三菱ふそうと鴻海のEVバス新会社設立 EVバスを選んだ理由は?両者の狙いは何か?

この記事で分かること

  • EVバスを選んだ理由:脱炭素化の加速とコスト削減が狙いです。政府のカーボンニュートラル目標による需要増に対し、中国製勢に対抗できる低価格な国産EVバスを提供します。
  • 三菱ふそうの狙い:安価な中国勢が台頭する中、IT大手の量産ノウハウを取り入れ、低価格で高品質な国産EVバスを早期投入して、国内市場のシェアを死守することにあります。
  • 鴻海の狙い:三菱ふそうのブランド力と販売網を活かした日本市場へのスムーズな参入です。自社のEVプラットフォームが日本で採用される実績を作りつつ、老舗の品質管理や法規制対応のノウハウを吸収し、世界展開の足がかりにできます。

三菱ふそうと鴻海のEVバス新会社設立

 三菱ふそうトラック・バスと台湾の鴻海はEVバスに関する新会社設立に最終合意を行いました。

鴻海、EVバスを日本で生産 三菱ふそうと合弁会社 - 日本経済新聞
台湾電機大手の鴻海(ホンハイ)精密工業と三菱ふそうトラック・バスは22日、バス事業を手掛ける合弁会社を設立すると発表した。三菱ふそうバス製造(富山市)の工場で、鴻海のEV(電気自動車)バスを生産する。鴻海は事業拡大に向けて日本で生産拠点を確...

 026年後半に会社が正式にスタートし、2027年にはいよいよFUSOブランドとして「Foxconn技術を載せた日本製EVバス」が走り出すことになります。

なぜEVバスなのか

 三菱ふそうと鴻海(ホンハイ)が、あえて「EVバス」に特化した新会社を設立するのには、以下に示す日本市場特有の事情と、両社の戦略的な狙いが合致した背景があります。

1. 日本国内の「2030年目標」とカーボンニュートラル

 日本政府は「2050年カーボンニュートラル」を掲げており、公共交通機関であるバスの電動化は急務です。特に環境省や国土交通省はEVバスの導入に手厚い補助金を出しており、自治体やバス会社にとって「次に買うならEV」という流れが加速しています。

 この急速な需要増に応えるため、既存の体制とは別に、スピード感を持って開発・生産できる新会社が必要でした。

2. 「2024年問題」によるコスト削減ニーズ

 バス業界は、運転手不足や燃料高騰などの「2024年問題」に直面しています。

  • エネルギー効率: EVバスはディーゼル車に比べてエネルギー効率が良く、走行コスト(電気代 vs 軽油代)を抑えられる可能性があります。
  • メンテナンス: エンジンやトランスミッションがないため、部品点数が大幅に減り、長期的な整備コストの削減が期待されています。

3. Foxconnの「プラットフォーム戦略」の活用

 EVは「走るスマートフォン」とも言われ、ソフトウェアやバッテリー制御が重要です。

  • 鴻海は世界最大の受託製造企業として、EVの共通プラットフォーム(車台)を既に持っています。
  • これをベースにすることで、三菱ふそうが一から開発するよりも劇的に開発コストを下げ、販売価格を抑えることができます。現在、日本市場では安価な中国製EVバスがシェアを伸ばしており、それに対抗できる「手頃な価格の日本製EVバス」を作るには鴻海の力が必要でした。

4. 災害時の「動く蓄電池」としての価値

 EVバスは大型のバッテリーを積んでいるため、災害時に避難所などで非常用電源として活用できます。

 自治体がバスを更新する際、防災対策としても非常に魅力的な選択肢となるため、今後さらに需要が高まると見込まれています。


 「脱炭素という国策」と「バス会社のコスト削減」という強い需要に対し、「鴻海の安くて高性能なIT技術」と「三菱ふそうの信頼性」を掛け合わせて、中国メーカーに奪われつつある市場を取り戻すことが、EVバスに注力する最大の理由です。

脱炭素化の加速とコスト削減が狙いです。政府のカーボンニュートラル目標による需要増に対し、鴻海のIT・量産技術を活用して開発を高速化。高額な車両価格を抑え、中国製勢に対抗できる低価格な国産EVバスを提供します。

三菱ふそう側の狙いは

 三菱ふそう側の主な狙いは、「スピード」と「コスト」の劇的な改善にあります。自社単独では時間がかかるEV化を、外部の力を借りて一気に加速させようとしています。

1. 開発期間の大幅な短縮

 自社でゼロからEVバスを開発すると、膨大な時間と投資が必要です。今回、すでに実績のある鴻海(Foxconn)のEVプラットフォームをベースにすることで、開発サイクルを劇的に短縮し、「一刻も早く市場に製品を投入する」ことを最優先しています。

2. コスト競争力の強化

 現在、日本のEVバス市場はBYDなどの安価な中国メーカーにシェアを奪われつつあります。

 世界最大の受託製造メーカーである鴻海の部品調達網や量産ノウハウを活用することで、「中国勢に対抗できる価格帯」で高品質なEVバスを提供することを目指しています。

3. 日本国内の生産体制とブランドの維持

 車両そのものは鴻海の技術ベースですが、生産は富山県にある「三菱ふそうバス製造(MFBM)」の拠点で行います。

  • 「ふそうブランド」の信頼感
  • 日本国内の製造・雇用維持
  • きめ細やかなアフターサービス網これらを維持したまま中身を最新のEVに変えることで、保守的な日本のバス会社でも安心して乗り換えられる環境を整えるのが狙いです。

 「老舗の信頼」に「IT大手のスピードと低コスト」を掛け合わせ、国内シェアを死守するというのが三菱ふそうの本音といえます。

三菱ふそう側の狙いは、鴻海のEVプラットフォーム活用による開発期間の短縮とコスト削減です。安価な中国勢が台頭する中、IT大手の量産ノウハウを取り入れ、低価格で高品質な国産EVバスを早期投入して、国内市場のシェアを死守することにあります。

鴻海のEV技術の特徴は何か

 鴻海のEV技術の最大の特徴は、IT業界の手法を持ち込んだ「水平分業モデル」と「オープンプラットフォーム」にあります。

1. オープンプラットフォーム「MIH」

 スマートフォンがAndroidやiOSを基盤にするように、EVの車台(プラットフォーム)を共通化しています。

  • 柔軟なカスタマイズ: 車体の大きさやバッテリー容量を、用途に合わせてパズルのように組み替え可能です。
  • 開発コストの抑制: ゼロから設計する必要がないため、従来の自動車開発より圧倒的に安く、早く車両を作れます。

2. IT・電子機器大手の「統合制御技術」

 鴻海は世界最大のiPhone受託製造メーカーであり、高度な電子制御(ソフトとハードの融合)が得意です。

  • 電子ミラーの採用: 今回導入される「MODEL T」などは、物理的なミラーの代わりにカメラとモニターを使う電子ミラーを標準的に搭載。
  • 先進的なUI: 運転席のデジタル化や、ソフトウェアの更新(OTA)による車両性能のアップデートに強みがあります。

3. 高いデザイン性と実用性

 鴻海のEVバス「MODEL T」は、2022年に日本のグッドデザイン賞を受賞しています。

  • 洗練された造形: 従来のバスのイメージを覆すスタイリッシュな外観。
  • 十分な航続距離: バッテリー容量は400kWh(CATL製LFP電池など)で、航続距離は約400km(NEDC)に達し、都市部の路線バスとして十分な性能を持っています。

「IT大手の強みを活かした共通車台『MIH』が最大の特徴です。スマホのようにハードとソフトを分離し、車種に合わせた柔軟な設計と開発コストの抑制を両立。電子ミラー等の高度な制御技術も備え、低価格かつ高性能なEVを早期に量産可能です。」

鴻海側の利点は何か

 鴻海(Foxconn)側の主な利点は、世界で最も参入障壁が高いとされる「日本自動車市場」への本格的な足がかりを得ることです。

1. 日本市場への「信頼」という切符

 日本の商用車市場は品質やアフターサービスへの要求が非常に厳しく、外資メーカーが単独で食い込むのは困難です。三菱ふそうという100年の歴史を持つ老舗の看板と販売網を借りることで、一気に日本国内での信頼と販路を獲得できます。

2. 「委託製造」から「プラットフォーム提供」への進化

 鴻海はiPhoneなどの受託製造(EMS)で成長してきましたが、現在は自社開発のEVプラットフォーム(車台)を世界に売るビジネスへの転換を進めています。

 日本を代表するメーカーに自社のEV技術が採用されることは、「鴻海のEV技術は世界基準である」という強力な証明(リファレンス)になります。

3. 日本の法規制やニーズの学習

 日本の道路運送車両法や、日本特有の狭い路地、急勾配といった走行環境に適応させるノウハウは、今後の世界展開において貴重なデータとなります。ふそうとの共同開発を通じて、これらの日本独自の高い要求水準(スペック)を吸収できます。


最大の利点は、三菱ふそうのブランド力と販売網を活かした日本市場へのスムーズな参入です。自社のEVプラットフォームが日本で採用される実績を作りつつ、老舗の品質管理や法規制対応のノウハウを吸収し、世界展開の足がかりにできます。

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