この記事で分かること
・タイヤの製造法:原材料の練り、部材の製造、部材の組み合わせ、加硫、検査といった手順で作られています。
・規制変化の内容:燃費の改善への貢献、マイクロプラスチック規制、原料に占めるリサイクル材料の比率の向上やノイズ規制などで規制の変化が起きています。
ブリヂストンのスペイン北部での工場人員削減
ブリヂストンは、ヨーロッパ市場の不確実性や非欧州製品との競争激化に対応するため、スペイン北部の2つの工場で合計546人の人員削減を計画しています。
これらの工場では、トラクターや農業用車両、バス、トラック向けのタイヤを製造していますが、インフレや市場の不確実性、規制の変化、非欧州製品の台頭による競争激化が生産能力の調整を必要とする要因となっています。
世界のタイヤメーカとそのシェア
複数の調査機関や発表元によって数値に若干の差異が見られますが、大まかな傾向として以下のようになっています。(主に2023年のデータに基づきます。)
売上高ベースのシェア
- 1位: ミシュラン (フランス) – 約14%~15%
- 2位: ブリヂストン (日本) – 約13%~14%
- 3位: グッドイヤー (アメリカ) – 約8%~9%
- 4位: コンチネンタル (ドイツ) – 約6%~7%
- 5位: ピレリ (イタリア) – 約3%~4%
- 6位: 住友ゴム工業 (日本) – 約3%~4%
- 7位: ハンコック (韓国) – 約3%~4%
- 8位: 横浜ゴム (日本) – 約3%
- 9位: 中策ゴム (ZC Rubber) (中国) – 約2%~3%
- 10位: トーヨータイヤ (日本) / 正新ゴム (台湾) – 約1%~2%

ブリヂストンと世界のタイヤシェアが13~14%と高く、グローバル企業といえます。
タイヤの基本的な製造方法はどのようなものか
タイヤの基本的な製造工程は以下のステップで構成されています
1. 原材料の準備
主な材料は以下の通り:
- 天然ゴム/合成ゴム
- カーボンブラック(補強材)
- 補強繊維(ポリエステルやナイロン)
- スチールワイヤー(ベルト部やビード部)
- 添加剤(老化防止剤、可塑剤など)
2. コンパウンドの混合(練り工程)
ゴムと他の材料を混ぜ合わせて、タイヤの各部位ごとに異なる性能を持つゴムシート(コンパウンド)を作成。
3. 部材の製造
タイヤは複数の部材から構成され、それぞれ専用の機械で作ります:
- トレッド:地面と接する部分
- サイドウォール:側面
- ビード:リムに固定するためのワイヤー部
- カーカス/ベルト:内部の骨格部分
4. タイヤの組み立て(成形)
部材を順番に重ね合わせ、タイヤの元となる「グリーンタイヤ(未加硫タイヤ)」を作る。
5. 加硫(キュアリング)
グリーンタイヤを金型に入れ、加熱・加圧して加硫(硫黄との化学反応)を行う。これによりゴムに弾力と耐久性が生まれ、同時にトレッドパターンが刻まれる。
6. 検査・品質管理
- 外観検査(目視)
- X線検査
- バランステスト
- 均一性検査 など

タイヤは原材料の練り、部材の製造、部材の組み合わせ、加硫、検査といった手順で進みます。
タイヤメーカーによる性能の違いはどんなところで発生するのか
タイヤメーカーによる性能の違いは、以下のような設計・材料・製造技術・テストノウハウなどの違いから生じます:
1. ゴムコンパウンドの配合技術
- 各メーカーは独自のレシピ(ゴム、フィラー、添加剤の配合)を持っており、これがグリップ力・摩耗性能・燃費性能・ウェット性能に大きく影響。
- 例:ブリヂストンの「ナノプロテック」、ミシュランの「シリカ高配合」など。
2. トレッドパターン設計
- 路面との接地性・排水性・ノイズの発生に関わる部分。
- 高速走行や雨天での性能、安全性、静粛性に違いが出る。
- 例:スポーツタイヤは非対称パターン、ツーリングタイヤは静音重視パターンなど。
3. 内部構造(カーカス・ベルト)設計
- 剛性・乗り心地・耐久性に直結する。
- メーカーごとに層の数、ベルトの角度や材質(ナイロン、アラミドなど)に違いあり。
4. 製造精度と品質管理
- 精密な成形と加硫、組み立てのばらつき抑制がバランス性・寿命・騒音に影響。
- プレミアムメーカーはここに強みを持ち、均一性が高い。
5. テストとフィードバック体制
- 巨大なテストコースやリアルな走行データを使って、設計を細かく調整。
- OEM(純正装着)タイヤ開発で得られる車メーカーとの共同知見も差につながる。

独自のレシピによる配合技術、精密な成形と加硫、組み立てのばらつき抑制、製造製フォト品質管理などがタイヤの品質に大きく影響します。
具体的にどのような規制変化が起きているのか
タイヤ業界における「規制の変化」は、環境・安全・性能表示などの分野で世界的に強化されており、メーカーの開発・生産戦略に大きな影響を与えています。以下に主な例を挙げます
1. 環境規制(CO₂排出・燃費基準)
- EUの「タイヤラベリング規則」では、転がり抵抗(燃費性能)、ウェットグリップ(制動性能)、騒音の等級表示が義務化。
- これにより、燃費を良くするために転がり抵抗を下げる技術が求められます。
- 各国の車両燃費基準(CAFE規制など)も間接的にタイヤ性能に影響を与える。
2. マイクロプラスチック規制
- タイヤの摩耗による粒子(Tire and Road Wear Particles, TRWP)が海洋プラスチック問題の一因とされ、EUを中心に規制導入が進行中。
- これにより、摩耗しにくい・粒子が出にくいタイヤ開発が必要に。
3. リサイクル・循環型対応
- 使用済みタイヤの回収・再利用義務や、リサイクル材の使用比率に関する規制。
- 例:EUグリーンディール、カーボンニュートラル政策、再生材料の使用推奨など。
4. ノイズ規制
- EUでは外部騒音規制が強化されており、特に都市部向けのEV車用タイヤでは「静音性」が必須に。
- タイヤのトレッド設計や素材で対応が必要。
5. 冬用タイヤ・ラベリングの義務化(特に欧州)
- 3PMSF(3つの山と雪の結晶)マーク取得が冬季タイヤの必須条件となる地域も。
- これにより、メーカーは全シーズンタイヤや冬タイヤの性能強化が求められる。
6. 電動車(EV)対応タイヤ基準の出現
- EVは重量が重くトルクが高いため、通常のタイヤでは対応が難しく、規格が細かくなってきている。
- 例:低ノイズ、高耐摩耗性、低転がり抵抗を同時に求める規制指針が増加。

燃費の改善への貢献、マイクロプラスチック規制、原料に占めるリサイクル材料の比率の向上やノイズ規制などの規制の変化が見られます。
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