日米連携でのガリウムの豪州生産 ガリウムは何に使われるのか?オーストラリアに注目する理由は何か?

この記事で分かること

  • ガリウムの用途:主に化合物半導体の原料として利用されます。窒化ガリウム(GaN)は省エネに貢献するパワー半導体や青色LEDに、ヒ化ガリウム(GaAs)は高速通信機器に不可欠なレアメタルとなっています。
  • オーストラリアに注目する理由:ガリウムの原料となるボーキサイト資源が豊富で、日本の「同志国」として連携しやすい点から注目されています。

日米連携でのガリウムの豪州生産

 経済産業省は、特定の国へのレアメタル供給依存度が高い現状を改善するため、日米両国の企業と連携して調達網の拡大に取り組んでいます。

 これは、レアメタルが電気自動車(EV)や再生可能エネルギー機器、半導体など、次世代の産業に不可欠な戦略物資であることから、供給途絶リスクを回避し、日本の産業競争力と経済安全保障を強化することを目的としています。

 半導体などの製造に欠かせないガリウムの生産設備をオーストラリアに設けて、日本に輸出することなども検討されています。

ガリウムの調達網拡大などの取り組みとは

 ガリウムは、半導体やLED、パワー半導体などの次世代技術に不可欠なレアメタルであり、特に窒化ガリウム(GaN)として、省エネや小型化を実現するパワー半導体材料として注目されています。しかし、その生産の大部分を中国が占めているため、供給リスクが大きな課題となっています。

 このような背景から、経済産業省はガリウムの安定供給確保に向けて、様々な取り組みを進めています。

1. 国家備蓄制度の強化

 経済産業省は、ガリウムやゲルマニウムといった特定の重要鉱物について、国家備蓄制度の強化を図っています。他国による輸出規制などで供給が途絶した場合に、国内の製造基盤への影響を緩和するため、国内需要を安定的に満たすための備蓄目標を掲げています。

2. サプライチェーンの強靱化

 経済安全保障推進法に基づき、ガリウムを含む重要鉱物の安定供給確保に向けた支援策を講じています。JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)を通じた資源開発プロジェクトへの出資や債務保証に加え、助成金による支援も可能となり、供給源の多角化を推進しています。日米などの同志国と連携し、新たな調達網の構築に取り組むことも、この一環です。

3. リサイクル技術の推進

 ガリウムはアルミニウム精錬の副産物としても得られるため、中国以外からも調達は可能です。しかし、より安定的な供給を確保するため、使用済みの製品からガリウムを回収・再利用するリサイクル技術の開発や、それに向けた取り組みも重要視されています。

 これらの取り組みは、ガリウムの供給が特定の国に偏っている現状を改善し、日本の産業活動の根幹を支える半導体産業をはじめとする重要分野の競争力と経済安全保障を強化することを目的としています。

経済産業省は、ガリウムの安定供給確保のため、国家備蓄制度を強化しています。また、経済安全保障推進法に基づき、資源開発プロジェクトやリサイクル技術への支援を通じて、調達先の多角化とサプライチェーンの強靱化を推進しています。これにより、特定国への依存を減らし、日本の産業競争力を高めることを目指しています。

ガリウムの埋蔵量の多い国はどこか

 ガリウムは特定の鉱石から直接採掘されることは少なく、主にアルミニウムを精錬する際に用いられるボーキサイトや、亜鉛の鉱石に含まれる副産物として得られます。そのため、アルミニウムや亜鉛の生産量が多い国が、ガリウムの主要な供給国となる傾向にあります。

 現在、ガリウムの埋蔵量や生産において、圧倒的なシェアを占めているのは中国です。世界のガリウム生産量の9割以上を中国が占めているとされており、これは、中国が豊富なボーキサイト資源を有し、 アルミニウム精錬が盛んに行われているためです。 

 その他には、アルミニウム精錬が盛んなロシア・カザフスタンや、インド、カナダなども、ガリウムを生産する潜在力を持つ国とされています。しかし、現在のところ、ガリウムの生産・供給における中国の圧倒的な優位性は揺るぎない状況にあります。

 こうした特定の国への供給依存度の高さが、日本をはじめとする各国がガリウムの安定調達に向けて、サプライチェーンの多角化やリサイクル技術の確立を進める主要な理由となっています。

オーストラリアに注目する理由は何か

 ガリウムの埋蔵量や生産において圧倒的なシェアを占める中国への依存度を低減するため、日本はサプライチェーンの多角化を進めており、その一環としてオーストラリアに注目しています。

オーストラリアがガリウムの調達先として重要視される主な理由は以下の通りです。

豊富なボーキサイト資源

 ガリウムはアルミニウムの原料であるボーキサイトから副産物として抽出されることが多いため、ボーキサイト資源が豊富な国はガリウムの潜在的な供給国となります。オーストラリアは世界有数のボーキサイト産出国であり、この資源の活用が期待されています。

同志国としての協力関係

 オーストラリアは、日本と同様に民主主義や自由貿易といった価値観を共有する「同志国」です。こうした国々と連携を強化することは、特定の国による輸出規制や地政学的リスクから、重要鉱物の供給を安定させる上で不可欠です。

探査・開発の可能性

 オーストラリアでは、複数の鉱山会社がガリウムを含むレアメタルの探査・開発プロジェクトを進めています。日本はJOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)などを通じて、こうしたプロジェクトへの参画や技術支援を行うことで、新たな供給源の確保を目指しています。

 このように、オーストラリアとの連携は、ガリウムの安定調達におけるリスク分散と、経済安全保障の 強化に繋がる重要な戦略と位置づけられています。

オーストラリアは、ガリウムの原料となるボーキサイト資源が豊富で、日本の「同志国」として連携しやすい点が重要です。特定国への依存を減らし、サプライチェーンを多角化することで、地政学的リスクを回避し、ガリウムの安定調達と経済安全保障の強化を目指しています。

ガリウムの用途は何か

 ガリウムは、主に半導体分野で重要な役割を果たすレアメタルです。特に、窒化ガリウム(GaN)やヒ化ガリウム(GaAs)といった化合物半導体の原料として広く利用されています。

  • LED(発光ダイオード): 青色LEDの材料として不可欠であり、照明やディスプレイ、信号機などに使われています。
  • パワー半導体: 窒化ガリウム(GaN)は、従来のシリコン半導体よりも高電圧・大電流に耐え、電力変換時のエネルギーロスを低減する特性があります。このため、EV(電気自動車)のモーター制御や、ACアダプター、データセンターの電源などに使われ、機器の小型化・高効率化に貢献しています。
  • 通信機器: ヒ化ガリウム(GaAs)は、高速な信号処理が可能であるため、携帯電話や衛星通信、5Gなどの高周波デバイスに利用されます。
  • 太陽電池: GaNやGaAsは、高い変換効率を持つ太陽電池の材料としても研究・実用化が進められています。
  • その他: 融点が低いため、特殊な合金や、PCのCPUの熱伝導体としても利用されることがあります。

このように、ガリウムは現代の電子機器やエネルギー効率技術に不可欠な素材であり、その用途は多岐にわたります。

ガリウムは主に化合物半導体の原料として利用されます。窒化ガリウム(GaN)は省エネに貢献するパワー半導体や青色LEDに、ヒ化ガリウム(GaAs)は高速通信機器に不可欠です。EVやスマートフォン、データセンターなど、幅広い分野で高性能化や小型化に貢献しています。

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