この記事で分かること
- PHVとは:プラグインハイブリッド車の略称で、ガソリンエンジンと電気モーターを搭載し、外部からの充電が可能な点が特徴です。
- BYDの戦略:独自の高性能PHV技術「DM-i」を強みとし、EVと並ぶ主力製品として世界展開しています。航続距離の長さとコストの安さで展開を狙っています。
BYD、PHVの世界展開加速
中国の自動車メーカーBYDは、プラグインハイブリッド車(PHV)の世界市場での展開を加速させています。これは、単にEV(電気自動車)だけでなく、PHVも重要な戦略的柱と位置づけているためです。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC283JG0Y5A820C2000000/
BYDは2030年までに海外売上比率を50%に引き上げるという野心的な目標を掲げており、その達成にはPHVが重要な役割を果たすと見られています。また、各国の貿易障壁や競争の激化といった課題に直面する中でも、BYDの垂直統合によるコスト優位性や、迅速な製品開発能力を武器に、PHV市場での存在感をさらに高めていくと予想されます。
PHVとは何か
PHVとは、Plug-in Hybrid Vehicle(プラグインハイブリッド車)の略称です。これは、ガソリンエンジンと電気モーターの両方を搭載しており、外部からの充電が可能なハイブリッド車を指します。
PHVの主な特徴
- 外部充電機能: 最も大きな特徴は、自宅のコンセントや充電スタンドなど、外部から直接バッテリーに充電できることです。これにより、EV(電気自動車)のように電気の力だけで走行する「EV走行」が可能になります。
- エンジンとモーターの併用: バッテリーの電力が少なくなったり、加速時や長距離走行時など、必要に応じてガソリンエンジンが作動します。これにより、バッテリー切れの心配なく、安心して長距離移動ができます。
- 大容量バッテリー: 通常のハイブリッド車(HV)に比べて、より大きなバッテリーを搭載しています。そのため、電気だけで走行できる距離が長くなります。
PHVのメリット
- 経済性: 日常の買い物や通勤などの短距離移動では、充電した電気だけで走行できるため、ガソリンをほとんど消費しません。これにより、燃料費を大幅に抑えることができます。
- 航続距離の安心感: バッテリーが切れてもガソリンエンジンで走行できるため、充電インフラが整っていない場所でも安心して運転できます。長距離ドライブでも充電スポットを気にしすぎる必要がありません。
- 高い環境性能: EV走行時はガソリンを消費しないため、CO2排出量を抑えることができ、環境に優しいです。
- 非常用電源としての活用: 大容量のバッテリーを搭載しているため、災害時やアウトドアなどで、車から家電に電気を供給できる車種もあります。
PHVは、EVとハイブリッド車のそれぞれのメリットを組み合わせた、非常にバランスの取れた選択肢と言えます。メーカーによっては、「PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)」と表記されることもありますが、本質的には同じものです。

PHVは「プラグインハイブリッド車」の略称です。ガソリンエンジンと電気モーターを搭載し、外部からの充電が可能です。日常の短距離移動は電気で、長距離はガソリンで走行できるため、経済的で航続距離の心配がありません。
ハイブリッド車との違いは
PHVとハイブリッド車(HV)の最大の違いは、外部からの充電が可能かどうかです。
- ハイブリッド車(HV):
- ガソリンエンジンが主動力で、電気モーターは補助的な役割を果たします。
- バッテリーは、エンジンの力や、減速時のエネルギー(回生ブレーキ)で自動的に充電されます。
- 外部からプラグを差し込んで充電することはできません。
- プラグインハイブリッド車(PHV):
- HVと同じく、ガソリンエンジンと電気モーターの両方を搭載しています。
- HVの充電方法に加えて、自宅や充電スタンドなどで外部から直接充電できます。
- HVよりも大容量のバッテリーを搭載しており、電気だけで走行できる距離が大幅に長いです。
まとめると、PHVはHVに「外部充電機能」と「長距離のEV走行能力」を追加した、より電気を積極的に活用する車です。 この違いにより、日常の短距離移動ではガソリンをほとんど使わずに走行できるというメリットが生まれます。

ハイブリッド車(HV)は、エンジンの力や回生ブレーキでバッテリーを充電します。一方、プラグインハイブリッド車(PHV)は、HVの機能に加え、外部からの充電が可能です。PHVはより大きなバッテリーで、電気だけで長距離走行できます。
BYDのPHVの戦略は何か
BYDのPHV戦略は、EV(電気自動車)とPHVの両方を主力とする「デュアル・テクノロジー戦略」に集約されます。これは、単にEVに注力するのではなく、各国の市場環境や消費者のニーズに合わせて柔軟に対応するためのものです。
戦略の主な柱
- 独自のPHV技術「DM-i」の推進:
- BYDのPHV戦略の核となるのが、独自の「DM-i(デュアルモード・インテリジェント)」技術です。
- この技術は、エンジンとモーターを効率的に組み合わせることで、低燃費と長距離航続を同時に実現します。例えば、第5世代のDM技術は、熱効率46.06%を達成し、満充電・満タンで2,100kmの航続距離を可能にしたと発表されています。
- これにより、充電インフラが不十分な地域でも、EVのような高い経済性と、ガソリン車のような利便性を両立できることをアピールしています。
- 海外市場への積極的な展開:
- BYDは、中国国内でPHV販売がEVを上回る成功を収めた実績を背景に、海外市場でもPHVを戦略的に投入しています。
- 特に、充電インフラがまだ整備途上にある国や地域(例:メキシコ、ブラジル、トルコなど)では、航続距離の不安を抱える消費者にPHVが受け入れられやすいと判断しています。
- 欧州市場でも、EVへの関税や消費者のハイブリッド車への嗜好を考慮し、PHVを重要なラインナップとして位置づけています。
- 垂直統合によるコスト競争力:
- BYDは、バッテリー、半導体、モーターといった主要な部品を自社で一貫生産する「垂直統合」体制を構築しています。
- これにより、部品供給のリスクを低減し、かつ製造コストを大幅に抑えることが可能です。
- このコスト優位性を活かし、高性能ながらも手頃な価格のPHVを提供することで、特に新興国市場で高い競争力を発揮しています。
- 多様な車種展開:
- セダン、SUV、ピックアップトラックなど、PHVのラインナップを多様化させています。
- これにより、様々な消費者のライフスタイルやニーズに対応し、より多くの市場セグメントでシェアを獲得することを目指しています。
BYDは、PHVをEV市場への参入障壁を下げるための「移行期」の製品と捉えるのではなく、EVと並ぶ長期的な主力製品として位置づけています。この戦略により、BYDは世界の自動車市場における存在感をさらに高めています。

BYDは独自の高性能PHV技術「DM-i」を強みとし、EVと並ぶ主力製品として世界展開しています。充電インフラが未整備な地域でも航続距離の安心感をアピールし、垂直統合によるコスト優位性で市場シェア拡大を目指します。
日本やアメリカでのPHVのシェアは
日本とアメリカでは、PHVの市場シェアや普及状況が異なります。
日本におけるPHVのシェア
日本では、PHVの普及は徐々に進んでいるものの、新車販売全体に占めるシェアはまだ小さいです。ただし、特定の車種では高い人気を誇っています。
- 市場全体におけるシェア: 日本におけるPHVの販売台数は、乗用車全体の1%台で推移しています。これはEV(電気自動車)とほぼ同等か、それよりわずかに低い水準です。
- 主要メーカー: 国内では、三菱自動車とトヨタがPHV市場を牽引しています。特に三菱の「アウトランダーPHEV」は、長年にわたり国内のPHV販売台数で首位を維持しており、トヨタの「プリウスPHV」や「RAV4 PHV」も人気車種となっています。
アメリカにおけるPHVのシェア
アメリカでは、PHVの販売台数は増加傾向にあり、市場全体に占めるシェアも日本より高い水準にあります。
- 市場全体におけるシェア: アメリカの新車販売全体に占めるPHVのシェアは、2024年のデータで約2%となっています。EV(BEV)のシェアが8%台であるのに比べるとまだ小さいですが、増加率は高いです。
- 主要メーカー:
- ジープやフォードなどのアメリカメーカーが、主力車種にPHVモデルを導入してシェアを拡大しています。
- トヨタやヒョンデなど、海外メーカーもPHVモデルを積極的に展開しています。
まとめ
- 日本: PHVの市場シェアはまだ小さいですが、特定の人気車種が市場を支えています。
- アメリカ: PHVの販売台数とシェアは増加傾向にあり、EVに比べるとシェアは低いものの、市場での存在感を高めています。
両国とも、充電インフラへの不安や航続距離の懸念から、完全なEVよりもPHVを選択する消費者が一定数存在しており、今後も市場が拡大していく可能性があります。
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