この記事で分かること
・ファラデー素子とは:、磁場によって光の偏光面を回転させる光学素子であり、特に、高出力レーザーの光アイソレーター(光の一方向通過を可能にする装置)に利用されます。
・核融合での必要性:レーザー核融合ではレーザーで高温高圧にしているため、レーザーの反射光を防ぐ必要があり、光アイソレーターによって一方向に進む光のみを透過させ、逆向きの光(反射光)を遮断することが必要なため。
・ガラス製の利点:大口径対応、耐レーザー損傷性の向上、低コスト・均質性、高光の偏光回転効率、広い応用範囲です。
ガラス製ファラデー素子の開発
日本電気硝子株式会社が、大阪大学レーザー科学研究所、核融合科学研究所、京都大学と共同で、大型高出力レーザーのキーパーツとなる「ガラス製ファラデー素子」を開発したことがニュースになっています。

この成果は、レーザー核融合の実現可能性を高めるとともに、宇宙デブリの除去や重粒子線がん治療など、先端的な応用分野への貢献が期待されます。
レーザー核融合とは何か
核融合(Nuclear Fusion)とは、軽い原子核同士が結合し、より重い原子核を形成する過程で大量のエネルギーを放出する反応のことです。核融合反応の代表例は、水素の同位体である重水素(²H)と三重水素(³H)の融合反応です。
これは太陽や恒星のエネルギー源と同じ原理であり、クリーンで莫大なエネルギー供給が可能
燃料が豊富で環境負荷が少ないなど、次世代のクリーンエネルギーとして注目されています。
一方で子核同士が融合するには超高温・超高圧の環境が必要であり、超高温プラズマの安定制御やコスト削減が課題とされます。
レーザー核融合
強力なレーザーで燃料(重水素・三重水素のカプセル)を圧縮し、瞬間的に高温・高圧にする方式。アメリカのNIF(National Ignition Facility)や、日本の大阪大学「LFEX」が代表例。
ファラデー素子とは何か
ファラデー素子(Faraday Element)は、磁場によって光の偏光面を回転させる「ファラデー効果(Faraday Effect)」を利用する光学素子です。特に、高出力レーザーの光アイソレーター(光の一方向通過を可能にする装置)において重要な役割を果たします。
ファラデー素子の原理
ファラデー素子の基本原理は、磁場をかけると光の偏光面が回転する「ファラデー効果」に基づいています。
- 磁場の方向に応じて、光の偏光方向が変化。
- この回転角度は、光の波長・磁場の強さ・材料の性質(ヴェルデ定数)によって決まる。
- 逆向きに戻る光も同じ角度だけ回転するため、特定の偏光状態の光のみを通し、反射光を遮断できる。
ファラデー素子の用途
- レーザー光アイソレーター
- 高出力レーザーシステムで不要な反射光を防ぐ。
- レーザーの安定性向上に寄与。
- 通信分野(光ファイバー)
- 光信号の逆戻りを防ぎ、信号の劣化を抑える。
- レーザー核融合技術
- 高エネルギーレーザーの安定化に貢献し、核融合実験の成功率向上。
- 医療・工業用途
- 医療用レーザーや半導体製造のレーザー加工装置にも使用。
日本電気硝子の「ガラス製ファラデー素子」の特長
- 高出力対応: 大口径ビーム(約90mm)対応でレーザー核融合実験に最適。
- 自社開発の磁気光学ガラスを採用し、高いヴェルデ定数と耐久性を実現。
ファラデー素子は、レーザー技術の発展に不可欠な光学部品であり、特にレーザー核融合や次世代エネルギー技術の鍵を握る重要なコンポーネントです。

ファラデー素子は、磁場によって光の偏光面を回転させる光学素子です。特に、高出力レーザーの光アイソレーター(光の一方向通過を可能にする装置)に利用されるもので、レーザー技術の発展に不可欠な光学部品です。
なぜファラデー素子が核融合に必要なのか
ァラデー素子が核融合に必要な理由は、高出力レーザーを安定して運用するために、不要な反射光を防ぐ役割を果たすからです。
特に、レーザー核融合では極めて強力なレーザーを使用するため、反射光がシステムに悪影響を及ぼさないようにすることが重要になります。
1. レーザー核融合におけるレーザーの役割
レーザー核融合では、超高出力のレーザー光を燃料ペレットに照射し、その圧縮と加熱によって核融合反応を引き起こす方法が採用されています。代表的な施設には以下のようなものがあります。
- NIF(米・国立点火施設)
- LFEX(日本・大阪大学レーザー科学研究所)
- SENJU(日本・核融合科学研究所)
これらの装置では、ペタワット(10¹⁵W)級の超高出力レーザーを使用し、ターゲット(燃料ペレット)に正確にエネルギーを集中させる必要があります。
2. 反射光が問題になる理由
レーザー核融合の実験環境では、レーザー光の一部がターゲットや光学部品から反射することがあります。この反射光が問題になる理由は以下の通りです。
- レーザーの不安定化:反射光がレーザー発振器(増幅器)に戻ると、光学系の動作が乱れ、出力が不安定になる。
- 光学部品の損傷:高エネルギーのレーザー光が意図しない方向へ進むことで、ミラーやレンズにダメージを与える。
- エネルギー損失:反射によってレーザーの出力効率が低下し、核融合の成功率に影響を与える。
3. ファラデー素子の役割
この反射光の問題を解決するために、光アイソレーター(特定方向の光のみを通すデバイス)が必要になります。
- ファラデー素子は、磁場の影響を受けて光の偏光面を回転させる。
- これを偏光子と組み合わせることで、一方向に進む光のみを透過させ、逆向きの光(反射光)を遮断する。
- 結果として、レーザー発振器を反射光から保護し、安定した核融合実験を実現する。
4. 日本電気硝子の「ガラス製ファラデー素子」が果たす役割
日本電気硝子が開発したガラス製ファラデー素子は、以下の点でレーザー核融合に適しています。
- 大口径ビーム(90mm)対応:超高出力レーザーシステムに適合。
- 高耐久性の磁気光学ガラスを使用:レーザー損傷を抑えつつ高いヴェルデ定数を実現。
- 「SENJU」レーザー装置への導入:実際のレーザー核融合装置で使用されており、実験の安定化に貢献。

ファラデー素子は、レーザー核融合で不可欠な光アイソレーターの主要部品として、 反射光を防ぐことで、レーザーの安定動作を確保、 反射光による損傷を防止、エネルギーのロスを防ぐなどの働きをしています。
ガラスファラデー素子の利点は何か
ガラス製ファラデー素子は、従来の結晶系ファラデー素子と比べて高出力レーザーに適した特性を持つことが最大の利点です。以下に、具体的なメリットを解説します。
1. 大口径・高出力レーザー対応
- ガラスは大面積(大口径)に成形しやすいため、レーザー核融合のような大型高出力レーザーに適しています。
- 結晶材料(例:テルビウムガリウムガーネット〈TGG〉)はサイズ拡張が難しいため、大口径化が困難。
2. 高い耐レーザー損傷性
- レーザー核融合ではペタワット(10¹⁵W)級の超高エネルギーが扱われるため、光学素子が損傷しにくいことが重要。
- ガラスは均一な構造を持ち、結晶よりも局所的な欠陥が少ないため、高エネルギーのレーザーにも耐えやすい。
3. 均質性の高さと低コスト
- 結晶材料は成長に時間がかかり、コストが高いが、ガラスは大量生産が容易。
- 均一な組成を持ち、材料のバラつきが少ないため安定した光学性能を得られる。
4. 高いヴェルデ定数(光の偏光回転効率)
- 日本電気硝子の開発した磁気光学ガラスは、高いヴェルデ定数(磁場による偏光回転の度合い)があり、コンパクトなファラデー素子の設計が可能。
- TGG(テルビウムガリウムガーネット)よりも高い磁気光学効果を持つガラスを開発しており、性能向上に貢献。
5. 応用範囲の広さ
- 光アイソレーターとしての最適化だけでなく、レーザー加工、医療用レーザー、通信分野でも応用可能。
- 核融合以外にも、宇宙デブリ除去技術や重粒子線がん治療など、先端技術分野での活用が期待される。

ガラス製ファラデー素子の利点は、①大口径対応、②耐レーザー損傷性の向上、③低コスト・均質性、④高ヴェルデ定数、⑤広い応用範囲です。
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