本の概要
日本はこれから移民を増やすべきかという議論も目にしますが、すでに日本には数多くの移民が存在し、日本で暮らしています。
しかし、移民、労働者の受け入れに際し、多くの問題を抱えており、今後、生産年齢の減少に伴い、さらなる移民受け入れを行うのであれば、現状の問題を解決する必要があります。
これまでも在日朝鮮人の受け入れで多くの問題を起こしてきましたが、その総括はなされてきませんでした。今後の移民受け入れのためにもきちんとした総括をし、問題の解決に努める必要があります。
日本の移民の歴史、問題点、諸外国の解決法などを通じて、どのような移民政策をとっていくべきかを知ることができる本になっています。
この本や記事でわかること
・日本の移民受け入れの歴史や問題点、
・日本の移民受け入れの向かうべき方向性
・技能実習生という制度の問題点
本の要約
過去5年間の日本への新規入国外国人の数は平均で43万人を超えています。
在留外国人の人数も293万人と、1990年の比べると3倍にも増えており、今や移民国家といえるべき状態になってします。
少子高齢化による生産年齢の減少を補うためにも、移民は欠かすことができませんが、移民、労働者の受け入れに際し、多くの問題を抱えています。
これまでも、在日朝鮮人をめぐる問題があり、徐々に改善してきましたが、朝鮮出身の人々の自助努力による面が強く、きちんとした反省や総括がなされてきませんでした。
今後も増え続ける移民、外国人労働者が社会になじむためにも、移民の歴史と現状、課題、諸外国での解決法を知ることが重要です。
1989年の改正入管法成立によって、入国、滞在、就労できる人数を増やしてきましたが、単純労働者の受け入れは行わないというスタンスでした。
しかし、単純労働者の受け入れはしないとしながら、外国人技能実習制度がスタートすると、日本の技術や知識を途上国へ移転するための研修という名目で外国人の受け入れが可能となりました。
外国人技能実習で来日した外国人労働者は研修であることを理由に、過酷な労働や低賃金を強いられることも少なくありません。
欧米などでは立場の弱い外国人労働者の保護や中間業者の排除を目的に移民を受け入れる際に受け入れる先と送り出す先で二国間協定を結ぶケースが多く見られます。
日本も二国間協定や教育支援などを充実させ、外国人労働者を人手不足を一時的に凌ぐための調整弁としてではなく、継続的に雇用し、教育していくことで、労働者や人間として生活に満足を見出せるようにしていくことが重要です。
日本の移民政策のもう一つの問題が難民の受け入れの極端な少なさです。
1980年代にインドシナ難民を受け入れた際に体制が不十分であったこともあり、日本の生活になじむことができない人が多くみられたこともあり、難民の受け入れが非常に少なくなっています。
難民かどうかの判断に証明書を求める、相手国に過剰に配慮し難民認定しないなどのケースも多く見られます。
アジア諸国で発生している難民の多くが、欧米やオセアニア諸国に向かっている状態は人道的、人権保障的な義務を果たしているとは言えない状況であり、改善することが求められます。
また、難民受け入れと外国人労働者受け入れ拡大は別のものとして扱われていますが、難民が日本を定住の地とする可能性も十分にあります。
少子高齢化の進行の進む中で、日本の出生数に改善は見られておらず、生産年齢の増加には外国人労働者を受け入れるしかありません。
日本の移民受け入れの問題を改善するためにも、正透明なルールを作り、これまでのようにサードドアから日本に来てもらうのではなく、フロントドアから来てもらえるような仕組みを作ることが求められています。
また、これまで日本が外国人をどのように扱ってきたのか、ヨーロッパ諸國がどのように移民を受け入れ、平等な市民として社会や政治を動かしているのかなどを教育現場で教えることも重要なことになってきます。
日本の移民がどのような状況なのか
過去5年間の日本への新規入国外国人の数は平均で43万人を超えています。在留外国人の人数も293万人と、1990年の比べると3倍にも増えています。
労働力不足や国際的な経済環境の変化などから多くの外国人労働者の受け入れも進んできました。
しかし、労働者の受け入れに際し、様々な問題があり、今も解決していない問題も多くあります。また、出稼ぎ的な短期の労働ではなく、永住を志向する労働者も増えており、今後も増加する傾向にあります。
現在の移民政策は高齢化と生産年齢の人口減少などもあり、外国人労働者をどう受け入れるかは重要な問題になっています。
新規入国者が増え、在留外国人も1990年に比べ、3倍に増えています。労働力不足や国際的な経済環境の変化などから多くの外国人労働者の受け入れも進んできましたが、様々な問題が解決できていません。
移民の受け入れ問題は改善しているのか
多くの先進国では少子化が進行しており、生産年齢人口の減少を食い止めるために移民の受け入れを行っています。
以前は日本に在留した朝鮮出身の人々くらいしか移民として存在していませんでしたが、徐々に日本も同じように移民を受け入れるようになってきました。
朝鮮出身に人々の受け入れや扱いには問題がみられましたが、徐々に改善してきています。
しかし、日本側の対応というよりは朝鮮出身の人々の自助努力による面が強く、きちんとした総括や反省はなされませんでした。
朝鮮出身の残留者たちを受け入れた際には様々な問題がありましたが、徐々に改善してきています。
しかし、改善は朝鮮出身の人々の自助努力による面が強く、きちんとした総括や反省はなされませんでした。
日本の難民受け入れはなぜ、少ないのか
1980年代になるとインドシナ難民を受け入れるなど、国際的な人権への義務を負う国になっていきます。
しかし、インドシナ難民は朝鮮出身の人々と違い、日本語が話せないことなどから悩みを抱えることも少なくありませんでした。
また、母国での過酷な体験がトラウマとなり、日本での生活になじめない人も多くいました。
難民受け入れには日本語教育、生活適応指導、就職斡旋等が必要とされましたが、カウンセリングなどの心のケアが必要でした。
しかしそうした十分な体制は取られなかったため、日本の生活になじむことができませんでした。
その後の日本の難民認定は驚くほど少なく、今日までつながる課題になっています。
80年代にインドシナ難民を受け入れた際に、日本にうまくなじむことができなかったこともあり、その後の難民の数は驚くほど少なくなっています。
日本は移民の受け入れの問題点は何か
1989年の改正入管法成立前の日本では、入国の資格を厳しく定め管理してきましたが、改正によって入国、滞在、就労できる人数を増やしてきました。
改正後も専門能力や技術をもつ外国人は積極的に受け入れるが、単純労働者は受け入れないというスタンスでした。
しかし、同時期に外国人技能実習制度がスタートすると、日本の技術や知識を途上国へ移転するための研修という名目で外国人の受け入れが可能となりました。
しかし、賃金ではないという理由で最低賃金を下回るなど待遇に問題がある場合も多く見られました。
単純労働者は受け入れないというスタンスでしたが、外国人技能実習制度がスタートすると、日本の技術や知識を途上国へ移転するための研修という名目で外国人の受け入れが可能となりました。
しかし、外国人技能実習制度は賃金が著しく低いなど待遇に問題がある場合も多く見られています。
移民をどのように受け入れるべきなのか
欧米諸国では、移民を受け入れる際に受け入れる先と送り出す先で二国間協定を結ぶケースが多く見られます。
二国間協定は立場の弱い外国人の労働者の保護や営利目的の斡旋、派遣業者の存在を排するために必要なものでした。
しかし、日本は相手国との二国間協定などを結ばずに、外国人の受け入れを行ってきました。その結果、派遣業者へ借金した状態で来日し、過酷な労働環境を強いられたり、すぐに解雇されるようなケースが技能実習生で多くみられてしまいました。
また、日本語教育の支援のなさや、女性労働者差別なども大きな問題でした。
持続可能な移民政策には、人手不足を一時的に凌ぐための調整弁としてではなく、継続的に雇用し、教育していくことで、労働者や人間として生活に満足を見出せるようにしていくことが重要です。
持続可能な移民政策には、人手不足を一時的に凌ぐための調整弁としてではなく、継続的に雇用し、教育していくことで、労働者や人間として生活に満足を見出せるようにしていくことが重要です。
欧米諸国のように移民の受け入れ先と二国間協定を結び、立場の弱い外国人の労働者の保護や営利目的の斡旋、派遣業者の存在を排することも重要です。
出稼ぎにきた人はすぐに母国に帰っているのか
出稼ぎのために日本に来た人たちが、当初よりも滞在期間をのばすこともよく見られます。
生活費が高く、お金を貯めることができない、母国の経済状況が悪く帰国をあきらめるなどの理由もありますが日本の生活になじみ帰国を先延ばしにするケースもあります。
特に日本の医療水準の高さと医療保険の仕組みが定住のきっかけとなることも多く見られます。
一方で、家族の呼び寄せを許さない、超過滞在した家族を引き離すなどの労働者の保護が十分でない部分もあります。
無条件での家族の呼び寄せは現実的ではありませんが、家族とともに過ごすことが基本的人権の尊重であるという意識は持っておくべきです。
移民の人たちが移民先の社会に定着し、成員になって活動する以上、差別され、排除されることなく共栄すべき存在として扱われなくてはなりません。
ヨーロッパでは、移民の統合という課題のために、言語教育、所得再分配の強化、職業再研修、子世代への教育などを行っており、参考になる部分が多くあります。
出稼ぎのために日本に来た人たちが、当初よりも滞在期間をのばすこともよく見られます。
しかし、日本側の対応は充分とは言えない状況であり、共栄するためにヨーロッパの言語教育、所得再分配の強化、職業再研修、子世代への教育を参考にすべきです。
難民の受け入れをどう考えるべきなのか
日本の難民の受け入れ制度は非常に選別的で厳しいため、難民の受け入れはとても少ない数になっています。
アジア諸国では難民が発生しているところも多いにも関わらず、多くの難民は欧米やオセアニア諸国に向かっています。
日本は難民かどうかの判断に証明書を求めるなどしていますが、自国で迫害を受けている人などが証明書を用意できるケースは少ないため難民と判断される人は少なくなっています。
また、相手国に過剰な配慮をし、難民と認定しないようなケースも多く見られます。
難民を受け入れ、保護することは人道的、人権保障的な義務であり国際貢献です。また難民受け入れと外国人労働者受け入れ拡大は別のものとして扱われていますが、難民が日本を定住の地とする可能性も十分にあります。
実際にヨーロッパでは難民が定着し、貴重な人材、労働力となっているケースが多く見られます。
日本は迫害の証明を求めたり、相手国への配慮から難民認定しないなどの理由から難民の受け入れが極端に少なくなっていますが、難民を受け入れ、保護することは人道的、人権保障的な義務であり国際貢献です。
また難民受け入れと外国人労働者受け入れ拡大は別のものとして扱われていますが、難民が日本を定住の地とする可能性も十分にあります。
今後の移民政策はどうあるべきなのか
少子高齢化の進行の進む中で、日本の出生数に改善は見られていません。
人口減少へ対応するために、経済成長を絶対の目標としない定常化社会へ転換することも必要ですが、その過程で生産年齢人口の増加は欠かすことができません。
生産年齢人口の増加には現状、外国人労働者を受け入れるしか選択肢がありません。
日本の移民受け入れには現状以下のような問題があります。
・研修や留学の名目で受け入れ、労働させている
・移民が増えているにもかかわらず、その事実と向き合わず、移民の統合政策も進めていない
・女性の受け入れがエンターテイナーに限定されるなどのジェンダー差別
・難民受け入れの極端な少なさ
公正透明なルールを作り、これまでのようにサードドアから日本に来てもらうのではなく、フロントドアから来てもらえるような仕組みを作ることが求められています。
また、多様な出自や属性を持つ人々が平等市民として受け入れるには、これまで日本が外国人をどのように扱ってきたのか、ヨーロッパ諸國がどのように移民を受け入れ、平等な市民として社会や政治を動かしているのかなどを教育現場で教える必要もあります。
少子高齢化で減少する生産年齢増加のためには、外国人労働者を受け入れるしかありません。
技能実習生のような不透明なルールではなく、公正透明に基づいて移民政策を行うことや積極的な難民の受け入れを考えることが重要です。
コメント