この記事で分かること
- 溶融亜鉛めっき鋼板とは:鉄の板に亜鉛をコーティングしたものです。これにより、鉄のさびを防ぐことができるため、建築資材や自動車、家電製品など、幅広い用途で使われています。
- 犠牲防食作用とは:2種類の金属を接触させた際に、イオン化傾向が大きい(酸化されやすい)方の金属が優先的に腐食することで、イオン化傾向が小さい方の金属をさびから守る仕組みです。
溶融亜鉛めっき鋼板の不当廉売
財務省と経済産業省は、韓国および中国から輸入されている溶融亜鉛めっき鋼板(鋼帯を含む)について、不当廉売(ダンピング)の疑いで調査を開始すると発表しました。
この調査は、日本製鉄や神戸製鋼所など国内大手4社が、両国から不当に安い価格で輸入されることにより損害を受けているとして、今年4月に政府に申請したことを受けて実施されるものです。
不当廉売とは、輸出国の国内販売価格より著しく安い価格で輸出することであり、これが輸入国の産業に損害を与えている場合に、その是正を目的として不当廉売関税(アンチダンピング関税)を課すことができます。
亜鉛めっき鋼板とは何か
亜鉛めっき鋼板は、鉄の板に亜鉛をコーティングすることで、さびにくくした製品です。別名「亜鉛鉄板」や「トタン板」とも呼ばれます。鉄は放置するとすぐにさびてしまいますが、亜鉛で覆うことでこの問題を解決しています。
亜鉛めっき鋼板のさび防止の仕組み
亜鉛めっき鋼板のさび防止の仕組みには、主に以下の2つの作用があります。
- 保護被膜作用: 亜鉛が鋼板の表面を覆い、水分や酸素が鉄に直接触れるのを防ぎます。これにより、さびの発生を抑えます。
- 犠牲防食作用: 亜鉛は鉄よりもイオンになりやすい性質(腐食しやすい性質)を持っています。そのため、鋼板に傷がついて鉄がむき出しになっても、亜鉛が優先的に溶け出して鉄の腐食を防ぎます。これにより、さびの進行を遅らせることができます。
製造方法
亜鉛めっき鋼板の主な製造方法には、以下の2種類があります。
- 溶融亜鉛めっき: 高温で溶かした亜鉛の中に鋼板を浸す方法で、「ドブづけ」とも呼ばれます。亜鉛の層が厚くなるため、高い耐食性が得られます。ガードレールや建物の外壁など、屋外で使われることが多いです。
- 電気亜鉛めっき: 電気分解の原理を利用して、鋼板の表面に亜鉛を付着させる方法です。亜鉛の層が薄く、均一な仕上がりになるため、家電製品や家具など、主に屋内で使われる製品に適しています。
主な用途
亜鉛めっき鋼板は、その優れた耐食性から、私たちの身の回りの様々な場所で使われています。
- 自動車: ボディの鋼板、下回りの部品
- 電気機器: 家電製品の筐体、空調機器の部品
- 建築・土木: 屋根材、外壁、ガードレール、フェンス
- その他: 物置、農業用資材、パイプ

亜鉛めっき鋼板は、鉄の板に亜鉛をコーティングしたものです。これにより、鉄のさびを防ぐことができるため、建築資材や自動車、家電製品など、幅広い用途で使われています。別名「トタン板」とも呼ばれます。
犠牲防食作用とは何か
犠牲防食作用とは、2種類の金属を接触させた際に、イオン化傾向が大きい(=より酸化されやすい)方の金属が、先に腐食することで、イオン化傾向が小さい方の金属を保護する仕組みのことです。
この作用は、電池の原理を応用したもので、保護される側の金属が陰極(カソード)となり、保護する側の金属が陽極(アノード)となって、局部的な電池を形成します。陽極となる金属が自らを「犠牲」にして溶け出すことで、陰極となる金属の腐食を防ぎます。
亜鉛めっき鋼板における犠牲防食作用
亜鉛めっき鋼板では、この作用がさび防止に重要な役割を果たします。
- 仕組み: 鉄よりもイオン化傾向が大きい亜鉛を鉄の表面にコーティングすることで、万が一、傷がついて鉄が露出しても、周囲の亜鉛が鉄より先に酸化されて溶け出します。
- 結果: 亜鉛が犠牲になって腐食する間は、鉄は保護された状態が維持され、さびの進行を遅らせることができます。
この作用があるため、亜鉛めっきは保護被膜が一部剥がれても防食効果が続くという、優れた特性を持っています。

犠牲防食作用とは、2種類の金属を接触させた際に、イオン化傾向が大きい(酸化されやすい)方の金属が優先的に腐食することで、イオン化傾向が小さい方の金属をさびから守る仕組みです。亜鉛めっき鋼板では、亜鉛が犠牲となって鉄を守ります。
溶融亜鉛めっきはどのような工程なのか
溶融亜鉛めっきは、高温で溶かした亜鉛の槽に鉄製品を浸漬させることで、表面に亜鉛の皮膜を形成する防錆処理方法です。この処理にはいくつかの重要な工程があります。
1. 前処理
めっきの品質を確保するため、亜鉛槽に浸ける前に鋼材をきれいにします。
- 脱脂: 鋼材に付着している油分や汚れを、アルカリ性の脱脂液で除去します。
- 水洗: 脱脂液を洗い流します。
- 酸洗: 表面のさびや酸化物(スケール)を塩酸などで除去し、鉄の地肌を露出させます。
- 水洗: 酸洗液をきれいに洗い流します。
- フラックス処理: 鋼材を塩化亜鉛アンモニウム水溶液(フラックス)に浸けます。これにより、めっき前のさびの発生を防ぎ、亜鉛と鉄の合金反応を促進させる効果があります。
2. 乾燥
フラックス処理後の鋼材を、溶融亜鉛槽に入れる前に十分に乾燥させます。これにより、亜鉛槽に入れた際の急激な水蒸気の発生(スプラッシュ)による亜鉛の飛散を防ぎます。
3. めっき(浸漬)
約450℃に溶かした亜鉛の槽に鋼材を浸漬します。このとき、鉄と亜鉛が反応し、表面に合金層が形成されます。浸漬時間によってめっきの厚さが調整されます。
4. 冷却・仕上げ
亜鉛の層を安定させるために冷却し、余分な亜鉛のたれや突起物などを除去して表面を整えます。最後に、見た目や寸法などの検査をして完了となります。

溶融亜鉛めっきは、まず鋼材の汚れやさびを落とす前処理をします。その後、約450℃で溶かした亜鉛の槽に鋼材を浸し、冷却して仕上げます。これにより、さびに強い亜鉛の皮膜が形成されます。
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