この記事で分かること
- USAレアアースとは:米テキサス州での鉱山採掘からオクラホマ州での磁石製造までを国内で完結させる「垂直統合」を目指す企業です。2026年には米政府が筆頭株主となる巨額支援を受け、対中依存脱却の要として注目されています。
- 投資内容:総額16億ドル(約2,500億円)にのぼる異例のパッケージです。単なる補助金ではなく、政府が筆頭株主として経営に深く関与し、事業を強力にバックアップする内容となっています。
- なぜ政府が投資を行うのか:中国が独占するレアアース供給網からの脱却を目指し、兵器やEV、半導体に不可欠な重レアアースを米国内で安定確保するため、政府が直接関与して自給体制を構築する狙いがあります。
トランプ政権のUSAレアアースへの投資
トランプ政権が、国内のサプライチェーン強化を目的に、レアアース企業、USAレアアースへ合計16億ドル(約2,360億円)の資金提供を行う計画であると報じられました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN26BBK0W6A120C2000000/
この報道もあり、同社の株価は一時26%〜30%を超える大幅な上昇を記録しました。
USAレアアースはどんな企業か
USAレアアース(USA Rare Earth, NASDAQ: USAR)は、「米国内でレアアースの採掘から磁石の製造までを完結させる(Mine-to-Magnet)」ことを目指す、垂直統合型の新興企業です。
2026年現在、米国政府が直接出資し、国家戦略の要として位置づけている非常に重要なポジションにいます。同社の特徴を3つのポイントで解説します。
1. 「中国依存」をゼロにする垂直統合モデル
現在、世界のレアアース(特に高性能磁石に必要な重希土類)の供給網は中国に依存しています。同社はこれを打破するため、以下の3段階をすべて自社グループで行う計画を立てています。
- 上流(採掘): テキサス州の「ラウンドトップ鉱山」を保有。17種類中15種類のレアアースに加え、半導体に必要なガリウムやリチウムも含む巨大な鉱床です。
- 中流(加工・合金): 2024年に英国の老舗メーカー Less Common Metals (LCM) を買収。レアアースを磁石の原料(合金)に変える、欧米でも数少ない高度な技術を手にしました。
- 下流(製品): オクラホマ州に巨大な磁石製造工場を建設中(2026年中に本格稼働予定)。EVや戦闘機に使われる「ネオジム磁石」を生産します。
2. 米国政府が「筆頭株主」になるほどの重要性
同社が注目されている最大の理由は、米政府(商務省・国防総省関連)からの異例の支援です。
- 出資: 米政府が約10%の株式を取得し、筆頭株主となる異例の官民パートナーシップ。
- 資金: 総額16億ドル(約2,300億円)規模の支援パッケージを受け、国内供給網の構築を急いでいます。
3. 主要プロジェクトの現状(2026年時点)
| 拠点 | 役割 | 状況 |
| オクラホマ工場 | 永久磁石の製造 | 2026年前半に商用生産開始予定 |
| テキサス鉱山 | 鉱石の採掘・抽出 | 2028年後半の操業開始を目指し加速中 |
| コロラド拠点 | 分離・精製技術の開発 | 実証プラントが稼働中 |
現在のCEOは、元シーメンスUSA会長のバーバラ・ハンプトン氏が務めており、政界や産業界との強いパイプも同社の強みとなっています。

USAレアアースは、米テキサス州での鉱山採掘からオクラホマ州での磁石製造までを国内で完結させる「垂直統合」を目指す企業です。2026年には米政府が筆頭株主となる巨額支援を受け、対中依存脱却の要として注目されています。
どんなレアアースを採掘するのか
USAレアアースがテキサス州のラウンドトップ鉱山で採掘するのは、単なる「レアアース」だけではありません。
同社の最大の特徴は、全17種類のレアアースのうち15種類が含まれており、特に中国が市場を独占している「重レアアース(HREE)」が極めて豊富である点です。さらに、半導体やEV電池に必要な他の重要鉱物も同時に採掘されます。具体的に採掘される主な鉱物は以下の通りです。
1. 永久磁石に不可欠な「重レアアース」
ハイテク製品や軍事兵器の心臓部となる「ネオジム磁石」の性能を向上させるために欠かせない、希少価値の高い元素が中心です。
- ジスプロシウム (Dy): 高温下での磁力を維持するために不可欠。
- テルビウム (Tb): 磁石の保磁力を高める。
- イットリウム (Y): レーザーやLED、超伝導材料に使用。
- ホロミウム、エルビウム、ツリウム など。
2. 次世代産業の鍵となる「重要鉱物(クリティカル・ミネラル)」
レアアース以外にも、戦略的に重要な以下の物質が同じ鉱山から採掘されます。
- リチウム (Li): 電気自動車(EV)用バッテリーの主原料。
- ガリウム (Ga): 次世代半導体(パワー半導体や通信用)に必須。米国務省も「国内での確保が最優先」としている物質です。
- ベリリウム (Be): 航空宇宙や国防用合金に使用。
ラウンドトップ鉱山の特徴
この鉱山は、一般的な鉱山と比べて「多種多様な金属がひとつの場所で獲れる(多金属鉱床)」という強みがあります。
- 重レアアースの比率が高い: 通常のレアアース鉱山は「軽レアアース(セリウム等)」が主ですが、ここは磁石に必要な「重レアアース」の含有率が非常に高いのが特徴です。
- 副産物の価値: リチウムやガリウムが副産物として獲れるため、レアアースの価格変動に左右されにくい収益構造(ポートフォリオ)を組むことができます。
米政府がこれほどまでに支援するのは、これら「中国に握られているハイテクの種」を一気に自国で確保できる場所だからです。

USAレアアースが採掘するのは、磁石の性能を左右する重レアアース(ジスプロシウム、テルビウム等)を中心とした16種類の元素です。さらに、EV電池用のリチウムや半導体用のガリウムなど、戦略的重要鉱物を一括で産出するのが特徴です。
政府はどんな支援を行うのか
2026年1月26日、米政府(トランプ政権)とUSAレアアースが締結した支援策は、総額16億ドル(約2,300億〜2,500億円)にのぼる異例の内容です。
政府が単なる「補助金」を出すだけでなく、「筆頭株主」として経営にも関与するという点が、市場に大きな衝撃を与えました。
1. 政府による「直接出資」(約2.8億ドル)
米商務省が、約2億7,700万ドルでUSAレアアースの株式(1,610万株)を取得します。
- 筆頭株主へ: これにより政府は同社の約10%(新株予約権を含めると最大16%)の株式を保有することになります。
- 事実上の国策企業化: 民間の鉱山会社を政府が直接所有するのは極めて珍しく、「絶対にこのプロジェクトを失敗させない」という強い意思表示と受け取られています。
2. 低利融資(約13億ドル)
「CHIPS法(半導体支援法)」に基づき、13億ドルの優先担保付き融資が行われます。
- 用途: テキサス州の鉱山開発と、オクラホマ州の磁石工場の建設・稼働資金に充てられます。
- 意義: 銀行からの融資が難しい開発段階の企業にとって、政府による低利・巨額の融資は強力な追い風となります。
3. 民間資金の呼び込み(15億ドルのPIPE)
政府の支援表明と同時に、民間投資家からも15億ドルの資金調達(PIPE:公開企業への非公開直接投資)に成功しました。
- 政府がお墨付きを与えたことで、「国が守る企業なら安心だ」と判断した民間マネーが一気に流れ込む形となりました。
株価が急騰したのは、この「政府による事実上の保証」がついたことで、倒産や事業頓挫のリスクが劇的に下がったと判断されたためです。

米政府による支援は、総額16億ドル(約2,500億円)にのぼる異例のパッケージです。単なる補助金ではなく、政府が筆頭株主として経営に深く関与し、事業を強力にバックアップする内容となっています。
政府が支援を行う理由は何か
米政府がUSAレアアースに巨額支援を行う最大の理由は、「国防と先端産業における中国依存を断ち切り、自国でサプライチェーンを完結させるため」です。
2026年現在の緊迫した経済安保状況を踏まえ、主な理由は以下の3点に集約されます。
1. 中国の「資源の武器化」への対抗
現在、世界のレアアース加工の90%以上を中国が握っています。中国はこれまでに輸出規制をたびたび発動しており、米国にとっては「首根っこを掴まれている」状態です。政府自ら筆頭株主になることで、他国に左右されない安定調達ルートを確保する狙いがあります。
2. 国防兵器の製造維持
最新鋭のステルス戦闘機(F-35)やミサイル、潜水艦、ロボットなどの軍事機器には、大量の高性能磁石が必要です。
- 同社が採掘する重レアアースは、軍事用磁石に不可欠な素材。
- これが途絶えると米国の防衛能力が低下するため、政府は「安全保障上の死活問題」と捉えています。
3. 次世代産業(EV・半導体)の覇権争い
トランプ政権は、国内の製造業復活を掲げています。
- EV・ロボティクス: 電気自動車のモーターや産業用ロボットに不可欠な「ネオジム磁石」を国内で自給。
- 半導体: 同社の鉱山から副産物として獲れる「ガリウム」は次世代半導体の鍵を握っており、ハイテク分野での競争力を維持するために重要です。
政府はUSAレアアース以外にも、MPマテリアルズなど複数の国内企業に分散投資を行っています。

中国が独占するレアアース供給網からの脱却を目指し、兵器やEV、半導体に不可欠な重レアアースを米国内で安定確保するため、政府が直接関与して自給体制を構築する狙いがあります。

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