ミネベアパワーデバイスとサンケン電気による半導体事業の協業 それぞれの強みとなぜ協業を行うのか?

この記事で分かること

  • 協業の内容:インテリジェントパワーモジュール(IPM)の生産・開発で協業します。福島県の原町工場内に共同ラインを新設し、2027年度の量産を目指すほか、両社の強みを融合した製品開発を加速させます。
  • IPMとは:大きな電力を制御する「パワー半導体」に、それを動かす「駆動回路」と故障を防ぐ「保護回路」を一つにまとめた高機能部品です。小型化や設計の簡素化、高い信頼性を実現し、エアコンや産業用ロボットのモーター制御に不可欠な存在です。
  • なぜ協業を行うのか:急増するパワー半導体需要に対し、巨額の設備投資を分担して投資効率を高めるためです。ミネベアの「高耐圧チップ技術」とサンケンの「小型化・家電向け販路」を融合し、開発加速と安定供給の両立で国際競争力を強化します。

ミネベアパワーデバイスとサンケン電気による半導体事業の協業

 ミネベアミツミの連結子会社のミネベアパワーデバイスとサンケン電気による半導体事業の協業が報道されています。

 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC277470X20C26A1000000/

 両社は、家電や産業機器に欠かせない「インテリジェントパワーモジュール(IPM)」の分野で、生産と開発の両面から手を組むことになりました。

半導体事業協業の内容は何か

 2026年1月27日に発表されたミネベアミツミ(ミネベアパワーデバイス)とサンケン電気の協業は、主にインテリジェントパワーモジュール(IPM)」という製品を軸にした、生産と開発の両面におよぶ包括的な技術提携です。具体的には以下の2つの柱で構成されています。

1. 後工程(組み立て)の生産協業

 パワー半導体の製造プロセスのうち、チップをパッケージに封入する「後工程」を共同で行います。

  • 新ラインの設置: ミネベアパワーデバイスの原町工場(福島県南相馬市)内に、両社が利用する新しい後工程の生産ラインを構築します。
  • 量産開始時期: 2027年度の稼働を目指しています。
  • 狙い: 両社のリソース(設備や工場)を共有することで、巨額の設備投資を最適化し、世界的な需要変動に対するリスクを抑えながら、安定した供給体制を築くことです。

2. 次世代製品の共同開発

 両社が持つ独自の強みを持ち寄り、より競争力の高いIPMを開発します。

  • 技術の融合: ミネベア側: 旧日立パワーデバイスから継承した、鉄道や電力インフラ向けの高耐圧・高信頼性チップ技術(IGBTやSiCなど)を提供。
    • サンケン電気側: 長年培ってきた家電・産業向けのパッケージング技術や回路設計の知見を提供。
  • 狙い: 開発期間を大幅に短縮し、省エネ性能が高くコスト競争力のある製品を、世界市場(特に白物家電や産業機器)へ迅速に投入することです。

協業のターゲット市場

 今回の提携は、主に以下の製品向けを想定しています。

  • 民生品: エアコン、洗濯機、冷蔵庫などの省エネ性能が求められる白物家電。
  • 産業機器: 工場のロボットや工作機械、インフラ設備など。

ミネベアミツミはコア事業の一つとしてアナログ半導体を急速に強化しており、一方のサンケン電気はパワー半導体の老舗として強い顧客基盤を持っています。

 この提携により、「ミネベアの製造力・チップ技術」「サンケンのモジュール化技術・市場へのアクセス」を掛け合わせ、海外メーカーに対抗できる規模とスピードを確保する狙いがあります。

ミネベアパワーデバイスとサンケン電気は、「インテリジェントパワーモジュール(IPM)」の生産・開発で協業します。福島県の原町工場内に共同ラインを新設し、2027年度の量産を目指すほか、両社の強みを融合した製品開発を加速させます。

IPMとは何か

 IPMとは、「Intelligent Power Module(インテリジェント・パワー・モジュール)」の略称で、「パワー半導体に『頭脳(制御回路)』と『ガードマン(保護回路)』をセットにして、一つのパッケージに詰め込んだ高機能な部品」のことです。


1. 例えでわかるIPM

  • 普通のパワー半導体(IGBTなど):いわば「コンロ」です。火(電気)を扱う力はありますが、いつ点けるか、火加減はどうするか、熱くなりすぎたらどうするかは、外にいる「料理人(外部の複雑な回路)」がすべて指示し、見張っている必要があります。
  • IPM:いわば「全自動の多機能調理器」です。コンロだけでなく、最適な火加減を判断する機能や、空焚き防止センサー、自動スイッチオフ機能までが、一つの箱の中にセットになっています。

2. 中に入っているもの

 IPMの中には、主に以下の3つの役割を果たすチップが同居しています。

  1. パワー素子(IGBT/MOSFET): 実際に大きな電気を流したり止めたりする「筋肉」の役割。
  2. 駆動回路(ドライブ回路): パワー素子を動かすための「神経」の役割。
  3. 保護回路: 過熱・過電流・電圧不足などの異常を検知して、壊れる前に自ら停止する「脳」の役割。

3. IPMを使うメリット

  • 設計が楽になる: 複雑な保護回路を自前で設計しなくて済むため、メーカーは製品を早く開発できます。
  • 小型化: 複数の部品を一つにまとめるので、基板のスペースを節約でき、家電などの小型化に役立ちます。
  • 信頼性が高い: 部品間の配線が短く、ノイズの影響を受けにくいため、故障のリスクが減ります。

4. 主な用途

 私たちの身の回りの、特に「モーターの回転を細かくコントロールする必要があるもの」に使われています。

  • 家電: エアコン(省エネ運転に必須)、洗濯機、冷蔵庫
  • 産業: 工場のロボット、工作機械、エレベーター
  • 乗り物: 電気自動車(EV)の駆動系、鉄道

 今回のミネベアミツミとサンケン電気の協業は、この「便利で高機能な詰め合わせセット(IPM)」を、より効率よく作り、より高性能なものに進化させようという取り組みです。

IPMとは、大きな電力を制御する「パワー半導体」に、それを動かす「駆動回路」と故障を防ぐ「保護回路」を一つにまとめた高機能部品です。小型化や設計の簡素化、高い信頼性を実現し、エアコンや産業用ロボットのモーター制御に不可欠な存在です。

ミネベアパワーデバイスのIPM製造での強みは何か

 ミネベアミツミがIPM(インテリジェントパワーモジュール)製造において持っている強みは、「旧日立パワーデバイスから受け継いだ超高水準の技術力」と、ミネベア独自の「垂直統合型の生産体制」の掛け算にあります。

具体的には、以下の3つのポイントが大きな強みです。


1. 「高耐圧・低損失」の圧倒的なチップ技術

 2024年に買収した「ミネベアパワーデバイス(旧日立パワーデバイス)」の技術がベースになっています。

  • 鉄道・インフラ級の信頼性: もともと新幹線や送電網といった、極めて高い電圧と信頼性が求められる分野で世界トップクラスのシェアを持っていました。この「壊れない」「熱に強い」技術を、家庭用エアコンや産業ロボット向けのIPMに応用できるのが強みです。
  • 次世代材料(SiC): 従来のシリコンよりも電力ロスが大幅に少ない「SiC(炭素化ケイ素)」パワー半導体の開発に強く、省エネ性能で他社を圧倒するポテンシャルを持っています。

2. 「相合(そうごう)」によるシナジー

 ミネベアミツミは、自社の多様な事業を組み合わせることを「相合」と呼んでいます。

  • モーターとの一体開発: ミネベアは世界トップクラスの「モーター」メーカーでもあります。IPMはモーターを回すための部品なので、「最高のモーターに最適なIPM」を自社内で一貫して設計・最適化できるのは、専業メーカーにはない強みです。
  • 制御ICの自社開発: ミツミ電機由来の「アナログ半導体(制御用IC)」の技術があるため、IPMの「脳」にあたる部分も自社グループで最適に設計できます。

3. IDM(垂直統合)としての安定供給力

 設計から前工程(ウェハ製造)、後工程(組み立て)まで自社で完結するIDM(垂直統合型デバイスメーカー)体制を構築しています。

  • 柔軟なカスタマイズ: 顧客の要望に合わせて、チップの設計からパッケージの形状まで細かく調整できます。
  • 供給の安定性: 自社工場を持つため、世界的な半導体不足のような事態でも、外部のファウンドリ(受託製造会社)の影響を受けにくく、安定して製品を届けることができます。

 「新幹線レベルのタフな技術」を、ミネベアが得意とする「超精密・大量生産のノウハウ」で安価・大量に供給できる点が、競合他社に対する最大の防波堤となっています。

ミネベアミツミのIPM製造における強みは、旧日立パワーデバイスから継承した鉄道・電力インフラ向けの「高耐圧・高信頼性技術」と、自社の「垂直統合生産(IDM)」による安定供給・コスト競争力の掛け合わせにあります。

サンケン電気のIPM製造での強みは何か

 サンケン電気のIPM(インテリジェントパワーモジュール)製造における強みは、「世界トップクラスのシェアを誇る白物家電向け技術」と、「高度なパッケージング技術」にあります。

 ミネベアミツミが「鉄道・インフラ向けのタフなチップ」に強いのに対し、サンケン電気はより消費者に近い「高度な省エネと小型化」に強みを持っています。


1. 白物家電向けIPMで世界トップクラスのシェア

 サンケン電気は、特にエアコンや冷蔵庫、洗濯機などの「インバータ家電」向けのIPMで非常に高い市場占有率を持っています。

  • 圧倒的な採用実績: 国内外の主要な家電メーカーに長年製品を供給しており、世界中の家庭の省エネに貢献しています。
  • きめ細やかな対応: 家電ごとの複雑な制御ニーズに合わせた製品ラインナップが豊富です。

2. 高度なパッケージングと回路設計

 IPMは「詰め合わせ」部品であるため、いかに効率よく熱を逃がし、小さくまとめるかが重要です。

  • 小型化技術: 従来のバラバラの部品構成と比較して、基板面積を大幅に削減(例:30cm角の回路を4cm角に集約)するノウハウを持っています。
  • 放熱設計: 大電流を流しても熱がこもりにくい独自の構造(DBC基板の活用など)に長けており、過酷な環境でも安定して動く製品を作れます。

3. 次世代技術(GaNなど)への注力

 サンケン電気は、シリコンに代わる次世代素材「GaN(窒化ガリウム)」を用いたIPMの開発でも先行しています。

  • これにより、従来の製品よりもさらに一回り小さく、電力損失の少ない次世代の白物家電や車載用部品の実現を目指しています。

サンケン電気の強みは、白物家電向けIPMで世界トップクラスのシェアを誇る実績と、高度な「パッケージング技術」にあります。特にエアコン等の省エネに直結するインバータ制御に長けており、回路を極限まで小型化しつつ効率的に熱を逃がす設計ノウハウが随一です。この「詰め込む技術」と広範な顧客基盤が、同社の大きな武器となっています。

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