この記事で分かること
- HBM4メモリとは:Iの演算を加速させる超高速・大容量メモリーです。DRAMを垂直に積み上げ、データの通り道を従来の2倍(2048ビット)に拡張。GPUと直結し、膨大なデータを一気に転送することでAIの処理遅延を解消する、次世代の「AI専用特急道路」です。
- なぜSKハイニックス先行していたのか:放熱性に優れる独自技術「MR-MUF」で量産効率と安定性を確立したことです。さらに、需要が低い時期も10年以上投資を継続し、エヌビディアと強固な協力関係を築いたことが、現在の市場独占に繋がりました。
- なぜサムスンが急追できたのか:1c nmプロセスの先行導入による業界最高速の実現に加え、設計から先端ファウンドリ、パッケージングまで自社で完結できる一括供給体制を活用し、開発速度とコスト競争力を高めたことで急追を遂げました。
サムスンのHBM4メモリがエヌビディアの認証に近づく
サムスン電子の次世代AI向けメモリー「HBM4(第6世代高帯域幅メモリー)」が、エヌビディア(NVIDIA)の品質認証において大きな進展を見せていると報道されています。
https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2026-01-26/T9G7QGKK3NY800
サムスンはHBM4の認証ハードルをクリアし、2月中の出荷開始を射程圏内に入れています。これにより、SKハイニックスが先行していたAI半導体市場におけるサムスンの存在感は再び急速に高まっています。
AI向けメモリーHBM4とは何か
HBM4(第6世代高帯域幅メモリー)とは、膨大なデータを高速で処理する必要がある生成AIや高性能コンピュータ(HPC)のために設計された、次世代の超高速メモリーで、「データの通り道を大幅に広げ、さらに賢くなったメモリーです。
HBM4は、これまでのHBM3E(第5世代)と比較して、構造と性能が根本的に進化しています。
1. 「道路の幅」が2倍に(2048-bitインターフェース)
データの通り道(バス幅)が、従来の1024ビットから2048ビットへと一気に2倍に拡大されました。
- メリット: 1秒間に送れるデータ量(帯域幅)が劇的に増えます。1スタック(メモリーの1塊)あたり1.5TB/s〜2TB/s以上の速度が見込まれており、これは一般的なPC用メモリーの数百倍の速さです。
2. 「カスタムHBM」時代の到来(ロジックダイの進化)
HBMは、複数のDRAMを縦に積み上げ、一番下に「ロジックダイ(ベースダイ)」という制御用の板を敷いた構造をしています。
- これまでのHBM: メモリーメーカーがロジックダイも作っていました。
- HBM4: ロジックダイにファウンドリ(受託製造)の先端プロセス(サムスンの4nmやTSMCの5nm/12nmなど)が導入されます。これにより、顧客(エヌビディアなど)の要望に合わせた計算機能をメモリー側にも持たせることが可能になります。
3. さらなる大容量化(16段積層)
DRAMを縦に積み上げる枚数が、これまでの12層から16層へと増えます。
- 容量: 1スタックで48GB〜64GBという巨大な容量を実現します。
- AIへの恩恵: 大規模言語モデル(LLM)のパラメータをより多くメモリー内に保持できるため、AIの学習や推論のスピードがさらに上がります。
世代別の性能比較
| 特徴 | HBM3E (第5世代) | HBM4 (第6世代) |
| バス幅 | 1024ビット | 2048ビット |
| 最大帯域幅 | 約1.2 TB/s | 1.6〜2.0 TB/s以上 |
| 最大積層数 | 12層 | 16層 |
| 主な用途 | Blackwell (NVIDIA) 等 | Rubin (NVIDIA), AIアクセラレータ |
なぜAIにHBM4が必要なのか
現在のAI(ChatGPTなど)の進化において、最大のボトルネックは「GPUの計算速度」ではなく、「メモリーからGPUへデータを送るスピード(メモリー壁)」だと言われています。
HBM4はこの壁を打ち破るために、インターフェースを倍増させ、電力効率を向上させた「AI専用の特急道路」のような存在です。
サムスン電子がこのHBM4でエヌビディアの認証を急いでいるのは、この「次世代の標準」をいち早く手中に収めるためです。

HBM4とは、AIの演算を加速させる超高速・大容量メモリーです。DRAMを垂直に積み上げ、データの通り道を従来の2倍(2048ビット)に拡張。GPUと直結し、膨大なデータを一気に転送することでAIの処理遅延を解消する、次世代の「AI専用特急道路」です。
SKハイニックスに先行していた理由は何か
SKハイニックスがHBM(高帯域幅メモリー)市場でサムスン電子に対して圧倒的なリード(2025年時点でシェア約6割以上)を築けた理由は、大きく分けて「技術選択の成功」と「戦略的な先行投資」の2点に集約されます。
1. 独自の製造技術「MR-MUF」の成功
最大の要因は、チップを積み上げる際のパッケージング技術の違いです。
- SKハイニックス(MR-MUF方式): 液体状の保護材を流し込んで固める独自技術を採用。熱を逃がしやすく、積層を増やしても安定して動作するため、量産効率(歩留まり)でサムスンを大きく上回りました。
- サムスン(TC-NCF方式): フィルムを挟んで熱で圧着する従来方式にこだわりましたが、積層が進むにつれて熱問題やチップの歪みに苦しみ、エヌビディアの品質テスト合格が遅れる要因となりました。
2. 「不遇の時代」を耐え抜いた先行投資
HBMは登場当初、価格が高く「ニッチな製品」と見られていました。
- SKハイニックス: 2013年に世界で初めてHBMを開発して以来、需要が少ない時期も15年以上にわたり研究開発を継続しました。
- サムスン: 汎用メモリー(DRAM)で圧倒的なシェアを持っていたため、効率の悪いHBMへの投資を一時期縮小・休止したことがありました。これが、生成AIブームが来た際の「準備の差」となりました。
3. エヌビディアとの強固な信頼関係
SKハイニックスは、AI半導体王者であるエヌビディアと開発初期から密接に連携してきました。エヌビディアの要求に合わせて製品を最適化し、「最高性能のHBMはまずSKから買う」という事実上の独占状態(HBM3世代)を作り上げることに成功しました。

SKハイニックスの勝因は、放熱性に優れる独自技術「MR-MUF」で量産効率と安定性を確立したことです。さらに、需要が低い時期も10年以上投資を継続し、エヌビディアと強固な協力関係を築いたことが、現在の市場独占に繋がりました。
なぜサムスンが猛追できたのか
サムスン電子がSKハイニックスに対して「猛追」できている理由は、以下に示すように、主に「1c nmプロセスの先行導入」と、自社で全てを完結させる「ターンキー(一括)戦略」へのシフトにあります。
1. 超微細化プロセス(1c nm)での勝負
サムスンはHBM4において、業界最先端の1c nm(第6世代10ナノ級)DRAMを競合に先駆けて適用しました。
- 攻めの姿勢: SKハイニックスが安定性を重視して一世代前の「1b nm」をベースにする中、サムスンはスペックで上回るためにリスクを取って最新プロセスを導入し、エヌビディアの求める高い性能基準をクリアしました。
2. 世界唯一の「ターンキー(一括)」体制
HBM4からは、最下層の「ロジックダイ」の重要性が増しています。
- サムスンの強み: 設計(LSI部門)、製造(ファウンドリ部門:4nm採用)、メモリー、パッケージングを自社内だけで完結できます。
- 効率化: 他社(SKハイニックス × TSMCなど)が企業の枠を超えて連携・調整する必要があるのに対し、サムスンは社内連携だけで済むため、開発のスピードアップとコスト削減を同時に進められました。
3. 圧倒的な生産能力(キャパシティ)
サムスンは、既存の汎用DRAMラインをHBM専用ラインへと急速に転換する「物量作戦」を展開しました。
- 供給不安の解消: エヌビディアにとっては、AI半導体の爆発的な需要に応えるために、巨大な工場を複数持つサムスンの供給力が必要不可欠でした。この「供給力というカード」が、認証に向けた交渉を後押ししました。

サムスンは1c nmプロセスの先行導入による業界最高速の実現に加え、設計から先端ファウンドリ、パッケージングまで自社で完結できる一括供給体制を活用し、開発速度とコスト競争力を高めたことで急追を遂げました。

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