この記事で分かること
・パワー半導体とは:電力の制御や変換など、電気を「動かす」ための半導体
・どんな用途があるのか:「電力が大きい」「変換が必要」「省エネが求められる」場面では、ほぼ必須で、特にEV・再エネ・産業用の分野での利用はこの先も大幅な伸びが期待されます。
パワー半導体市場の拡大
富士経済の最新調査によると、パワー半導体市場は2025年後半に在庫が正常化し、2026年から成長が拡大すると予測されています。
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この成長は、電動車の普及拡大などが要因とされています。同調査では、2035年には市場規模が7兆7710億円に達し、2024年比で2.3倍になると見込まれています。
パワー半導体と普通の半導体の違いは何か
パワー半導体と普通の半導体(ここでは「汎用ロジック半導体」や「メモリ半導体」などを指します)は、以下のように用途や動作特性が大きく異なります。
【1. 用途の違い】
- パワー半導体:
→ 電力の「制御」や「変換」を行う部品
→ 主にモーター、電源回路、電気自動車(EV)、太陽光発電、産業機器などに使用 - 普通の半導体(ロジック/メモリ):
→ データの「処理」や「記憶」を行う部品
→ コンピュータ、スマートフォン、サーバー、家電製品などに使用
【2. 扱う電力の大きさ】
- パワー半導体:
→ 数十V〜数千V、数A〜数百Aなど大きな電圧・電流を扱う - 普通の半導体:
→ 数V、数mA〜数百mAなど、小さな電力で動作
【3. 代表的な製品】
- パワー半導体:
→ IGBT、MOSFET、SiC(炭化ケイ素)・GaN(窒化ガリウム)など - 普通の半導体:
→ CPU、GPU、DRAM、フラッシュメモリなど
【4. 技術的な特徴】
- パワー半導体:
→ 低損失、高耐圧、熱に強いことが求められる
→ ウェハーはSiに加えて、SiCやGaNなどの次世代材料も利用 - 普通の半導体:
→ 高速処理、微細化、集積化が重要(例:5nm、3nmプロセス)

パワー半導体は電力の制御や変換など、電気を「動かす」ための半導体、
普通の半導体はデータの処理や記憶など電気で「考える」ための半導体というイメージです
どんな用途で、パワー半導体が利用されるのか
パワー半導体は、「電力を制御する」ための電子部品なので、以下のように電気をたくさん使う・変換する・動かすような用途で利用されます。
【1. 電気自動車(EV)】
- バッテリー→モーターの電力制御に使われる(インバータ回路)
- 充電器や急速充電装置の電力変換にも使用
- 車載向けではSiC(炭化ケイ素)が注目されている
【2. 産業用機器・ロボット】
- 工場のロボットやモーター制御装置
- インバータやサーボドライバに搭載されており、省エネ・高効率化に貢献
【3. 再生可能エネルギー(太陽光・風力)】
- 直流(DC)を交流(AC)に変換するパワーコンディショナーに使用
- 発電した電力の効率的な送電・蓄電に不可欠
【4. 鉄道・電車・電動バス
- モーター駆動、回生ブレーキ、電源供給系統で利用
- 安定かつ高効率な電力制御が求められる
【5. 家電製品(特に高効率なもの)】
- エアコン、冷蔵庫、洗濯機などに使われるインバータ制御
- 従来よりも電力を抑えつつ、滑らかな動作を実現
【6. データセンター・通信機器】
- 電源ユニットの高効率化(PFC回路など)にパワー半導体が使われる
- 特にGaN(窒化ガリウム)が省スペース・高速動作で注目されている

パワー半導体は、「電力が大きい」「変換が必要」「省エネが求められる」場面では、ほぼ必須の存在で、特にEV・再エネ・産業用の分野での利用はこの先も大幅な伸びが期待されます。
パワー半導体の生産の多い企業はどこか
パワー半導体の生産で有名な企業は、日米欧中を中心に以下のようにいくつか存在します。
【日本】
1. 三菱電機
- IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)やパワーモジュールで世界的に有名
- 鉄道や工場用のインバータ、EV分野にも強み
2. 富士電機
- インバータや電源装置用パワー半導体が得意
- 特に産業機器や再エネ用途に強み
3. ローム(ROHM)
- SiC(炭化ケイ素)パワー半導体で世界トップクラス
- EV、特にトヨタなどとの連携で注目されている
4. 東芝
- MOSFETやIGBTなど幅広いラインアップ
- 車載・産業用の供給力を強化中
【欧州】
5. Infineon Technologies(インフィニオン / ドイツ)
- 世界最大のパワー半導体メーカー
- IGBT、MOSFET、SiCなどフルラインアップ
- EV・産業・家電すべてで存在感が強い
6. STMicroelectronics(ST / スイス=フランス)
- GaN(窒化ガリウム)やSiCなど次世代材料に注力
- EV・充電器・再エネなどの用途で存在感あり
【アメリカ】
7. ON Semiconductor(オン・セミコンダクター)
- EVやデータセンター向けに注力
- SiC関連の買収で市場拡大中
8. Wolfspeed(ウルフスピード)
- SiC専業メーカーであり、原材料から一貫生産
- 世界初の8インチSiCウェハー工場も稼働(注目度高)
【中国】
9. BYD Semiconductor(比亜迪半導体)
- EV大手BYDの半導体部門
- 国産化推進の中で急成長中
10. StarPower(斯達半導体)
- 主にIGBTを生産、車載向けで注目される中国企業

パワー半導体に強みを持つ企業はいくつか存在し、どの企業もEV・再エネ・産業分野の成長を背景に、SiCやGaNといった次世代材料の生産を強化しています。
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