この記事で分かること
- ムーンショット事業とは:アルファベットの「Other Bets」セグメントに分類される、将来の成長を目指した野心的な挑戦です。現時点では採算度外視で、世界を変えるような大きなインパクトをもたらす技術やサービスを研究・開発しています。
- Waymoとは:アルファベット傘下の自動運転技術開発企業です。最大の事業は、運転手不在の完全自動運転タクシーサービス「Waymo One」です。
- 他の自動運転車との違い:長年の開発実績と膨大な走行データ蓄積が最大の強みです。他社に先駆け、公道での無人タクシーサービスを商用化しています。
アルファベットのムーンショット事業:Waymo
Googleの親会社であるアルファベット(Alphabet)が、2025年9月15日(月)の米国株式市場で、史上初めて時価総額3兆ドルを突破しました。これにより、アルファベットはApple、Microsoft、Nvidiaに次いで、この偉業を達成した4番目の企業となりました。
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/TG3W4HPF5BKQHNGJNHJAYEHG2M-2025-09-15/
また、同社は広告事業での圧倒的な収益を背景に将来の成長を見据えた野心的なプロジェクトを担うムーンショットと呼ばれる先端技術への投資も積極的に行っています。
ムーンショット事業とは
「ムーンショット(Moonshot)」とは、もともと「月に向かってロケットを打ち上げる」という意味で、1960年代に米国が掲げたアポロ計画のように、「前人未踏で非常に困難だが、達成すれば社会に大きなインパクトをもたらす、野心的な計画」を指す言葉です。
アルファベットにおいては、「Other Bets」というセグメントに分類される、将来の巨大な成長を目指す挑戦的な事業群を指します。Googleの検索広告事業のように、短期的に多額の収益を生み出すことを目的とせず、長期的な視点に立って、世界を変えるような破壊的イノベーションの創出を目指しています。
「ムーンショット」事業の代表例
- Waymo: 自動運転車の開発
- Verily: 生命科学と医療技術の研究開発
- Calico: 寿命延長の研究
- Wing: ドローンによる配送サービス
- X: 革新的なテクノロジーを研究する秘密のラボ
これらの事業の多くは、現時点では多額の投資が必要で赤字ですが、もし一つでも成功すれば、Googleの中核事業に匹敵する、あるいはそれを超えるほどの大きな価値を生み出す可能性があると考えられています。アルファベットは、この「ムーンショット」への投資によって、長期的な成長の基盤を築こうとしているのです。

ムーンショット事業は、アルファベットの「Other Bets」セグメントに分類される、将来の成長を目指した野心的な挑戦です。Waymo(自動運転)やVerily(生命科学)など、現時点では採算度外視で、世界を変えるような大きなインパクトをもたらす技術やサービスを研究・開発しています。
Waymoとはどんな事業なのか
Waymoは、アルファベットの「ムーンショット」事業の中でも、事業化が最も進んでいる企業の一つです。その中心的な事業内容は、完全無人運転の配車サービス「Waymo One」です。
Waymo Oneのサービス内容
Waymo Oneは、利用者がスマートフォンアプリを使って呼び出すと、運転席に誰もいない自動運転車が迎えに来て、目的地まで送迎してくれるサービスです。
- 無人運転: 完全に自動で運転されるため、ドライバーとのやりとりは一切不要です。
- 24時間365日: サービス提供エリア内であれば、いつでも利用可能です。
- 安全性: 車両に搭載されたセンサー(LiDAR、レーダー、カメラなど)が周囲を360度認識し、人間の運転よりも高い安全性を提供するとされています。
- 利用可能エリア: 現在、アメリカのサンフランシスコ、フェニックス、ロサンゼルス、オースティンなどの都市で商業サービスを展開しています。日本でも、日本交通やGOと提携し、東京でテスト走行を開始するなど、日本市場への進出も視野に入れています。
事業化の課題
Waymoは事業化に向けて着実に進んでいますが、いくつかの課題も存在します。
- 規制・法整備: 各国の法規制や道路交通法が、自動運転車の普及に追いついていない点が大きな課題です。
- 技術的課題: 悪天候や複雑な交通状況への対応など、まだ技術的な改善の余地があります。
- 高コスト: 自動運転に必要なセンサーやコンピュータは非常に高価であり、サービスのコストを押し上げる要因となります。
Waymoはこれらの課題を克服しながら、自動運転技術を社会に浸透させることを目指しています。将来的に自動運転タクシーだけでなく、トラック輸送など他の分野への展開も期待されています。

Waymoは、Googleの親会社であるアルファベット傘下の自動運転技術開発企業です。最大の事業は、運転手不在の完全自動運転タクシーサービス「Waymo One」です。米国の一部都市で商用サービスを提供しており、都市の移動手段を自動化することで、人々の生活を便利で安全にすることを目指しています。
他の完全無人運転の配車サービスとの違いは何か
Waymoは、自動運転車の開発競争において、他の多くの企業と比較して以下のようにいくつかの点で優位に立っています。主な競合企業には、GM傘下のCruiseや、Amazon傘下のZoox、さらにはテスラなどが挙げられます。
1. 長年の開発実績と膨大な走行データ
Waymoは、自動運転技術の研究を2009年から開始しており、この分野で最も長い歴史を持つ企業の1つです。
- 実走行距離: 公道での実走行距離は数百万マイルに達し、シミュレーション上では数十億マイルを走行しています。これにより、現実世界での多様なシナリオを学習し、システムを継続的に改善するための膨大なデータを蓄積しています。この経験値の差は、特に複雑な都市環境での安全性と信頼性に大きく貢献しています。
- 技術的成熟度: 公道での長年の実績により、安全ドライバーが同乗しない完全無人での商用サービスを、他社に先駆けて展開しています。これは技術的な成熟度を示す重要な指標です。
2. 技術の「フルスタック」アプローチ
Waymoは、車両に搭載されるセンサー(LiDAR、レーダー、カメラ)、ソフトウェア、そしてAIアルゴリズムを自社で開発する「フルスタック」のアプローチを採用しています。
- 統合されたシステム: 車両全体が、Waymoの技術に合わせて最適化されています。これにより、各コンポーネントがシームレスに連携し、高いパフォーマンスと信頼性を実現しています。
- LiDARの活用: Waymoは、LiDAR(光による物体検出・測距技術)を主要なセンサーとして活用しています。これは、悪天候や夜間でも高い認識能力を発揮し、システムの安全性を高める上で重要な役割を果たしています。対照的に、テスラはカメラのみに依存するアプローチを取っており、その点でもWaymoは技術的な優位性を持つと見なされています。
3. 親会社アルファベットの潤沢な資金力
アルファベットという巨大な企業の傘下にあることで、Waymoは自動運転という莫大な投資が必要な分野で、研究開発や事業拡大のための潤沢な資金を確保することができます。また、GoogleのAI技術やクラウドインフラを利用できる点も、開発スピードを加速させる大きな強みとなっています。
これらの要素が複合的に作用し、Waymoは技術力、安全性、商業化の両面で、競合他社に先行していると評価されています。

Waymoは、長年の開発実績と膨大な走行データ蓄積が最大の強みです。他社に先駆け、公道での無人タクシーサービスを商用化しており、これは技術的成熟度の証です。また、LiDARなど複数のセンサーを組み合わせた「フルスタック」な開発手法により、高い安全性と信頼性を実現しています。
LiDARとは何か
LiDAR(ライダー)は、Light Detection and Rangingの略で、レーザー光を照射して物体までの距離や形状を高精度に測定する技術です。日本語では「光による検知と測距」と訳されます。
LiDARの仕組み
LiDARの基本的な仕組みは、レーダーに似ています。
- レーザー光の照射: LiDARセンサーから、パルス状のレーザー光が周囲に向けて放出されます。
- 反射光の受信: 照射されたレーザー光は、人や車、建物などの物体に当たって反射し、センサーに戻ってきます。
- 距離の計算: センサーは、レーザー光を放出してから反射光を受け取るまでのわずかな時間を計測します。この時間と光の速さをもとに、物体までの正確な距離を算出します。
このプロセスを高速で繰り返すことにより、周囲の空間を無数の「点」の集まりとして把握し、3次元の点群データを作成します。この点群データは、現実世界を非常に精密に再現した3Dマップとして利用されます。
カメラやレーダーとの違いと優位性
LiDARは、カメラやミリ波レーダーと組み合わせて自動運転車に搭載されることが多いですが、それぞれ異なる特性を持っています。
- カメラ: 人間の目と同じように、周囲の物体を画像として認識します。色やテクスチャを識別する能力に優れていますが、距離の正確な測定や、夜間・悪天候時の性能には限界があります。
- ミリ波レーダー: 電波を使って物体までの距離や速度を測定します。雨や霧に強く、広範囲の検知が得意ですが、物体を高精度で認識したり、形状を把握したりすることは苦手です。
LiDARは、これらの弱点を補完する役割を担います。レーザー光を用いるため、ミリ波レーダーよりもはるかに高精度に物体の形状や位置を認識できます。これにより、自動運転車は周囲の状況を立体的に、かつ正確に把握し、安全な走行を可能にします。
主な応用分野
LiDARの応用分野は、自動運転以外にも多岐にわたります。
- 自動運転・ロボティクス: Waymoのような自動運転車や、ロボット掃除機、AGV(無人搬送車)の障害物検知に利用されます。
- 測量・マッピング: ドローンや航空機に搭載して、地形やインフラ設備の高精度な3Dマップを作成します。
- スマートフォンのAR機能: iPhoneの「LiDARスキャナ」は、AR(拡張現実)アプリで空間を正確に認識するために使われています。

LiDARは、Light Detection and Rangingの略で、レーザー光を使って物体までの距離や形状を高精度で測定する技術です。これにより周囲の状況を3次元の点群データとして把握し、自動運転車やロボットの目として利用されます。カメラやレーダーの弱点を補う、重要なセンサーです。
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