この本や記事で分かること
・神経系の役割
・神経細胞が情報を伝達する仕組み
・神経伝達物質の種類と役割
神経系とは何か
外部からの情報の伝達と処理を神経細胞(ニューロン)のつながりを介して行う器官は神経系と呼ばれます。
脳やせき髄のように神経細胞が集まった部分は中枢神経と呼ばれ、中枢神経から各部分につながる神経は末梢神経と呼ばれます。
末梢神経には以下のような種類があります。
・刺激を受容した部位からの電気信号を中枢神経に伝える感覚神経
・中枢神経からの興奮を受け取って能動的に反応する運動神経
・交感神経と副交感神経からなる自律神経
中枢神経は感覚神経からきた情報を統合、処理して指令を出す機能を持つため、中枢神経へのダメージは生物の機能を大きく損なってしまいます。

ニューロンとは何か
神経細胞(ニューロン)は核のある細胞体、長く伸びた突起である軸索、枝分かれした短い樹状突起から成り立っています。
ニューロンは膜電位による電気信号のやり取りで情報を伝えています。
膜電位とは細胞の内側と外側で生じるイオンの分布の差によって発生する電位差のことです。細胞膜にはイオンポンプがあり正の電荷をもつカリウムイオンを細胞内に取り込み、同じく正の電荷をもつナトリウムイオンを細胞外に排出しています。
しかし、細胞膜にはカリウムを漏洩させるタンパク質があるため、カリウムイオンは細胞外に出やすくなるため、細胞外が正のイオンが多く正に帯電し、細胞外は負に帯電しています。

ニューロンではどのように電気信号を伝わっているのか
細胞の膜電位は通常あまり変化しませんが、ニューロンは膜電位を変化させる仕組みを持っています。
ニューロンの細胞膜には膜電位の変化に反応しして、一瞬開閉するナトリウムチャネルとカリウムチャネルが存在しています。
・刺激を受けるとまず、ナトリウムチャネルが開く
・ナトリウムイオンは細胞外に多いため、濃度勾配で細胞内にナトリウムイオンが流れこむ
・カリウムイオンチャネルが開き、正に帯電した細胞内からカリウムイオンが放出される
・膜電位がもとに戻る
普段神経細胞内は負に帯電していますが、ナトリウムイオンの流入で一瞬(1000分の1秒)正に帯電します。この電荷の逆転が次々と伝わることで、電気の流れが起き、ニューロンの端から端まで情報が伝達されています。

ニューロンとニューロンの間で、情報はどのように伝わっているのか
ニューロンとニューロンの接続部はシナプスと呼ばれ、前後の細胞間には隙間(シナプス間隙)があり、電気信号を次のニューロンに伝えることはできません。
ニューロンで発生したシグナルを次のシナプスに伝えているのが、神経伝達物質です。
電気信号がシナプスに到着すると、シナプスにあるカルシウムチャネルが開き、カルシウムイオンが流入します。
カルシウムイオンの流入で蓄積されていた神経伝達物質がシナプス間隔に放出され、放出された神経伝達物質が隣のシナプスの細胞膜に受容されると、細胞膜にあるイオンチャネルが開閉し、電気信号が伝わっていきます。

神経伝達物質にはどんなものがあるのか
神経伝達物質として働く物質は少なくとも100種類以上あり、これらの物質の体内への取り込みや合成、シナプスでの放出や受容がうまくいかないと様々な問題が発生します。
神経伝達物質の一種であるアセチルコリンは筋肉を動かすニューロンや自律神経のシナプスで利用されています。
サリンはこのアセチルコリンと構造が似ているため、体内に入ると意識障害や筋肉のマヒなどを引き起こしてしまいます。
また、覚せい剤はメタンフェタミンという化合物であり、シナプス間隔でドーパミンを増やし、ノルアドレナリンやセロトニンの遊離を引き起こすことで、脳の興奮状態を起こしています。
毒キノコに含まれるイボテン酸は神経伝達物質であるグルタミン酸とよく似ているため、代わりに受容体に結合し、神経毒として働いてしまいます。

筋肉はどのように動いているのか
神経は脳からでた電気シグナルを運動神経まで伝え、シナプスを介して筋線維に伝えます。
電気信号によって筋線維で活動電位が起き、筋線維の細胞内のカルシウムイオンが放出されます。カルシウムイオンの放出によってタンパク質であるトロポニンの構造が変化します。
トロポニンはストッパーの役割を果たしていますが、構造の変化でストッパーが外れ、筋線維が収縮することで筋肉を動かしています。
収縮した筋線維は活動電位が収まると弛緩して元に戻ります。筋線維の収縮と弛緩する際のカルシウムイオンを回収のためにはATPをエネルギーとして利用しています。
死後硬直が起こるのはATPの供給がなくなるためカルシウムイオンの回収ができなくなり、筋線維が収縮したままになることで発生してしまいます。

コメント