この記事で分かること
- どんな分野で連携するのか:主にモビリティとライフサイエンスです。EV向けの薄型・軽量なシート型コイルを用いた無線給電システムや、インドの強みである医薬品産業を背景とした医薬原薬(API)の合成ルート開発を推進します。
- シート型コイルとは:DNPのシート型コイルは、印刷技術でフィルム等に薄い金属回路を形成した部品です。従来の巻線より圧倒的に薄く軽量なのが特徴。主な用途はEVのワイヤレス給電や精密機器の省スペース化、ドローンの軽量化です。
- なぜインドなのか:インド工科大学の高度なIT・エンジニア人材を確保し、急成長する現地市場での社会実装を加速するためです。ハイデラバード校周辺の産業クラスターを活用し、中東・アフリカ圏への展開拠点とも位置づけます。
DNPのインドでの新たな研究拠点
大日本印刷(DNP)がインド工科大学ハイデラバード校(IITH)と連携し、インドに新たな研究拠点を設置することを発表しています。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2758M0X20C26A3000000/
この動きは、DNPが印刷技術で培った強みを「次世代モビリティ」や「ライフサイエンス」といった成長分野へ応用し、グローバル展開を加速させる戦略の一環です。
どんな分野で連携するのか
大日本印刷(DNP)とインド工科大学ハイデラバード校(IITH)との連携は、主に「モビリティ」と「メディカルヘルスケア」の2つの重点分野で進められます。
具体的には、DNPが培ってきた微細加工や精密塗工などの「印刷プロセス技術」を、インドの高度なIT・エンジニア人材や産業基盤と掛け合わせることで、以下のテーマを推進します。
1. モビリティ分野:EV向け無線給電システム
次世代のモビリティ社会(自動運転やEV普及)を見据えたインフラ技術の開発です。
- シート型コイルの活用: DNP独自の「薄型・軽量なシート型コイル」技術を基盤にします。
- 共同開発の目的: IITHと協力し、電気自動車(EV)向けの無線給電システムの設計・開発・事業化を急ぎます。
- 背景: DNPはEV用リチウムイオン電池の外装材(バッテリーパウチ)で世界シェア1位を誇っており、その知見を給電システムへ広げる狙いがあります。
2. メディカルヘルスケア分野:医薬原薬(API)の開発
「世界の薬局」と呼ばれるインドの強みを活かした、医薬品製造プロセスの高度化です。
- 合成ルートの開発: 医薬品の有効成分である医薬原薬(API)の、より効率的な合成ルートを研究します。
- 精密有機合成技術: DNPグループ(DNPファインケミカル宇都宮など)が持つプロセス開発の知見を投入し、試作・評価から量産化の検討までを共同で行います。
- グローバル拠点化: 将来的にはインドを医薬原薬のグローバル開発拠点の一つと位置づけ、世界市場への販売を目指します。
なぜこの2分野なのか
拠点が設置されるハイデラバードには、以下の特徴があるためです。
- モビリティ: インド初の専用モビリティ・クラスター「Telangana Mobility Valley(TMV)」があり、実証実験に適している。
- メディカル: 製薬関連の製造拠点や、精密有機化学合成に強い人材が豊富に集積している。

モビリティとライフサイエンスの2分野です。EV向けの薄型・軽量なシート型コイルを用いた無線給電システムや、インドの強みである医薬品産業を背景とした医薬原薬(API)の合成ルート開発を推進します。
シート型コイルとは何か
DNP(大日本印刷)が開発しているシート型コイルは、従来の銅線をぐるぐると巻いた重く厚みのあるコイルとは異なり、印刷技術やエッチング技術を応用してフィルムなどの基板上に薄い金属の回路(コイル)を形成したものです。
1. 圧倒的な「薄さ」と「軽さ」
従来の巻き線コイルが数センチ単位の厚みを持つのに対し、シート型コイルはミリ単位、あるいはそれ以下の薄さに抑えることが可能です。
- 軽量化: 金属の使用量を最適化できるため、デバイス全体の軽量化に直結します。
- 省スペース: 設置スペースが限られる電気自動車(EV)の底面や、精密機器の内部に組み込みやすくなります。
2. EVワイヤレス充電への応用
現在、DNPがインド工科大学(IITH)などと共同で開発を急いでいるのが、このコイルを用いたEV(電気自動車)向けの無線給電システムです。
- 送電・受電の両面: 地面側の送電パッドと、車体側の受電シートの両方に使われます。
- 耐久性と柔軟性: フィルム基板を使うことで、振動に強く、ある程度の曲げにも耐えられる構造にできます。
- 漏洩磁界の抑制: 独自の設計技術により、エネルギー伝送効率を維持しながら、周囲への磁界漏れを抑えることが可能です。
3. なぜDNP(印刷会社)が作れるのか
DNPは長年、スマートフォンやICカードの内部にある「アンテナ」を、エッチング(腐食加工)やメッキなどの印刷プロセス技術で作ってきました。
- リチウムイオン電池の部材: 電池の外装材(バッテリーパウチ)で培った絶縁・耐熱技術。
- 微細加工技術: 金属パターンを精密に、かつ大面積で形成するロール・ツー・ロール生産技術。
これらを掛け合わせることで、高出力な電力を扱う「パワー半導体周辺」や「給電システム」に対応した、巨大かつ精密なシート型コイルの製造が可能になっています。
「重くてかさばる銅線の束」を「薄くて軽いハイテクなシート」に置き換える技術であり、これにより、EVの航続距離アップ(軽量化による)や、充電インフラのスマートな設置が期待されています。

DNPのシート型コイルとは、印刷技術を応用してフィルム等の基材上に薄い金属回路を形成した部品です。従来の巻線コイルに比べ圧倒的に薄く軽量で、EVのワイヤレス給電や精密機器の省スペース化に貢献します。
なぜインドに研究拠点をつくるのな
大日本印刷(DNP)がインド、特にハイデラバードに研究拠点を設ける理由は、主に以下の3点に集約されます。
1. 優秀な「高度IT・エンジニア人材」の確保
インド、特にインド工科大学(IIT)は、世界トップクラスのエンジニアを輩出する「人材の宝庫」です。
- 専門性: ソフトウェア開発だけでなく、精密有機合成(医薬品)や電気電子工学(無線給電)など、DNPが注力する分野の専門家が豊富です。
- イノベーション: 現地の若く優秀な頭脳と共同研究することで、従来の日本国内の視点にはなかった革新的な技術開発やスピード感を取り込む狙いがあります。
2. 急成長する「巨大市場」と「産業クラスター」
インドは人口世界一であり、モビリティや医療の需要が爆発的に伸びています。
- モビリティ・バレー: ハイデラバードには「テランガーナ・モビリティ・バレー」という産業集積地があり、EV関連の実証実験がしやすい環境です。
- 世界の薬局: 製薬大手が集まる地域でもあり、医薬原薬(API)の開発から供給までのエコシステムが既に完成しています。
3. グローバル展開の「ハブ」としての機能
インドを拠点にすることで、近隣の中東やアフリカ市場への展開も視野に入れています。
- 地政学的メリット: 西洋とアジアの中間に位置し、英語圏であるインドは、グローバルなサプライチェーンや研究ネットワークを構築する上で非常に有利な立地です。

インド工科大学の高度な専門人材を活用し、急成長する現地市場や産業集積地でモビリティ・医療分野の社会実装を加速させるためです。インドを中東・アフリカ圏を含むグローバル展開の戦略拠点とします。

コメント