バリアフィルム バリアフィルムとは何か?、どのようにバリア性を発揮するのか?

この記事で分かること

  • バリアフィルムとは:水蒸気や酸素などの気体の透過を防ぐ性能(バリア性)に優れたフィルムです。内容物を外部の環境から保護し、品質を保持する目的で使用されます。
  • どのような物質が用いられるのか:バリア性の高い樹脂をコーティングしたものや金属箔、金属を蒸着したもの、シリカなど様々な素材が利用されています。
  • なぜ、バリア性を持っているのか:分子レベルでの緻密な構造や多層構造などで分子が透過しないようにしています。また、対象の物質と相互作用しにく成分を使うことでもバリア性を発揮できます。

バリアフィルム

 富士キメラ総研によると、機能性フィルム市場は堅調な成長を見せる予想とされています。

 https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00746076

 2023年の市場規模は約282億4,000万米ドルで、2030年には476億4,000万米ドルに達すると見込まれており、年平均成長率(CAGR)は7.75%とする予想もあります。

 今回はバリアフィルムについての解説となります。

バリアフィルムとは何か

 バリアフィルムは、水蒸気や酸素などの気体の透過を防ぐ性能(バリア性)に優れたフィルムです。内容物を外部の環境から保護し、品質を保持する目的で使用されます。

どんなものから保護するために用いられるのか

 バリアフィルムは、ガス水蒸気バリアから内容物を保護するために用いられることが多いです。

水蒸気バリア性

 水分の透過を防ぐ性能です。食品の湿気による劣化防止、乾燥の防止などに重要です。

ガスバリア性

 酸素、窒素、炭酸ガスなどの気体の透過を防ぐ性能です。食品の酸化防止、香りの保持などに重要です。

バリアフィルムの用途

 バリアフィルムは、様々な分野で内容物の品質を保持するために使用されています。

  • 食品包装: スナック菓子、レトルト食品、飲料、調味料、乾燥食品、生鮮食品など、幅広い食品の酸化防止、湿気防止、香り保持などに使用されます。
  • 医薬品包装: 錠剤、粉末、液体医薬品などの吸湿防止、酸化防止、品質劣化防止に使用されます。(PTP包装、分包など)
  • 工業製品包装: 電子部品、精密機械、金属部品などの錆防止、静電気対策、防湿対策などに使用されます。
  • 医療用途: 輸液バッグ、経腸栄養食の容器など、内容物の品質維持や安全性を確保するために使用されます。
  • その他: 化粧品、トイレタリー用品、農産物など、品質保持が必要な様々な製品の包装に使用されます。

バリアフィルムはガスや水蒸気から内容物を守るために利用されており、食品、医薬日、工業製品など様々名製品の品質保持に利用されています。

バリアフィルムにはどのような種類はあるのか

 バリアフィルムは、使用される素材や構造によって様々な種類があります。

金属箔フィルム

 アルミニウム箔などが代表的で、非常に高いバリア性を示します。光や香りも遮断するため、食品や医薬品の包装に広く用いられます。

金属蒸着フィルム

 プラスチックフィルムにアルミニウムなどの金属を薄く蒸着させたフィルムです。金属箔フィルムに比べてコストを抑えられ、ある程度のバリア性、遮光性、保香性があります。

透明蒸着フィルム

 シリカ(酸化ケイ素)やアルミナ(酸化アルミニウム)などをプラスチックフィルムに蒸着させた透明なフィルムです。内容物を見せたい場合に適しており、電子レンジ対応や金属探知機対応などの特性を持つものもあります。

樹脂系バリアフィルム

 特殊な樹脂(PVDC、EVOH、MXD6など)を単層または多層で使用したフィルムです。透明性や柔軟性に優れ、用途に応じて様々なバリア性能を持つものが開発されています。

 プラスチックフィルムの表面に、バリア性の高い樹脂などをコーティングしたフィルムです。屈曲によるバリア性能の劣化が少ないという特徴があります。

コートフィルム

バリア性の高い樹脂をコーティングしたものや金属箔、金属を蒸着したもの、シリカなど様々な素材が利用されています。

どのようにしてガスや水蒸気から保護しているのか

 バリアフィルムがガスや水蒸気から保護する仕組みは、主に以下の要素によって実現されています。

1. 透過経路の遮断

  • 緻密な構造: バリアフィルムの素材自体が、分子レベルで緻密な構造を持っているため、ガスや水蒸気の分子がフィルムを通り抜けるための隙間が非常に小さくなっています。これにより、分子の拡散による透過を物理的に抑制します。
  • 多層構造: 複数の異なる素材を積層することで、それぞれの素材が持つバリア特性を組み合わせ、より高いバリア性能を発揮します。例えば、水蒸気バリア性の高い層とガスバリア性の高い層を組み合わせることで、両方の透過を防ぎます。また、層と層の界面も透過経路を複雑化し、バリア性を向上させる効果があります。
  • 金属層や蒸着層: 金属箔や金属蒸着層は、ガスや水蒸気の分子が透過することが非常に困難なため、高いバリア性能を発揮します。特に金属箔は、連続した金属の層であるため、極めて高い遮断性を示します。金属蒸着層も、薄いながらも金属の緻密な構造がバリア層として機能します。

2. 分子の溶解・拡散の抑制

  • 疎水性・疎ガス性: フィルムの素材が、水分子や特定のガス分子と相互作用しにくい性質を持つ場合、これらの分子がフィルム中に溶解しにくくなります。溶解しにくい分子は、フィルム中を拡散しにくいため、透過速度が遅くなります。例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン系樹脂は、比較的疎水性が高いため、水蒸気バリア性を示します。
  • 結晶性の高さ: 樹脂フィルムの場合、結晶構造が高いほど分子間の隙間が小さくなり、ガスや水蒸気の分子が拡散しにくくなります。

3. コーティングによるバリア性向上

  • バリアコート層: フィルム表面に、バリア性の高い樹脂や無機物を薄くコーティングすることで、透過経路を物理的に遮断したり、フィルム表面の性質を変化させて分子の溶解を防いだりします。例えば、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)やEVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)、シリカなどがコーティング材として用いられます。

分子レベルでの緻密な構造や多層構造などで分子が透過しないようにしています。また、疎水性の高い樹脂は水がフィルムを透過しにくなど対象の物質と相互作用しにく成分を使うことでもバリア性を発揮できます。

金属が特にバリア性に優れる理由

 金属がバリア性が高い主な理由は、その原子構造と結合様式にあります。

1. 緻密な結晶構造

  • 金属は、金属結合という特殊な結合によって原子が規則正しく配列した結晶構造を形成しています。この結晶構造は非常に緻密で、原子間の隙間が極めて小さいです。
  • ガスや水蒸気の分子は、この小さな隙間を通り抜けることが困難です。プラスチックなどの高分子材料と比較すると、分子間の自由体積(分子が移動できる空間)が格段に小さいため、透過しにくいのです。

2. 非極性であること(一般的に)

  • 多くの金属は、電気的に中性であり、極性を持たない分子(例えば、酸素分子 O₂ や窒素分子 N₂)との相互作用が弱いです。
  • 物質がフィルムを透過する際には、まずフィルムの表面に吸着し、内部に溶解・拡散していく必要があります。非極性分子は、極性を持つ高分子材料には比較的溶解しやすい傾向がありますが、非極性の金属には溶解しにくいと考えられます。ただし、水分子(H₂O)は極性を持つため、金属の種類や表面状態によってはある程度の吸着や反応が起こり得ます。

3. 電子雲による遮蔽

  • 金属結合では、価電子が特定の原子に束縛されず、金属全体に共有された「電子雲」を形成しています。この自由電子の存在が、外部からの分子の侵入をある程度遮蔽する効果を持つと考えられます。

4. 不透過性

 金属は、固体であり、液体や気体のように流動性がないため、マクロな意味でも物質が通り抜けることができません。フィルム状に加工された場合でも、その連続した固体構造がバリア層として機能します。

金属は、緻密な結晶構造を持っている、極性がないため、酸素や窒素分子との相互作用を起こしにくい、自由電子の電子雲が分子の侵入を遮断するなどの特長から優れたバリア性を発揮します。

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