この記事で分かること
- キャタピラーとは:世界最大の建設機械・鉱山機械メーカー(CAT)です。黄色のブルドーザやショベルで知られ、エンジンやデータセンター向け発電機も製造する多国籍企業です。
- 注目されている理由:AIデータセンターの爆発的な電力需要に対し、子会社ソーラー・タービンズのガスタービンやエンジンが、迅速に設置可能な主要な電源ソリューションとして採用されているためです。
- AIによる電力消費量の増加量:世界のデータセンターの電力消費量は、AI普及により2022年から2026年までに約2.2倍の1,000TWh(日本の年間消費量に匹敵)に急増する見込みです。
AIブームでの建設機械企業キャタピラーへの注目
建設機械で世界的に知られるキャタピラー(Caterpillar)がAIブームで注目を浴びています。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-10-02/T3IBP7GQ7L0P00
これは同社が提供する発電ソリューションがデータセンターの急増というAI関連の需要に応えているからです。キャタピラーは直接的なAI技術企業ではありませんが、AIインフラストラクチャを支える「電力供給」という側面から、ブームの意外な受益者として注目を集めています。
キャタピラーはどんな企業か
キャタピラー(Caterpillar Inc.、略称CAT)は、アメリカ合衆国に本拠地を置く世界最大の建設機械および鉱山機械の製造会社として最もよく知られている多国籍企業です。
長年にわたり、建設機械の巨人と称され、その黄色の重機は世界中の工事現場のシンボルとなっています。
主な事業セグメント
キャタピラーの事業は、主に以下の3つの主要セグメントと、それらを支える金融部門で構成されています。
セグメント名 | 主な事業内容 | 代表的な製品 |
1. 建設産業 | 道路建設、インフラ整備、建築、林業など、幅広い用途の機械およびアタッチメントの開発・製造・販売。 | ブルドーザ、油圧ショベル(パワーショベル)、ホイールローダー、モーターグレーダー、スキッドステアローダーなど。 |
2. 資源産業 | 鉱山や採石場など、大規模な資源採掘および運搬に使用される機械の開発・製造・販売。 | 鉱山用トラック、採掘用ショベル、大型ブルドーザなど。 |
3. エネルギー&トランスポーテーション (E&T) | オフロード用途のディーゼルエンジン、天然ガスエンジン、産業用ガスタービン、ディーゼル電気機関車などの開発・製造・販売。 | 発電機セット、産業用エンジン(船舶、石油・ガスなど)、AIブームで注目されているデータセンター向け発電ソリューション。 |
4. 金融商品 (Cat Financial) | 顧客やディーラー向けのリース、割賦販売契約、融資、保険といった金融サービスの提供。 | – |
企業の特徴
- 世界トップシェアの重機メーカー: 建設機械の分野で長らく売上高世界1位を誇る、業界のリーディングカンパニーです。
- 多様な製品ラインナップ: 顧客のニーズに対応するため、300種類を超える多様な製品を展開し、世界で400万台以上の製品が利用されています。
- 技術革新への注力: AI、自動化、遠隔操作技術など、建設や採掘の効率性、安全性、持続可能性を高めるための技術開発に積極的に投資しています。
- グローバルな事業展開: 世界中のあらゆる大陸で事業を展開し、広大なディーラーネットワークを通じて顧客をサポートしています。
創業のルーツは1925年の合併にあり、「キャタピラー」という名前は、同社の無限軌道(履帯)式トラクタの商標に由来しています。

キャタピラーは、世界最大の建設機械・鉱山機械メーカー(CAT)です。黄色のブルドーザやショベルで知られ、エンジンやデータセンター向け発電機も製造する多国籍企業です。
なぜ、AIブームで注目されているのか
キャタピラーがAIブームで注目されている理由は、「AIの心臓部」であるデータセンターに電力を供給するソリューションを提供しているからです。
1. 爆発的なデータセンターの電力需要
AI(人工知能)技術の進化と普及、特に大規模言語モデル(LLM)の運用により、世界のデータセンターの電力消費量が爆発的に増加しています。この急増する電力需要に対応することが、インフラ上の大きな課題となっています。
2. 「隠れた宝石」:Solar Turbines社
キャタピラーのエネルギー&トランスポーテーション(E&T)部門、特に完全子会社のソーラー・タービンズ(Solar Turbines)が提供する発電システムが、この需要の解決策として脚光を浴びています。
3. データセンターに最適な電源ソリューション
ソーラー・タービンズが製造する産業用ガスタービンやエンジンには、データセンターが必要とする以下の利点があります。
- バックアップ・主要電源: 電力網の容量が限界に達している地域では、キャタピラーのシステムが単なるバックアップではなく、主要な電源ソリューションとして採用されています。
- 迅速な展開(モジュール化): 小型でモジュール化されたタービンは、従来の発電所よりも短い納期で設置可能であり、市場の緊急なデータセンター建設スケジュールに適合します。
- 信頼性: データセンターの継続的な稼働に不可欠な、高い信頼性と効率性を提供します。
キャタピラーは直接的なAI企業ではなく、AIインフラを物理的に支える「縁の下の力持ち」として、その発電事業が市場で再評価されているのです。

AIデータセンターの爆発的な電力需要に対し、子会社ソーラー・タービンズのガスタービンやエンジンが、迅速に設置可能な主要な電源ソリューションとして採用されているためです。
ソーラー・タービンズが提供する発電システムの特徴は
キャタピラーの子会社であるソーラー・タービンズ(Solar Turbines)が提供する発電システム(主にガスタービンおよびエンジン発電機)の特徴は、主にその導入の柔軟性、高効率性、そして信頼性にあります。
特にAIブームで注目されるデータセンターの電力供給において、以下の特徴が大きな強みとなっています。
1. 迅速な展開と柔軟性
- モジュール式パッケージ: 発電システムがコンパクトでモジュール化されたパッケージとして提供されます。これにより、従来の巨大な発電所よりも建設期間が短く、データセンターの緊急な需要に迅速に対応できます。
- 分散型電源: 電力網(系統)の容量制約がある場所でも、独立した分散型電源として設置・運用が可能です。これは、電力インフラが追いつかないAIデータセンターの立地に大きなメリットをもたらします。
- 幅広い出力: 1 MWから24 MWまでの多様な出力を持つ発電装置を提供しており、顧客の規模やニーズに合わせた柔軟な構成が可能です。
2. 高い効率性と環境性能
- 高効率: 高いエネルギー効率を誇り、燃料(主に天然ガス)を効率的に利用できます。
- 熱電併給(コジェネレーション): 発電時に発生する排熱を回収し、データセンターの冷却や暖房に利用する熱電併給(CCHP)システムを構築できます。これにより総合効率が大幅に向上し、運用コストと環境負荷を低減できます。
3. 信頼性とサポート
- 連続運転能力: データセンターに不可欠な、高い信頼性と長時間の連続運転能力を備えています。
- グローバルサポート: キャタピラーの広範なグローバルディーラーネットワークを通じて、設置場所にかかわらず、メンテナンスやパーツ供給といった包括的なアフターサービスを受けることができます。
これらの特徴から、ソーラー・タービンズのシステムは、電力消費が急増し、稼働停止が許されないAIデータセンターにとって理想的な主電源または強力なバックアップ電源として評価されています。

データセンター向けに高効率なモジュール式のガスタービンを提供しています。短納期で設置可能な分散型電源として、AIブームによる急増する電力需要に対応します。
電力の消費はどれくらい増加しているのか
AIブームにより、世界のデータセンターの電力消費量は急速に増加しており、国際エネルギー機関(IEA)は以下の予測を発表しています。
- 世界全体のデータセンター電力消費量は、2022年の約460テラワット時(TWh)から、2026年には約2.2倍の1,000 TWh(1兆キロワット時)に拡大する見通しです。
- この1,000 TWhという規模は、日本全体の年間総電力消費量にほぼ匹敵します。
- AIの普及は、この増加を牽引する最大の要因です。AI処理に特化した高性能サーバーは、従来のデータ処理サーバーと比べて数倍~10倍以上の電力を消費します。
- AI専用のデータセンターに絞ると、電力消費量はさらに急増すると予測されており、一部の試算では10年で100倍以上に膨らむ可能性が指摘されています。
この大幅な電力需要の増加が、キャタピラーなどの発電ソリューションを提供する企業が注目される背景となっています。

国際エネルギー機関(IEA)の予測では、世界のデータセンターの電力消費量は、AI普及により2022年から2026年までに約2.2倍の1,000TWh(日本の年間消費量に匹敵)に急増する見込みです。
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