この記事で分かること
- HBFとは:HBMの積層技術をNANDフラッシュに応用した次世代メモリです。HBMより低コスト・大容量なのが特徴で、巨大化するAIモデルを効率よく格納・実行するための「HBMを補完する超高速ストレージ」として期待されています。
- なぜ容量が大きいのか:1セルに複数ビットを保持できる「多値化」と、300層を超える「超高積層」が可能なNAND技術をベースにしているからです。コンデンサが必要なDRAM(HBM)に比べ、物理的に高密度化しやすいため、HBMの10倍以上の大容量を実現できます。
- なぜHBFは超高多層にできるのか:DRAM(HBM)は熱に弱く、層を増やすとデータが消えるリスクがあるため積層に限界がありますが、NAND(HBF)は熱に強く、一度に数百層を形成する特殊な製造手法が確立されているため、圧倒的な高多層化が可能です。
HBMを補完するHBF
AI(人工知能)の進化に伴い、従来のHBM(高帯域幅メモリ)だけでは「容量」と「コスト」の限界に直面しています。これを解決する次世代技術として注目されているのがHBF(High Bandwidth Flash:高帯域幅フラッシュ)です。
https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2602/19/news066.html
HBFは、HBMを「置き換える」ものではなく、「HBMの超高速性能」と「SSDの大容量」の中間を埋める補完的なメモリ階層として位置づけられています。
HBFとはなにか
HBF(High Bandwidth Flash)は、HBM(広帯域メモリ)の速さとSSD(フラッシュメモリ)の大容量をいいとこ取りした次世代メモリ技術です。
現在のAI開発では、モデルが巨大化しすぎて高価なHBMだけでは容量が足りないという「メモリの壁」に直面しています。HBFはその救世主として、主にWestern Digital(SanDisk)などが提唱している技術です。
1. HBFの仕組み:なぜ「速くて大容量」なのか
通常のSSDに使われるNANDフラッシュは、安くて大容量ですが、GPUと通信するには速度が遅すぎます。
HBFは、このNANDフラッシュにHBMの構造(積層技術)を組み合わせることで、性能の向上を実現します。
- TSV(シリコン貫通電極)の採用: チップに数千もの小さな穴を開けて垂直に繋ぐHBMと同じ手法を、NANDフラッシュに適用します。これにより、従来のフラッシュメモリよりも圧倒的に広い「通り道(帯域幅)」を確保します。
- GPUの近くに配置: 通常のSSDはマザーボード上の離れた場所にありますが、HBFはGPUパッケージのすぐ近くに配置することを想定しています。
2. HBMとの決定的な違い
HBFはHBMを「置き換える」ものではなく、「HBMを補完する巨大な倉庫」として機能します。
| 特徴 | HBM (DRAMベース) | HBF (NANDベース) |
| 速度 | 超高速(演算用) | 高速(読み出し特化) |
| 容量 | 小さい(数十GB) | 非常に大きい(数百GB〜数TB) |
| コスト | 非常に高い | 比較的安価 |
| データの保持 | 電源を切ると消える | 電源を切っても残る |
3. なぜAIにHBFが必要なのか
大規模言語モデル(LLM)の推論(AIを動かすプロセス)において、HBFは以下のメリットをもたらします。
- 「重み」データの効率的な保持: AIモデルの膨大なデータ(パラメータ)をすべて高価なHBMに入れるのは予算的に不可能です。HBFがあれば、テラバイト級のモデルを安価にGPUのすぐ隣に置いておけます。
- システムの小型化・省電力化: HBMを増やす代わりにHBFを使うことで、サーバーの台数を減らし、消費電力を抑えることができます。
- 高速な起動: データが電源オフでも消えない(非揮発性)ため、システム起動時に巨大なモデルをストレージから読み込む時間を大幅に短縮できます。
4. 実用化の展望
HBFは現在開発段階にあり、2026年から2027年頃の本格導入が期待されています。
特に、ChatGPTのような巨大なAIを動かすデータセンターだけでなく、将来的には「オンデバイスAI(PCやスマホの中で巨大なAIを動かすこと)」を支えるキーテクノロジーになると見られています。

HBF(High Bandwidth Flash)は、HBMの積層技術をNANDフラッシュに応用した次世代メモリです。HBMより低コスト・大容量なのが特徴で、巨大化するAIモデルを効率よく格納・実行するための「HBMを補完する超高速ストレージ」として期待されています。
なぜ容量が大きいのか
HBFの容量がHBMより圧倒的に大きい理由は、主に「ベースとなるメモリ技術の違い」と「高密度な積層構造」の2点にあります。
超高速だが場所をとるDRAM(HBM)」を、「少し遅いが詰め込むことのできるNANDフラッシュ(HBF)」に置き換えたことが最大の理由です。
1. セル構造の違い(1R vs 1C)
もっとも根本的な理由は、メモリ1粒(セル)の大きさが違うことです。
- HBM (DRAM): データを保持するために「1つのトランジスタと1つの大きなコンデンサ」が必要です。コンデンサは物理的に場所をとるため、密度を上げるのが大変です。
- HBF (NAND): コンデンサが不要で、非常に小さな「フローティングゲート」という構造でデータを保持します。そのため、同じ面積により多くのメモリセルを配置できます。
2. 「多値化」技術による倍増
NANDフラッシュ特有の技術として、1つのセルに複数のデータを詰め込む多値化(TLCやQLC)があります。
HBMは1セルに1ビットしか入りませんが、HBF(NAND)は1セルに3〜4ビットを詰め込むことができるため、これだけで容量が3〜4倍に跳ね上がります。
3. 圧倒的な「積層数」
どちらもチップを縦に積み上げますが、その「階数」が違います。
- HBM: 熱や製造の難しさから、現在は8層〜12層、次世代のHBM4でも16層程度が限界です。
- HBF: ベースとなる3D NAND技術は、すでに200層〜300層以上を積み上げる技術が確立されています。これをHBMのような高速インターフェースで繋ぐため、圧倒的な「深さ」で容量を稼げます。
HBFが10倍以上の容量を持てるからこそ、テラバイト級の巨大なAIモデル(LLM)をGPUのすぐ隣に「丸ごと」置けるようになり、推論の効率が劇的に上げることができます。

HBFの容量が大きい理由は、1セルに複数ビットを保持できる「多値化」と、300層を超える「超高積層」が可能なNAND技術をベースにしているからです。コンデンサが必要なDRAM(HBM)に比べ、物理的に高密度化しやすいため、HBMの10倍以上の大容量を実現できます。
なぜHBFのみ高多層にできるのか
HBF(NANDフラッシュ)が、HBM(DRAM)よりも圧倒的に高く積み上げられる理由は、主に「熱」と「構造」の制約がNANDの方が圧倒的に緩いからです。
1. 「熱」の問題:DRAMは熱に弱すぎる
これが最大の理由です。
- HBM (DRAM): データを保持するために「電荷」を蓄えますが、熱が上がるとこの電荷がすぐに逃げてしまいます。12層や16層と積み重ねるだけで、中心部の熱がこもり、データが消えるリスク(リフレッシュエラー)が激増します。
- HBF (NAND): 物理的な絶縁体にデータを閉じ込めるため、熱によるデータ消失がほとんど起きません。そのため、多少熱を持っても高く積むことができます。
2. 製造プロセスの違い
積み上げ方の「思想」が根本的に異なります。
- HBM: 完成に近い薄いチップを1枚ずつ接着剤や金属(バンプ)で貼り合わせます。層を増やすほど、貼り合わせのズレや故障のリスクが指数関数的に高まります。
- HBF (3D NAND): 土台となるウェハーの上に、最初から数百層の材料を「膜」として塗り重ねていき、最後に一気に縦に長い穴を開けて回路を作ります。これにより、1枚のチップの中で200〜300層を形成できるのです。
3. スペース効率
- DRAM: 1セルごとに大きな「コンデンサ(バケツ)」が必要で、これが場所をとります。
- NAND: コンデンサが不要で、非常に薄い層の中にデータを保持できるため、同じ高さでもDRAMより遥かに多くの階層を詰め込めます。

DRAM(HBM)は熱に弱く、層を増やすとデータが消えるリスクがあるため積層に限界があります。対してNAND(HBF)は熱に強く、一度に数百層を形成する特殊な製造手法が確立されているため、圧倒的な高多層化が可能です。
製造している検討しているメーカーはどこか
HBF(High Bandwidth Flash)の開発と標準化を主導しているのは、主に以下の3社です。特に、SanDisk(Western Digital)とSK hynixが強力なタッグを組んで市場を牽引しています。
1. 主要メーカーの動向
| メーカー | 現状と役割 |
| SanDisk (Western Digital) | HBFの提唱者。 2025年に技術を発表し、現在業界標準の策定をリードしています。独自の積層技術(BiCS NAND)を武器にしています。 |
| SK hynix | HBMの最大手。 SanDiskと協業の基本合意(MOU)を締結。HBMで培った積層技術(TSVなど)をHBFに応用し、2026年後半のサンプル出荷を目指しています。 |
| Samsung Electronics | 追随・参入。 NANDフラッシュのシェア世界1位として、2025年後半から独自にHBFの開発に着手したと報じられています。 |
| キオクシア (Kioxia) | プロトタイプ発表。 SanDiskとの共同開発パートナーであり、2025年に超高速なHBFプロトタイプを展示するなど、高い技術力を示しています。 |
2. 今後のスケジュール
各社の発表によると、実用化までのタイムラインは以下のようになっています。
- 2025年: SanDiskとSK hynixが標準化に向けたコンソーシアムを結成。
- 2026年 下半期: HBFメモリ単体の最初のサンプル出荷。
- 2027年 初頭: HBFを搭載したAI推論デバイス(アクセラレータ等)が登場見込み。

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