この記事で分かること
- トラステッド・テック・アライアンスとは:マイクロソフトやエリクソンが主導し、2026年2月に発足した国際企業連合です。AIから半導体まで、ITの全階層で共通の信頼基準(セキュリティや透明性)を策定し、地政学的な対立を超えた安全なデジタル基盤の構築を目指しています。
- なぜ地政学的な対立が起きているのか:米中などの巨大テック企業への過度な依存が、自国の機密流出や産業の衰退を招くという危機感から、各国が自国のルールやインフラで「自立」しようと主導権を争っています。
- どのような「認証」や「技術規格」を作るのか:ソフトウェア開発プロセスの可視化やセキュリティ対策の標準化を求める「運用の透明性」と、外部専門家が客観的に安全性をチェックする「独立した第三者評価」の枠組みなどを定めています。
マイクロソフト主導のトラステッド・テック・アライアンス
マイクロソフトが主導する「トラステッド・テック・アライアンス(Trusted Tech Alliance / TTA)」は、2026年2月にミュンヘン安全保障会議に合わせて発表された、非常に新しいグローバルな枠組みです。
https://www.prnewswire.com/jp/news-releases/trusted-tech-alliance-302688317.html
「地政学的なリスクへの対応」と「グローバルな標準化」に重きを置いているのが特徴となる新たな枠組みです。
トラステッド・テック・アライアンスとは何か
トラステッド・テック・アライアンス(Trusted Tech Alliance: TTA)とは、2026年2月にマイクロソフトやエリクソンが中心となって発足した、デジタル技術の「信頼性(トラスト)」を世界共通の基準で担保するための国際的な企業連合です。
背景には、サイバー攻撃や偽情報の拡散、さらには「特定の国の技術は信じられない」といった地政学的な対立(デジタル主権の争い)があります。これらを解決し、安全なデータ流通を実現するのが狙いです。
主な3つの特徴
- 「信頼」の標準化特定の国や企業に依存せず、セキュリティ、透明性、倫理など「5つの基本原則」を遵守することを参加条件としています。これにより、「この連合の技術なら国を問わず安心して使える」というブランド化を目指しています。
- 全レイヤーでの連携ソフトウェア(AI・クラウド)だけでなく、通信インフラ(5G/6G)、さらにはハードウェア(半導体)まで、ITの全階層で一貫した安全基準を作ります。
- グローバルな強力メンバーマイクロソフト、Google、AWSといった米大手だけでなく、エリクソン(スウェーデン)、SAP(ドイツ)、そして日本からはNTTやラピダスが初期メンバーとして名を連ねています。
なぜ重要なのか
これまで、欧州などは米国の巨大テック企業への依存を警戒してきましたが、このアライアンスは「共通ルールを守る」という枠組みを提示することで、国家間の不信感を超えて技術を普及させる「技術外交」のプラットフォームとしての役割を担っています。
日本のラピダスなどが参加していることも、次世代半導体が世界標準の「信頼の基盤」として組み込まれるために極めて重要な意味を持っています。

マイクロソフトやエリクソンが主導し、2026年2月に発足した国際企業連合です。AIから半導体まで、ITの全階層で共通の信頼基準(セキュリティや透明性)を策定し、地政学的な対立を超えた安全なデジタル基盤の構築を目指しています。
なぜデジタル主権の争いが起きているのか
デジタル主権(Digital Sovereignty)の争いが起きている理由は、単なる技術開発の競争ではなく、「データ、インフラ、ルールを支配する者が、国家の安全保障と経済の主導権を握る」という認識が強まっているからです。
1. 経済的・技術的な「過度な依存」への危機感
現在、世界のデジタル基盤(クラウド、OS、AI)の多くは、米国(GAFAM)や中国(BATH)の巨大テック企業によって占められています。
- 欧州の焦り: 西欧諸国のデータの92%は米国のサーバーに保管されており、欧州独自のプラットフォームが育たない「デジタル植民地化」への懸念があります。
- ロックインのリスク: 特定の国の技術に依存しすぎると、価格改定やサービス停止を一方的に突きつけられた際、国家機能が麻痺してしまいます。
2. 国家安全保障と地政学的リスク
デジタル技術は今や軍事やインフラに直結しています。
- データ流出の懸念: 自国の市民や企業の機密データが他国の法律(米国のCLOUD法や中国の国家情報法など)によって強制的に開示されるリスクがあります。
- デジタル権威主義: AIや監視技術を駆使して自国民を統制する動きに対し、民主主義諸国が「信頼できる技術」で対抗しようとしています。
3. 法規制と価値観の対立(3つのモデル)
世界は現在、デジタル空間の「ルール」を巡って大きく3つの陣営に分かれ、主導権を争っています。
| モデル | 主な特徴 |
| 米国モデル | 自由なデータ流通とイノベーションを重視(民間主導) |
| 中国モデル | 国家がデータを完全に管理・統制(国家主導) |
| 欧州モデル | 個人のプライバシー保護と倫理を最優先(規制主導) |
どの国も一国だけではこの巨大なテック企業や他国の圧力に対抗できません。そこで、日本や欧州、そして一部の米企業が手を組み、「特定の国に依存しない、透明性の高い共通ルール」を作ろうとしているのが、先ほどの「トラステッド・テック・アライアンス」などの動きの本質です。

デジタル主権の争いが起きている理由は、「データの支配が国家の安全保障と経済競争力に直結するから」です。
米中などの巨大テック企業への過度な依存が、自国の機密流出や産業の衰退を招くという危機感から、各国が自国のルールやインフラで「自立」しようと主導権を争っています。
どのような「認証」や「技術規格」を作るのか
マイクロソフトやエリクソンが中心となって発足した「トラステッド・テック・アライアンス(TTA)」が目指すのは、特定の製品の認証というよりも、「信頼できるITインフラの共通仕様」を世界標準として確立することです。
具体的には、以下の3つのレイヤーで「検証可能(Verifiable)」な仕組みを作ろうとしています。
1. 5つの基本原則に基づく「行動規範」
参加企業が守るべき「憲法」のようなものです。これにより、企業のガバナンス(運営体制)自体を認証の対象とします。
- 独立した第三者評価: 自社で「安全です」と言うだけでなく、外部専門家による監査を受け入れる体制。
- 法的コンプライアンス: 各国のデータ保護法(GDPR等)を技術的にどう遵守するかという運用の明文化。
2. 「トラステッド・テクノロジー・スタック」の策定
ハードからソフトまで、一気通貫で信頼を証明する技術規格です。
- 半導体(チップ)レベルの信頼: ラピダスなどが関わる部分で、チップ製造工程からの改ざん防止(ハードウェア・ルート・オブ・トラスト)。
- サプライチェーンの可視化: 部品やコードがどこで誰に作られたかを追跡可能にする規格(SBOM:ソフトウェア部品表の活用など)。
3. 透明性を担保する「検証プロセス」
技術的に「何をもって信頼とするか」の具体的な指標を作ります。
- 運用の透明性: クラウドやAIのアルゴリズムがどのように動いているか、外部から検証できるインターフェースの共通化。
- セキュリティの相互認証: 異なるメーカーの機器(例:エリクソンの基地局とNTTのネットワーク)を繋いでも、端から端まで安全性が保証される相互接続の規格。
現在は「原則(Principles)」の合意段階ですが、今後はこれらを数値化・自動検証できる「トラスト・スコア」や「認定ラベル」のような形に落とし込み、政府調達や企業の選定基準に採用されることを目指すと見られています。

ソフトウェア開発プロセスの可視化やセキュリティ対策の標準化を求める「運用の透明性」と、外部専門家が客観的に安全性をチェックする「独立した第三者評価」の枠組みを定めています。

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