リチウムイオン電池の重要性 リチウムイオン電池の利点と欠点は?長寿命化に必要なものは?

この記事で分かること

  • リチウムイオン電池の利点:エネルギー密度の高さや長寿命などの利点から多くの製品で利用されています。
  • リチウムイオン電池の欠点:熱に弱い、劣化がみられる、比較的短いとはいえ充電時間のさらなる短縮化が必要
  • 長寿命化に必要なもの:充電時に、材料疲労が起こりやすい、電離の劣化の要因であるデッドリチウムや電解液の分解なども負極が原因になりやすいなどの理由から負極がリチウムイオン電池の寿命に大きな影響を与えます。

リチウムイオン電池

 2025年3月の世界の電気自動車(EV)およびプラグインハイブリッド車(PHEV)の販売台数は、前年同月比で29%増加し、約170万台に達しました。

 https://www.reuters.com/business/autos-transportation/global-electric-vehicle-sales-up-29-march-researchers-find-2025-04-15/?utm_source=chatgpt.com

 この成長は主に中国と欧州の市場が牽引しています。​

 前回の記事では、中国市場がなぜEVで大きな規模を誇っているのか、今後の中国市場の動向を解説しましたが、今夏はEVにとって重要なリチウムイオン電池ついて解説しています。

リチウムイオン電池とは?

 リチウムイオン電池は、今のEV・スマホ・再エネ社会を支える大黒柱です。エネルギー密度の高さや長寿命などの利点から多くの製品で利用されています。

1. リチウムイオン電池の概要

  • 携帯電話やノートPC、電気自動車(EV)、蓄電池など、あらゆるところで使われてる充電式バッテリーでし。
  • 「リチウムイオン(Li⁺)」が電池の中を行ったり来たりすることで、電気を出したり蓄えたりする仕組みになっています。
  • 軽くて、容量が大きくて、繰り返し充電できるのが強みです。

2. どうやって動いてるの?

リチウムイオン電池の構成
  • 正極(+):主にコバルト・ニッケル・マンガン系の材料
  • 負極(−):主に黒鉛(グラファイト)
  • 電解液:リチウムイオンが移動する液体(可燃性)
  • セパレーター:正極と負極がショートしないように隔てる薄膜
リチウムイオン電池の仕組み
  • 放電時:リチウムイオンが負極 → 正極へ移動して電流が流れる。
  • 充電時:リチウムイオンが正極 → 負極へ戻る。

3. メリットとデメリット

メリット
  • 高エネルギー密度(=小さくてたくさん電気が貯められる)
  • メモリー効果がほぼない(途中充電でも劣化しにくい)
  • 長寿命(数百~数千回の充電OK)
  • 充電時間も比較的短い
デメリット
  • 高温に弱く、熱暴走や発火のリスクあり(特に不良品や物理的損傷時)
  • コバルトなどの希少資源を使用(供給不安・高コスト)
  • 劣化は避けられない(温度・充電回数に影響される)

エネルギー密度の高さや長寿命などの利点から多くの製品で利用されています。しかし熱に弱い、劣化がみられる、比較的短いとはいえ充電時間のさらなる短縮化が必要などの欠点もあります。

リチウムイオン電池の電極の重要性

 リチウムイオン電池の性能(容量、寿命、充電スピード、安全性など)は、「電極の材料と構造」が重要なカギになっています。


電池の性能を左右する2つの電極

 リチウムイオン電池には

  • 正極(カソード/+)
  • 負極(アノード/−)

という2つの電極があって、リチウムイオンがこの間を行き来して電気が流れる仕組みであり、この2つの素材や設計が、性能に直結しています。

① 正極(カソード)が決めること:

  • エネルギー密度(=電池にどれだけ電気が貯められるか)
  • 出力性能(加速とか大電流に強いか)
  • 安定性(寿命・発熱しにくさ)
  • コスト(コバルトとかレアメタルの使用量に左右される)

代表的な正極材料

材料特徴使用例
NMC(ニッケル・マンガン・コバルト)高エネルギー密度、性能バランス◎多くのEV(テスラ、韓国LG系)
NCA(ニッケル・コバルト・アルミ)超高出力・高容量だけど高コスト高級EV、パナソニック系
LFP(リン酸鉄リチウム)安価・安全・寿命長いけど容量やや低い中国系EV、BYD、テスラ中国

② 負極(アノード)が決めること:

  • 充電スピード(イオンをどれだけ速く吸収できるか)
  • サイクル寿命(繰り返し使っても劣化しにくいか)
  • エネルギー密度(どれだけイオンを“ためこめる”か)

代表的な負極材料

材料特徴使用例
グラファイト(黒鉛)最も一般的。安定性高いほとんどのLiBで使用
シリコン系複合材容量大きい(グラファイトの10倍)けど膨張問題あり最近の高性能EVに増加中
リチウム金属超高密度だけど発火リスク高く、まだ実験段階固体電池で注目される素材

以下のような特性に電極の性能が影響しています。

特性電極が関与する部分
航続距離(何km走れるか)正極の容量・負極の蓄電密度
充電時間負極の受け入れ速度・電解液との相性
安全性正極の安定性・熱分解のしやすさ
寿命電極の変形や劣化に対する耐性
コスト正極に使う金属(コバルトなど)の価格

最近のトレンド(電極材料の進化)

正極
  • コバルトフリー化(環境負荷・コスト低減)
  • ハイニッケル化(高エネルギー密度化)
負極
  • シリコン複合材の量産化(EVの航続距離UP)
  • 固体電池への布石として、リチウム金属への移行研究

負極が寿命に大きく影響する理由

 EVでもスマホでもバッテリーの寿命は非常に重要ですが、その寿命に「負極」が大きく関わっています。

 負極は、「充放電時に一番ストレスを受けるパーツ」であるため、その性能が寿命に直結します。

リチウムイオン電池の放充電の流れ

  • 充電中:リチウムイオン(Li⁺)は正極 → 電解液を通って → 負極へ移動し、負極に“蓄えられる”
  • 放電中:リチウムイオンが負極 → 正極へ戻り、電気を供給

 負極はリチウムイオンの「出入り口」のようなもので、毎回“イオンの出し入れ”を繰り返しています。

寿命に効くメカニズム

① リチウムイオンの出入りで負極が「物理的に膨張・収縮」する

  • 特にシリコン系材料は、充放電のたびに最大300%以上膨張する!
    → 結果:材料が割れる、粉々になる → 反応面積減る → 劣化する。

② SEI膜の形成と破壊

  • SEI(固体電解質界面)膜という、負極表面にできる“保護膜”があります。
  • これが安定してないと、充放電のたびに壊れて再生成される → 電解液が分解される → 劣化加速
  • 特に初期(初回充電)で大量のSEIができて、それだけで「容量ロス」になってしまいます。

③ “デッドリチウム”の問題(リチウム金属や高負荷時に起こりやすい)

  • 一部のリチウムが負極内に戻れず“死んだリチウム”として残る
    → 活動できるリチウム量が減る → バッテリー容量が低下

正極 と負極の劣化の違い

特性正極(カソード)負極(アノード)
ストレス源酸化還元の繰り返し(構造変化)膨張・SEI・反応不均一
劣化症状結晶構造の崩れ、金属溶出SEI膜の劣化、体積変化、活物質の脱落
寿命への影響間接的(主に容量減少)直接的(容量劣化+安全性低下)

リチウムイオンの出入りで膨張・収縮することで材料疲労が起こりやすい、電離の劣化の要因であるデッドリチウムや電解液の分解なども負極が原因になりやすいなどの理由から負極がリチウムイオン電池の寿命に大きな影響を与えます。

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