1月の国内企業物価指数 なぜ物価が上昇しているのか?今後の見通しはどうか?

この記事で分かること

  • なぜ物価が上昇しているのか:銅などの非鉄金属やコメの価格上昇に加え、深刻な人手不足を背景とした人件費増を販売価格へ転嫁する動きが強まっています。さらに円安による輸入コスト増が、これらを押し上げています。
  • 今後の見通し:コメや燃料の急騰が落ち着き、上昇率は日銀目標の2%前後へ鈍化する見通しです。一方で、高い水準の賃上げを背景に人件費を価格へ転嫁する動きが定着し、物価を下支えすると予想されています。上昇ペースは緩やかになるも、上昇自体は続く見込みです。
  • なぜ非鉄金属の価格が上がっているのか:AIインフラや脱炭素化に伴う「需要急増」、供給網の目詰まりによる「深刻な在庫不足」、そして米国の金利政策や地政学リスクを背景とした「投資マネーの流入」が、価格を記録的な高値に押し上げています。

1月の国内企業物価指数

 2026年2月12日に日本銀行から発表された1月の国内企業物価指数(速報値)は前年同月比で2.3%の上昇となり、伸び率は前月(24年12月:2.4%)からわずかに縮小したものの、依然として高い水準が続いています。

 https://jp.reuters.com/world/japan/7WBFOK6ENVJPVOKK5OQYMOYQSU-2026-02-12/

 企業物価指数は 企業間で取引される商品の価格動向を示す指標です。消費者物価指数(CPI)よりも先に動く傾向があるため、先行指標として注目されています。日銀は昨年12月に政策金利を0.75%に引き上げており、今回の物価動向がさらなる利上げ判断にどう影響するかが、今後の市場の焦点になりそうです。

なぜ物価が、上昇しているのか

 物価が上昇している背景には、単一の理由ではなく、「モノの仕入れ値」「人件費」「為替」という3つの歯車が同時に回っている状況があります。


1. 原材料・資源価格の「構造的な上昇」

 製品を作るための「元手」が高くなっています。

  • 非鉄金属の急騰: 世界的なデータセンター建設ラッシュやEVシフトにより、電線などに使われる「銅」の需要が爆発しています。また、地政学リスクへの不安から「安全な資産」として「金(ゴールド)」などの貴金属も値上がりしています。
  • 食料品: 異常気象による不作や、世界的な需要増で小麦や油脂などの輸入原材料が高いまま推移しています。

2. 「令和の米騒動」以降の高止まり

 1月の数字で特に目立つのが農林水産物(+22.4%)の上昇です。

  • 2024年〜25年にかけて起きたコメ不足の影響で、産地での取引価格(概算金)が大きく引き上げられました。
  • 現在は在庫が回復しつつありますが、一度上がった取引価格はすぐには下がらず、企業間取引の段階では依然として高値が続いています。

3. 「賃上げ」によるコスト増(サービス価格への転嫁)

 これが最近の最も大きな変化です。

  • 人手不足: 働き手が足りないため、企業は給料を上げないと人を確保できません。
  • 価格への反映: これまでは企業が「身を削って」人件費増を飲み込んでいましたが、限界に達し、「物流費」や「外食」「修理代」などのサービス価格に人件費分を上乗せする動きが広がっています。

4. 円安による「輸入インフレ」の再燃

 為替市場で円安(1ドル=150円台後半など)が進んでいることも大きな要因です。

  • 日本はエネルギーや食料の多くを海外に頼っているため、円安になると「同じ量を買うのにより多くの円が必要」になります。
  • 1月の輸入物価指数もプラスに転じており、これが国内の製品価格を押し上げる圧力となっています。

 これまでは「海外の資源が高いから」という理由が主でしたが、最近はそこに「日本の人手不足(人件費)」「円安」加わり、物価が上昇しています。

「原材料の高騰」「人手不足による賃上げ」「円安」が主な要因となり、物価が上昇しています。銅などの非鉄金属やコメの価格上昇に加え、深刻な人手不足を背景とした人件費増を販売価格へ転嫁する動きが強まっています。さらに円安による輸入コスト増が、これらを押し上げています。

国内企業物価指数とは何か

 「国内企業物価指数(CGPI)」は、「企業同士がモノを売り買いする時の価格」をまとめた指標です。日本銀行が毎月発表しており、経済の体温を測る重要な物価指標の一つです。

3つの特徴

  • 取引の対象: 消費者がスーパーで買う値段(消費者物価)ではなく、工場や卸売業者などの「企業間」で取引される段階の価格が対象です。
  • 先行指標: 原材料やエネルギーの価格がまずここで動き、数ヶ月遅れて私たちの身の回りの商品(消費者物価)に反映されることが多いため、「物価の先読み指標」として注目されます。
  • 景気のバロメーター: 企業のコストがわかるため、企業の利益や景気の良し悪し、さらには日銀が金利を上げるかどうかの判断材料にもなります。

消費者物価指数(CPI)との違い

指標名測る場所発表元注目ポイント
企業物価 (CGPI)企業と企業の取引日本銀行原材料費や円安の影響がすぐ出る
消費者物価 (CPI)お店と消費者の取引総務省家計の実感に近い(生活費)

国内企業物価指数とは、日本銀行が発表する「企業間で取引されるモノの価格動向」をまとめた指標です。原材料やエネルギー価格の影響を素早く反映するため、私たちの生活に関わる「消費者物価」の先行指標として重視されます。いわば、経済の上流における物価の体温計です。

なぜ非鉄金属の価格が上がっているのか

 非鉄金属(銅、アルミニウム、ニッケル、スズなど)の価格が2026年に入って急騰している理由は、大きく分けて「AIと脱炭素による空前の需要」「供給不足への懸念」「投資マネーの流入」の3点に集約されます。

1. AIと脱炭素が引き起こす「爆食い」

 現代のハイテク化が、金属の消費量を劇的に押し上げています。

  • データセンター(AI): 生成AIの普及に伴い、世界中でデータセンターの建設が急増しています。膨大な電力を供給するための電線や配電盤には大量の「銅」が必要で、これが価格を押し上げる最大の要因となっています。
  • 電気自動車(EV)と送電網: 脱炭素社会に向けたEVの普及や、再生可能エネルギー(太陽光・風力)の送電網整備には、従来のガソリン車や社会インフラよりもはるかに多くの銅やアルミニウムが使われます。

2. 掘り出したくても「モノがない」供給難

 需要が増える一方で、作る側には限界が来ています。

  • 鉱山の生産トラブル: 南米などの主要な鉱山で、環境規制やストライキ、あるいは資源の枯渇によって生産が滞っています。
  • 生産コストの上昇: 採掘に必要なエネルギー価格の上昇や、人件費の高騰により、金属を取り出すコストそのものが上がっています。

3. 「投資」の対象としての過熱

 「これからもっと足りなくなる」という予測が、さらに価格を吊り上げています。

  • 投機マネーの流入: 投資家たちが「金属はこれから値上がりする確実な資産だ」と判断し、大量の資金を市場に投じています。
  • 安全資産としての需要: 地政学リスク(紛争や貿易摩擦)への不安から、現金よりも価値が減りにくい「実物資産」として、金(ゴールド)だけでなく、銅などの産業用金属も買われています。

 「AIやEVで大量に使うにもかかわらず、掘り出すのが追いつかず、そこに投資家が買いに走っている」というのが現在の構図です。

 特に「銅」は経済の血液とも呼ばれるため、この高騰は電気料金や家電製品の価格上昇を通じて、私たちの生活にも波及し始めています。

AIインフラや脱炭素化に伴う「需要急増」、供給網の目詰まりによる「深刻な在庫不足」、そして米国の金利政策や地政学リスクを背景とした「投資マネーの流入」が、価格を記録的な高値に押し上げています。

今後の見通しはどうか

 2026年の今後の物価見通しについては、「これまでの急激な上昇は一服するものの、高い水準で高止まりする」というのが専門家や日本銀行の主な見解です。

1. 伸び率は「緩やか」になる

 これまで物価を大きく押し上げていた「コメ価格」や「エネルギー価格」の急騰が落ち着きを見せるため、前年比の伸び率自体は2%を少し下回る水準まで鈍化すると予想されています。ただし、価格が「下がる」わけではなく、「上がるスピードが遅くなる」という点に注意が必要です。

2. 「コスト増」から「賃金連動」へ

 今後は、輸入コストのせいにする値上げではなく、「人件費(賃上げ)」を反映した値上げが定着するかどうかが焦点です。

  • 春闘の動向: 2026年の春闘でも5%を超える高い水準の賃上げが期待されており、企業はその人件費をサービス価格などに転嫁する動きを強めるとみられます。
  • 好循環の兆し: 「給料が上がり、適正に物価も上がる」というサイクルに入りつつあります。

3. 日本銀行の「利上げ」の可能性

 日本銀行は、物価が安定的に2%程度で推移すると見て、政策金利を現在の0.75%から年内に1.0%程度まで引き上げるとの予測が強まっています。

  • 利上げが行われれば、過度な円安に歯止めがかかり、輸入物価を抑える効果が期待できます。
  • 一方で、住宅ローンや企業の借り入れコストが増えるという側面もあります。

 これまでのような「何でも一斉に値上げ」という状況から、サービス価格を中心とした「じわじわとした上昇」にシフトしていきそうです。

今後はコメや燃料の急騰が落ち着き、伸び率は2%弱へ鈍化する見通しです。一方で、賃上げ分を価格に上乗せする動きが広がり、物価高は「高止まり」が続きます。日銀による追加利上げの判断が今後の大きな注目点です。

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