概要
経済学はあらゆる局面に関わり、社会の基本的な疑問に答える学問
経済学の基本概念を一通り身につけられるように書かれた本。本書ではミクロ経済学の基本概念が書かれている。
経済は人生のあらゆる局面に大きくかかわっていて、経済学は社会の基本的な疑問に答える学問。誤解されることもあるが、経済学は未来を予測し、景気動向や株価の上昇、下落を予言するものではない。
また経済を語ることと政治的な立場をとることは別のことで、経済学は特定の政党を後押しするものではない。
本書で書かれているミクロ経済学は個人のプレイヤー(経済活動をする個人や会社、政府)に注目したもの。
経済学の基本を学ぶことで、自分がどのようにお金と関わるべきかや政府の政策がなぜうまくいかないのかなども理解することができる。
経済学の力 社会の疑問に答えを出す
・社会は何を生み出すべきか?
・どうやってそれを生み出すのか?
・生み出されたものを誰が消費するのか?
経済学はこのような社会の疑問の答えを出す力となる。
基本的な考え方
1.ものごとにはトレードオフがある。
何かを改善しようとすれば別の何かに影響がでるかもしれない。
誰かを助ければ別の誰かを傷つけるかもしれない。
個人のストーリーで助ける人を決めるのではなく、全体を見ることが必要。
2.利己的な行動が社会の秩序を作る。
自分の利益を追求することが知らない人たちへの利益につながる。
うまくいかないこともあるが、方向付けが上手くできれば利己的な行動は社会に大きな利益を生む。
3.あらゆる機会は機会費用である。
機会費用=選ばれなかった行動がもたらしたであろう利益のこと。
本当のコストはいくらかかったかではなく、そのために何をあきらめたかになる。
4.価格を決めるのは市場である。
生産者の意見ではなく、市場の需要と供給で価格は決まる。
分業 企業の生産性をたかめ、経済を発展させる
現代社会は複数の人が役割分担して何かを作り上げる分業でなりたっている。分業は得意な仕事に集中するため、習熟しやすく、同じものを大量生産することでコストが下がる(=規模の経済を活用可能)。
そのため、分経済的な利益が多く、分業は企業の生産性を高め、国を豊かにし、経済を発展させる。
需要と供給のバランスは市場が自動的に調整する
分業によって商品やサービスの交換が生まれ、生産と消費のバランスを調整する必要がでてきた。バランスの調整は市場が行っている。
市場は企業と受給者である家計との間で作られ、財市場、労働市場、資本市場の3つからなっている。
価格は世の中の需要と供給で決まる。価格が上がると需要量が減り、価格が下がると需要量が増える。
市場経済では、需要量と供給量が一致する均衡点に向かって調整される。人々が利己的に行動する(=少しでも安く買いたい、高い場合は買わなくなる)ことで均衡点に向かっていく。
価格統制
需要と供給は絶対ではなく、政府の介入の余地はある
しかし介入がうまくいくとは限らない
需要と供給によって市場価格は変化するが、結果が常に望ましい者とは限らない。どんな自由市場論者も需要と供給で決まった価格が絶対とは考えておらず、政府の介入の余地があるが、介入がうまくいくとは限らない。
住宅は必要不可欠なため、価格の上限規制が行われることがあるが、
供給量が減ったり、質が低下してしまう。農作物は価格の下限規制が行われることがあるが、消費者が価格を高いと思い需要が減り、作物が余ってしまうこともある。
旧ソ連では政府が全ての生産者のため下限価格を設定し、すべての消費者のために上限価格を設定したが、品不足、生産コストの増加、闇仕様の問題などに悩まされた。
政府の介入が不要なのではなく、貧しい人に家賃を補助する、低価格住宅の建築に補助金を出すなどのほうが効果が高い。
ただし、現実にはこれらの政策はコストがかかり、価格の上下限の設定にはコストがかかっていないように見えるので、価格統制が実施されることが多くある。
価格弾力性 高いほど値上がりすると売れなくなる
需要量や供給量の変化率を価格の変化率で割ったものを価格の弾力性という。値段が10%あがり需要が2%減少すれば弾力性は2/10で0.2となる。
弾力性が大きいほど変化が大きく、小さいほど変化が小さい。
需要が非弾力的であれば値上げしても需要量が下がりにくいため
値上げが売り上げUPになる。
多くのモノは、短期的には非弾力的だが、長期的には弾力的になる。最初は代替もなく、値上がりしても消費を続けるが、長期的に価格が上がれば代替を探すなどで需要量が減少する。
何かの価格を変えることで、需要量、供給量を変えようとするということは、その何かの価格の弾力性が高いと主張している。
タバコの税率引き上げ、利子と貯蓄の関係、年金の減額と労働時間などはそれぞれの価格の弾力性の議論をしている。
労働市場 短期的には弾力性は低い
労働の需要も短期的には非弾力的で長期的には弾力的。賃金が上がっても、すぐには労働者を減らすことは難しいが、長期的には機械の導入などで労働者の需要が減る傾向にある。
最低賃金 弾力性が低く、経済学的にはあまり好まれない
最低賃金の引き上げの是非は絶え間なく続いている。最低賃金は一種の下限価格規制。弾力性が低い場合は多い(10%賃金をあげても、失業率は1~2%の減少)ため、職を失うわずかな人のダメージが大きい反面、賃金の上昇はそこまで大きくない。
そのため、多くの経済学者は非熟練労働者への訓練や税制での優遇を好む。
資本市場でも需要と供給は成り立つ 利率で需給がきまる
資本市場も需要と供給の枠組みで理解することが可能。利率が低ければ、金融資本に対する需要量は増える。
買い物や労働はその時点で行われるが、金融資本を受け取る=お金を借りるときに後で払うはずのお金をその時点で受け取ることになる。
今の借りたお金が返すときにどれくらい価値があるかを経済学では割引現在価格という考えで比較する。
1年後に受け取れる100ドルは利率が10%であれば、現在の価格は90.91ドルになる。企業の設備投資やローンを組む際には割引現在価格の考え方が欠かせない。
個人投資 利率が低くても複利の力は大きい
長期的に財産を築くことを考えるときに重要となるのは複利の力。一定の利子でも利子の額は年々大きくなっていく。大きな利率でなくても、長期間では大きな利益を得ることが可能になる。
投資対象は、収益率、リスク、流動性、税金などが異なるため、自分に合うものにすることが重要。
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