この記事で分かること
・PM2.5とは何か:直径2.5マイクロメートル(μm)以下の非常に小さな粒子のことで、肺の奥深くまで入り込み、健康に悪影響を及ぼします。
・経済負担になる理由:健康被害や生産性の低下、医療費の増加などを通じて経済負担が発生しています。
・PM2.5はどのように排出されるのか:燃焼によるススや有機物、硫酸塩や硝酸塩などの二次生成粒子、鉱物や金属成分、自然由来の黄砂や海塩粒子などで発生します。
PM2.5による大気汚染が日本経済に年間17兆円の負担
PM2.5による大気汚染が日本経済に年間17兆円の負担をもたらしているとニュースになっています。
PM2.5は、直径2.5マイクロメートル以下の微小粒子状物質で、工場や自動車の排出ガス、火力発電所などから発生します。 これらの粒子は呼吸器や循環器系の疾患を引き起こし、健康被害をもたらします。
世界的にも、PM2.5を含む大気汚染による経済損失は512兆円を超えるとされており、特に東アジアや太平洋地域ではGDPの7.5%に相当する損失が報告されています。
PM2.5とは何か
PM2.5(微小粒子状物質)とは、直径2.5マイクロメートル(μm)以下の非常に小さな粒子のことです。これは髪の毛の太さ(約70μm)の約1/30程度の大きさで、肉眼では見ることができません。
PM2.5の発生源
PM2.5は、大気中のさまざまな活動や自然現象によって発生します。主な発生源は以下のとおりです。
- 人為的なもの:工場や火力発電所の煙、自動車の排気ガス、建設工事、暖房設備(薪や石炭の燃焼)
- 自然由来のもの:火山噴火、黄砂、森林火災、海塩粒子
PM2.5の健康・環境への影響
PM2.5は非常に小さいため、肺の奥深くまで入り込み、健康に悪影響を及ぼします。
- 健康影響:呼吸器疾患(喘息、気管支炎、肺がん)、心血管疾患(心筋梗塞、高血圧)、脳卒中などのリスクが高まる
- 環境影響:大気汚染、視界不良(スモッグ)、農作物への影響

直径2.5マイクロメートル(μm)以下の非常に小さな粒子のことで、肺の奥深くまで入り込み、健康に悪影響を及ぼします。
どのような微粒子がPM2.5となるのか
PM2.5(微小粒子状物質)には、さまざまな種類の粒子が含まれます。主に一次粒子(直接排出されるもの)と二次粒子(大気中で化学反応によって生成されるもの)に分類されます。
1. 一次粒子(直接排出されるもの)
これらの粒子は、工場、車の排ガス、火山、森林火災などから直接放出されます。
① 燃焼による粒子
- 炭素系粒子(スス・ブラックカーボン):ディーゼル車や工場の煙から発生。
- 有機エアロゾル:木材や石炭の燃焼、たばこの煙に含まれる。
② 鉱物や金属系粒子
- 粉じん(シリカ、アルミナなど):建設工事や鉱山採掘で発生。
- 重金属(鉛、カドミウム、ヒ素など):工場排気や廃棄物の焼却から排出。
③ 自然由来の粒子
- 黄砂:中国やモンゴルの砂漠地帯から飛来する微細な砂粒。
- 火山灰:火山噴火によって発生し、大気中を長く漂う。
- 海塩粒子:波しぶきが蒸発してできる微粒子。
2. 二次粒子(大気中で生成されるもの)
一次粒子が大気中のガスと反応し、新たに形成される粒子です。これがPM2.5の大部分を占めています。
① 硫酸塩(SO₄²⁻)
- 発生源:石炭・石油の燃焼(発電所、工場、船舶など)
- 生成プロセス:二酸化硫黄(SO₂)が大気中で酸化され、硫酸塩(H₂SO₄)としてエアロゾル化
② 硝酸塩(NO₃⁻)
- 発生源:自動車の排気ガス(特にディーゼル車)、火力発電
- 生成プロセス:窒素酸化物(NOₓ)が酸化され、硝酸(HNO₃)として粒子化
③ アンモニウム塩(NH₄⁺)
- 発生源:農業(肥料や家畜の排せつ物から発生するアンモニア)
- 生成プロセス:硫酸塩や硝酸塩と結合し、硫酸アンモニウムや硝酸アンモニウムとしてエアロゾル化
④ 有機エアロゾル(SOA: Secondary Organic Aerosol)
- 発生源:自動車、工場、植物(樹木が放出する揮発性有機化合物(VOC))
- 生成プロセス:VOCが大気中のオゾンやOHラジカルと反応し、微粒子化
3. PM2.5の組成比(一般的な割合)
PM2.5の成分割合は地域や気象条件によって異なりますが、一般的な構成は以下のようになります。
- 硫酸塩・硝酸塩・アンモニウム塩(約50%)
- 有機エアロゾル(約20-30%)
- 炭素系粒子(約10-20%)
- 金属・鉱物粒子(数%)

PM2.5には、燃焼によるススや有機物、硫酸塩や硝酸塩などの二次生成粒子、鉱物や金属成分、自然由来の黄砂や海塩粒子などが含まれます。特に都市部では、自動車や工場の排ガス由来の成分が多く、大気中で化学変化を起こしてPM2.5を増加させています。
どのようにして、経済の負担になっているのか
PM2.5による経済的負担は、健康被害や生産性の低下、医療費の増加などを通じて発生します。以下のような具体的な要因があります。
1. 医療費の増加
PM2.5は呼吸器疾患や心血管疾患、がんの原因となり、医療機関の受診者数を増加させます。
- 入院や治療費の増加:喘息や肺炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、脳卒中などの患者が増え、医療費負担が拡大。
- 薬剤費の増加:呼吸器疾患の治療には吸入薬やステロイド剤が必要となり、保険財政にも影響。
2. 労働生産性の低下
PM2.5による健康被害が労働者の生産性を低下させます。
- 病欠・早退の増加:体調不良で仕事を休む人が増加し、企業の業績に悪影響。
- 作業効率の低下:倦怠感や集中力の低下により、業務の効率が落ちる。
- 長期的な影響:健康被害による早期退職や死亡により、熟練労働者が減少。
3. 産業活動への影響
- 農業・漁業:PM2.5は作物の光合成を阻害し、農作物の収量を減少させる。また、水質汚染が発生すると水産資源にも影響。
- 観光業:大気汚染による視界不良や健康リスクの上昇により、観光客が減少する可能性。
- 企業活動:大気汚染が深刻化すると工場の稼働制限がかかることもあり、生産コストが上昇。
4. 環境対策コストの増加
- 大気浄化対策:空気清浄機の普及、交通規制、環境基準の厳格化に伴う産業の設備投資負担。
- 法規制強化によるコスト:企業は排出規制に対応するため、クリーンエネルギー導入や工場設備の改善に追加の投資が必要。
5. 交通・インフラへの影響
- 飛行機や鉄道の運行遅延:視界不良によるフライトの遅延・欠航が増加し、物流・観光に影響。
- 道路・建築物の劣化:PM2.5に含まれる化学物質が建築物や交通インフラを劣化させ、維持管理費が増加。

PM2.5による健康被害や生産性の低下、医療費の増加などを通じて経済負担が発生し、日本におけるPM2.5による経済的損失は年間約17兆円と試算されており、GDPの約3%に相当します。
どうすれば、PM2.5を除去できるのか
PM2.5を除去する方法は、大気中での除去と屋内での除去の2つに分けられます。
1. 大気中でのPM2.5除去(発生源対策)
大気中のPM2.5を減らすには、主に発生源の管理と排出抑制が重要です。
① 産業排出の規制・削減
- 工場や火力発電所に高性能フィルター(バグフィルター、静電集塵機)を設置し、排出ガス中の粒子を除去。
- クリーンエネルギー(再生可能エネルギー、天然ガスなど)の活用を推進し、化石燃料の燃焼を減らす。
② 交通規制・排ガス対策
- EV(電気自動車)や燃料電池車の普及による排ガス削減。
- ディーゼル車の排ガス規制(DPFフィルターの設置、低硫黄燃料の使用)。
③ グリーンインフラの活用
- 樹木の植樹:PM2.5を吸収・付着させる効果がある樹木(広葉樹など)を都市部に植える。
- 水噴霧装置(ミスト):道路や建築現場での水散布によって、浮遊粒子を抑制。
2. 屋内でのPM2.5除去
PM2.5は屋内にも侵入するため、家庭やオフィスでの対策が必要です。
① 高性能な空気清浄機を使用
- HEPAフィルター搭載の空気清浄機を使用すると、PM2.5を90%以上除去可能。
- イオン発生装置:静電気でPM2.5を集めるタイプの空気清浄機も効果的。
② 室内の換気を工夫
- PM2.5が多い日は窓を閉める(環境省のPM2.5情報をチェック)。
- 換気扇や給気口にフィルターを設置し、外気からのPM2.5侵入を防ぐ。
③ 掃除を徹底
- 水拭き・モップがけを行うことで、床や家具に付着したPM2.5を除去。
- 掃除機はHEPAフィルター付きのものを使用し、排気による再拡散を防ぐ。
3. 個人でできるPM2.5対策
- 洗濯物の部屋干し(外干しすると衣類にPM2.5が付着)。
- 外出時にN95マスクを着用(PM2.5を防ぐ特殊フィルター搭載のものが有効)。
- 花粉症対策用メガネを活用し、目への影響を減らす。

PM2.5を減らすには、発生源を減らす社会的な対策と、屋内環境を清浄に保つ個人レベルの対策の両方が必要です。
国際的な規制は進んでいるのか
PM2.5に対する国際的な規制は、世界保健機関(WHO)を中心に各国・地域で基準が設けられています。ただし、各国の環境状況や政策の違いにより、基準の厳しさには差があります。
1. WHOのPM2.5ガイドライン(国際基準)
世界保健機関(WHO)は、健康リスクを考慮した大気質ガイドラインを発表しており、2021年に基準を厳格化しました。
指標 | 旧基準(2005年) | 新基準(2021年) |
---|---|---|
年平均値 | 10 µg/m³ | 5 µg/m³ |
24時間平均値 | 25 µg/m³ | 15 µg/m³ |
WHOの基準はあくまで推奨値であり、各国はこの基準を参考に独自の規制を定めています。
2. 各国・地域のPM2.5環境基準
PM2.5の基準値は国によって異なり、一般的にWHOの基準よりも緩やかに設定されています。
国・地域 | 年平均基準値(µg/m³) | 24時間平均基準値(µg/m³) |
---|---|---|
WHO(推奨) | 5 | 15 |
日本 | 15 | 35 |
アメリカ(EPA) | 12 | 35 |
EU(欧州連合) | 25 | なし |
中国 | 35 | 75 |
インド | 40 | 60 |
日本やアメリカは比較的厳しい基準を採用していますが、中国やインドは緩やかな基準になっています。これは、産業や交通事情などを考慮した結果です。
3. 国際的な規制・対策
① 国連(UNEP)とWHOの取り組み
- 「BreatheLifeキャンペーン」:各国・都市の大気汚染対策を支援する国際イニシアチブ。
- 「大気質ガイドライン」:PM2.5の健康影響を考慮した基準の普及を推進。
② G20・OECDの環境政策
- G20サミットでは、大気汚染と気候変動対策の連携が議論される。
- OECD(経済協力開発機構)は、加盟国に対して環境基準の強化を推奨。
③ 地域別の規制・協力
アジア(中国・日本・韓国)
- 「LTP(長距離越境大気汚染に関する日中韓共同研究)」
- 中国・韓国から日本へのPM2.5の影響を調査し、共同で対策を検討。
- 「北京クリーンエア行動計画」(中国)
- 産業排出・車両規制・石炭使用制限などを強化し、大気汚染を大幅に改善。
アメリカ
- 大気浄化法(Clean Air Act)に基づき、PM2.5の排出規制を実施。
- 環境保護庁(EPA)が各州の排出基準を監視し、違反した企業に罰則。
ヨーロッパ(EU)
- 「大気質指令(Air Quality Directive)」により、加盟国にPM2.5の監視と削減を義務付け。
- 低排出ゾーン(LEZ)を導入し、ディーゼル車の規制を強化。
4. 日本の取り組み
日本では、環境省が中心となり以下のような対策を進めています。
- PM2.5注意喚起:濃度が基準値(1日平均35µg/m³)を超えると、都道府県が外出自粛を呼びかけ。
- 排出規制:自動車の排ガス基準を強化、石炭火力発電の削減を推進。
- 越境汚染対策:中国・韓国と連携し、PM2.5の発生源調査を実施。

PM2.5はWHOが厳しい基準を推奨しているものの、各国の環境事情に応じて規制が異なるのが現状です。今後は、国際協力を強化し、排出削減対策を推進することが重要とされています。
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