この記事で分かること
- 現在の市場での大型車向けHVの車種:トヨタのアルファード/ヴェルファイアやハリアー、ホンダのオデッセイ、日産エクストレイル、三菱アウトランダーPHEVなど、ミニバンやSUVを中心に多くの大型HV・PHEVが販売されています。
- ホンダのHV車の特徴:独自のe:HEVシステムによる高速域ではエンジンをタイヤに直結させることで高効率と力強い走りを両立し、運転の楽しさも追求しています。
- 燃費の向上方法:高効率の新世代エンジンと、電力変換効率を上げたe:HEVシステムを組み合わせや、車体全体の軽量化や空力改などで徹底的に燃費を向上させます。
ホンダの大型SUV向けのハイブリッドシステム
ホンダが大型SUV向けのハイブリッドシステムを開発しており、同サイズのエンジン車に比べて30%以上の燃費向上を目指している、というニュースが報じられています。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/11222/
これは主に北米市場でのハイブリッド車(HV)需要の高まりや、環境規制強化に対応するための動きです。
現在の市場での大型車向けHVの車種は
現在の市場には、各メーカーからさまざまな大型のハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)が投入されています。
「大型車」の定義は曖昧ですが、主に全長4.7メートル以上で、特に3列シートを持つSUVやミニバンには以下のような車種があります。
主な国産・大型HV/PHEV車種(SUV・ミニバン)
| メーカー | 車種名 | 区分/特徴 |
| トヨタ | ランドクルーザー250 (HV設定あり) | 伝統的な大型クロカンSUV。 |
| トヨタ | ハリアー (HV設定あり) | 都市型ミドル〜ラージサイズSUV。 |
| トヨタ | クラウン エステート (HV設定あり) | ワゴンとSUVが融合した新しいラージサイズモデル。 |
| マツダ | CX-80 (ディーゼルHV/PHEV) | 3列シートのラージサイズSUV。 |
| マツダ | CX-60 (ディーゼルHV/PHEV) | プレミアムなミドル〜ラージサイズSUV。 |
| 日産 | エクストレイル (e-POWER) | e-POWERを搭載したミドルサイズSUV。 |
| 三菱 | アウトランダーPHEV | 3列シート設定もあるSUVで、PHEVシステムのパイオニア。 |
| ホンダ | オデッセイ (e:HEV) | 高級感のある大型ミニバン。 |
| ホンダ | CR-V (e:HEV) | グローバルモデルのミドル〜ラージサイズSUV。(日本でも導入) |
輸入車(欧州プレミアムブランド)の大型HV/PHEV
海外メーカーも、大型SUVを中心にPHEVモデルを豊富に展開しています。
- レクサス (トヨタ): RX(HV/PHEV)、NX(HV/PHEV)
- ボルボ: XC90 (PHEV/マイルドHV)、XC60 (PHEV/マイルドHV)
- BMW: X5 (PHEV/マイルドHV)、X3 (PHEV/マイルドHV)
- メルセデス・ベンツ: GLE (PHEV/マイルドHV)、GLC (PHEV/マイルドHV)
ホンダの次世代HVの競合として
ホ ンダが「同クラスのエンジン車比で30%以上の燃費向上」を目指す大型SUVの次世代HVシステムは、現在市場にあるこれらの大型HV/PHEVモデル、特にトヨタの大型SUV群や、マツダのラージ商品群(CX-60, CX-80)のハイブリッドシステムなどが、直接的な性能上の競合になると見られています。

現在の市場では、トヨタのアルファード/ヴェルファイアやハリアー、ホンダのオデッセイ、日産エクストレイル、三菱アウトランダーPHEVなど、ミニバンやSUVを中心に多くの大型HV・PHEVが販売されています。特に3列シートのミニバンや、マツダCX-60/CX-80等のラージサイズSUVでもHVやPHEVの選択肢が増えています。
ホンダのHV車の特徴は何か
ホンダのハイブリッド車(HV)の最大の特徴は、独自の「e:HEV(イー・エイチイーブイ)」システムにあります。
これは、低速・中速域はモーター駆動を主体とし、高速域ではエンジン駆動を主体とするという、「モーターとエンジンの良いところを賢く使い分ける」システムです。特に以下の3点が大きな特徴として挙げられます。
1. モーター主体の「EVライク」な走り
e :HEVの根幹は、「走る」ことのほとんどをモーターが担うことにあります。
- スムーズな発進・加速: 発進時や街中の走行では、エンジンは発電に徹するか停止し、高出力モーターのトルク(駆動力)で走行します。これにより、電気自動車(EV)に近い静かで滑らかな走り出しと、リニアでレスポンスの良い加速感を実現しています。
- 3つの走行モードを自動切り替え:
- EVドライブモード(モーター): ほぼモーターのみで走行。
- ハイブリッドドライブモード(発電+モーター): エンジンで発電し、その電気でモーターを駆動。
- エンジンドライブモード(直結): エンジン効率の良い高速クルージング時にのみ、クラッチでエンジンとタイヤを直結して走行。
2. 高速域での「直結」による高効率
多くのハイブリッドシステムが高速域でもモーターを使い続けるのに対し、e:HEVは高速クルーズ時に最も効率の良いエンジン回転域でエンジンを直結してタイヤを駆動します。
- これにより、高速走行時の燃費効率の低下を防ぎ、力強く静かなクルージングを両立させています。
- 高速道路などでの静粛性にも貢献しています。
3. スポーティで「五感に響く」運転の楽しさ
ホンダは、HVシステムであっても「走る楽しさ」を追求しています。
- ダイレクトな加速感: モーターの瞬時に立ち上がるトルクにより、ドライバーのアクセル操作にリニアに反応するダイレクトな加速フィーリングが魅力です。
- サウンドコントロール: エンジン走行時には、あえてエンジン回転数と加速感をシンクロさせるサウンドコントロールを行い、ドライバーの気持ちが高まるような演出を取り入れている車種もあります。
まとめ
| 特徴 | 具体的なメリット |
| モーター主体駆動 | 静かで滑らかな発進・加速。EVライクなフィーリング。 |
| 高速域エンジン直結 | 高速クルージング時の高効率・低燃費。静粛性の向上。 |
| 高い走行性能 | モーターの力でレスポンスが良く、スポーティな走りも可能。 |
ホンダのe:HEV車は、単に燃費が良いだけでなく、「気持ちの良い走り」を追求している点に大きな特徴があると言えます。

ホンダのe:HEVシステムは、モーター駆動を主体とし、EVのような静かで滑らかな走りが特徴です。特に、高速域ではエンジンをタイヤに直結させることで高効率と力強い走りを両立し、運転の楽しさも追求しています。
どのように燃費を30%向上させるのか
ホンダが大型車向けに目指す「30%以上の燃費向上」は、次世代の「e:HEV」システムと、車体全体の効率化を組み合わせることで実現を目指しています。
次世代システムは、小型・中型車向けで「10%以上」の燃費向上を目指しているのに対し、大型車向けで「30%以上」と大きな目標を掲げているのが特徴です。
1. エンジンとシステムの高効率化(e:HEVの進化)
- 高効率エンジンの開発:
- 直噴アトキンソンサイクルエンジン(1.5Lまたは2.0L)を採用し、燃焼効率を最高水準まで高めます。
- 特に、エンジンが最も高効率で稼働する領域を、現行比で30%~40%以上拡大することを目指しています。
- 電力変換効率の向上:
- 走行用/発電用モーターを制御するPCU(パワーコントロールユニット)の電力変換効率を高めます。
- フロントドライブユニット(モーターやトランスミッションを含む機構)を刷新し、小型化と高効率化を両立させます。
- 統合冷却システム:
- エンジン、モーター、バッテリーなどの冷却システムを統合・最適化し、熱損失を抑え、システム全体の効率を上げます。
2. バッテリーと制御技術の刷新
- バッテリーの小型・軽量化:
- 高効率化により、同じ性能でもバッテリーを従来製品よりも小型化し、車体の軽量化と搭載スペースの自由度を高めます。
- 緻密な制御技術の拡充:
- 走行状況に応じて最適な運転モードへ切り替える機能を拡充し、無駄な燃料消費を徹底的に抑える制御(例:燃費が良くなるアクセル制御など)を導入します。
3. 車両全体の効率向上
- 車両プラットフォーム(車台)の進化:
- 車体そのものを高効率化する次世代プラットフォームとの組み合わせで、燃費向上効果を最大化します。
- 軽量化・空力性能の改善:
- システムの小型化やプラットフォームの進化に加え、車体の空気抵抗の低減や軽量化を合わせて行うことで、燃費を向上させます。
特に大型SUVは車体が大きく重いため、エンジン車の燃費が悪化しやすい傾向にあります。そのため、燃費性能の高いHVシステムを投入することで、ベースのエンジン車との差を大きく開く「30%以上」という目標を設定していると考えられます。
この次世代e:HEVシステムは、2027年以降に投入される大型車への搭載を目指して開発が進められています。

高効率の新世代エンジンと、電力変換効率を上げたe:HEVシステムを組み合わせます。エンジンが最も効率良い領域を拡大し、車体全体の軽量化や空力改善も行い、統合制御で徹底的に燃費を向上させます。

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