ペロブスカイト太陽電池の実証実験 ペロブスカイト太陽電池とは何か? 従来の太陽電池との違いは?

この記事で分かること

・ペロブスカイト太陽電池とは: ABX₃ 型の結晶構造を持つペロブスカイト材料を用いた次世代の太陽電池です。

・従来のシリコン型との違い:製造・設置コストが低い、折り曲げられるため、ウェアラブルデバイスに適用できるなどの特長持っています。

・なぜ折り曲げが可能か:ペロブスカイト自身が薄いこと、溶液の塗布によって低温で作成可能なため、高温に弱いフレキシブル材料の上に作成できる点から折り曲げが可能となります。

ペロブスカイト太陽電池の実証実験

 アイシンが自社の工場でペロブスカイト太陽電池の実証実験を始めたことがニュースになっています。

 https://newswitch.jp/p/45202

  工場敷地内施設の壁面や屋根に順次設置し、評価を行う予定です。運用の結果から社会実装に向けた課題を洗い出し、その解決策を検討するとしています。

ペロブスカイト太陽電池とは何か

 ペロブスカイト太陽電池(Perovskite Solar Cells, PSCs)は、ペロブスカイト構造を持つ有機-無機ハイブリッド材料を用いた次世代の太陽電池です。

 シリコン太陽電池に比べて製造コストが低く、軽量で柔軟な設計が可能であるため、注目を集めています。

1. ペロブスカイト太陽電池の構造

ペロブスカイト材料は一般に ABX₃ 型の結晶構造を持ちます。ここで:

  • Aサイト:メチルアンモニウム(MA⁺)、ホルムアミジニウム(FA⁺)などの有機カチオン
  • Bサイト:鉛(Pb²⁺)やスズ(Sn²⁺)
  • Xサイト:ハロゲン(I⁻, Br⁻, Cl⁻)

太陽電池の構成としては以下のような層構造になります:

  1. 透明電極(ITO, FTO)
  2. 電子輸送層(TiO₂, SnO₂ など)
  3. ペロブスカイト吸収層(光を吸収し電荷を生成)
  4. ホール輸送層(Spiro-OMeTAD, PTAA など)
  5. 対極(Au, Ag など)

2. メリット

高い変換効率

  • 初期のペロブスカイト太陽電池は変換効率が3%程度でしたが、現在では25%以上に到達しており、シリコン太陽電池に迫る性能です。

低コスト製造

  • 溶液プロセス(スピンコーティング、インクジェット印刷など)で製造可能なため、シリコン太陽電池よりも安価に大量生産が可能。

軽量・柔軟

  • フレキシブル基板上に作製できるため、ウェアラブルデバイスや建材一体型太陽電池(BIPV)など、新しい用途が期待される。

3. 課題

耐久性・安定性の問題

  • ペロブスカイト材料は水分や酸素に弱く、劣化しやすい(寿命が短い)。
  • 高温や紫外線による分解が起こりやすい。

鉛の環境問題

  • 多くの高性能ペロブスカイト材料には鉛(Pb)が含まれており、環境負荷の問題がある。鉛フリーの代替材料としてスズ(Sn)系が研究されているが、安定性の課題がある。

大面積化の課題

  • 実験室レベルでは高効率だが、商業レベルでの大面積化・量産技術が未確立。

4. 今後の展望

  • 耐久性向上のための新材料開発(2D/3Dハイブリッドペロブスカイトなど)
  • 鉛フリー材料(Sn系ペロブスカイト、Bi系ペロブスカイトなど)の開発
  • シリコンとのハイブリッド(タンデム型)太陽電池で40%超の変換効率を目指す
  • ロール・ツー・ロール印刷技術による大規模製造

 ペロブスカイト太陽電池は、研究開発が急速に進んでおり、数年以内に商用化が本格化する可能性が高い分野です。

ペロブスカイト太陽電池は、 ABX₃ 型の結晶構造を持つペロブスカイト材料を用いた次世代の太陽電池です。

シリコン太陽電池との違いは何か

1. 材料の違い

項目ペロブスカイト太陽電池シリコン太陽電池
主材料ペロブスカイト(有機-無機ハイブリッド化合物)シリコン(単結晶/多結晶)
構造ABX₃型(例:MAPbI₃)Si単結晶や多結晶
厚さ数100 nm(非常に薄い)数100 μm(厚い)
フレキシブル性あり(曲げられる)なし(硬い)

→ ペロブスカイトは軽量・フレキシブル、シリコンは頑丈で安定性が高い。

2. 製造プロセスの違い

項目ペロブスカイト太陽電池シリコン太陽電池
製造方法溶液プロセス(スピンコーティング、印刷)高温プロセス(CVD、拡散工程)
製造温度低温(~200℃以下)高温(~1000℃)
プロセスの複雑さ簡単(安価に作れる)複雑(クリーンルームが必要)

→ ペロブスカイトは低温・簡単な製造が可能だが、シリコンは高温・複雑な工程が必要。

3. 性能の違い

項目ペロブスカイト太陽電池シリコン太陽電池
変換効率25%超(研究レベル)26~27%(単結晶Si)
安定性低い(湿気や熱で劣化)高い(20年以上の寿命)
劣化要因水分、酸素、紫外線なし(比較的安定)

→ ペロブスカイトは高効率だが劣化しやすく、シリコンは長寿命・安定性が高い。

4. コストの違い

項目ペロブスカイト太陽電池シリコン太陽電池
製造コスト低い(安価な材料+簡単な工程)高い(精密工程+高温処理)
設置コスト低コスト(軽量・フレキシブル)高コスト(重くて設置が大変)

→ ペロブスカイトは製造・設置コストが低く、シリコンは高コストだが信頼性が高い。

5. 用途の違い

項目ペロブスカイト太陽電池シリコン太陽電池
用途ウェアラブル、建材一体型(BIPV)、モバイルデバイス大規模発電(住宅、メガソーラー)
展開可能性軽量・柔軟なので新用途に適応既存のインフラに適応

→ ペロブスカイトは新しい分野(建築・IoT)向け、シリコンは主流の発電用途向け。

ペロブスカイト型の太陽電池は製造・設置コストが低い、折り曲げられるため、ウェアラブルデバイスに適用できるなどの特長から新しい分野での利用が期待されています。

なぜ、フレキシブル基板の上に作成できるのか

 ペロブスカイト太陽電池がフレキシブル基板上に作成できる理由は、主にその製造プロセスと材料特性にあります。

1. 溶液プロセスによる製造

 ペロブスカイト太陽電池は、溶液プロセスを用いて製造されるため、基板に薄膜を塗布することができます。

 この方法では、高温を必要とせず、基板に簡単に薄膜を形成できるため、一般に高温に弱いフレキシブルな材料にも対応可能です。例えば、スピンコーティングやインクジェット印刷などの技術を使用することで、薄膜を均等に塗布することができます。

2. 低温での製造

 ペロブスカイト材料は、低温(通常200℃以下)で製造可能であり、これにより、耐熱性が低いプラスチックや金属箔などのフレキシブルな基板を使用することができます。高温が必要なシリコン太陽電池と違って、ペロブスカイトは低温で安定して結晶化するため、柔軟な基板に適しています。

3. ペロブスカイトの特性

 ペロブスカイト材料自体は、非常に薄くて軽量です。このため、曲げたり変形したりしても破損しにくく、フレキシブルな基板の上でも十分に機能します。また、ペロブスカイトは高い光吸収効率を持ち、薄い膜でも十分な発電性能を発揮するため、柔軟な基板でも効率的にエネルギーを生成できます。

4. 多様な基板の選択肢

 ペロブスカイト太陽電池は、プラスチック基板や金属箔基板、さらにはガラス基板にも適応可能です。この柔軟性により、ウェアラブルデバイスや建材一体型太陽電池(BIPV)など、さまざまな形態での活用が期待されています。

ペロブスカイト自身が薄いこと、溶液の塗布によって低温で作成可能なため、高温に弱いフレキシブル材料の上に作成できる点から折り曲げが可能となります。

日本メーカーではどんな企業が開発を行っているのか

1. 積水化学工業株式会社

 積水化学工業は、耐久性に優れたペロブスカイト太陽電池の開発を進めています。​複数の事業者と実証実験を行い、2030年までに量産体制を整えることを目指しています。 ​

2. 株式会社アイシン

自動車部品やエネルギー関連製品を手掛けるアイシンは、2025年に開始予定の実証実験に向けて、ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた技術開発を進めています。​将来的には、グループ企業の拠点に設置し、カーボンニュートラルの実現を目指しています。

3. 株式会社NTTデータ

 NTTデータは、2030年度までに全てのデータセンターをカーボンニュートラルにする目標を掲げています。​その一環として、2023年4月から積水化学工業と共同で、国内初となる建物の外壁にペロブスカイト太陽電池を設置する実証実験を開始しました。

4. 株式会社エネコートテクノロジーズ

 京都大学発のスタートアップであるエネコートテクノロジーズは、「どこでも電源」というペロブスカイト太陽電池と関連材料の開発・製造・販売を行っています。​同社の製品は、曇りの日や室内照明などの弱い光でも高いエネルギー変換効率を持つ点が特徴です。 ​

5. 株式会社東芝

 東芝は、ペロブスカイト太陽電池とタンデム型太陽電池の両方の開発に注力しています。​1回の材料塗布で発電効率15.1%のペロブスカイト太陽電池を製造する技術の開発に成功し、製造プロセスの短縮と大面積での高品質な製造を可能にしています。

6. トヨタ自動車株式会社

 トヨタ自動車は、車載用ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けて、2023年6月にエネコートテクノロジーズと共同開発を開始しました。​2030年までに電気自動車の屋根などへの搭載を目指しています。

​7. ニチコン株式会社

 ニチコンは、エネコートテクノロジーズ、リコー電子デバイス株式会社と共同で、2021年にペロブスカイト太陽電池を電源に活用した電子棚札システムを開発しました。​これにより、電子棚札の電池交換費用の削減が期待されています。 ​

多くの企業が、ペロブスカイト太陽電池の実用化と量産化に向けて積極的に取り組んでおり、今後の再生可能エネルギー分野での活躍が期待されています。

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