この記事で分かること
- アベルブラックとは:アベル社が開発した、ステンレス表面の酸化被膜をナノ単位で制御する発色技術です。塗装と異なり素材自体を黒くするため、過酷な宇宙環境でも剥離やガス発生がなく、高い耐食性と低反射率を誇る「究極の黒」です。
- なぜ宇宙で使用されるのか:光学機器の筐体やレンズ鏡胴内部に使用され、太陽光の乱反射(迷光)を抑えて観測精度を高めます。また、ガスを放出せず剥離もしないため、精密センサーの保護や宇宙機の熱制御部材として安定した性能を発揮します。
- 酸化被膜の形成方法:特殊な処理液にステンレスを浸し、電気化学反応で表面の「不動態被膜」をナノ単位で成長させます。膜の厚みを精密制御して光の干渉を起こし、黒色を創出。素材自体を変化させるため、剥離せず強固に一体化します。
アベル、黒いステンレスでの宇宙開拓
アベル株式会社が誇る世界唯一の技術「アベルブラック(Abel Black®)」は、ステンレス表面の酸化被膜をナノメートル単位でコントロールする技術です。
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00772431
アベルの黒いステンレスは、実際に日本の宇宙開発プロジェクト(JAXA関連など)で重要な役割を担っています。
アベルブラックとは何か
「アベルブラック(Abel Black®)」とは、アベル株式会社が開発した、ステンレス表面の「酸化被膜」をナノ単位で制御する特殊な発色技術のことです。
「黒いペンキを塗る」といった一般的な着色とは根本的に異なり、素材の特性を最大限に活かした「究極の黒」として世界中から注目されています。
1. 仕組み:色を塗らずに「光」を操る
アベルブラックは、ステンレスの表面にある「不動態被膜(酸化被膜)」を、電気化学的な処理でナノメートル単位(100万分の1ミリ以下)で厚くすることで色を作り出しています。
- 光の干渉: シャボン玉や油膜が虹色に見えるのと同じ原理です。特定の厚みまで被膜を成長させることで、目に見える光(可視光)を吸収・干渉させ、私たちの目に「深く美しい黒」として認識させます。
- 一体化: 被膜はステンレスの一部として成長するため、金属と色が「完全に一体化」しています。
2. アベルブラックの4つの凄さ
| 特徴 | 内容 |
| 剥がれない | 塗装ではないため、折り曲げても、叩いても、削っても色が剥げません。 プレス加工も可能です。 |
| 質感の維持 | 金属特有のヘアラインや鏡面仕上げといった「地肌の質感」を消すことなく、そのまま黒くできます。 |
| 圧倒的な耐食性 | もともと錆びにくいステンレスの酸化被膜をさらに厚くしているため、通常のステンレスよりもさらに錆びに強くなります。 |
| 環境に優しい | 有機溶剤(シンナーなど)を使用せず、リサイクルも容易なため、環境負荷が低い技術です。 |
3. なぜ「宇宙」で選ばれるのか
宇宙空間という極限環境において、アベルブラックは以下の理由で「唯一無二」の存在となっています。
- ガスが出ない(低アウトガス):真空の宇宙では、塗装や接着剤からガスが発生し、レンズを曇らせたり機器を故障させたりします。アベルブラックは金属そのものなのでガスが発生しません。
- 光の反射を極限まで抑える:宇宙観測において「余計な光」は最大の敵です。アベルブラックは光を強力に吸収するため、探査機や望遠鏡の内部に使うことで、鮮明な画像を得ることが可能になります。
- 過酷な温度変化:マイナス200度からプラス数百度の激しい温度変化でも、熱膨張による剥離(はがれ)が起きません。
宇宙だけでなく、身近なところではレクサスのマフラーカッターや、高級ホテルの外装、さらにはスマートフォンの部品など、「耐久性と高級感の両立」が求められる場所で多く使われています。

大阪のアベル社が開発した、ステンレス表面の酸化被膜をナノ単位で制御する発色技術です。塗装と異なり素材自体を黒くするため、過酷な宇宙環境でも剥離やガス発生がなく、高い耐食性と低反射率を誇る「究極の黒」です。
どのように酸化被膜を形成するのか
アベルブラックの酸化被膜は、「インコ法(発色処理)」と呼ばれる電気化学的な手法をベースに、アベル社独自の精密制御を加えて形成されます。
1. 浸漬(溶液への浸け込み)
ステンレスを特殊な処理液(主に硫酸と無水クロム酸の混合液)に浸します。この液体の温度や濃度を厳密に管理することが、仕上がりの美しさを左右します。
2. 電気化学的な反応
液体中でステンレスの表面に化学的な反応を起こさせ、もともと備わっている薄い「不動態被膜(酸化被膜)」をナノメートル単位で成長(厚く)させていきます。
- ポイント: 外部から何かを「塗る」のではなく、ステンレスに含まれる成分を反応させて、表面そのものを変化させます。
3. 光の干渉による発色制御
被膜の厚さをコントロールすることで、特定の光を吸収・反射させます。
- ナノ単位の調整: 被膜の厚さが約100〜300nm(ナノメートル)の範囲で変化すると、青、金、赤、そして最後に「黒(アベルブラック)」へと色が変化します。アベルはこの厚みを均一に制御する世界屈指の技術を持っています。
4. 硬膜処理(封孔処理)
最後に、成長させた被膜を硬く定着させる処理を行います。これにより、指紋がつきにくく、耐摩耗性の高い強固な表面が完成します。
アベルブラックは、「膜の厚さによる色の変化」を、ステンレスの表面で極限まで精密に再現し、黒一色に固定した技術と言えます。
この「ナノ単位の膜厚制御」が、宇宙空間での剥がれない・ガスが出ないという信頼性に直結しています。

特殊な処理液にステンレスを浸し、電気化学反応で表面の「不動態被膜」をナノ単位で成長させます。膜の厚みを精密制御して光の干渉を起こし、黒色を創出。素材自体を変化させるため、剥離せず強固に一体化します。
なぜ宇宙で利用されるのか
アベルブラックが宇宙開拓において「理想の素材」とされるのには、宇宙空間という極限環境特有の課題をすべてクリアできる3つの決定的な理由があります。
1. 「ガス」が出ない(低アウトガス)
これが最も重要な理由です。
- 課題: 宇宙(真空)では、普通の塗装やメッキは成分が蒸発し「ガス」として放出されます。これがレンズに付着すると曇ってしまい、数千億円かけて打ち上げた探査機が「失明」してしまいます。
- アベルの強み: アベルブラックは金属表面そのものを変化させているため、蒸発する成分がありません。精密な光学機器を守るために不可欠な特性です。
2. 「剥がれない」圧倒的な密着性
- 課題: ロケット打ち上げ時の激しい振動や、太陽光による急激な温度変化(−200℃〜+200℃)により、通常のコーティングは膨張・収縮の差でバリバリに剥がれてしまいます。
- アベルの強み: 酸化被膜がステンレスと一体化しているため、どんなに過酷な環境でも剥離しません。剥がれた破片がゴミ(スペースデブリ)になって機器をショートさせるリスクも防げます。
3. 「光」をコントロールする
- 課題: 宇宙は真っ暗に見えますが、太陽光は地上の数倍強力です。金属の反射光がセンサーに入ると、観測データが台無しになります。
- アベルの強み: ナノレベルの凹凸と膜厚制御により、光を強力に吸収します。迷光(余計な反射光)を抑えることで、遠くの銀河や惑星を鮮明に捉えることが可能になります。
宇宙開拓において、アベルブラックは単なる「黒い色」ではなく、機器の寿命と観測の精度を担保する「機能性デバイス」として機能しています。

真空下で成分が蒸発する「アウトガス」が発生せず、精密機器やレンズを曇らせないからです。また、素材と一体化した被膜は激しい温度変化でも剥離せず、太陽光の乱反射を極限まで抑えて観測精度を高めるためです。

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