なメリット
自動車比強度(軽くて強い)航続距離の延長、走行性能の向上
家電放熱性・シールド性機器の熱暴走防止、ノイズカット
医療生体親和性金属アレルギー抑制、再手術の不要化

実用金属で最軽量という特性を活かし、自動車部品(ステアリング、EV用フレーム)や電子機器(ノートPC、カメラの筐体)の軽量化に多用されます。また、振動吸収性やリサイクル性、生体親和性から医療用ステントやスポーツ用品にも活用されています。

油圧型よりも省エネ可能な理由は何か

 電動型(電動式)が油圧型よりも省エネな理由は、主に「必要なときだけ、必要な分だけエネルギーを使う」という仕組みの差にあります。

 日本製鋼所の新しい大型マグネシウム射出機(JLM-MGⅡe)に採用されている「電動型締装置」を例に、その理由を3点にまとめました。


1. 「待機電力」の圧倒的な差

  • 油圧式: 型を締めていないとき(冷却中など)でも、油圧を一定に保つためにポンプのモーターを常に回し続ける必要があり、エネルギーを垂れ流してしまいます。
  • 電動式: サーボモーターを使用するため、動く必要がないときはモーターが停止します。これにより、サイクル全体の無駄な電力消費がなくなります。

2. エネルギー変換効率の高さ

  • 油圧式: 「電気 → ポンプ(油圧) → シリンダー(機械的動き)」という多段階の変換が必要で、配管の摩擦抵抗や油の熱としてエネルギーが逃げてしまいます。
  • 電動式: 「電気 → サーボモーター → ボールネジ(直接的な動き)」というシンプルな構造のため、エネルギーロスが極めて少ないのが特徴です。

3. 「回生ブレーキ」による電力の再利用

  • 電動式では、金型が止まろうとする際の減速エネルギーを、電気として回収(回生)して再利用することができます。これはハイブリッド車がブレーキ時に発電してバッテリーを充電する仕組みと同じで、大型機ほどこの節約効果は大きくなります。

まとめ

項目油圧式電動式(JSW新型機など)
駆動の状態常に全力または待機中も回転必要な瞬間だけ駆動
エネルギー効率低い(熱や摩擦で逃げる)高い(直接モーターで動かす)
消費電力削減基準約20%〜50%削減

電動型が省エネな理由は、必要な時だけサーボモーターを動かすためです。常にポンプを回し続ける油圧型と異なり、待機電力を大幅に削減できます。また、停止時のエネルギーを電気として再利用する回生機能や、変換ロスの少なさも消費電力低減に寄与します。

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