東京応化工業、業績予想の上方修正 なぜ上方修正できたのか?

この記事で分かること

  • なぜ上方修正できたのか:生成AI市場の急成長を背景に、AIチップ製造に不可欠な最先端フォトレジストや高純度薬品の出荷が想定を大きく上回ったことが主因です。加えて、想定以上の円安進行が外貨建て売上の押し上げに寄与しました。
  • 最先端フォトレジストとは:最先端半導体の製造で使われる、波長の短い極端紫外線(EUV)に反応する特殊な感光材です。ウイルスより小さい数ナノメートル単位の極微細な回路を描くのに不可欠です。
  • 高純度薬品にはどんなものがあるのか:露光後の回路を浮かび上がらせる現像液、不要なレジストを溶かす剥離液、ウエハや装置を清める洗浄液があります。

東京応化工業、業績予想の上方修正

 東京応化工業が2026年1月30日、2025年12月期の通期連結業績予想の上方修正を発表しました。

 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC308PG0Q6A130C2000000/

 世界的な生成AIブームを背景に、最先端半導体の需要が急増しています。これに伴い、同社の主力製品であるフォトレジスト(感光材)高純度化学薬品の出荷が、想定を大きく上回るペースで推移したことが要因とされています。

なぜ業績予想を上方修正したのか

 東京応化工業が2025年12月期の業績予想を上方修正した主な理由は、「生成AIブームに伴う最先端半導体材料の爆発的な需要増」「円安によるプラス効果」です。


1. 生成AI向け半導体材料の需要急増

 世界的な生成AI(ChatGPTなど)の普及により、データセンターなどで使われる高性能なAIチップ(GPUなど)の生産が活発化しています。

  • 最先端レジストの伸長: 同社の強みである、極端紫外線(EUV)用などの最先端フォトレジストが、AIチップの製造工程で大量に採用されました。
  • 高純度薬品の需要増: 半導体の洗浄や現像に使う高純度化学薬品も、工場の稼働率上昇に伴って出荷が大きく伸びました。

2. PC・スマホ市場の回復

 これまで低迷していたパソコンやスマートフォンの買い替え需要が堅調に推移し、AI関連以外の汎用的な半導体材料の出荷も底堅く推移しました。

3. 為替(円安)の追い風

 当初の想定よりも円安が進んだことが、海外売上高を円建てに換算する際の押し上げ要因となりました。

  • 同社は海外売上比率が高いため、為替相場が利益に与える影響は非常に大きく、今回の利益上振れの大きな一因となっています。

生成AI市場の急成長を背景に、AIチップ製造に不可欠な最先端フォトレジストや高純度薬品の出荷が想定を大きく上回ったことが主因です。加えて、想定以上の円安進行が外貨建て売上の押し上げに寄与しました。

極端紫外線用フォトレジストとは何か

 極端紫外線(EUV)用フォトレジストは、最先端の半導体製造プロセスにおいて、回路パターンをシリコンウエハ上に焼き付けるために使用される特殊な感光材(薬剤)のことです。

 現在のスマートフォンやAIチップなど、驚異的な処理能力を持つデバイスの心臓部を作るために欠かせない「究極の材料」と言われています。


3つの大きな特徴

  1. 究極の細かさ(微細化)従来の光よりも波長が圧倒的に短いEUV(波長13.5nm)という光に反応します。これにより、数ナノメートル単位という、ウイルスよりも小さな極微細な回路を描くことが可能になります。
  2. AIチップの性能を左右する回路が細かくなるほど、同じ面積のチップにより多くのトランジスタを詰め込めます。つまり、このレジストの性能が、AIの計算速度や省電力性能に直結します。
  3. 極めて高い技術ハードルEUV光はあらゆる物質に吸収されやすいため、レジストには「わずかな光を効率よく捉え、かつ正確に固まる」という非常に高度な化学設計が求められます。

東京応化工業の立ち位置

東京応化工業はこのEUVレジストの分野で世界トップクラスのシェアを誇っています。

 今回の業績上方修正も、世界中の半導体メーカーがAIチップ増産のために、同社のこの「高付加価値なEUVレジスト」をこぞって買い求めたことが最大の要因です。

最先端半導体の製造で使われる、波長の短い極端紫外線(EUV)に反応する特殊な感光材です。ウイルスより小さい数ナノメートル単位の極微細な回路を描くのに不可欠で、AIチップの高性能化を支える中核素材です。

東京応化の極端紫外線用フォトレジストの特徴は何か

 東京応化工業(TOK)の極端紫外線(EUV)用フォトレジストには、主に3つの大きな特徴と強みがあります。


1. 世界トップクラスのシェアと信頼性

 同社はフォトレジスト全体の市場で世界シェア首位(約25%)を誇り、最先端のEUV用でも世界2位(約28%)という極めて高いシェアを持っています。

 長年の経験に基づく高い品質安定性が、TSMCやサムスンといった世界大手の先端ラインで採用される決め手となっています。

2. 「高純度化技術」による歩留まり向上

 微細な回路を描く際、わずかな不純物(メタル不純物など)が命取りになります。東京応化は、不純物を「ppq(1,000兆分の1)」レベルで制御する世界最高水準の高純度化技術を持っており、これが顧客メーカーの生産効率(歩留まり)向上に直結しています。

3. 顧客密着型の「テーラーメイド開発」

 EUVプロセスは非常に繊細で、顧客の工場や装置ごとに最適な調整が必要です。同社は世界各地の拠点で、顧客の要望に合わせてレジストの配合を細かくカスタマイズする「顧客密着戦略」を徹底しており、これが強力な競争優位性となっています。


 同社は現在、さらなる微細化(2nmプロセス以降)を見据え、金属酸化物を用いた次世代の「無機レジスト」などの開発も加速させています。

世界トップクラスのシェアを誇る同社のEUVレジストは、不純物を1,000兆分の1単位で制御する圧倒的な高純度技術が特徴です。これにより最先端チップ製造の歩留まりを向上させ、顧客ごとの繊細なカスタマイズ要望にも応える高い適応力でAI半導体の微細化を支えています。

高純度薬品にはどんなものがあるのか

 東京応化工業などの半導体材料メーカーが提供する「高純度薬品」は、目に見えないほど微細な回路を作るプロセスにおいて、「描く」「削る」「洗う」の各段階で重要な役割を果たします。


1. 現像液(Developer)

 露光装置で光を当てた後、フォトレジストの不要な部分を溶かし、回路パターンを物理的な形として浮かび上がらせる薬剤です。

  • 役割: 回路の「型」を正確に作る。
  • 重要性: 溶け残りが少しでもあると回路がショートするため、極めて均一な溶解能力が求められます。

2. 洗浄液・シンナー(Cleaner / Thinner)

 工程の前後でウエハや装置を清浄に保つために使われます。

  • 役割: ウエハの端に付着した余分なレジストの除去や、塗布装置のノズル洗浄。
  • 重要性: 次の工程に不純物を持ち込まないための「門番」のような役割です。

3. 剥離液(Stripper)

 エッチング(回路の溝掘り)などの工程が終わった後、不要になったフォトレジストを完全に溶かして取り除く薬剤です。

  • 役割: 役目を終えたレジストを「跡形もなく」消し去る。
  • 重要性: 下地の金属膜などを傷めずに、レジストだけを素早く剥がす選択性が求められます。

4. 表面処理剤・補助材(Primer / BARC)

 レジストを塗る前や塗る際に使用し、加工の精度を高めます。

  • 密着向上剤(プライマー): ウエハとレジストを剥がれにくくします。
  • 反射防止膜(BARC): 露光時の光の反射を抑え、回路がぼやけるのを防ぎます。

なぜ「高純度」である必要があるのか

 最新の半導体回路は数ナノメートル単位です。もし薬品の中に目に見えないレベルの金属粒子やゴミが混じっていると、それが巨大な障害物となり、回路の断線やショートを引き起こします。

 東京応化工業は、不純物を「ppq(1,000兆分の1)」という、東京ドームいっぱいの砂の中に数粒の異物があるかどうか、というレベルまで取り除く精製技術を持っていることが最大の強みです。

主に、露光後の回路を浮かび上がらせる現像液、不要なレジストを溶かす剥離液、ウエハや装置を清める洗浄液があります。回路の断線を防ぐため、不純物を1,000兆分の1単位で排除する「究極の純度」が求められます。

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