この記事で分かること
中国市場の拡大の背景:政府、メーカー、インフラ、消費者意識、全部がうまく噛み合ったことで、中国は世界トップクラスのEV市場となっています。
今後の中国市場:次世代のバッテリー開発や自動運転やAIとの連携などの性能面やブランド構築に取り組み、輸出も強化する予定など量から質への転換が予想されます。
次世代のバッテリー競争:固体電池やナトリウムイオン電池などの開発が激化しています。また、技術開発だけでなく、資源のサプライチェーンの争奪も活発化しています。
EV、PHEV市場の成長
2025年3月の世界の電気自動車(EV)およびプラグインハイブリッド車(PHEV)の販売台数は、前年同月比で29%増加し、約170万台に達しました。
この成長は主に中国と欧州の市場が牽引しています。
中国の販売台数は前年同月比36%増の約100万台に達し、世界市場の過半数を占めています。政府のEV買い替え補助金制度が2025年まで延長されたことが、需要を後押ししています。
欧州では、販売台数は24%増の約40万台となり、ドイツ、イタリア、英国など主要市場での排出規制やインセンティブが成長を支えています。
中国でのEV普及の背景は何か
中国でEV(電気自動車)が普及している背景には、以下のようにいくつか大きな要因があります。
1. 政府の強力な政策支援
- 補助金政策:2009年頃からEV購入に対する大規模な補助金(数千元~数万元)がありました。最近は少し縮小しましたが、2025年までは一部補助継続。
- NEV規制(新エネルギー車規制):自動車メーカーに一定比率以上のNEV販売を義務付ける制度。これでメーカーもEV開発に積極的になりました。
- ナンバープレート優遇:都市部(北京・上海など)では、通常の車のナンバー取得は抽選だったり超高額だったりする中、EVは優先的にナンバーが取れる。
2. 環境問題対策
- 大気汚染(PM2.5)対策として、ガソリン車を減らし、クリーンエネルギー車の普及を急ぎました。
- 特に北京・天津・河北エリアでは、健康被害が社会問題になったため、政策が一気に加速しました。
3. インフラ整備
- 充電ステーションの爆速整備:国全体で公共充電器と個人充電器の数を増やしています。
- 2024年時点では、世界最大規模の充電ネットワークを持っています。
4. 国内メーカーの台頭
- BYD(比亜迪)、NIO(蔚来)、XPeng(小鵬汽車)など、世界に通用するEV専業メーカーが育ちました。
- 価格帯も広く、一般向けの安価なモデル(1万ドル未満)から高級モデルまで、選択肢が非常に豊富になっています。
5. 消費者意識の変化
- 若い世代を中心に「クリーンでスマートなクルマ」というイメージが定着しました」。
- スマホ感覚で使えるコネクテッド機能(アプリ連携、OTAアップデートなど)が人気を後押ししています。

政府、メーカー、インフラ、消費者意識、全部がうまく噛み合ったことで、中国は世界トップクラスのEV市場となっています。
これからの中国市場はどうなると予測されるのか
これからの中国EV市場については、成長は続くが“質”の勝負の時代にと思われます。その中で以下のような流れが予測されます。
1. 量→質への転換
- 今までは「とにかく台数を増やす」がテーマでしたが、これからは品質、性能、ブランド力、ユーザー体験が重視されます。
- 競争が激化していて、「安いだけ」では売れなくなっていきます。
- BYDやNIOは、車の走行性能・デザイン・スマート化(UI/UX)で欧州・日本車と勝負しようとしています。
2. 価格競争の加速(レッドオーシャン化)
- 特に小型EV市場では、激しい価格競争が起きてる。BYDが10万元(約200万円)以下のモデルを出す一方、スタートアップは価格を下げすぎて赤字になっています。
- 一部では淘汰のフェーズに入り、資金力の弱い新興メーカーは撤退や合併が進むと予想されます。
3. 輸出強化・世界戦略
- 中国メーカーは国内である程度成熟してきたので、今後は輸出を拡大(すでに欧州、中東、南米、ASEANへ進出中)しています。
- ただし、貿易摩擦・関税の壁が課題であり、欧州では中国製EVに対するダンピング調査も進行中です。
- これを受けて、BYDなどは東南アジアやハンガリーに現地工場を建設中です。
4. 次世代バッテリー競争
- 固体電池やナトリウムイオン電池など、次世代技術への投資合戦も始まっています。
- CATL(中国最大の電池メーカー)は「充電10分で800km走れる」ような超急速充電型バッテリーを開発中です。
- 次世代のバッテリーでは、エネルギー密度と安全性の両立がカギとなります。
5. 政府の支援政策は選別型に
- 今までは広く浅く補助してたけど、これからは優良企業や革新的技術への集中支援になる見通し。
- つまり生き残れるのは、実力のある企業だけになっていきます。
6. スマートカーとしての進化
- EV単体じゃなく、自動運転やAIアシスタントとの連携が重要になります。
- そのため、HuaweiがEV領域に本格参入してるいます。NIOやXPengも、自社開発のOSや音声AIを強化中です。

これからの中国のEC市場はとにかく数を増やすステージから質を求めるステージへと変化します。次世代のバッテリー開発や自動運転やAIとの連携などの性能面やブランド構築に取り組み、輸出も強化する予定です。
次世代バッテリー競争とは
バッテリーはEVの心臓であり、各社が非常に力を入れている分野です。
1. 今の主力は「リチウムイオン電池」
- 現状、EVのほとんどがリチウムイオン電池(LiB)を搭載しています。。
- 特に中国では、LFP(リン酸鉄リチウム)バッテリーが強い。
- 特徴:安い・安全性高い・エネルギー密度はやや低め。
- BYDとCATLが得意とする分野です。
- 高級EV向けには、NCM(ニッケル・コバルト・マンガン)型も多い。
- 特徴:高出力・長距離だけど高コストという欠点があります。
2. 次世代バッテリーへのシフト
次世代のバッテリーとして期待されているものとして、以下のようなものがあります。
(1)固体電池(All Solid-State Battery)
- 液体の電解質を使わず、すべて固体化したバッテリーです。
- メリット:
- エネルギー密度がめちゃ高い(→長距離走行できる)
- 安全性も大幅アップ(液漏れ・発火リスク減)
- デメリット:
- 量産コストが高い、技術的ハードルが超高い。
- 中国メーカーではCATL、BYD、NIOが開発中。
- 世界ではトヨタ、クアンタムスケープ(米)も強いプレイヤー。
(2)ナトリウムイオン電池
- リチウムの代わりにナトリウムを使う、低コスト化しやすいという特徴があります。
- メリット:
- 原材料が豊富(海水にも含まれる)
- コストがリチウムより安い(最大40%減)
- 低温耐性も強い(寒冷地向き)
- デメリット:
- エネルギー密度がリチウムより低め(航続距離は短くなる)
- これもCATLとBYDがすでに実用化段階に入ってる。
(3)超急速充電バッテリー
- 例えばCATLの「Shenxing(神行)バッテリー」:
- 10分の充電で400km以上走行可能。
- すでに量産開始、2024年後半から搭載車が出る予定。
- 充電時間のストレスが減るので、普及に非常に効果的と思われます。
3. バッテリーサプライチェーン争いも熱い
- リチウム・コバルト・ニッケルといった素材の争奪戦も進行中です。
- 中国はアフリカや南米の鉱山への投資を拡大して、資源確保に必死です。
- 一方、米国や欧州は「脱中国依存」を目指して、サプライチェーンの再構築を始めています。

リチウムイオンバッテリー自体もまだまだ利用されていますが、固体電池やナトリウムイオン電池などの開発が激化しています。
また、開発だけでなく、資源のサプライチェーンの争奪も活発化しています。
コメント