この記事で分かること
- 車用樹脂成形とは:自動車の部品をプラスチック(樹脂)を使って成形する加工技術のことで、軽量、コスト削減、デザイン性の高さなどから様々な部品で利用されています。
- EVの増加との関連:EVの「軽くしたい・電気を安全に扱いたい・熱を逃がしたい・未来的に見せたい・環境に優しくしたい」という要素に樹脂があっているため、市場が拡大するとみられています。
- 樹脂はそのまま部品になるのか:樹脂そのもの物が部品として利用されるわけではなく、汎用樹脂に改質や強化を行った、機能性樹脂が最終部品として使用されています。
アルファによる出資計画
アルファは23日、欧州事業を統括する子会社を通じて、フランスの自動車用樹脂成形会社Vision Plast France SASに出資することを発表しています。
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00747149
Vision Plast France SASの持つ、技術を生かし、拡張予定のスロバキア工場の付加価値向上を狙うとしています。
車用樹脂成形とは何か
車用樹脂成形とは、自動車の部品をプラスチック(樹脂)を使って成形する加工技術のことです。主に以下のような用途や目的で使われます
■ なぜ樹脂を使うのか?
- 軽量化:金属より軽いため、燃費や電動車の航続距離が伸びる
- コスト削減:大量生産しやすく、安価
- 自由なデザイン:複雑な形状でも成形しやすい
- 耐腐食性:サビない
■ 主な樹脂成形部品
- バンパー
- ドアハンドル
- ドアミラーカバー
- ラジエーターグリル
- 内装部品(ダッシュボード、パネルなど)
■ 成形方法の例
- 射出成形(インジェクション):もっとも一般的。高温で溶かした樹脂を金型に射出して冷却・成形。
- ブロー成形:空気を吹き込んで中空の部品を作る(例:燃料タンク)
- 圧縮成形:熱と圧力でプレスする方法。内装部品などに使用。

車用樹脂成形とは、自動車の部品をプラスチック(樹脂)を使って成形する加工技術のことで、軽量、コスト削減、デザイン性の高さなどから様々な部品で利用されています。
どんな樹脂が利用されるのか
車用樹脂成形に使われる代表的な樹脂は以下の通りです。それぞれ特性が異なり、部品の用途や求められる性能に応じて使い分けられます。
■ 熱可塑性樹脂(加熱で溶けて再成形できる)
樹脂名 | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|
PP(ポリプロピレン) | 軽くて安価。耐薬品性・耐衝撃性に優れる | バンパー、内装部品 |
ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン) | 高い剛性・耐衝撃性。表面が美しく塗装しやすい | 内装パネル、ダッシュボード |
PC(ポリカーボネート) | 耐衝撃性・透明性に優れる | ランプカバー、窓材の一部 |
PA(ポリアミド/ナイロン) | 機械強度・耐熱性が高い | エンジン周辺の機構部品 |
PBT(ポリブチレンテレフタレート) | 電気特性と耐熱性に優れる | 電装部品のケース類 |
■ 熱硬化性樹脂(加熱しても再成形不可)
樹脂名 | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|
不飽和ポリエステル樹脂(UP) | 強度が高く、成形後は硬くなる | 成形天井、一部外装 |
フェノール樹脂 | 耐熱・難燃性に優れる | 電装部品、ブレーキ系部品 |
エポキシ樹脂 | 接着性・電気絶縁性が高い | 接着剤、コーティング材 |
用途に応じて「ガラス繊維」「炭素繊維」などで強化されたコンポジット樹脂(FRPやCFRP)も使われます。

ポリプロピレンやアクリロニトリル・ブタジエン・スチレンのような熱可塑性樹脂や不飽和ポリエステル樹脂やフェノール樹脂のような熱硬化性樹脂などが樹脂材料として利用されています。
樹脂がそのまま部品に使われるのか
ほとんどの場合、樹脂は“そのまま”では使われません。多くの樹脂は、性能を補うために“改質”や“強化”が施されてから部品として使われます。
■ よくある改質・強化の方法
1. ガラス繊維などで強化
- ガラス繊維強化プラスチック(GF入り)
- 例:PA66 + 30% ガラス繊維
- 強度・剛性UP、耐熱性UP
- 用途:エンジン周辺、ブラケットなど
2. 充填材・添加剤の使用
- 難燃剤:火災リスクのある電装部品向け
- 紫外線吸収剤・安定剤:日光にさらされる外装部品用
- 滑剤・帯電防止剤:摩擦を減らしたり静電気対策
- 着色剤・塗装・メッキ:外観の向上や高級感を出す
3. 複合化
- CFRP(炭素繊維強化プラスチック)
- 軽量・超高強度。レーシングカーやEVの骨格に
- TPO(熱可塑性オレフィン系エラストマー)
- 柔らかく、衝撃吸収に優れる。バンパーなど
4. 多層構造化・コーティング
- 例えば燃料タンクでは「PEの多層構造+バリア層(EVOH)」などで透過性を抑える設計がされています。

多くの場合、樹脂そのもの物が部品として利用されるわけではなく、汎用樹脂に改質や強化を行った、機能性樹脂が最終部品として使用されています。
EVで車用樹脂成形の市場が大きくなる理由
EV(電気自動車)の普及によって車用樹脂成形の市場が大きくなるのは、以下のような理由があるからです。
1. 軽量化ニーズの高まり
EVはバッテリーが重いので、車体をなるべく軽くしたい → 金属から樹脂への置き換えが加速。
たとえば:エンジン部品→モーター冷却部品などの軽量樹脂化。
2. 電装部品が爆増する
EVは内燃機関車より電気制御部品が多い(インバータ、BMS、充電ポートなど)
→ 絶縁性・難燃性のある樹脂が大量に必要。
3. 熱管理部品への需要
バッテリーやパワーエレクトロニクスの冷却のため、熱伝導性樹脂が使われるように。
→ 特殊なエンジニアリングプラスチックの需要が拡大。
4. 自動運転化・内装の高機能化
EV化と同時に内装が“デジタル空間”化 → 樹脂成形による曲面・光透過デザインが重要になり、ディスプレイまわりやタッチパネル部品などで高級感ある樹脂部品が増加。
5. カーボンニュートラル対応
樹脂成形ではバイオマス素材やリサイクル樹脂の活用が進んでいて、EVとの相性が良い。CO₂削減の観点からも注目されています。

EVの「軽くしたい・電気を安全に扱いたい・熱を逃がしたい・未来的に見せたい・環境に優しくしたい」という要素に樹脂があっているため、市場が拡大するとみられています。
コメント