3分要約
STEAMとは何か
科学,技術,工学,数学をの頭文字を表すSTEMにアートのAを加えたもの。時代の変化に伴いアートやデザイン思考の必要性が増し,今後の育成や教育に欠かせないコンセプトとして注目を浴びている。
なぜアートが重要なのか
STEMが生み出すテクノロジーにA(アート)が組み合わせることで,人間のためになるものを生み出そうという気持ちを形にすることができる。
多くの企業が製品やサービスの品質や機能性に頼った製品開発に限界を感じ,デザインやアートを重視し始めている。
STEMはどうやってやるのかを考える助けになるが,Aが加わることで何をやるか,なぜやるのかを考えるために大きな力になる。
デザインやアート思考を身に付けるにはどうすればよいか
自ら問題を発見,設定し試行錯誤しながら解決していくことで身につけることができる。
教師からの指導ではなく,クラスメートと協同しプロジェクトを設定すると良い。
知識や手法を学ぶのではなく,人間を知ることを最大の目的とすることで徐々にSTEAMを持つ人材として成長することができる。
STEAMは今後の教育に必要なコンセプト
STEAMという言葉はシリコンバレーを中心に、優れた人材が持ち、これから育成される世代のカギを握るといわれ注目されてる新しいコンセプト。
・科学(Science)
・技術(Technology)
・工学(Engineering)
・アート(Arts)
・数学(Mathematics)
の頭文字をとったもの造語。もともとはSTEMという概念が教育界で提唱され、そこにアートが加わってできた概念である。
近年、アートやデザインが多くの企業や教育機関で重視されており、論理的思考、批判的思考に次いでデザイン思考の能力が注目されている。
アートやデザインが加わることでSTEMがより人間を重視する概念となったことが重要なポイント。シリコンバレーを中心にSTEAMを体現する人々や日本が目指すべき人材育成について考えていく。
特にA(アート)の思考の重要性が増している
Iot技術によってあらゆるものがつながり、新しい価値が生み出されている。この変化は情報社会に続く社会発展の第5フェーズとして「超スマート社会」が提唱されるほど大きな変化をもたらしている。
社会が発展することで求められる能力にも変化が見られる。新しい社会に必要とされるのはデザイン思考やアート思考といわれるが、その意味は漠然としている。
先端企業がそろって、先端技術の実験場となっているシリコンバレーで活躍している人たちを見ることで、芸術の知識や素養を持つことだけでないアート思考について知ることができる。
シリコンバレーで活躍する人たちは、STEMが生み出すテクノロジーにアートやデザインを盛り込むことで、人間の生活は豊かになるため、今後のビジネスではアートやデザインが欠かせないと考えている。
STEAM人材は人類の役に経ちたいという思いを持っている
STEAMを持つ人材は3つの側面を持っている。
1.人間を大事にするという思想を核に探求を続ける
2.イノベーターのマインドセットを持っている
3.デザイン思考=デザイナーの方法論を取り入れ発想、活動をしている
STEAM人材に共通することは人類のために役に立ちたいという想いをもっていること。最先端のテクノロジー(STEM)を利用して芸術的な感性、画期的なデザイン(Art)を取り入れ人間のために何かを生み出そうとすることがSTEAM人材の目指す先にある。
内在する潜在力を引き出すためにアートが必要
STEM教育は以前から注目されており、科学技術のリテラシーを高めて実社会に応用できる知識や技能の取得を促そうとしてきた。
STEMにアートを取り入れた概念がSTEAMとなる。従来直感的なアートと客観的な科学は対極にあると考えられがちだが、科学とアートのつながりが注目を集めている。
アートの思考を取り入れることで、以下のような効果が期待されている。
・STEM領域の学びを促進する
・コミュニケーションなど社会的能力を向上させる
・これまでと異なる視点から物事を考え、本質を見極める助けとなる
・何を作るか、どう作るかだけでなく、なぜ作るかに取り組むことができる
教育の最大の目標は技術や知識の習得ではなく、内在する潜在力を引き出すこと。そのためにもアートを加えたSTEAMの概念が必要になってくる。
全ての人にイノベーター視点が求められるためSTEAMが教育に必要
イノベーションというと一部の天才が起こすものと考えがちだが、現代では全ての人材にイノベーターとしての視点が求められており、そのためにSTEAMによる教育が必要になっている。
イノベーションは突飛な発想とそれを実現する技術によって、異なる専門を融合させることで起こる、従来のものとは本質的に異なる非連続的なもの。
イノベーターには3つの共通するマインドセットがある。
1.型にはまらない
2.ひとまずやってみる
3.失敗して、前進する
STEAM教育によってこれらの行動姿勢を身につけ、周囲の人から頑張っていると認めてもらうことで、イノベーターのマインドを身に着けることができるようになる。
全ての人が複数の領域で専門性を持つスーパー人材になる必要はなく、異なる領域のエキスパートたちが人間を大事にするヒューマニズムに基づいてコラボレーションすることでイノベーションを起こすことは十分に可能。
大企業がデザインの重要性に気づきデザイン企業を買収している
産業界では大企業はデザイン企業の買収が続いている。製品の品質や機能性などエンジニアリングに頼った従来の製品開発に限界を感じていることが大きな理由。
ユーザーである人間を大切にする発想は人が使用する現場に身を置き、共感することで可能になる。視覚や聴覚の情報だけでなく五感をフルに使いユーザーの心情に訴えることが必要。
このような試みは従来デザイナーが行ってきたため、デビジネスや製品の開発にもデザイナーの在り方=デザイン思考が必要になっている。
デザイン思考には思考を拡散させ,試行錯誤することで身につけられる
デザイン思考には決まった公式や,やり方はないが、思考の型を身に着けることは下記のような手順を繰り返すことでできる。
1.リサーチ 必要なものを調査する なぜ作るのかを考える
2.分析 調査結果かを解析し、なぜ必要ななのかをさらに細かく考える
3.シンセサイズ 分析した結果を統合し、本当に必要なものを改めて定義する
4.ビルド 手を動かしながらアイディアを練りプロトタイプを作る
5.テスト プロトタイプがユーザーのニーズを引き出すか確認する
思考をなるべく、広く拡散させ、失敗を繰り返していくことで徐々に新しい気づきやひらめきを得ることができる。理論的に考えるのではなく直感的な思考で思考錯誤することで新しいひらめきを得ていくことがデザイン思考のコツになる。
時代の変化で求められる人材が変化している
これまで日本では工業立国を目指し、学習者が基礎知識をきっちり習得していく系統型学習と呼ばれる教育システムが採用されてきた。
現代は知識集約型社会に変化し、前例のない問題に創意工夫で解を求める能力が求められるように変化しているため教育内容にも変化が求められている。
その変化に対応できるのがSTEMやSTEAMの概念とその根底にある新しいヒューマニズム。21世紀に求められている能力は4Cと呼ばれる以下の4つからなり、これらの能力を高め、STEAMを体現する人材を育成することが重要。
・批判的思考
・コミュニケーション
・コラボレーション
・クリエイティビティ
知識や手法ではなくヒュマーニズムを身につけることが重要
自ら問題を発見、設定し、試行錯誤しながら解決していく能動的な学びが4Cの能力を高め、STEAMの概念を身に着けることが必要。
従来の教育のような教師から指導を受けるのではなく、クラスメートとの協働し課題を見つけるたり、プロジェクトを設定しそれがうまくいくように思考錯誤することが重要。
知識をつけたり、その手法を学ぶことを目的とせず、プロジェクトや問題の解決を通じて人間を知り、ヒューマニズムを身に着けることが最大の目的になる。
STEMが生み出すテクノロジーをAで感性に訴えかけることができる
STEMが生み出すテクノロジーに魂を吹き込むためには人間の感性に訴える必要があり、それがアートやデザイン。
スティーブジョブズはそのようなSTEAMの本質を早くから深く理解しており、その成功と影響はシリコンバレーのアイコンになっている。シリコンバレーが企業化し精神に富み、イノベーションの苗床となっているのは以下のような理由がある。
・伝統にとらわれない開放的な風土や外国人の多さ
・自由な移動による知識、情報、技術の拡散
・企業、組織間の協働を可能にするオープンな関係性
シリコンバレーにも問題点が多いが、STEAM人材を育成し、多様化する人々の価値観やニーズを取り入れより良い社会を実現することが日本と世界が目指すべき方向。
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