デクセリアルズのADAS向け防曇フィルムや黒インク 防曇フィルムや黒インクの役割は?

この記事で分かること

  • デクセリアルズとは:異方性導電膜(ACF)や反射防止フィルムなど、スマートフォンや車載ディスプレイに不可欠な高機能材料や電子部品をグローバルに提供する日本のメーカーです。
  • 防曇フィルムとは:親水性などの特殊加工により、表面についた水蒸気を小さな水滴(結露)ではなく薄い水の膜として広げ、光の乱反射を防ぎます。ADAS向けには、長期間安定した防曇効果を持ち、光の信号を妨げない高い光透過率と低反射率が必須です。
  • 黒インクの役割:、車載カメラ内部の反射光(迷光)を吸収し、光ノイズを抑制するための特殊な遮光性インクです。これにより、カメラの画像認識精度を向上させ、システムの誤作動を防ぐ重要な役割を果たします。

デクセリアルズのADAS向け防曇フィルムや黒インク

 デクセリアルズは、米国で開催される複数の展示会で、車載ディスプレイや光通信向けの高機能フィルムや開発品を出展する予定です。

デクセリアルズはどんな企業か

デクセリアルズ株式会社は、スマートフォン、自動車、そして新たな成長分野であるフォトニクス(光半導体)領域などに、独自性の高い機能性材料電子部品を提供する日本のメーカーです。

ソニーグループから独立した経緯を持ち、ニッチな市場で世界シェアNo.1を誇る製品を複数持つ、高い技術力を強みとする企業です。

主な事業と製品

 デクセリアルズの主力製品は、製品の小型化・薄型化や、ディスプレイの視認性向上などに貢献する、非常に重要な役割を担っています。

製品カテゴリ主な製品名特徴と用途
接合材料異方性導電膜(ACF)導通、絶縁、接着の3機能を持ち、ディスプレイICチップの実装などに使用され、製品の小型化・薄型化に貢献します。世界トップクラスのシェアを誇ります。
光学材料光学弾性樹脂(SVR)スマートフォンや車載ディスプレイのパネルとカバーガラスの隙間に充填し、視認性を向上させます。
反射防止フィルム(AR)ディスプレイの外光反射を低減し、視認性を高めるフィルム。車載ディスプレイなどでの採用が拡大しています。
電子部品表面実装型ヒューズリチウムイオンバッテリーの過充電・過電流から機器を保護するセルフコントロールプロテクター(SCP)などに使われます。
熱対策熱伝導シートICチップなどから発生する熱を効率よく放熱し、デバイスの性能を守ります。

成長の方向性

 デクセリアルズは、これまで培ってきたエレクトロニクス分野の技術を活かし、特に以下の分野を新たな成長の柱として注力しています。

  1. 自動車領域
    • 先進運転支援システム(ADAS)の進化に伴う車載ディスプレイの大型化・増加に対応。
  2. フォトニクス領域
    • 生成AIの普及によるデータセンターの需要増加を見据え、高速通信を支える光半導体デバイスの製造・販売を強化しています。

 これらのように、デクセリアルズは、独自の高い技術力に基づいた高付加価値な製品をグローバルに展開している企業です。

デクセリアルズは、異方性導電膜(ACF)や反射防止フィルムなど、スマートフォンや車載ディスプレイに不可欠な高機能材料電子部品をグローバルに提供する日本のメーカーです。ニッチな市場で世界トップシェアを持つ製品を複数擁し、高い技術力を強みとしています。

防曇フィルムとは何か

 防曇フィルム(ぼうどんフィルム、Anti-Fog Film)とは、ガラスやプラスチックなどの表面に水滴がついて「曇ってしまう」現象を防ぎ、クリアな視界を保つための特殊な機能性フィルムです。

 曇りの主な原因は、温度差や高い湿気によって空気中の水蒸気が表面で冷やされ、微細な水滴(結露)として付着し、光を乱反射させることです。

防曇の仕組み

 防曇フィルムは、主に以下のメカニズムで曇りを防ぎます。

  1. 親水性による水膜形成(主流)
    • フィルムの表面を親水性の高い素材で加工します。
    • 水蒸気が付着しても、水滴(玉状)にならず、表面に薄く均一な水の膜(水膜)として広がります。
    • 水膜は光を乱反射させないため、透明性が保たれ、曇りを抑えられます。
  2. 吸湿性による水分吸収
    • フィルムが水分を吸収することで、表面に水滴が形成されるのを防ぎます。

主な用途

 防曇フィルムは、温度や湿度の変化が激しい環境や、水分が発生しやすい場所で広く使われています。

  • 食品包装:スーパーなどで見られる野菜や果物のパッケージ(ボードン袋)の内側に使われ、水滴による鮮度劣化や見栄えの悪化を防ぎます。
  • ガラス:浴室の鏡や窓、冷凍・冷蔵ケースのドア。
  • 医療・安全:フェイスシールド、保護ゴーグル、カメラのレンズ。
  • 自動車:フロントガラスの一部やミラー(メーカーによって技術は異なる)。

 デクセリアルズ社も、親水性の高いモスアイ構造を持つ反射防止フィルム(ARフィルム)が、医療用アイシールドなどで呼気による曇りを抑える効果があるとしています。

防曇フィルムは、親水性などの特殊加工により、表面についた水蒸気を小さな水滴(結露)ではなく薄い水の膜として広げ、光の乱反射を防ぎます。これにより、浴室の鏡や食品包装などでクリアな視界を保ちます。

先進運転支援システム(ADAS)向けの黒インクとは何か

 先進運転支援システム(ADAS)向けの黒インクは、主に車載カメラやセンサーの周囲に塗布され、システムの性能低下や誤作動の原因となる「迷光(ストレイライト)」を防ぐために使用される特殊な遮光性インクです。

黒インクの役割と機能

 ADASカメラは、安全な運転支援のために非常に高精度な画像認識を必要とします。この黒インクは、その精度を維持するための重要な役割を果たします。

  1. 迷光(ストレイライト)の抑制
    • カメラのレンズやセンサーの周辺部品に光が当たって反射し、意図しない場所(センサー受光部など)に入り込む光を迷光と呼びます。
    • この迷光がノイズとなり、カメラが捉える画像が白飛びしたり、コントラストが低下したりして、システムの誤認識や性能低下につながります。
    • 黒インクは、カメラモジュール内部のブラケット(支持金具)などの表面に塗布され、光を吸収して反射を抑え、迷光の発生を大幅に低減します。
  2. 特定の波長透過(設計による)
    • 一般的な遮光目的の黒インクとは異なり、製品によっては赤外線(IR)センサーが組み込まれている場合、特定の波長(例:赤外線)は透過させ、可視光だけを遮るように設計されることがあります。これにより、センサーの機能性を妨げずに遮光効果を得られます。

 デクセリアルズ社も、この種の黒インクを出展しており、光の反射を抑えることで、カメラやセンサーへの光学ノイズ低減に貢献する製品として紹介しています。

ADAS向けの黒インクは、車載カメラ内部の反射光(迷光)を吸収し、光ノイズを抑制するための特殊な遮光性インクです。これにより、カメラの画像認識精度を向上させ、システムの誤作動を防ぐ重要な役割を果たします。

ADAS向けの防曇フィルムに求められる性能は

 先進運転支援システム(ADAS)のカメラやセンサーは、安全に直結するため、通常の防曇フィルムよりもはるかに厳しく、複合的な性能が求められます。

主な要求性能は以下の通りです。

1. 高い光学性能(曇り防止と視認性の確保)

  • 持続的な防曇性能: 温度や湿度の変化が激しい車外環境下(例:雨の日のトンネル出入り口、急激な冷え込みなど)でも、素早く、長期間にわたって安定して曇りを防止し続けること。
  • 高い透過率・低反射率: センサーやカメラが捉える光の信号を妨げないよう、光をできる限り透過(95%以上など)させ、反射(迷光の原因)を極限まで抑えること。
  • 光学特性の安定性: フィルムが水膜を形成した際や、長期間使用した後も、光学的歪みや色調変化がなく、認識精度に影響を与えないこと。

2. 高い耐久性と信頼性

  • 耐候性: 直射日光(UV)、寒暖差、酸性雨、排気ガス、塩害など、過酷な車外環境に長期間耐えること。
  • 耐摩耗性・耐擦傷性: 洗車や飛び石などによるキズや摩耗に強く、防曇効果や光学性能が低下しないこと。(ヒーター式と異なり、防曇フィルムはヒーターが不要なため、この耐久性が特に重要)
  • 密着性: 車両の振動や温度変化によって、カバーガラスから剥がれたり、気泡が発生したりしないこと。

3. 低消費電力への貢献

  • ヒーターレス化への寄与: 従来、曇り防止には電力を使うヒーターが使われてきましたが、防曇フィルムは電力消費を抑えながら曇りを防ぐため、自動車の燃費・電費向上に貢献することが求められます。

 デクセリアルズ社などが開発を進める防曇機能を持つ反射防止フィルムは、これらの厳しい要求に応えるため、高い耐久性と優れた光学特性を両立させた製品を目指しています。

ADAS向け防曇フィルムは、過酷な環境下で長期間安定した防曇効果を持ち、光の信号を妨げない高い光透過率と低反射率が必須です。さらに、洗車や飛び石に耐える高い耐候性と耐久性も求められます。

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