三菱マテリアルの低温焼結可能な銅接合材 銅接合材とは何か?なぜ細かい粒子とすることで焼結が起きるのか?

この記事で分かること

  • 銅接合材とは:銅の微細な粒子を主成分とし、加熱して粒子同士を結合(焼結)させる次世代の接着材料です。従来のハンダより熱伝導性と耐熱性に優れ、電力効率の高いパワー半導体の放熱や接合に不可欠な技術です。
  • なぜ細かい粒子とすることで焼結が起きるのか:粒子同士が原子レベルで結合し、隙間が埋まって連続した一つの結晶構造になるからです。不純物も熱で除去され、純度の高い銅の塊となるため、自由電子がスムーズに動き、バルク同様の導電性や熱伝導性を発揮します。
  • 三菱マテリアルの新製品の特徴:独自の微細な銅粒子技術により、銀並みの高性能を安価な銅で実現しました。200〜250℃の低温・短時間で接合でき、形状自在なペーストと、大面積でも気泡が出ず工程を短縮できるシートの2種を展開しています。

三菱マテリアルの低温焼結可能な銅接合材

 低温焼結可能な銅接合材はパワー半導体の高効率化や次世代モビリティ(EV)の進展に伴い、従来のハンダに代わる「耐熱性が高く、熱伝導率に優れた接合技術」として非常に注目を集めている技術です。 

 三菱マテリアルは低温焼結可能な銅接合材として、新たに2種類の新製品を発表しています。

 https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00773511

銅接合材とは何か

 「銅接合材」は「電気を通し、熱を逃がし、部品同士を強力にくっつける、次世代の接着剤(ハンダの進化系)です。

 特に電気自動車(EV)や産業機器の心臓部である「パワー半導体」を組み立てるために欠かせない材料として注目されています。

1. なぜ「ハンダ」ではダメなのか?

 これまで電子部品の接着には「ハンダ(スズ主成分)」が使われてきました。しかし、最新の半導体(SiCパワー半導体など)は非常に高い熱を発します。

  • ハンダの弱点: 融点が低いため、高温になると柔らかくなって剥がれたり、熱を逃がす能力が追いつかなかったりします。
  • 銅接合材の強み: 銅はハンダよりもはるかに熱に強く、熱を伝える力(熱伝導率)が圧倒的に高いのが特徴です。

2. どうやってくっつけるのか?(焼結技術)

 銅は本来、1000°C以上の高温にならないと溶けません。しかし、それでは上に載せる半導体チップが焼き切れてしまいます。そこで使われるのが「焼結(しょうけつ)」という技術です。

  1. ペースト状の銅: 銅の非常に細かい粒子(マイクロ〜ナノサイズ)を溶剤に混ぜてクリーム状にします。
  2. 低温で加熱: これを200℃〜250℃程度で加熱すると、粒子同士が溶け合わずに「じわじわとくっつく(焼結)」現象が起きます。
  3. 強固な一体化: 冷めると、まるで一枚の銅の板のように固まり、チップと基板を繋ぎ止めます。

3. 銅接合材を使うメリット

特徴内容
超・高耐熱一度固まると1000°C近くまで耐えられるため、過酷な環境でも壊れない。
抜群の放熱性熱を逃がす力がハンダの3〜5倍近くあり、デバイスの小型化が可能。
コストと信頼性高価な「銀(Ag)」に代わる安価な材料として期待され、故障の原因となる「マイグレーション(金属の移動)」も起きにくい。

「熱に弱かったハンダに代わって、熱に強い『銅』を低い温度で塗り固めて接着できるようにした材料です。これによって、EVのモーターを制御する装置がより小さく、より高性能に進化できるようになります。

銅接合材とは、銅の微細な粒子を主成分とし、加熱して粒子同士を結合(焼結)させる次世代の接着材料です。従来のハンダより熱伝導性と耐熱性に優れ、電力効率の高いパワー半導体の放熱や接合に不可欠な技術です。

なぜ、細かい粒子とすることで焼結が起きるのか

 粒子が細かくなればなるほど、以下のような理由から物質は「不安定で、早く落ち着きたい」という性質(表面エネルギー)が強くなるからです。


1. 表面エネルギーの増大

 物質の表面にある原子は、内側にいる原子に比べて結合相手が少なく、不安定な状態にあります。粒子を細かく(ナノサイズに)すると、全体の体積に対して「表面」の割合が劇的に増え、エネルギーが非常に高い状態になります。

 この余分なエネルギーを減らして安定しようとする強い力が、隣の粒子とくっつこうとする「ドライビングフォース(駆動力)」になります。

2. 原子が動きやすくなる(拡散の促進)

 通常、金属の原子はガッチリ固定されていますが、ナノサイズの粒子では表面の原子が非常に動きやすくなっています。

 加熱されると、原子が粒子同士の接触点(ネック)に向かって移動し、隙間を埋める「拡散」という現象が、巨大な塊のときよりもはるかに低い温度で活発に起こります。

3. 融点降下(サイズ効果)

 物質は小さくなればなるほど融点が下がる性質があります。

 例えば、バルク(塊)の銅は 1085℃ で溶けますが、数ナノメートルのサイズまで小さくすると、表面がドロドロと溶け出すような状態になり、200〜300℃ 程度の熱でも粒子同士が「融着」できるようになります。


粒子を細かくすると、全体に占める「表面」の割合が増え、不安定なエネルギーが高い状態になります。このエネルギーを下げようとして、隣り合う粒子同士が低い温度でも激しく移動・結合(拡散)し、安定した塊になろうとする力が働くためです。

なぜ焼結後はバルク銅と同じような性質になるのか

 焼結が終わると、以下に示すような理由でバラバラだった粒子同士が原子レベルで完全に一体化し、「境界線がほとんどない一つの塊(連続体)」になるからです。

1. 粒子間の「首(ネック)」の成長

 加熱によって粒子同士が接触した部分(ネック)に原子がどんどん流れ込み、隙間(空隙)を埋めていきます。最終的には粒子同士の区別がなくなり、結晶構造がつながることで、バルク(塊)に近い密度に達します。

2. 自由電子の通り道の確保

 銅の最大の特徴である「電気の通りやすさ」や「熱の伝わりやすさ」は、自由電子が金属内を動き回ることで生まれます。焼結によって粒子が物理的に「一つの金属組織」としてつながると、電子を遮る壁がなくなり、バルク銅と同等の通り道が完成します。

3. 不純物(添加剤)の消失

 焼結プロセスでは、粒子の表面を覆っていた酸化膜や、ペーストに含まれていた溶剤(有機物)が熱で分解・除去されます。最後に残るのは純度の高い銅の結合体だけなので、性質も純銅そのものに近づきます。


 熱によって粒子が完全に溶け合って「一つの巨大な銅の板」に作り替えられるため、バルクと同じ性能が発揮できます。

焼結によって粒子同士が原子レベルで結合し、隙間が埋まって連続した一つの結晶構造になるからです。不純物も熱で除去され、純度の高い銅の塊となるため、自由電子がスムーズに動き、バルク同様の導電性や熱伝導性を発揮します。

三菱マテリアルの新製品の特徴は何か

 三菱マテリアルが発表した新製品、「焼結型銅接合材料」にはペーストとシートの2種類があり、どちらの製品も銀(Ag)焼結材に匹敵する性能を、安価な銅(Cu)で実現した点が大きな特徴です。


1. 2つのラインナップとその強み

タイプ特徴とメリット
銅ペースト【柔軟な形状対応】 クリーム状のため、従来のディスペンサーや印刷機で塗布可能。複雑な形状のチップや基板にも対応しやすいのが特徴。
銅シート【工程短縮・高品質】 フィルム状のため、厚みを均一に保てる。乾燥工程が不要で、大面積の接合でも空隙(ボイド)が出にくく、信頼性が極めて高い。

2. 新開発された技術のポイント

① 超低温・短時間での焼結

 独自開発の「サブミクロン銅粒子(100〜200nm)」を使用。本来1000℃以上で溶ける銅を、わずか200〜250℃という低温で、かつ短時間で接合させることに成功しました。

② 高い「純度」と「表面設計」

 粒子の表面を特殊な技術で被覆することで、銅の天敵である「酸化」を防ぎつつ、加熱時には被覆が外れて粒子同士が素早く結合するように設計されています。

③ 銀の代替えとしての圧倒的コスパ

 これまで低温焼結といえば高価な「銀」が主流でしたが、これを「銅」に置き換えることで、材料コストを大幅に抑えつつ、銀と同等の放熱性と耐熱性を手に入れることができます。


3. なぜ今、この製品が重要か

 現在、電気自動車(EV)の航続距離を伸ばすために、熱に強いSiC(シリコンカーバイド)パワー半導体の採用が急増しています。

 三菱マテリアルのこの新製品は、その「高温になる次世代半導体」をガッチリ支え、効率よく冷やすための「安くて強い理想の接着剤」として開発されました。


三菱マテリアルの新製品は、独自の微細な銅粒子技術により、銀並みの高性能を安価な銅で実現しました。200〜250℃の低温・短時間で接合でき、形状自在なペーストと、大面積でも気泡が出ず工程を短縮できるシートの2種を展開しています。

表面修飾技術とは何か

 金属ナノ粒子はそのままではすぐに酸化してただの「錆(酸化銅)」になってしまいますが、それを防ぐために有機物の保護膜を被せています。

仕組みの3ステップ

  1. 常温でのガード(酸化防止) 銅粒子の表面を、特定の長さの有機分子(保護基)で隙間なくコーティングしています。これがバリアとなり、空気中の酸素が銅に触れるのを物理的に遮断します。
  2. 加熱による「脱離(外れる)」 接合時の温度(200℃付近)に達すると、この保護膜が熱分解して一気に蒸発、または飛散します。これにより、銅の表面が露出します。
  3. 瞬時の結合(焼結) 露出した銅表面は非常にエネルギーが高く不安定なため、保護膜がなくなった瞬間に隣の粒子と引き寄せ合い、原子レベルで一気に融合します。

 この「保護基」が強すぎると、高い温度にしないと外れず低温焼結ができません。逆に弱すぎると保管中に酸化してしまいます。三菱マテリアルは、「低温でサッと外れるが、常温ではしっかり守る」という絶絶妙なバランスの有機分子を設計した点が画期的なのです。

銅粒子の表面を特殊な有機分子の保護膜で覆い、常温では酸素を遮断して酸化を防ぎます。加熱するとこの膜が瞬時に分解・蒸発し、露出した高エネルギーな銅表面同士が、低温でも一気に原子レベルで結合する仕組みです。

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