本の要点
生成AIは社会に大きな衝撃をもたらしていますが、まだ正確性などの面で問題があることもあり、人間を助けることはあっても、代替することはできていません。
しかし、テクノロジーがどのように使われるかは社会や経営者が決めることで、最近の歴史から労働者に良い方向に進むとは思えません。
テクノロジーを利用できる技術レベルの高い人と低い人の二極化は進む可能性は充分にあります。また、データの集中など大手IT企業の寡占状態であることもテクノロジー業界の問題です。
これまでは政府が支配的な企業へ競争を促す動きはうまくいっていませんでしたが、グーグルに対する独占禁止法で訴訟が起きるなど流れが変わり始めています。
新しいテクノロジーは悪い部分もあるため、規制が必要なことはありますが、むやみに怖がるのではなく、慎重に向き合うことが重要です。
AIの持つ大きな問題はAI技術そのものではなく、その利用方法です。特に、大規模なシステムを構築することができるのは米中の一部の巨大テック企業のみがデータを独占している状況は健全ではなく、事業の分割や規制による競争が重要です。
AIの能力も誤解されている部分が多く、知性を発揮し新しいものを生み出しているわけではなく、統計的な予測をもとに人間の知性を再構築しているだけに過ぎません。
また、今後技術が発展しても、AIが知性を持てる可能性は高くありません。知性を外からのインプットを処理し、何らかのアウトプットすることと考えると人間の持つ感覚や知覚、意思や時間の感覚を持たない機械が人間と同じような知性を持つことはできません。
パンデミックによる混乱は国家の権力を高め、民主主義を権威主義へと変貌させるという予測もありましたが、民主主義そのものが崩壊することはありませんでした。しかし権威主義国家もその権威主義性を強めており、民主主義と権威主義の対立は問題として残りつづけます。
民主主義そのものは崩壊しませんでしたが、リベラルな民主主義は世界的にその力を失っています。特に現在の資本主義経済が権威主義的要素を持っているため、リベラルな民主主義と大きな矛盾を生じています。
権威主義との戦いにリベラルな民主主義が勝つためには、本当のリベラルを達成する必要あります。一部の企業や個人に富が集中し、大きな権力をもっている状態は本来の資本主義の形ではありません。
つまり、現在の問題は資本主義そのものではなく、資本主義がたりておらず、うまく機能していないことにあります。
また、巨大IT企業は独占性だけでなく、表面的なアイデンティティで人間を区別し、多様性を侵害しているという問題も抱えています。
競争や規制で問題を解決することが求められています。
この本や記事で分かること
・テクノロジーとどのように向き合うべきか
・現状のAIに何ができるのか、どんな問題があるのか
感想
本書はテクノロジー特にAIがもたらした世界の変化やこの変化とどう向き合っていくべきかについて、著名な人物へのインタビューという形の本になっています。
後半は主にテクノロジー特にAIの現状と問題点について多くが語られています。AIが人間を代替できるのかという視点では、知性を発揮することができる可能性が低い、仕事では複数の技能を組み合わせることの重要性が高く、AIにはまだ困難などの理由で人間の代替は不可能する点は共通する議論でした。
またAI開発などテクノロジーの問題点については、巨大IT企業への寡占が語られています。そしてその要因は行き過ぎた資本主義ではなく、資本主義が足りていないという部分が勉強になりました。
規制や独占禁止法で競争を促すことは、行き過ぎた資本主義にブレーキをかける役割と考えていました。しかし、ごく少数による独占が資本主義に適していないため、より資本主義を導入していくことが必要という視点が参考になりました。
GAFAMなどの巨大IT企業の寡占に対する国による監視、介入はこれまであまり機能してきませんでした、しかしGoogleに対する訴訟が起きるなど流れが変わる部分もあり、今後のテクノロジー業界にも変化が訪れるかもしれないと感じる本でした。
AIは仕事を奪うのか?


特定の技能でAIが人間を上回っている例はありますが、多くの仕事は複数の技能を掛け合わせる必要がありることが過小評価されており、現状のAIでは人間の代替は不可能です。
今後もAIが労働者を脅かすことはないのか?


AI人間の代替は不可能ですが、技術をどう利用するかは経営者や社会が決めることです。そのため、技術レベルの高い人と低い人の間で二極化が進む可能性はあります。
インターネットの普及は良いことも悪いことも起こしたようにAIでも何らかの規制が必要な可能性はあります。
AI活用の問題点は何か


データと資源の集中でAI開発が大手IT企業の寡占状態であることは企業間の競争を阻害し、AIの民主的使用を拒んでいます。
AIは知性を発揮できるのか


AIのよって新しい物語を作る試みもされていますが、あくまでも統計的な様相をもとに人間の知性を再構築しているに過ぎません。
知性を外からのインプットを処理し、アウトプットすることとすると、感覚や知覚、意思をもたないAIが人間と同じ知性を発揮することはありません。
民主主義と権威主義の対立は今後どうなっていくのか


パンデミックで民主主義の破壊がみられるとの予測もありましたが、実際には民主主義の破壊はみられませんでした。
ただし、権威主義体制はその権威主義を強めているため、民主主義と権威主義の対立は今後も問題にると思われます。
リベラルが力を失っているのはなぜか


リベラルは現在の資本主義の持つ権威主義性や格差拡大と矛盾してしまいます。リベラルが権威主義に勝利するには、真のリベラルを達成する必要があります。
現在の問題は権力や富の集中にあり、資本主義そのものではなく、資本主義が足りないことにあります。集中を緩和させ競争を促すことで資本主義を高めることでリベラルを達成することが可能です。
現在のテクノロジーの問題はなにか


SNSなどにおいて、IT企業は表面なアイデンティティで区別し、情報提供を行っており、そのせいで多様性が侵害されています。
普遍性は自らの価値観を押し付けるのではなく、その土地固有の物から生まれるため、ローカルに着目することで未来を形作るものへと変化させることができます。
本の要約
生成AIは社会に大きくな衝撃を与えていますが、まだ正確性には問題があります。
また、人間の仕事を奪うのかという議論もある種の技能だけを代替できるかという視点でなされがちですが、多くの仕事で、様々な技能を組み合わせる必要があり、技能を組み合わせることが過小評価されがちです。
現状では、多くの場面で、AIが人を助けることはあっても完全に人の代わりをすることはできていません。
AIツールは見た目ほど優れても、賢くもないため、重要なことは「導かれても、支配されるな」という視点が大事です。
ただし、テクノジーがどのように使われるかは経営者や社会が決めることです。
このことは最近の歴史を見ると、労働者にとって良いのものではなく、技術レベルの高い人と低い人の二極化が進み、中間層が空洞化する可能性を秘めています。
インターネットが普及した時と同じようにAIでも良いことも悪いことも起こると予想されるため、何らかの規制が必要かもしれません。
データの集中などの面で、大手IT企業が寡占状態であることは大きな問題ですが、支配的な企業へ意義を申し立てるという政府の仕事はあまりうまくいっていませんでした。
しかし、近年ではグーグルに対する独占禁止法で訴訟が起きるなど流れが変わり始めています。
むやみに怖がるのではなく慎重であることが重要。AIと共存する道を見つけられるはずです。
AIの持つ大きな問題はAI技術そのものではなく、使う側が民主的に使われていない点です。大規模なシステムを構築することができるのは米中の一部の巨大テック企業のみであり、それらのデータをテック企業が独占しています。
現状の問題は、AI開発のために必要なコンピュータ資源やデータが一握りの企業に集中していることです。通信システムが認可制で運用されてきたことと同じように、事業の分割や規制が必要、競争を促すことが必要です。
手塚治虫の作品を読み込み、新しい作品を作る試みも行われています。AIの発展で整合性が取れたストーリーが生み出されるようにはなっていますが、知性を発揮しているのでも、新たな創造でもなく、統計的な予測をもとに知性を再構成しているだけにすぎません。
知性は外からのインプットを処理し、何らかのアウトプットすることですが、人間の持つ感覚や知覚、意思や時間の感覚を機械は持つことができません。機械なりの知性を持つ可能性はありますが、深い考えや哲学のような人間と同じ知性を発揮するわけではありません。
パンデミックは国の権力を高め、民主主義国家を権威主義国家へと変貌させるとの予想もありましたが、実際には憲法を変容させたり、民主主義が破壊される例はみられませんでした。
民主主義はパンデミックによってもたらされた反民主主義的要素の脅威で、逆説的に民主主義を強めることとなりました。
しかし、権威主義体制もまた、権威主義を強めています。この二元論が今後の問題となることは変わりありません。
また、リベラルな民主主義はその思想の持つ矛盾によって世界的に力を失っています。特に資本主義経済がヒエラルキーなど権威主義的な要素を多く持ち、大きな格差を生んでしまっています。
権威主義との戦いにリベラルな民主主義が勝つためには、真のリベラルを達成する必要があります。現在の問題は資本主義が足りていないことです。一部の企業や個人に富が集中し、大きな権力をもっている状態は本来の資本主義の形ではありません。
また、現在の巨大IT企業のテクノロジーは表面的なアイデンティティ(人種、政治的見解、ジェンダーなど)で人間を区別し、そのアイデンティティをもとに情報を提供しています。
このことが自分と共通点のない人々への無関心や攻撃をもたらし、多様性を侵害してしまっています。ひとりひとりの人間の持つ多面性を見失わないように気を付けることや多様性を侵害するようなツールは規制されるべきです。
普遍性は他者に対する自らの価値観の押し付けではなく、その土地特有の物から生まれるものです。その場所特有の価値観に立ち返ることで得られる個別性やローカルが未来を形どるものに変化していきます。
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