この記事で分かること
- 焼結鉱とは:粉状の鉄鉱石に粉コークスと石灰石を混ぜ、焼き固めた人工の塊です。そのままでは目詰まりする粉鉱石を、高炉内で風が通りやすい適度な大きさと多孔質な構造に加工することで、製鉄効率を劇的に高めます。
- 新センサーの特徴:コンベヤー上の原料にレーザーを照射し、高速カメラで形状を捉える3D画像解析センサーです。光を吸収しやすい「黒く湿った原料」の粒径をリアルタイムで正確に計測できます。
- 燒結鉱製造における利点:粒度分布をリアルタイムで最適化し、焼結機内の通気性を劇的に改善できることです。これにより、製造スピードが向上するとともに、燃料であるコークスの使用量とCO2排出量を削減できます。
JFEスチールの新センサーによる焼結鉱の生産性向上
JFEスチールは、焼結鉱(高炉の主原料)の生産性を向上させるため、「造粒物の粒度分布をリアルタイムで計測する新センサー」を開発し、導入を開始しました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC091ZE0Z00C26A1000000/
この技術は、これまで人手に頼っていた分析を自動化し、デジタル技術で製造プロセスを最適化する「サイバーフィジカルシステム(CPS)」の中核を担うものです。
焼結鉱とは何か
焼結鉱(しょうけつこう)とは、「粉状の鉄鉱石を、高炉(溶鉱炉)で使いやすい大きさに焼き固めた人工の塊」のことです。
鉄を作るための巨大な炉「高炉」には、鉄鉱石とコークスを投入しますが、実は天然の鉄鉱石の多くはサラサラした砂のような「粉」の状態です。これをそのまま炉に入れると、中が目詰まりして風(熱風)が通らなくなり、鉄を溶かすことができなくなってしまいます。
そのため、鉄鋼メーカーは事前にこの粉を焼き固めて「粒」にする工程を挟みます。これが「焼結」です。
1. 焼結鉱の作り方
焼結鉱は、主に以下の3つを混ぜ合わせて作られます。
- 粉鉱石(こなこうせき): 5mm以下の細かい鉄鉱石。
- 粉コークス: 焼き固めるための「燃料」となる炭。
- 石灰石: 接着剤の役割を果たすとともに、高炉内で不純物を取り除く役割を担う。
これらを混ぜて湿らせ、専用の「焼結機」という動くコンベヤーの上で火をつけます。下から空気を強力に吸い込むことで、粉コークスが燃えて高温になり、鉄鉱石の表面が少し溶けてお互いにくっつき、ジャガイモのような塊(焼結鉱)になります。
2. 焼結鉱にすることのメリット
なぜ手間をかけてまで焼き固めるのか、それには3つの大きな理由があります。
- 通気性の確保: 適度な隙間ができるため、高炉の下から吹き上げる熱風がスムーズに通り、効率よく鉄が溶けます。
- 還元(酸素除去)の促進: 焼結鉱はスポンジのように小さな穴がたくさん開いた「多孔質」な構造をしています。そのため、高炉の中でガスと触れる面積が広く、鉄鉱石から酸素を奪う反応(還元)が速く進みます。
- 不純物の除去: 製造過程で石灰石を混ぜているため、鉄鉱石に含まれるシリカなどの不要な成分を、高炉内でスムーズに分離(スラグ化)させることができます。
3. 焼結鉱と「ペレット」の違い
粉鉱石を固めたものには、焼結鉱のほかに「ペレット」というものもあります。
| 特徴 | 焼結鉱 (Sinter) | ペレット (Pellet) |
| 形状 | ゴツゴツした不規則な塊 | きれいな丸い球状 |
| 原料 | 5mm程度の粉鉱石 | さらに細かい超微粉 |
| 主な産地 | 製鉄所内で製造 | 鉱山近くで製造して輸入 |

焼結鉱とは、粉状の鉄鉱石に粉コークスと石灰石を混ぜ、焼き固めた人工の塊です。そのままでは目詰まりする粉鉱石を、高炉内で風が通りやすい適度な大きさと多孔質な構造に加工することで、製鉄効率を劇的に高めます。
どのようなセンサーなのか
JFEスチールが導入した新センサーは、「レーザーとカメラで、動いている原料の大きさを瞬時に立体計測する装置」です。具体的には、以下のような特徴を持っています。
1. 3D画像解析によるリアルタイム計測
コンベヤーの上を高速で流れる原料(造粒物)に対し、スリットレーザーを照射します。
- 仕組み: レーザーの光が原料の凹凸によって歪む様子を高速カメラで撮影。
- 解析: 撮影された画像をAIが3次元データとして処理し、「どのくらいの大きさの粒が、どのくらいの割合で混ざっているか(粒度分布)」を1分間隔などのリアルタイムで算出します。
2. 「濡れた黒い塊」を正確に測る技術
実は、製鉄所の現場で粒の大きさを測るのは非常に困難でした。
- 課題: 焼結原料は水分を含んで「黒く光る湿った泥」のような状態です。光を吸収しやすく、これまでの光センサーでは正確な形を捉えられませんでした。
- 解決: JFEスチールは独自の画像処理アルゴリズムを開発。表面の照り返しや色の暗さに影響されず、粒の輪郭を正確に切り出すことに成功しました。
3. なぜ「新」センサーなのか(従来との違い)
これまでの管理方法と比較すると、その革新性がわかります。
| 項目 | 従来の管理(手作業) | 新センサー(自動・連続) |
| 計測手法 | サンプリングして乾燥・ふるい分け | 流れているものをそのまま非接触計測 |
| 計測頻度 | 数時間に1回程度 | 24時間・常に監視 |
| データの活用 | 過去のデータとして記録 | 今すぐ加水量を調整する判断材料に |

コンベヤー上の原料にレーザーを照射し、高速カメラで形状を捉える3D画像解析センサーです。光を吸収しやすい「黒く湿った原料」の粒径をリアルタイムで正確に計測でき、AI解析により造粒状態を常時監視します。
焼結鉱の生産性向上で使用するメリットは
焼結鉱の生産工程にこの新センサーを導入するメリットは、主に「スピード」「コスト」「安定性」の3点に集約されます。
1. 焼結スピードの最大化
焼結鉱は、焼結機(パレット)の上で原料を燃やしながら作ります。
- 通気性の最適化: センサーで粒の大きさを一定に制御できると、原料の隙間を空気が通りやすくなります。
- 燃焼効率の向上: 空気がスムーズに流れることで、燃焼スピードが上がり、同じ時間でより多くの焼結鉱を製造できるようになります。
2. コスト削減と脱炭素(環境負荷低減)
- 燃料(コークス)の節約: 通気性が良くなると、無駄な加熱が減ります。これにより、燃料である粉コークスの使用量を削減できます。
- CO2排出の抑制: 燃料の使用量が減ることは、そのまま製鉄所からのCO2排出量削減に直結します。
3. 品質の安定と歩留まりの向上
- 「焼きムラ」の防止: 粒の大きさがバラバラだと、一部だけ焼けすぎたり、生焼けになったりします。センサーによる監視でこれを防ぎ、製品にならない「粉」に戻る割合(返鉱)を減らせます。
- 高炉への好影響: 高品質な焼結鉱を安定供給することで、後続工程である高炉(鉄を溶かす炉)の操業も安定し、製鉄所全体の効率が上がります。
メリットのまとめ
| メリットの分類 | 具体的な効果 |
| 生産性 | 通気性改善による製造リードタイムの短縮 |
| コスト | 燃料(粉コークス)消費量の削減 |
| 品質 | 粒径の均一化による製品歩留まりの向上 |
| 環境 | 燃焼効率向上によるCO2排出量の削減 |
これまで 勘に頼っていた「粒づくり」を数値化することで、無駄な燃料を使わず、最速で、高品質な原料を作ることが可能になります。

最大のメリットは、粒度分布をリアルタイムで最適化し、焼結機内の通気性を劇的に改善できることです。これにより、製造スピードが向上するとともに、燃料であるコークスの使用量とCO2排出量を削減できます。

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