エプソンの液晶ドライバIC 液晶ドライバICとは何か?電圧の制御方法は?

この記事で分かること

  • 液晶ドライバICとは:液晶ディスプレイの表示を制御する半導体です。ディスプレイコントローラからの表示データに基づき、液晶の各画素に適切な電圧を印加し、文字や画像を表示させる役割を担います。
  • 電圧を制御する方法:セグメントと端子を1対1で接続するスタティックやパルスのON/OFF時間で実効電圧を調整し、階調表示を実現するPWM方式で制御を行います。

エプソンの液晶ドライバIC

 エプソンは、車載(四輪・二輪)ディスプレイ向けに、新しいセグメント液晶ドライバIC「S1D15107」を開発し、2025年8月7日から量産を開始しました。

 エプソンは、これまでにも車載ディスプレイ向けに液晶制御半導体を供給しており、今回の新製品は、さらに高性能・高機能化を追求したものです。

液晶ドライバICとは何か

 液晶ドライバICは、液晶ディスプレイの表示を制御する半導体集積回路(IC)です。液晶コントローラから送られてくる表示データを受け取り、液晶の各画素(ピクセル)またはセグメントに対して、適切な電圧信号を印加することで、画面に文字や画像を表示させる役割を果たしています。

役割と仕組み

 液晶ディスプレイは、電極に電圧をかけることで液晶分子の向きを変え、光の透過を制御することで表示を行います。液晶ドライバICは、この電圧を制御する中心的な役割を担います。

 具体的には、液晶ドライバICは以下の2つの主要な部分から構成されています。

  • ゲートドライバIC: ディスプレイの行方向の電極を制御し、どの行の画素を表示させるかを決める役割。
  • ソースドライバIC: ディスプレイの列方向の電極を制御し、各画素に表示させる色や階調に対応した電圧を与える役割。

 この2つのドライバICが連携して動作することで、コントローラから送られてきたデジタルデータを、液晶パネル上で正確な画像として再現することが可能になります。

液晶ドライバICは、液晶ディスプレイの表示を制御する半導体です。ディスプレイコントローラからの表示データに基づき、液晶の各画素に適切な電圧を印加し、文字や画像を表示させる役割を担います。

どのように電圧を制御するのか

 液晶ドライバICは、液晶ディスプレイの各画素またはセグメントに印加する電圧を制御することで、表示をコントロールします。この電圧の制御方法には、主に以下の2つの方式があります。


1. スタティック駆動方式

 この方式は、液晶パネルの表示セグメントとドライバICの端子を1対1で接続して駆動します。

 シンプルな構成で、高いコントラスト比を実現できるのが特長です。文字や記号など、シンプルな表示が求められる場面に適しています。


2. PWM(Pulse Width Modulation)方式

 PWMは、パルス幅変調と訳されます。これは、電圧のON(通電)とOFF(非通電)の時間を細かく調整することで、実効的な電圧を制御する技術です。

  • 仕組み: 一定の周期でON/OFFを繰り返し、ONになっている時間の割合(デューティ比)を変化させます。ONの時間が長ければ実効電圧は高くなり、短ければ低くなります。
  • 階調表示: この実効電圧の変化を利用して、液晶の透過率を段階的に調整し、**階調(明るさ)**を表現します。例えば、16階調表示の場合、16段階の異なるデューティ比を使い分けることで、なめらかなグラデーションを可能にします。

 これらの制御方式により、液晶ドライバICは、コントローラからのデジタル信号を正確なアナログ電圧に変換し、液晶ディスプレイに文字や画像を鮮明に映し出しています。

液晶ドライバICは、スタティック駆動またはPWM方式で電圧を制御します。スタティック駆動は、セグメントと端子を1対1で接続し、シンプルな表示に向きます。PWM方式は、パルスのON/OFF時間で実効電圧を調整し、階調表示を実現します。

液晶ドライバICの需要動向はどうか

 液晶ドライバIC(DDIC:Display Driver IC)の需要は、全体として増加傾向にあります。市場調査会社のレポートなどによると、ディスプレイドライバICの世界市場は今後数年間、堅調な成長が予測されています。

 需要増加の主な要因は、以下の通りです。

1. 高解像度・高機能ディスプレイの普及

 テレビ、スマートフォン、ノートPC、タブレット、車載ディスプレイなど、あらゆる分野でより高解像度、高画質のディスプレイが求められています。4Kや8Kのような超高精細ディスプレイや、高リフレッシュレートに対応したディスプレイは、より多くの画素を正確に制御する必要があるため、高性能な液晶ドライバICの需要を押し上げています。

2. ディスプレイ技術の多様化と進化

 液晶パネルに加え、OLED(有機EL)やMini/Micro-LEDといった次世代ディスプレイ技術の普及も、ドライバICの需要を拡大させています。これらの技術は、液晶とは異なる駆動方式を必要とするため、それぞれに対応した専用のドライバICが不可欠です。

 特にOLEDは、個々のピクセルを独立して制御するため、より高度なドライバICが求められます。

3. 車載ディスプレイの進化

 自動車のダッシュボードやインフォテインメントシステムにおいて、大型で多機能なディスプレイの搭載が進んでいます。

 また、デジタルミラーやHUD(ヘッドアップディスプレイ)など、用途が多様化しており、高い信頼性と性能を備えた車載向けの液晶ドライバICの需要が増加しています。

4. IoTやウェアラブルデバイスの普及

 スマートウォッチやAR/VRヘッドセットなど、小型で多様な形状のディスプレイを持つIoT機器やウェアラブルデバイスが増加しています。これらの製品にも、それぞれのサイズや形状に合わせたドライバICが必要であり、需要をけん引しています。

 これらの要因により、液晶ドライバICはディスプレイの「頭脳」として、今後も重要な役割を担い、市場は拡大し続けると見られています。

液晶ドライバICの需要は増えています。スマートフォンの高解像度化、車載ディスプレイの大型化・多機能化、IoT機器の普及などにより、高性能なドライバICが不可欠だからです。また、OLEDやMini/Micro-LEDといった次世代ディスプレイの進化も需要を後押ししています。

液晶ドライバICの有力メーカーは

 液晶ドライバIC(DDIC:Display Driver IC)の有力メーカーは、ディスプレイの種類や用途によって異なりますが、グローバル市場で大きなシェアを持つ企業がいくつかあります。

 一般的に、以下の企業が有力なメーカーとして挙げられます。

  • Samsung Electronics (サムスン電子):特に、自社のスマートフォンやテレビでOLEDディスプレイを積極的に採用しているため、OLED向けのDDIC市場で大きな存在感を持っています。
  • Novatek Microelectronics (ノバテック):台湾のメーカーで、特にLCD(液晶ディスプレイ)向けのDDIC市場で強いシェアを持っています。スマートフォンやタブレット、テレビなど、幅広い分野に製品を供給しています。
  • Himax Technologies (ハイマックス):こちらも台湾のメーカーで、車載ディスプレイやAR/VRデバイス、ウェアラブル機器など、多岐にわたる用途のDDICを手掛けています。
  • Silicon Works (シリコンワークス):LGグループ傘下のメーカーで、特に大型テレビ向けのDDICに強みを持っています。
  • セイコーエプソン: 日本のメーカーで、プリンターやプロジェクターで培った技術を活かし、液晶ドライバICも手掛けています。特に、シンプルな表示や車載向けのセグメント液晶ドライバICに強みを持っています。
  • ROHM (ローム):日本のメーカーで、TN/STN液晶表示用、TFT液晶用、有機EL(OLED)用など、様々なディスプレイ向けのドライバICを提供しています。
  • 日清紡マイクロデバイス: 日本のメーカーで、様々なドライバICを製造しており、工業用や車載用など幅広い分野で採用されています。

これらのメーカーは、それぞれ得意とする分野や市場があり、ディスプレイ技術の進化に伴って、より高性能なDDICの開発競争を繰り広げています。特に近年は、中国や台湾のメーカーが市場でのシェアを拡大しており、競争が激化している状況です。

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