マルマエの超高純度アルミの生産体制強化 半導体でのアルミニウムの用途は何か?なぜ生産体制を強化するのか?

この記事で分かること

  • 半導体でのアルミニウムの用途:回路の配線材料(スパッタリング用ターゲット材)や、製造装置の真空容器(チャンバー)、放熱板に使用されます。高い導電性と熱伝導性に加え、加工のしやすさが不可欠な役割を担っています。
  • 超高純度アルミニウムの製造方法:アルミ地金を三層液電解法や偏析法で精製し、鉄等の不純物を極限まで除去します。その後、真空溶解・鋳造を経て高密度な塊(インゴット)にし、精密加工を施すことで超高純度な製品へと仕上げます。
  • なぜ生産体制を強化するのか:理由は、景気に左右されにくい消耗品(ターゲット材等)のシェア拡大と、素材から加工までを担う一貫生産による高収益化のためです。AI関連やパワー半導体市場の回復・拡大に合わせ、供給能力を倍増させています。

マルマエの超高純度アルミの生産体制強化

 株式会社マルマエがKMアルミニウム(KMAC)の完全子会社化したことが報じられています。

 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC149FK0U6A110C2000000/

 同社の子会社化によって半導体向け超高純度アルミの生産体制を強化することを狙っています。

半導体製造でのアルミニウムの用途は何か

 半導体製造において、アルミニウム(特に高純度アルミ)は「電気を通す」「熱を逃がす」「真空を守る」という3つの重要な役割を担っています。

 大きく分けると、「チップそのものの材料」としての用途と、「製造装置のパーツ」としての用途の2つがあります。


1. チップ内部の配線材料(ターゲット材)

 半導体チップの内部で、トランジスタ同士を結ぶ「電気の通り道(配線)」として使われます。

  • 用途: スパッタリングという工程で、アルミの塊(ターゲット材)にイオンをぶつけ、叩き出されたアルミ原子をウエハー上に薄膜として堆積させます。
  • 特徴: 銅配線(Cu)が主流の先端プロセスもありますが、コストや加工のしやすさから、パワー半導体や一部のロジック半導体では依然としてアルミが主力です。

2. 製造装置の構造体・真空容器(チャンバー)

 半導体を作る「箱」そのものにアルミが使われます。

  • 用途: ウエハーを加工する真空容器(チャンバー)や、その内部のベースプレートなど。
  • 理由: 鉄よりも軽く、加工精度が出しやすく、かつ「非磁性」であるため、精密な電子ビームなどの制御を邪魔しません。

3. 放熱・冷却部材(ヒートシンク)

 半導体は動かすと猛烈な熱を発するため、熱を逃がす仕組みが不可欠です。

  • 用途: パワー半導体の絶縁基板や冷却フィンの材料。
  • 理由: アルミは熱伝導率が非常に高いため、効率よく熱を外部へ逃がすことができます。

なぜ「超高純度(5N以上)」が必要なのか

 マルマエが手がけるような99.999%(5N)といった超高純度が求められるのには、以下のような理由があります。

理由内容
歩留まり向上わずかな不純物(鉄や銅など)が混じるだけで、回路がショートしたり、動作不良を起こしたりします。
耐食性半導体エッチング工程では腐食性の強いガスを使いますが、純度が高いアルミは表面に緻密な酸化膜を作りやすく、装置が長持ちします。
微細化への対応回路がナノ単位で細くなるほど、材料の「ムラ」が致命的な欠陥になります。

半導体製造でのアルミは、主に回路の配線材料(スパッタリング用ターゲット材)や、製造装置の真空容器(チャンバー)放熱板に使用されます。高い導電性と熱伝導性に加え、加工のしやすさが不可欠な役割を担っています。

半導体向け超高純度アルミニウムはどのように製造されるのか

 超高純度アルミニウム(純度99.999%=5N以上)の製造は、一般的なアルミ地金(純度約99.7%)からさらに不純物を取り除く「精製」という特殊な工程を経て行われます。主な製造方法は以下の2つの方式が主流です。


1. 三層液電解法(電解精製)

 最も一般的な方法で、電気分解の原理を利用して不純物を分離します。

  • 仕組み: 比重の異なる3つの層(下から「不純物を含む原料アルミ合金層」、「電解浴層」、「精製された高純度アルミ層」)を積み重ねて電気を流します。
  • プロセス: アルミニウムイオンだけが電解液を通って最上層に移動し、そこで結晶化することで、鉄(Fe)やシリコン(Si)などの不純物を下の層に残したまま純度を高めます。

2. 偏析法(凝固精製)

 「不純物が混じっている液体が固まるとき、純度の高い部分から先に固まる」という物理的性質(偏析)を利用します。

  • 仕組み: 溶けたアルミをゆっくりと冷却し、回転させながら結晶を成長させます。
  • プロセス: 水が凍るときに外側から純粋な氷ができるのと同様に、純度の高いアルミを先に析出させ、不純物が濃縮された残りの液体(残液)を分離・除去します。

3. その後の工程(鋳造・加工)

 精製されたアルミは、用途に合わせて以下の工程を経て製品になります。

  1. 真空溶解・鋳造: 精製したアルミを真空中で溶かし、不純物の再混入を防ぎながらインゴット(塊)にします。
  2. 塑性加工: 鍛造や圧延を行い、材料の密度を高め、強度や組織を均一にします。
  3. 精密機械加工: マルマエのような企業が、半導体製造装置の部品やスパッタリングターゲットの形状に削り出します。

 マルマエが買収したKMアルミニウムは、この「精製・鋳造」のノウハウを持っており、材料から加工までの一貫生産を可能にしています。

一般的なアルミ地金を三層液電解法偏析法で精製し、鉄等の不純物を極限まで除去します。その後、真空溶解・鋳造を経て高密度な塊(インゴット)にし、精密加工を施すことで超高純度な製品へと仕上げます。

アルミニウムはなぜ加工しやすいのか

 アルミニウムが加工しやすい理由は、主にその原子構造物理的性質にあります。大きく分けると、以下の3つの理由が挙げられます。

1. 原子構造が「滑りやすい」

 アルミニウムは面心立方格子(fcc)という結晶構造を持っています。

  • 滑り面の多さ: この構造は原子が密に詰まっており、外から力が加わったときに原子同士がスライドできる「滑り面」が非常に多く存在します。
  • 延性と展性: これにより、ポキッと折れるのではなく、薄く延ばしたり(展性)、細く引き延ばしたり(延性)することが容易になります。

2. 融点が低い

 アルミニウムの融点は約660℃です。

  • 加工のしやすさ: 鉄(約1,500℃)や銅(約1,085℃)に比べて大幅に低いため、溶かして型に流し込む「鋳造」や、加熱して柔らかくしてから加工する「熱間加工」が、比較的少ないエネルギーで行えます。

3. 加工硬化の制御がしやすい

ア ルミは叩いたり延ばしたりすると強度が上がる(加工硬化)性質を持ちますが、適切な熱処理を施すことで再び柔らかく戻すことができます。このため、複雑な形状へ成形するプロセスを何度も繰り返すことが可能です。


原子が規則正しく並ぶ「面心立方格子」構造を持ち、外力に対して原子の層が滑りやすく、薄く延びやすい性質(延展性)があるためです。また、融点が約660℃と低く、鋳造や成形が容易な点も特徴です。

半導体のどのような配線材料に使用されるのか

 半導体において、アルミニウムは主に「デバイス(チップ)内部の回路配線」「外部接続用パッド」の2箇所で使用されます。特にパワー半導体やアナログ半導体といった分野では、今でも不可欠な主役材料です。


1. デバイス内部の配線(上層配線)

 チップ内部のトランジスタ同士を繋ぐ配線に使われます。

  • 用途: 比較的太い電流を流す必要のある「上層配線」によく用いられます。
  • 理由: 密着性が高く、加工が容易なためです。最先端の超微細なロジック半導体では「銅(Cu)」に取って代わられていますが、信頼性が重視されるパワー半導体車載用半導体では、現在もアルミ配線が主流です。

2. 外部接続用電極(アルミパッド)

 チップをパッケージに固定し、外部と電気を繋ぐための「窓口」となる部分です。

  • 用途: チップの最表面にある接続端子(ボンディングパッド)。
  • 理由: 酸化膜を突き破ってワイヤを接合する「ワイヤボンディング」との相性が極めて良く、金やアルミの線と強固に結合できるためです。

3. CMOSイメージセンサなどの遮光膜

 光を電気信号に変えるセンサー(カメラの目)などでは、不要な光が回路に入らないようにする「壁」としてもアルミが使われます。

  • 理由: アルミは光を反射・遮断する能力が高いためです。

主にパワー半導体や車載半導体の内部配線、および外部と接続する電極パッドに使用されます。高い導電性と加工性に加え、絶縁膜との密着性やワイヤボンディングのしやすさから、信頼性が求められる製品で多用されます。

なぜ生産体制を強化するのか

 マルマエが超高純度アルミの生産体制を強化(倍増)している主な理由は、「消耗品ビジネスへの本格参入」「半導体市場の回復・拡大への対応」の2点に集約されます。

1. 「消耗品」による収益の安定化

 従来のマルマエは、半導体製造装置の「本体」に使われる真空パーツの受託加工が中心でした。

  • 課題: 装置本体の需要はシリコンサイクル(景気変動)に激しく左右されます。
  • 対策: アルミターゲット材などの「消耗品」は、装置が動いている限り3〜12ヶ月周期で交換需要が発生します。生産能力を倍増させることで、景気に左右されにくい安定した収益基盤(ストック型ビジネス)を構築しようとしています。

2. 素材から加工までの一貫生産(垂直統合)

 2025年のKMアルミニウム買収により、材料の精製から精密加工までを自社グループ内で完結できるようになったことが転換点です。

  • 高付加価値化: 単なる「削り出し」だけでなく、世界シェアの高い超高純度アルミ素材そのものを供給することで、利益率を大幅に向上させます。
  • リードタイム短縮: 素材調達のリスクを減らし、顧客(装置メーカーやデバイスメーカー)への納期を短縮できる体制を整えています。

3. 先端・レガシー両面での需要拡大

 2026年に向けて半導体市場全体が10%以上の成長を遂げると予測される中、特に以下の需要を取り込んでいます。

  • 先端分野: AI向けデータセンターなどで使われる最新チップの製造。
  • レガシー分野: KMACのアルミ材は、電気自動車(EV)や産業機器に使われるパワー半導体など、信頼性が求められる既存分野でも高いシェアを持っており、ここでの増産要請に応える狙いがあります。

理由は、景気に左右されにくい消耗品(ターゲット材等)のシェア拡大と、素材から加工までを担う一貫生産による高収益化のためです。AI関連やパワー半導体市場の回復・拡大に合わせ、供給能力を倍増させています。

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