古河電工DFBレーザーダイオードチップの大幅な増産 DFBレーザーダイオードチップとは何か?大幅な増産の理由は?

この記事で分かること

  • DFBレーザーダイオードチップとは:チップ内部の微細な溝(回折格子)により、単一の波長を極めて安定して発光させる半導体素子です。光が混じらず高速・長距離伝送に強いため、AIデータセンターの通信の心臓部として不可欠な部品です。
  • 増産する理由:生成AIの普及でデータセンター内の通信量が激増し、光源となるチップの需要が爆発しているためです。
  • 古河電工のDFBレーザーダイオードチップが高出力となる理由:長年のインジウムリン半導体技術を軸に、チップ内部の回折格子(反射構造)を最適化し、光のロスと発熱を抑制しています。

古河電工DFBレーザーダイオードチップの大幅な増産

 古河電工(古河電気工業)は、生成AIやクラウドサービスの普及に伴うデータセンター向け需要の急増に応えるため、DFB(分布帰還型)レーザーダイオードチップの大幅な増産に向けた大規模な投資計画を発表しました。

 https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2512/23/news032.html

 この増産により、同社はデータセンター向け光デバイス市場におけるリーダーとしての地位をより盤石にするものと見られています。

DFBレーザーダイオードチップとは何か

 DFBレーザー(分布帰還型レーザー)ダイオードチップとは、「狙った波長の光だけを、極めて安定して、強く発射できる半導体チップ」のことです。

 通常のレーザーダイオードが「複数の波長(色)が混じりやすい」のに対し、DFBレーザーは「単一波長(1色だけ)」に特化しているのが最大の特徴です。

1. 仕組み:チップの中の「ギザギザ」

 DFBは Distributed FeedBack(分布帰還)の略です。

 チップの内部に「回折格子(かいせつこうし)」と呼ばれる目に見えないほど微細なギザギザの構造が刻まれています。

  • フィルターの役割: このギザギザの間隔(ピッチ)を調整することで、特定の波長の光だけを反射・増幅させ、それ以外の不要な光をカットします。
  • 鏡がいらない: 一般的なレーザーはチップの両端に「鏡」を置いて光を往復させますが、DFBは内部のギザギザ全体で光を跳ね返すため、より精密な制御が可能です。

2. なぜAIやデータセンターで重要なのか?

 今、古河電工などがこのチップを増産している理由は、「光通信の高速化」に欠かせないからです。

  • 混信を防ぐ: 光ファイバーにたくさんの情報を詰め込むには、異なる波長の光を束ねて送ります。DFBレーザーは波長が一点に集中(狭線幅)しているため、隣の光と混ざることなく、正確に情報を伝えられます。
  • 遠くまで届く: 波長がフラフラしない(安定している)ため、長い距離を飛んでも信号がぼやけにくく、超高速伝送(800Gbpsや1.6Tbpsなど)に適しています。
  • 低消費電力: 効率よく特定の波長を出せるため、データセンターの膨大な電気代を抑えることにも繋がります。

DFBレーザーの強み

特徴メリット
単一波長信号がクリアで、一度に送れるデータ量が増える
高い安定性温度変化やノイズに強く、エラーが起きにくい
高出力(古河の強み)100mW級のパワーで、次世代の光チップ(シリコンフォトニクス)を駆動できる

DFBレーザー(分布帰還型レーザー)は、チップ内部の微細な溝(回折格子)により、単一の波長を極めて安定して発光させる半導体素子です。光が混じらず高速・長距離伝送に強いため、AIデータセンターの通信の心臓部として不可欠な部品です。

DFBレーザーダイオードチップを増産する理由は

 古河電工がDFBレーザーダイオードチップを大幅に増産(2028年までに5倍以上)する最大の理由は、「生成AIの爆発的普及による、データセンター内の通信網の激変」に対応するためです。

1. 「AIインフラ」による需要の急増

 生成AI(ChatGPTなど)を支える巨大な計算基板では、数万個のGPU(画像処理装置)が互いに膨大なデータをやり取りします。

  • 光ファイバーの増加: AI用データセンターでは、従来のデータセンターに比べ10倍以上の光ファイバーが必要になると言われています。
  • 光源の必要性: その一本一本の光ファイバーに信号を流すための「光源」として、DFBレーザーチップが大量に必要とされています。

2. 次世代技術「シリコンフォトニクス」への対応

 現在、通信速度を800Gbpsや1.6Tbpsへと引き上げるために、シリコン(半導体)基板上に光回路を作る「シリコンフォトニクス」技術が主流になりつつあります。

  • 高出力への要求: この技術では、1つのレーザー光を分岐させて使うため、従来よりも強力な光(高出力)が求められます。
  • 古河の強み: 古河電工は世界最高水準の「100mW(ミリワット)」という非常に強い光を出せるチップの量産に成功しており、この分野で圧倒的な競争力を持っています。

3. 省電力化と熱対策

 データセンターにとって、消費電力と発熱を抑えることは最大の課題です。

  • エネルギー効率: 古河の最新チップは、光を出す効率(ウォールプラグ効率)が高く、データセンター全体の省エネに直結します。
  • CPO(共同パッケージング)への布石: 将来的には、LSI(演算チップ)のすぐ近くに光チップを置く「CPO」という技術が導入されます。古河はこの次世代技術に向けた外部光源(ELS)の供給責任を果たすため、生産体制を強化しています。

増産の狙い

背景具体的なニーズ
市場拡大AI用サーバー間の通信量が爆発的に増えている
技術革新シリコンフォトニクスに不可欠な「高出力光源」が求められている
顧客対応GAFAM等の巨大テック企業からの安定供給要請に応える

生成AIの普及でデータセンター内の通信量が激増し、光源となるチップの需要が爆発しているためです。特に、次世代の超高速通信(シリコンフォトニクス等)に欠かせない「高出力・低消費電力」な製品で、世界シェアを確保し安定供給する狙いがあります。

古河電工のDFBレーザーダイオードチップの特長は何か

 古河電工のDFBレーザーダイオードチップは、世界トップクラスの「高出力」「省電力性能」を兼ね備えている点が最大の特長です。特に2024年から量産されている最新モデルは、競合他社を圧倒するスペックを誇ります。

1. 業界最高水準の「100mW」高出力

 一般的な通信用DFBレーザーの出力が10〜40mW程度であるのに対し、古河電工は100mWという非常に強力な光出力を実現しています。

  • なぜ高出力が必要か: 次世代技術「シリコンフォトニクス」では、1つのレーザー光を複数の回路に分割して使うため、元の光が強力であるほど、効率的に多くのデータを送れるようになります。

2. 圧倒的な「電力変換効率(省エネ)」

 チップ自体のエネルギー効率(ウォールプラグ効率)が極めて高いのが特徴です。

  • 効率の向上: 従来品の16%から22%へと大幅に改善されました。
  • 熱対策: 効率が良い=無駄な熱が出にくいことを意味します。冷却装置(TEC)の負荷を減らせるため、データセンター全体の消費電力削減に大きく貢献します。

3. 高い「信頼性」と「安定性」

 2000年から20年以上にわたり通信用レーザーを製造してきた実績に基づき、極めて高い品質を維持しています。

  • 単一波長の精度: ノイズが少なく、800Gbpsや1.6Tbpsといった超高速通信でも信号が乱れません。
  • 長寿命: データセンターという過酷な環境で24時間稼働し続けるための耐久性を備えています。

特長のまとめ表

項目古河電工のチップの強み
光出力100mW(業界最高水準。従来比2〜3倍)
変換効率22%(低消費電力・低発熱を実現)
対応速度800Gbps / 1.6Tbps超の次世代通信に最適
主な用途シリコンフォトニクス、CPO(共同パッケージング)光源

業界最高水準の「100mWの高出力」と、従来比で大幅に向上した「高い電力変換効率」が最大の特長です。これにより、AIデータセンターで求められる超高速通信(800Gbps超)を実現しつつ、消費電力と発熱を抑えることができます。

どうやって高出力を実現しているのか

古河電工が100mWという世界最高水準の高出力を実現している背景には、長年培ってきたInP(インジウムリン)半導体技術をベースとした、主に3つの技術的工夫があります。

1. チップ構造の最適化(κLの制御)

DFBレーザーの出力は、チップの長さ(L)と、内部にあるギザギザ(回折格子)の反射の強さを示す結合係数(κ:カッパ)のバランスで決まります。

  • 低κ設計: 回折格子の反射をあえて抑える(κを小さくする)ことで、チップ内部に光を溜め込みすぎず、効率よく前方へ光を取り出せるようにしています。
  • 共振器の長尺化: チップ自体を長くすることで、熱を逃がしやすくしつつ、大きなエネルギーを生み出せるように設計されています。

2. 回折格子と反射膜の特殊設計

 チップの両端面の反射率を非対称にする(AR/HRコート)ことで、光が片方向(前方)へ集中して出るように工夫されています。

  • AR(反射防止)膜: 前方から光が出やすくします。
  • HR(高反射)膜: 後方へ逃げる光を鏡のように跳ね返します。さらに、回折格子の材料に「バンドギャップ」の大きな素材を用いることで、光がチップ内で吸収されて熱に変わるロスを最小限に抑えています。

3. 排熱効率を高める実装技術

 レーザーは熱に弱く、温度が上がると出力が落ちてしまいます。

  • Junction-down(ジャンクションダウン)実装: 熱が発生する心臓部(活性層)を、放熱板に近い下側に向けて接着する特殊な手法を採用し、熱を素早く逃がすことで、高出力状態を安定して維持できるようにしています。

技術ポイントのまとめ

技術要素効果
InP半導体技術100mW超を支える高品質なベース材料
非対称反射膜光を前方に集中させ、効率を22%まで向上
低$\kappa$・長共振器内部の光損失を抑え、最大出力を引き上げる
高放熱パッケージ高出力時の発熱によるパワー低下を防ぐ

長年のインジウムリン半導体技術を軸に、チップ内部の回折格子(反射構造)を最適化し、光のロスと発熱を抑制しています。さらに、熱を逃がしやすい特殊な実装構造を採用することで、安定した100mWの高出力を実現しました。

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