この記事で分かること
- 基板対基板コネクタとは:電子機器内のプリント基板同士を直接つなぐ電子部品です。ケーブルを使わずに電気的接続を可能にし、機器の小型化や組み立て効率の向上に貢献します。
- 免振の強化方法:フローティング構造という、コネクターの接点を可動式にする技術が主流です。これにより、基板のXYZ方向のズレや振動を吸収し、接触不良を防ぎます。
- 高電流と免振構造の両立が重要となる基板:EVや産業用ロボット、ドローンなど、大電流が流れつつも、強い振動や衝撃にさらされる機器の基板で特に重要です。
ヒロセ電機の高電流・免振構造を両立した基板対基板コネクタ
ヒロセ電機は高電流・免振構造を両立した基板対基板コネクタを開発しています。このコネクタは特に電動車(EV/HEV)のパワートレイン機器など、高電流と厳しい振動の両方に対応する必要がある用途向けに開発されました。
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00757651
この技術は、従来のバスバーやネジ止めによる接続に代わる、効率的で信頼性の高いソリューションを提供します。
基板対基板コネクターとは何か
基板対基板コネクター(Board to Board, B to Bコネクター)は、2枚以上のプリント基板(PCB)を直接電気的に接続するための電子部品です。これにより、回路や信号、電力を効率的に伝送し、機器の組み立てや保守を容易にします。
主な役割と利点
このコネクターは、主に以下の目的で使用されます。
- 小型化と省スペース化: ケーブルを使用せずに基板同士を接続するため、機器内部の空間を節約できます。特に、スマートフォンやデジタルカメラのような小型機器では不可欠な部品です。
- 組立・保守の効率化: はんだ付けのような恒久的な接続ではなく、抜き差しが可能なため、製造ラインでの組み立て時間を短縮したり、故障した基板の交換を容易にしたりできます。
- 設計の自由度向上: 複数の基板を重ねて配置したり、L字型に接続したりすることで、機器の内部レイアウトの柔軟性が高まります。
種類
基板対基板コネクターには、用途に応じてさまざまな種類があります。
- フローティングタイプ: コネクター内部に可動構造を持ち、基板の位置ずれや振動を吸収します。特に、自動車や産業機器のように厳しい環境下で使用される製品で重要です。
- スタッキングタイプ: 複数の基板を垂直に積み重ねて接続します。コネクターの高さによって、基板間の距離を調整できます。
- 水平接続タイプ: 基板同士を水平に並べて接続します。

基板対基板コネクターは、電子機器内のプリント基板同士を直接つなぐ電子部品です。ケーブルを使わずに電気的接続を可能にし、機器の小型化や組み立て効率の向上に貢献します。
高電流・免振構造の両立がなぜ重要なのか
高電流と免振構造の両立が重要なのは、高電流を扱う機器が、同時に強い振動や衝撃にさらされる環境で使用されるケースが増えているためです。特にEVやHEVのパワートレイン機器、産業用ロボット、FA機器といった分野でこのニーズは高まっています。
なぜ両立が難しいのか
従来の考え方では、この2つの特性は相反するものとされてきました。
- 高電流対応: 高電流を安定して流すには、コネクターの接点をしっかりと接触させ、低い接触抵抗を維持する必要があります。このためには、接点に強い接触圧をかけることが一般的です。
- 免振構造: 免振構造は、振動による基板の位置ずれを吸収するために、接点に一定の遊び(フローティング機能)を持たせる必要があります。この遊びが、接点の接触圧を弱め、電気的な安定性を損なう原因になることがありました。
つまり、安定した電気的接続(高電流)と物理的な柔軟性(免振)は、従来技術ではトレードオフの関係にあったのです。
両立がもたらすメリット
この2つの特性を両立させることで、以下の重要なメリットが生まれます。
- 信頼性の向上: 振動や衝撃が激しい環境でも、コネクターが外れたり、接触不良を起こしたりするリスクを大幅に低減できます。これにより、機器全体の安定した動作と長寿命化に貢献します。
- 設計の簡素化: 高電流を扱う際の一般的な接続方法であるバスバーやネジ止めが不要になります。これにより、機器の小型・軽量化、そして組み立て作業の自動化・効率化が可能になります。
- 高性能化への貢献: 信頼性の高い接続が保証されるため、より高い電流を安全に流すことができ、機器の性能向上に直結します。
例えば、電気自動車のモーター制御ユニットは、大電流を流しながらも、走行中の激しい振動に常にさらされます。こうした過酷な環境でコネクターが接触不良を起こすと、車両の故障につながるため、高電流と免振の両立は必要不可欠なのです。

高電流を扱う機器が、同時に強い振動にさらされる環境で使用されるためです。この両立は、EVや産業機器で接触不良を防ぎ、機器の信頼性向上と小型化に不可欠となります。これにより、ネジ止め不要で組み立て効率も高まります。
どうやって免震を強化するのか
コネクターの免震機能を強化する方法はいくつかあり、主なものとしては、フローティング構造の採用や、コネクター自体の剛性を高める工夫、そして独自の可動機構の開発があります。これらの技術は、振動や衝撃による基板間の位置ずれや接触不良を防ぐことを目的としています。
フローティング構造
フローティング構造は、コネクターの接点部分を独立した可動式にすることで、基板のXYZ軸(縦、横、高さ)方向のずれを吸収する技術です。これにより、基板が振動で動いても接点の接触が維持され、安定した電気接続を保てます。この技術は特に、精密な位置合わせが難しい自動組立ラインや、厳しい振動環境下の機器に有効です。
コネクターの剛性向上
コネクターのハウジング(外枠)や端子自体を、耐振動性の高い素材や形状にすることで、物理的な耐久性を高めます。例えば、金属製の補強材を組み込んだり、嵌合時のロック機構をより強固なものにしたりする工夫が挙げられます。
独自の可動機構
メーカーによっては、独自の構造を開発し、免震性能を向上させています。
- Z軸(高さ方向)のフローティング機構: 複数のスプリングや可動部品を組み合わせることで、上下方向の振動による基板の振幅を効果的に吸収します。これにより、基板がバタつくような動きでも、安定した接触を保てます。
- XY軸(平面方向)のフローティング機構: コネクター内部の部品がXY方向にスライドすることで、基板の位置ずれを吸収し、無理な力がかからないようにします。これにより、コネクターや基板にかかるストレスが軽減され、破損リスクが低減します。
これらの技術を組み合わせることで、ヒロセ電機が提供するような「高電流・免震構造」を両立したコネクターが実現されます。

フローティング構造という、コネクターの接点を可動式にする技術が主流です。これにより、基板のXYZ方向のズレや振動を吸収し、接触不良を防ぎます。また、コネクター自体の剛性を高めることも重要です。
どのような基板で両立が必要なのか
この両立が特に必要とされるのは、高電流が流れると同時に、強い振動や衝撃にさらされるような過酷な環境で使用される基板です。具体的には、以下のような機器の基板で重要となります。
1. 電動車(EV・HEV)のパワートレイン機器
EVやHEVのモーター、インバーター、バッテリーマネジメントシステム(BMS)などです。これらの機器は、走行中に絶えず振動や衝撃にさらされながら、同時に数十アンペアもの大電流を扱う必要があります。
従来のバスバーやネジ止め方式に代わり、コネクターを使用することで、小型化・軽量化と組み立ての効率化を実現します。
2. 産業用ロボットやFA機器
工 場で稼働する産業用ロボットや自動化機器の制御基板です。これらの機器は高速かつ繰り返し動作するため、常に振動が発生します。また、モーターやアクチュエーターを駆動させるために大電流が流れるため、高電流と免振の両立が欠かせません。
3. ドローンや無人搬送車(AGV)
ドローンやAGVなどのバッテリーやモーターを制御する基板です。これらの機器は、移動中の振動や着陸時の衝撃に耐える必要があります。同時に、モーターに電力を供給するため、高電流に耐える信頼性の高い接続が求められます。
これらの機器では、もしコネクターが振動で接触不良を起こすと、機器の誤作動や故障、最悪の場合は事故につながる可能性があります。そのため、高電流と免振構造の両立は、機器の安全性と信頼性を確保する上で非常に重要な技術となっています。

高電流・免震構造の両立は、EVや産業用ロボット、ドローンなど、大電流が流れつつも、強い振動や衝撃にさらされる機器の基板で特に重要です。これにより、機器の信頼性と安全性を高めます。
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