この記事で分かること
- OPPフィルムとは:二軸延伸ポリプロピレン」の略で、ポリプロピレンを縦横に引き伸ばして作られたフィルムです。
- 引き延ばす理由:分子が整列し、フィルムの強度、透明性、防湿性が大幅に向上します。 これにより、薄くても丈夫で、機能的なOPPフィルムが作られます。
- フィルムの厚膜化の意味:厚みが増すと、フィルムの強度、耐衝撃性、剛性が向上し、内容物の保護性能が高まります。また、自立性や成形性が向上し、バリア性や耐久性も増します。
エフピコの丈夫で柔軟なOPPフィルムの量産化
エフピコは、食品トレー容器のリーディングカンパニーとして、環境負荷低減と機能性向上を両立させるために、革新的な技術開発に積極的に取り組んでいます。その中でも特に注目されているのが、丈夫で柔軟なOPPフィルムの量産化に向けた取り組みです。
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00755830
OPPフィルムとは何か
OPPフィルムとは、「Oriented Polypropylene(オリエンテッドポリプロピレン)」の略で、日本語では「二軸延伸ポリプロピレン」と訳されます。
これは、ポリプロピレン(PP)というプラスチック素材を、縦方向と横方向の2方向に引っ張って(延伸して)作られる薄いフィルムのことです。この「二軸延伸」という製造方法によって、独特の優れた特性を持つようになります。
OPPフィルムの主な特徴
- 高い透明度と光沢: 非常にクリアで、中身を美しく見せることができます。パリッとした光沢感があり、商品の見栄えを良くする効果があります。
- パリッとした感触とコシ: 適度な硬さがあり、シワになりにくく、しっかりとした形状を保ちます。
- 優れた防湿性・耐水性: 湿気や水を通しにくい性質があり、内容物を湿気から守るのに適しています。
- 高い引張強度: 縦横に延伸されているため、引っ張りに対して非常に強いです。
- 印刷適性: インクの乗りが良く、美しい印刷が可能です。
- 比較的安価: 大量生産が可能で、コストパフォーマンスに優れています。
- リサイクル可能: ポリプロピレン単一素材であるため、リサイクルが比較的容易です。
OPPフィルムの主な用途
これらの特徴から、OPPフィルムは非常に幅広い分野で活用されています。
食品包装:
お菓子(米菓、クッキーなど)やパン、麺類などの個包装
野菜や果物の包装(防曇加工されたものもあります)
パンの袋、おにぎりの包装など
日用品・雑貨の包装:
CD、DVD、書籍、文房具(ボールペン、ノートなど)の包装
化粧品、装飾品の包装
衣料品、タオルなどの包装
ダイレクトメール(DM)の封筒: 透明で中身が見えるため、開封率アップにも繋がります。
ラッピング材: 花束や贈答品のラッピング
テープ: 梱包用テープなど
ラベル: 商品ラベルなど
ただし、OPPフィルムは「引き裂きに弱い」という欠点も持ち合わせています。一度切れ込みが入ると、そこから簡単に裂けてしまうことがあります。また、低温環境では耐久性が低下する傾向があります。
これらの特性を補うために、他の素材とラミネート(貼り合わせ)して使用されることもあります。エフピコが開発している「超高剛性2軸延伸ポリプロピレンシート(新OPPシート)」は、従来のOPPフィルムの弱点を克服し、より厚く、丈夫で柔軟な特性を持たせることで、さらに幅広い用途への応用を目指していると言えます。

OPPフィルムは「二軸延伸ポリプロピレン」の略で、ポリプロピレンを縦横に引き伸ばして作られたフィルムです。高い透明性、光沢、防湿性に優れ、パリッとした質感があります。食品包装や雑貨の袋、ラッピング材などに広く使われています。
縦横に引き伸ばす理由は何か
OPPフィルムを縦横に引き伸ばす(延伸する)理由は、主に以下のフィルムの性能を劇的に向上させるためです。
- 分子配向の均一化と結晶化度の向上:
- ポリプロピレン樹脂を溶かしてフィルム状にした直後は、長い分子鎖が絡み合って不規則な状態です。
- これを縦(長手方向:MD方向)と横(幅方向:TD方向)の2方向に同時に、または順番に引っ張ることで、分子鎖が引っ張る方向に整列します。この現象を「分子配向」と呼びます。
- 分子が整然と並ぶことで、結晶構造がより緻密になり、フィルム全体の強度や安定性が向上します。
- 機械的強度の向上:
- 分子が整列することで、引っ張り強度や衝撃に対する強度が大幅に向上します。これにより、薄いフィルムでも破れにくく、丈夫になります。
- フィルムにコシが生まれるため、包装作業や自動製袋機での加工がしやすくなります。
- 透明度と光沢の向上:
- 分子が均一に並ぶことで、光の透過性が良くなり、フィルムの透明度が向上します。表面も滑らかになるため、美しい光沢が生まれます。
- バリア性の向上(特に防湿性):
- 分子が密に並ぶことで、水蒸気やガスが透過しにくくなり、防湿性やガスバリア性が向上します。これにより、内容物の品質保持期間を延ばすことができます。
- 寸法安定性の向上:
- 延伸後に熱を加えて分子配向を固定(熱固定)することで、温度や湿度の変化によるフィルムの伸縮が抑制され、寸法安定性が高まります。これは印刷やラミネート加工を行う上で非常に重要です。
- 薄膜化とコスト削減:
- 強度が高まるため、より薄いフィルムでも必要な強度を確保できるようになります。これにより、原材料の使用量を削減でき、コストダウンや環境負荷低減に繋がります。
このように、ポリプロピレンを二軸延伸する加工は、フィルムに高強度、高透明性、高機能性を付与するための非常に重要な工程なのです。エフピコの新OPPシートは、この延伸技術をさらに発展させることで、従来のOPPフィルムでは難しかった厚みや剛性を実現し、新たな用途を開拓しようとしています。

ポリプロピレンを縦横に引き伸ばす(延伸する)ことで、分子が整列し、フィルムの強度、透明性、防湿性が大幅に向上します。 これにより、薄くても丈夫で、美しく機能的なOPPフィルムが作られます。
厚みが増す利点は何か
OPPフィルムに限らず、一般的にフィルムの厚みが増すことには、以下のような様々な利点があります。エフピコの新OPPシートが「150~300ミクロン」という従来のOPPフィルムよりもはるかに厚いことを考えると、これらの利点を追求していると言えます。
- 保護性能の向上(強度・耐衝撃性・耐摩擦性):
- 厚みが増すことで、外部からの衝撃や摩擦に対する耐性が格段に向上します。
- 突き刺し強度や引き裂き強度が向上し、内容物をよりしっかりと保護できます。
- 輸送中の破損リスクを低減し、製品の品質を保つことに貢献します。
- ガラスフィルムなどで言えば、画面の保護性能が上がります。
- 剛性の向上と自立性:
- フィルムにコシやハリが生まれ、より堅牢な構造になります。
- これにより、容器として使用する場合に自立性を持ちやすくなり、取り扱いが容易になります。
- 例えば、従来の軟包装では難しかった、自立するパウチや容器の実現が可能になります。
- 加工性の向上:
- 厚みがあることで、成形(賦形)がしやすくなります。熱成形などの加工において、複雑な形状を安定して作ることができます。
- 印刷工程においても、厚みがある方が安定した搬送が可能で、より高品質な印刷が期待できます。
- バリア性能の向上:
- 厚みが増すことで、水蒸気、酸素、匂いなどの透過をより効果的に遮断できます。これにより、内容物の鮮度保持期間が延びたり、香りの保持がしやすくなります。
- 耐久性・耐候性の向上:
- 長期間の使用や、紫外線、温度変化などの外部環境への耐性が向上します。これにより、製品寿命が延び、メンテナンスや交換の頻度を減らせる可能性があります。
- 高級感・高品質感の演出:
- 厚みのあるフィルムは、薄いフィルムに比べて高級感や重厚感を演出できます。製品のブランディングにも寄与します。
エフピコの新OPPシートは、特に「超高剛性」という点を強調しており、これにより従来の軟包装の範囲を超えて、硬質プラスチック容器の代替や、新たな用途(自動車部品、建材など)への展開を目指していることが分かります。これにより、リサイクル性の高いモノマテリアルでの製品開発を進め、環境負荷低減に貢献することが期待されています。

厚みが増すと、フィルムの強度、耐衝撃性、剛性が向上し、内容物の保護性能が高まります。また、自立性や成形性が向上し、バリア性や耐久性も増すため、幅広い用途への適用や高級感の演出も可能になります。
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