この記事で分かること
- 非鉄金属業界の扱う金属:主に、電気インフラに不可欠な銅、軽量なアルミニウム、自動車用の亜鉛や鉛などの「ベースメタル」を扱います。加えて、資産価値の高い金・銀や、EV電池・半導体に必須のニッケル・リチウムなどのレアメタルも重要です。
- 成長、拡大の理由:生成AIの普及に伴うデータセンターや送電網向け「銅」需要の爆発的増加です。これに加え、脱炭素化に向けたEV・再エネ投資、半導体市場の回復、さらには金価格の高騰が各社の利益を強力に押し上げています。
- 今後の見通し:2026年にかけては、AI・脱炭素需要で「銅」の深刻な供給不足と価格高騰が続く見通しです。一方でリチウム等は供給過剰感が残り、素材間で明暗が分かれると予測されています。
非鉄金属業界の成長、拡大
2025年の非鉄金属業界は、世界的な「脱炭素(グリーントランスフォーメーション:GX)」と「AIインフラの爆発的拡大」という2大トレンドを追い風に、多くの企業が好調な業績を維持、あるいは拡大させています。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC17COY0X11C25A0000000/
非鉄金属業界とはどんな業界なのか
非鉄金属業界とは、「鉄(スチール)以外のすべての金属」を取り扱う業界です。私たちの生活に欠かせないスマートフォン、電気自動車(EV)、送電網、さらには10円玉などの硬貨まで、現代社会を支えるあらゆる「素材」を供給する重要な役割を担っています。
1. 取り扱う金属の種類
非鉄金属は、その希少性や特性によって大きく3つに分類されます。
| 分類 | 代表的な金属 | 特徴と用途 |
| ベースメタル | 銅、アルミニウム、鉛、亜鉛 | 生産量が多く、幅広い用途に使われる。銅は電気を通しやすく「産業の血液」と呼ばれる。 |
| プレシャスメタル | 金、銀、プラチナ | 産出量が少なく希少価値が高い。宝飾品だけでなく、精密機器の接点などにも不可欠。 |
| レアメタル | ニッケル、リチウム、コバルト、チタン | 埋蔵量が少ないが、ハイテク製品(EVの電池、半導体など)の性能向上に欠かせない。 |
2. ビジネスの流れ(川上から川下まで)
非鉄金属業界の企業は、その役割によって大きく3つの段階に分かれています。大手企業の多くはこれらを一貫して行っています。
① 川上:資源開発(マイニング)
海外の鉱山に出資したり、自ら採掘を行ったりして、金属の原料となる「鉱石」を確保します。
ポイント: 日本は資源が乏しいため、海外の鉱山利権をどれだけ持っているかが企業の収益力(配当など)に直結します。
② 川中:製錬(スメルティング)
運ばれてきた鉱石を高温で溶かし、不純物を取り除いて純度の高い「地金(インゴット)」と呼ばれる塊にする工程です。
③ 川下:加工・リサイクル
地金をさらに加工して、電線、箔(ホイル)、半導体材料、自動車部品などに仕上げます。また、使用済みの家電やパソコンから貴金属を回収する「都市鉱山」のリサイクル事業も、この分野の重要な柱となっています。
3. 日本の主な代表企業
日本には世界屈指の技術力を持つ企業が揃っています。
- 住友金属鉱山: 金・ニッケルに強く、EV用電池材料で世界トップクラス。
- 三菱マテリアル: 銅製錬の大手で、リサイクル技術や超硬工具にも強み。
- JX金属: 半導体用ターゲット材など、ハイテク向けの先端材料で世界シェア。
- 三井金属: スマートフォン基板に使われる極薄銅箔で世界シェア1位。
- 住友電気工業: 電線・ケーブルの最大手で、世界のインフラを支える。
4. なぜ今、注目されているのか?
現在、この業界は「最強の成長業界」の一つと見なされています。その理由は、カーボンニュートラルの実現に、銅(送電網)やニッケル・リチウム(EV電池)といった非鉄金属が大量に必要だからです。「鉄の時代」から、より軽く、より導電性の高い「非鉄の時代」へとシフトしていると言えます。

鉄以外のすべての金属(銅、アルミ、レアメタル等)を扱う業界です。原料の鉱山開発から、不純物を取り除く製錬、半導体や電池向けの高度な加工、さらには廃棄物からのリサイクルまでを担う、脱炭素社会の重要インフラ産業です。
拡大の要因は何か
2025年の非鉄金属業界が好調な主な要因は、大きく分けて「需要の爆発的増加」と「金属価格の高騰」の2点です。具体的には、以下の3つの要素が複雑に絡み合っています。
1. AIインフラと送電網の拡大(銅需要の急増)
生成AIの普及により、世界中で巨大データセンターの建設が進んでいます。
- 電力供給: データセンターには膨大な電気が必要で、その配線や送電網に大量の銅が使われます。
- 冷却システム: AIチップの発熱を抑えるための冷却装置にも、熱伝導率の高い銅が不可欠です。これに加え、脱炭素に向けた再エネ設備(太陽光・風力)の導入も銅の需要を押し上げています。
2. 金属市況の高騰(金・銅・銀の価格上昇)
国際的な金属価格が上昇したことで、企業の売上と利益が大きく膨らみました。
- 金(ゴールド): 地政学リスク(紛争や緊張)や中央銀行による買い入れを背景に、史上最高値圏で推移。製錬過程で金を回収する企業の収益源となりました。
- 銅: 需要に対し供給が追いつかない「供給不足」への懸念から価格が上昇。
- 銀: 太陽光パネルや電子部品向けの需要が堅調で、価格を下支えしています。
3. 先端材料の回復(半導体関連)
2024年までの在庫調整が終わり、2025年は半導体市場が本格的に回復しました。
- スマホ・PC・EV用: デバイスの高性能化に伴い、非鉄各社が得意とする「高純度な金属材料」や「極薄の銅箔」などの高付加価値製品が、高い利益率を維持して売れています。
「従来の景気サイクル」による需要だけでなく、AIと脱炭素という「社会構造の変化」が、非鉄金属を単なる素材から「戦略物資」へと格上げしたことが、2025年の業績拡大の正体です。

主な要因は、生成AIの普及に伴うデータセンターや送電網向け「銅」需要の爆発的増加です。これに加え、脱炭素化に向けたEV・再エネ投資、半導体市場の回復、さらには金価格の高騰が各社の利益を強力に押し上げています。
今後の見通しはどうか
2026年に向けた非鉄金属業界の見通しは、「銅のさらなる独歩高」と「素材ごとの明暗」が鮮明になると予想されています。
1. 銅の需給ひっ迫(さらなる価格上昇予測)
AIデータセンターや電気自動車(EV)、送電網の整備が加速し、2026年は世界的に「銅不足」が深刻化すると予測されています。国際機関の見通しでは3年ぶりに供給不足に転じる可能性が高く、LME(ロンドン金属取引所)価格が史上最高値を更新し続けるとの見方が強まっています。
2. 素材ごとの需給バランスの変化
- 強含み(上昇): 銅、アルミニウム、金。AIインフラやインフレ対策としての需要が継続します。
- 弱含み(過剰): ニッケル、リチウム。これらはEV向け供給が急速に増えたため、一時的な供給過剰により価格が落ち着く「踊り場」の状態が続くと見られています。
3. 日本企業の戦略:リサイクルと新権益
製錬各社は、海外鉱山からの原料調達難(手数料の低下)に対応するため、以下の動きを強めています。
- 都市鉱山の活用: 廃棄家電等から金属を回収するリサイクル事業への巨額投資。
- 新鉱山の立ち上げ: 住友金属鉱山のカナダ・コテ金鉱山のフル操業化など、自社権益による収益確保。

2026年にかけては、AI・脱炭素需要で「銅」の深刻な供給不足と価格高騰が続く見通しです。一方でリチウム等は供給過剰感が残り、素材間で明暗が分かれます。日本各社はリサイクルや新鉱山開発で利益確保を急ぎます。

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