ホンダの半導体調達先の多様化 どんな半導体を供給していたのか?分散した調達先はどこか?

この記事で分かること

  • どんな半導体を供給していたのか:ホンダがネクスペリアから調達していたのは、最先端の演算チップではなく、「汎用半導体」や「ディスクリート半導体」です。
  • 分散した調達先:ロームからトランジスタやダイオードなどの汎用半導体を、TSMCから自動運転等に使う先端演算用チップを調達します。

ホンダの半導体調達先の多様化

 ホンダは、中国系半導体大手ネクスペリア(Nexperia)からの供給停止トラブルを受け、特定のサプライヤーに依存しない「分散調達」の体制構築にメドを立てました。

 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC226OB0S5A221C2000000/

 2026年1月現在、国内外の複数メーカーからの代替調達の準備を整え、順次量産車への搭載を開始しています。

ネクスペリアからはどんな半導体を供給していたのか

 ホンダがネクスペリア(Nexperia)から調達していた半導体は、最先端の演算用チップではなく、「汎用半導体」「ディスクリート半導体」と呼ばれる、自動車の基本動作を支える極めて重要な部品群です。

1. ディスクリート半導体(単機能部品)

 ネクスペリアは世界シェアトップクラスの製品を多く持ち、これらは一台の車両に数百から数千個単位で使用されています。

  • トランジスタ: 電流のスイッチングや増幅を行い、各種モーターや回路の制御に不可欠。
  • ダイオード: 電流を一定方向にのみ流し、逆流防止や電圧の安定化を行う。

2. パワー半導体

  • MOSFET(モスフェット): バッテリーからの電力を効率よく制御し、窓の開閉(パワーウィンドウ)、ワイパーの作動、ドアロックなどの駆動系ユニットに使用されます。

3. ロジックIC(標準論理回路)

  • 電子制御ユニット(ECU)内で信号処理を行うための基本的なIC。高度な自動運転用ではなく、信号のオン・オフを切り替えるような「基本動作」を司る部分に使われます。

 ネクスペリアが供給していたのは、いわば「産業のコメ」の中でも「土台となる汎用品」です。

 ホンダが現在進めている分散調達は、こうした「目立たないが必須の基本部品」を、ロームやルネサス、オンセミといった他社からも確実に確保できるように設計自体を見直す取り組みです。

ホンダがネクスペリアから調達していたのは、最先端の演算チップではなく、「汎用半導体」「ディスクリート半導体」です。

信号トランジスタやダイオードは車でどのように使用されるのか

 自動車において、信号トランジスタやダイオードは「目立たないが、全身を動かすための神経や血管の弁」のような役割を果たしています。

 高度な計算をするCPU(脳)とは異なり、これらは各パーツが正しく動くための「基本的なスイッチ」や「電気の逆流防止」として、一台の車に数千個単位で使われています。

1. 信号トランジスタの役割: 「小さな信号で大きな動きを制御する」

 トランジスタは、マイコンからの微弱な電気信号を受け取り、ランプを点灯させたりモーターを回したりするための「スイッチ」として機能します。

  • パワーウィンドウやワイパー: 運転席のスイッチを押した信号(微弱)を受け取り、窓を動かす大きな電流を流すスイッチになります。
  • LEDライトの制御: ウインカーの点滅やブレーキランプの点灯タイミングを正確にコントロールします。
  • 信号の増幅: センサーが検知した微かな情報を、コンピューターが認識できる強さまで増幅します。

2. ダイオードの役割: 「電気の一方通行を支える」

 ダイオードは、電気を一方にしか流さない特性を持ち、電子回路の「安全装置」として働きます。

  • 逆流防止: バッテリーからの電気が逆向きに流れて精密機器が壊れるのを防ぎます。
  • 電圧の保護(サージ保護): モーター停止時などに発生する突発的な高電圧(ノイズ)を逃がし、高価な制御コンピューター(ECU)を焼き付きから守ります。
  • 整流: オルタネーター(発電機)で作られた交流電力を、車で使える直流電力に変換します。

具体的な使用箇所の例

 これらは、以下のようなあらゆるユニットの基板にびっしりと並んでいます。

ユニット具体的な動作
エンジン制御(ECU)燃料噴射のタイミング制御、各センサーの信号処理
安全装置(ABS/エアバッグ)センサー情報の伝達、作動スイッチの切り替え
ボディ制御ドアロック、パワーシート、エアコンのファン制御
インフォテインメントカーナビやモニターのバックライト、音声出力の増幅

 「信号トランジスタやダイオード」が不足するということは、車にとって「スイッチが入らない」「ライトがつかない」「センサーが反応しない」ことを意味します。一つでも欠ければ車として完成・出荷できないため、ホンダのようなメーカーにとってこれらの汎用部品の確保は死活問題だったのです。


信号トランジスタは、マイコンからの微小な信号でワイパーやランプなどの大きな電流を制御する「スイッチ」や、センサー信号の増幅を担います。ダイオードは、電気を一方通行にして精密機器への逆流を防いだり、突発的な高電圧から回路を保護したりします。

分散調達先はどこか

 ホンダが分散調達を進めている主な提携先と、それぞれから調達・共同開発している半導体の種類は以下の通りです。

主な分散調達先と調達品目

調達先(パートナー)主な調達・開発品目役割・目的
ローム (ROHM)汎用半導体(トランジスタ、ダイオード)、SiCパワー半導体ネクスペリアの代替調達先としての主力。EVの電力効率を左右する次世代チップも確保。
TSMC先端半導体(プロセッサー、ロジックIC)以前は部品メーカー任せだった先端品を、世界最大手から直接安定確保する体制へ。
ルネサス エレクトロニクス車載マイコンSoC(System on Chip)自動運転(ADAS)や車内制御の「脳」にあたる高性能チップを共同開発。
インフィニオン (Infineon)パワー半導体ADAS用チップ世界シェア首位級の欧州メーカーと提携し、電動化と安全技術の部品を補強。
オンセミ (onsemi)パワー半導体イメージセンサーEVの駆動系やカメラ用の半導体において、長期的な供給契約を推進。

分散調達のポイント

  1. 「産業のコメ」の多社化:ネクスペリアが強かったトランジスタやダイオードなどの低単価・大量使用部品を、ロームなどの国内勢や他の外資メーカーへ分散し、1社が止まっても生産を継続できるようにしています。
  2. 設計の標準化:特定のメーカーのチップでしか動かない設計をやめ、他社品にすぐ差し替えられる「汎用設計」への変更を並行して進めています。
  3. 直接契約へのシフト:部品メーカー(ティア1)経由ではなく、ホンダ自身がTSMCなどの半導体メーカーと直接交渉・契約することで、供給の優先順位を確保しています。

 2026年以降、ホンダはこれらの強靭化した調達網をベースに、新型EV「Honda 0シリーズ」などの量産を本格化させる計画です。

ホンダは、ロームからトランジスタやダイオードなどの汎用半導体を、TSMCから自動運転等に使う先端演算用チップを調達します。またルネサスとは次世代車用SoCを共同開発し、インフィニオンやオンセミからはEV駆動用のパワー半導体を確保するなど、多角的な調達体制を築いています。

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