IHIの業績予想上方修正 上方修正の理由は何か?民間航空エンジンのスペアパーツにはどのようなものがあるのか?

この記事で分かること

  • IHIの特徴:1853年創業の総合重工業メーカーです。「航空・宇宙・防衛」、「資源・エネルギー」、「社会インフラ」など、地球から宇宙まで4つの事業を展開し、特に航空エンジンやターボチャージャーに強みを持つ技術集団です。
  • 上方修正の理由:航空需要回復に伴う民間航空エンジンのスペアパーツ販売が急拡大したこと、および円安効果が追い風となった点です。
  • 民間航空エンジンのスペアパーツとは:主に高温・高速に耐えるタービンブレードやディスクなど、エンジンの中心部の部品です。

IHIの業績予想上方修正

 IHIは、2026年3月期通期連結業績予想上方修正し、営業利益について過去最高益を見込む水準としました。

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 上方修正の主な要因としては、主に民間航空エンジン事業の堅調な伸びなどが挙げられています。

IHIはどんな企業か

 株式会社IHI(アイ・エイチ・アイ)は、総合重工業を主体とする日本の大手製造会社です。

 その歴史は1853年(嘉永6年)の石川島造船所創業にまで遡り、170年以上の歴史を持つ老舗企業です。旧社名は「石川島播磨重工業株式会社(IHI)」で、2007年に現在の「株式会社IHI」に社名を変更しました。

 IHIグループは、その長年の歴史で培ってきた高度な技術力エンジニアリング力を基盤に、地球から宇宙まで幅広い分野で事業を展開しています。


IHIの主な事業領域

 IHIは、事業を主に以下の4つの領域に分けて展開しています。

事業領域主な貢献内容代表的な製品・技術
1. 航空・宇宙・防衛航空輸送、防衛システム、宇宙利用の未来を切り拓く。航空エンジン(国内シェアトップクラス)、ロケットシステム、防衛システム、宇宙利用機器
2. 資源・エネルギー・環境脱CO2・循環型社会に貢献し、エネルギーの安定供給と環境保全を両立。発電用ボイラ、LNG貯蔵タンク、プロセスプラント、ガスタービン、カーボンソリューション技術
3. 産業システム・汎用機械産業インフラの発展に貢献し、お客さまのオペレーション最適化を追求。車両用過給機(ターボチャージャー)、物流システム、製鉄用工業炉、圧縮機、パーキングシステム
4. 社会基盤橋梁・トンネルを軸に、安全・安心な社会インフラの実現に貢献。橋梁(例:明石海峡大橋など)、水門、交通システム、シールド掘進機

 特に、航空エンジンの分野では国内トップクラスのシェアを持ち、また、車両用ターボチャージャーは世界的な規模で事業展開しているなど、特定分野で非常に高い競争力を持っています。

企業の特徴

  • 長い歴史と技術の蓄積: 創業以来、造船を起点に、日本の近代化と工業技術の発展に大きく貢献してきました。
  • グローバルな展開: 海外売上高比率も高く、世界中で事業を展開するグローバル企業です。
  • 多様な製品群: 大型インフラから身近な機械まで、「ものづくり」の技術を核に幅広い製品とシステムを提供しています。

 IHIの事業は多岐にわたりますが、特に高い技術力を持つ航空エンジンターボチャージャー、そしてエネルギー・環境分野での取り組みが、近年の業績を牽引しています。

IHIは、1853年創業の総合重工業メーカーです。

「航空・宇宙・防衛」「資源・エネルギー」「社会インフラ」など、地球から宇宙まで4つの事業を展開し、特に航空エンジンやターボチャージャーに強みを持つ技術集団です。

好調の理由は何か

 IHIの通期見通し(2026年3月期)が上方修正され、営業最高益を更新する見込みとなった主な理由は、主力事業の収益力向上為替の円安影響に集約されます。

 特に好調の要因となっているのは、以下の2つの点です。

1. 航空・宇宙・防衛事業の好調(特に民間エンジン)

IHIの利益の大部分を占めるこの事業が、業績を大きく牽引しています。

  • スペアパーツ販売の拡大:
    • 世界的に旅客需要が回復し、航空機の稼働率が向上しているため、IHIが参画している民間航空エンジン(特にV2500やPW1100G-JMなど)のスペアパーツ(補修部品)の販売が大幅に増加しています。
    • 航空エンジン事業は、新製エンジンの納入後、アフターマーケット(整備・スペアパーツ販売)で収益を上げるビジネスモデルであり、この段階で利益が大きく拡大しています。
  • 為替の円安影響:
    • 海外での取引が多い民間航空エンジン事業において、円安が進行したことで、売上・利益が円建てで増加する効果が大きく寄与しました。

2. 事業構造改革の進展と採算改善

不採算事業の整理や、既存事業の収益力強化が進んだことも好調を支えています。

  • 車両過給機事業の収益改善:
    • 産業システム・汎用機械セグメントの主力の一つである車両用過給機(ターボチャージャー)において、海外生産拠点の最適化などの構造改革に加え、販売価格への適切な転嫁が進み、利益率が改善しています。
  • 社会基盤事業の採算改善:
    • 橋梁や水門などの社会基盤事業においても、案件の採算性が改善し、利益に貢献しています。

IHI好調の主な理由は、航空需要回復に伴う民間航空エンジンスペアパーツ販売が急拡大したこと、および円安効果が追い風となった点です。構造改革による事業採算の改善も寄与しています。

民間航空エンジンのスペアパーツにはどんなものかあるのか

 IHIの好調を支える民間航空エンジンのスペアパーツは、主にエンジンの中心部(コア部分)に使われる耐久性の高い部品です。

 ジェットエンジンは非常に過酷な環境(高温・高圧・高速回転)で稼働するため、定期的な点検・交換が必要な部品(スペアパーツ)の需要が継続的に発生します。これがIHIの言う「アフターマーケットビジネス」の核となります。主なスペアパーツの種類としては、以下のようなものが挙げられます。

1. エンジンの中核部品(高熱・高速にさらされる部分)

 これらの部品は、エンジンの高圧圧縮機、燃焼器、タービンといったエンジンコアを構成し、特に交換頻度が高い重要部品です。

  • タービンブレード(翼)
    • 燃焼器で作られた高温・高圧のガスを受ける、エンジンで最も過酷な環境にさらされる部品です。特殊な耐熱合金(ニッケル合金など)で作られ、非常に高い技術が必要です。
  • タービンディスク/スプール:
    • タービンブレードを取り付けて高速回転する円盤状の部品で、遠心力に耐える強度が必要です。
  • コンプレッサーブレード/ディスク(圧縮機翼):
    • 空気を圧縮する部分の羽根や円盤です。

2. エンジンケース類

 エンジンコアを覆うケーシング(外枠)の部品も、整備や修理の対象となります。

  • コンプレッサーケース / タービンケース / 燃焼ケーシング:
    • エンジンの各モジュール(高圧圧縮機、タービンなど)を構成する外枠の部品。

3. その他の消耗品・交換部品

 上記の主要部品のほかにも、エンジンを構成する無数の消耗品や、寿命が定められた部品がスペアパーツとして提供されます。

  • ガスやオイルを流すための配管シール材
  • エンジンの回転を伝えるシャフトギアボックスの部品。

 これらの部品の販売(スペアパーツ)や、それらを用いたエンジンの整備・修理(MRO:Maintenance, Repair and Overhaul)の需要が、航空機の運航時間の増加に伴って拡大していることが、IHIの収益を大きく押し上げています。

民間航空エンジンのスペアパーツは、主に高温・高速に耐えるタービンブレードディスクなど、エンジンの中心部の部品です。飛行時間に応じた定期交換需要が収益源です。

車両用過給機とは何か

 IHIが主要製品の一つとする車両用過給機は、一般的にターボチャージャーとも呼ばれ、車のエンジンの出力向上と燃費改善(環境負荷低減)に不可欠な装置です。

仕組み

ターボチャージャーは、エンジンからの排気ガス(本来は捨てられるエネルギー)を利用して羽根車(タービン)を高速で回転させます。

 このタービンと同軸でつながっているもう一つの羽根車(コンプレッサー/圧縮機)が、外から吸い込んだ空気を強制的に圧縮し、エンジン(シリンダー)内に大量に送り込みます。

役割とメリット

 エンジンは、燃焼させる空気(酸素)の量が多いほど大きなパワーを生み出せます。ターボチャージャーは、この空気の量を強制的に増やすことで、主に以下のメリットをもたらします。

メリット詳細
出力向上小さな排気量(エンジンサイズ)でも、自然吸気(NA)エンジンよりも大きなパワーとトルクを得ることができます。
燃費向上(ダウンサイジング)同じ出力を得るためにエンジンを小さくできるため、エンジンの軽量化や摩擦損失の低減につながり、燃費が向上します。(過給ダウンサイジング)
排出ガス低減エンジンの効率を高めることで、排気ガス中の有害物質やCO2の排出削減にも貢献します。

 IHIは、この車両用過給機(ターボチャージャー)の分野で長年の実績があり、全世界での累計生産台数は1億台を超えるなど、グローバルに事業を展開しています。

車両用過給機(ターボチャージャー)は、排気ガスのエネルギーを利用して空気を圧縮し、エンジンに強制的に送り込む装置です。小さなエンジンで高出力を得て燃費を向上させます。

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