この記事で分かること
- 農業用マルチとは:農業で使う畑の表面を覆うシート状の資材のことで、雑草抑制、地温調整、水分保持などのために使用されます。
- 和紙を使うメリット:環境負荷の低減や通気性の向上など機能面でのメリットがあります。
- 通気性に優れる理由:和紙は微細な穴があり、繊維の隙間が多いため、空気を通しやすいため、通気性に優れています。
日本製紙パピリアによる和紙を使った農業用マルチ
日本製紙グループの日本製紙パピリア株式会社は、和紙の製造技術を応用した農業用生分解性マルチシート「和紙マルチ」の販売を開始しました。
https://www.papylia.com/news/news20250425washimultiple/
「和紙マルチ」は、木材パルプと生分解性樹脂繊維を配合した薄紙に、黒色顔料と難分解性天然物であるリグニンを塗布した製品であり、高い通気・通液性をもち、長期保管が可能といった特徴を持っています。
マルチシートとは何か
「マルチシート」とは、農業で使う畑の表面を覆うシート状の資材のことで、以下のような目的で使用されます。
- 雑草抑制:光を遮断して雑草の発芽・成長を防ぐ
- 地温調整:黒色なら地温を上げ、白色や銀色なら逆に地温を下げる
- 水分保持:土壌の水分蒸発を抑える
- 泥はね防止:雨や散水時に泥が跳ねて葉や果実を汚すのを防ぐ
- 収量・品質向上:根域環境を整えることで作物の生育を促進する
一般的な材料はポリエチレンなどのプラスチックですが、最近は「和紙マルチ」のように環境配慮型の生分解性素材も増えています。

マルチシートとは、農業で使う畑の表面を覆うシート状の資材のことです。
和紙を使用するメリット
農業用資材に「和紙」を使うメリットは、以下のように環境性・機能性の両面で多くあります:
環境面のメリット
- 生分解性:自然由来の素材(木材パルプ)から作られており、土中で微生物により分解されます。使用後に焼却や廃棄処理が不要で、地球環境にやさしい。
- 再生可能資源:石油由来のプラスチックとは異なり、持続可能な森林資源を活用できます。
機能面のメリット
- 通気性・通液性が高い:紙繊維構造により空気や水を通しやすく、根の呼吸や水の浸透がしやすい。
- 地温上昇の抑制:過度に熱がこもらないため、夏場の高温ストレスを軽減できます。
- 加工がしやすい:ハサミやカッターで簡単に切れるため、畝に合わせて柔軟に使用可能です。
- 使用後の「すき込み」が容易:プラスチックと違って機械でそのまま土に混ぜられ、分解も早いため手間が少ない。

和紙を使用することで、環境負荷の低減や通気性の向上など機能面でのメリットがあります。
なぜ通気性、通液性が良いのか
「和紙マルチ」の通気性・通液性が良い理由は、主に 素材が紙(和紙)であること にあります。
紙繊維の構造
和紙は長繊維の木材パルプを主成分とし、繊維の隙間が多いので微細な孔(穴)がたくさんあります。この孔が空気や水を通す通路になります。
薄紙の特性
通常のポリエチレン製マルチシートはフィルム状で完全に水・空気を遮断しますが、紙素材は微細な隙間があるため、散水や液肥が表面を通り抜けやすく、土壌にも浸透しやすいです。
通気性が高いことで地温上昇を抑える
黒色のフィルムは太陽熱を吸収しやすいですが、紙は熱伝導性が低く、さらに通気性により熱がこもりにくくなります。

和紙は微細な穴があり、繊維の隙間が多いため、空気や水を通しやすいため、通気性、通液性に優れています。
長期保管可能な理由は何か
「和紙マルチ」が長期保管できる理由は、紙に含まれるリグニンの働きと紙自体の構造にあります。
リグニンの添加
リグニンは木材に含まれる難分解性の天然有機化合物で、微生物や酵素による分解を抑える働きがあります。これが紙に塗布されていることで、保管中に湿気や微生物の影響を受けにくくなり、分解が進みにくくなります。
分解を促進する条件が揃わない
和紙マルチは、土壌にすき込む(埋め込む)ことで初めて分解環境が整います。保管中は乾燥した状態で酸素や微生物が不足するため、生分解がほとんど進まないのです。

保管中は分解を抑制し、使用後に適切な条件(湿気、土壌中の微生物、適温)で分解されるよう設計されているため、長期の保存と生分解性の両立が可能です。
すき込みとは何か
「すき込み」とは、農業の用語で、作物の残さ(わら、茎、葉)や有機物、マルチ資材などを土に鋤(すき)で混ぜ込む作業のことです。
- 耕うん機やトラクターのロータリーを使って、資材を土壌中に物理的に混ぜる
- 土中の微生物がそれを分解して、最終的に有機物として土壌改良や肥料分になる
「和紙マルチ」は生分解性なので、使用後にそのまま畑にすき込むことで自然に分解させ、廃棄物として回収する必要がないというメリットがあります。

すき込みとは作物の残さや有機物、マルチ資材などを土に鋤(すき)で混ぜ込む作業のことです。和紙は生分解性であるため、そのまま畑にすきこむことで分解させることが可能です。
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