この記事で分かること
- ノルウェーのEVシェア高い理由:ノルウェーでは「ガソリン車への重税」と「EVの免税」により、購入価格の逆転現象が起きました。さらに、安価な水力発電による低い維持費、通行料の割引、バスレーン走行許可などの強力な優遇措置が普及を決定づけました。
- 水力発電で電力を賄える理由:ィヨルドに代表される急峻な高低差のある地形と、豊富な降水量・雪解け水という自然条件に恵まれています。この大きな落差と豊かな水資源を効率的に活用できるため、安価で安定した水力発電が可能です。
- 他の国にも波及するのか:EV普及のロードマップ(手順書)」としては世界中に波及していますが、その「スピード」については、ノルウェーほどの好条件を備えた国がないため、他国はより緩やかなカーブを描いて追随することになると予想されます。
ノルウェーのEVシェアが95.9%に到達
ノルウェーで、2025年の新車販売のうち、EV(電気自動車)のシェアが95.9%(約96%)に達したことが報道されています。
https://jp.reuters.com/markets/commodities/DJOWGLXHWNK6VD2TBJLLOOSDNI-2026-01-05/
これは世界でも圧倒的な数字であり、ノルウェーが掲げていた「2025年までに新車販売の100%をゼロエミッション車にする」という目標に限りなく近づいた形です。
ノルウェーでのEV普及率が高い理由は何か
ノルウェーでEV(電気自動車)がこれほどまでに普及した理由は、単に「環境意識が高いから」だけではありません。
国を挙げた「徹底的な経済的メリットの創出」と、ノルウェー特有の「エネルギー環境」が組み合わさった結果です。主な理由は以下の4点に集約されます。
1. 「ガソリン車よりもEVが安い」逆転の税制
ノルウェーの普及戦略は、「EVに補助金を出す」ことよりも「ガソリン車に重税を課し、EVを免税にする」という手法が中心です。
- 高い車両税の免除: ノルウェーではガソリン車の購入時に高額な付加価値税(25%)や排出量に応じた諸税がかかります。一方、EVはこれらが長年免除(または大幅軽減)されてきました。
- 実質価格の逆転: 例えば、同じクラスのガソリン車が税込みで500万円する一方で、EVなら免税で400万円台で買えるという、消費者にとって「EVを選ばない理由がない」状況を作り出しました。
2. 維持費(ランニングコスト)の圧倒的な低さ
ノルウェーは世界有数の「電力大国」です。
- 水力発電による安価な電気: 国内電力の約9割以上を安価な水力発電で賄っているため、ガソリン代に比べて電気代が非常に安く、走れば走るほどお得になります。
- 公共料金の割引: EVは高速道路の通行料、公共駐車場の料金、フェリーの乗船料が「最大50%以下」になるよう法律で定められています。
- バス専用レーンの走行: 都市部ではEVならバス専用レーンを走れる特権があり、渋滞を回避できるという時間的なメリットも普及を後押ししました。
3. 歴史的なインフラの「下地」
意外な理由として、ノルウェーにはEV以前から「外にコンセントがある文化」がありました。
- エンジンヒーターの普及: 極寒のノルウェーでは、冬場にエンジンの凍結を防ぐために「外から電源を取ってエンジンを温めるヒーター」が家庭や駐車場に普及していました。
- そのため、多くの家庭に最初から200V級の電源設備があり、他国に比べて「自宅充電」への移行コストが極めて低かったのです。
4. 国家としての戦略(北海油田の逆説)
ノルウェーは北海油田を持つ「産油国」ですが、その石油を輸出して得た莫大な富を、国内の「脱石油(電動化)」の資金源として投資しています。
ノルウェー政府は、2025年までに「新車販売の100%をゼロエミッション車(EVなど)にする」という世界で最も野心的な目標を掲げていました。2025年にシェア96%を達成したのは、この長年の計画的な誘導の結果です。
普及の三要素
| 要素 | 内容 |
| 初期費用 | 税制優遇により、ガソリン車よりEVの方が安く買える。 |
| 維持費 | 安価な水力発電と、通行料・駐車場の割引制度。 |
| 利便性 | 自宅充電インフラの土壌と、バスレーン走行などの特権。 |
2026年からはEVにも一部課税が始まりますが、すでに市場が「EVが当たり前」の状態になっているため、この流れは止まらないと見られています。

ノルウェーでは「ガソリン車への重税」と「EVの免税」により、購入価格の逆転現象が起きました。さらに、安価な水力発電による低い維持費、通行料の割引、バスレーン走行許可などの強力な優遇措置が普及を決定づけました。
9割以上の電力を安価な水力発電で賄える理由は何か
ノルウェーが国内電力の約9割以上を水力発電で賄える理由は、主に「地形」と「気候」の2つの自然条件が完璧に揃っているからです。
1. 急峻(きゅうしゅん)な地形とフィヨルド
ノルウェーには「フィヨルド」に代表される、氷河によって削られた深く急な谷や高い山々が連なっています。
- 大きな高低差: 水力発電は「水が高いところから低いところへ落ちる力」を利用します。ノルウェーは国土の多くが高地で、海に向かって一気に切り立っているため、非常に効率よく大きなエネルギーを生み出すことができます。
2. 豊かな降水量と雪解け水
- 安定した水源: 西海岸を中心に、大西洋からの湿った空気の影響で雨や雪が非常に多く降ります。
- 天然のダム(貯水池): 冬の間に山に降り積もった大量の雪は、春から夏にかけて解け出し、継続的にダムへと流れ込みます。また、山岳地帯に点在する数多くの天然湖をそのまま貯水池として利用できるため、大規模なインフラをゼロから作らずとも豊かな水資源を蓄えておけます。
3. 「貯留型」発電の強み
ノルウェーの水力発電の多くは、単に川の流れを利用するだけでなく、巨大な貯水池に水を溜めておく「貯留型」です。
- 欧州のバッテリー: ノルウェーにはヨーロッパ全体の貯水容量の約半分が集中していると言われています。これにより、雨が少ない時期や電力需要が高い冬場でも、溜めておいた水を使って安定して発電を続けることが可能です。
「雨や雪解け水が豊富にあること」と、それを「高い場所から一気に落とせる急な地形があること」が最大の理由です。
この「安くてクリーンな電気」が豊富にあったからこそ、ノルウェーは世界に先駆けてEV(電気自動車)への移行をスムーズに進めることができたのです。

ノルウェーは、フィヨルドに代表される急峻な高低差のある地形と、豊富な降水量・雪解け水という自然条件に恵まれています。この大きな落差と豊かな水資源を効率的に活用できるため、安価で安定した水力発電が可能です。
ノルウェーの手法は他国でも波及していくのか
ノルウェーの「EVシェア約96%」という成功は世界中から注目されていますが、その手法が他国へそのまま波及するかについては、「モデルとしては参考にされるが、同じスピードでの再現は非常に難しい」というのが専門家の一致した見解です。
1. 波及が難しい理由(ノルウェー特有の条件)
他国がノルウェーを真似ようとしても、以下の3つの壁にぶつかります。
- 莫大な財源(石油マネー): ノルウェーは北海油田の収益で世界最大級の政府基金を持っており、減税による税収減を補う体力があります。多くの国では、これほど大規模な免税や補助を続けると国家財政が持ちません。
- 「自国に自動車メーカーがない」強み: ドイツや日本、アメリカのように自国に巨大なエンジン車メーカーがある国では、急激なEVシフトは雇用や産業への打撃が大きく、政治的な調整に時間がかかります。ノルウェーはその「しがらみ」がありませんでした。
- 電気代の安さ: 水力発電で電気が余っているノルウェーと違い、火力発電や輸入エネルギーに頼る国では、EVの維持費メリットがそれほど大きくならない場合があります。
2. 他国へ波及している「エッセンス」
一方で、ノルウェーの手法の一部は他国でも採用され始めています。
- 「アメとムチ」の組み合わせ: 単に補助金を出す(アメ)だけでなく、ガソリン車への課税を強化する(ムチ)ことでEVの相対的な価値を上げる手法は、フランスや中国などのEV先進地域で取り入れられています。
- 公共交通インフラとの統合: 「バス専用レーンの走行許可」や「フェリー料金の割引」といった、金銭以外の「利便性の付与」は、都市部の渋滞対策を兼ねたEV普及策として各国の都市が参考にしています。
3. 今後の「世界標準」への影響
ノルウェーは現在、「EVが普及しきった後の世界」の実験場となっています。
- 「増税」へのソフトランディング: 2026年からの増税は、「普及が進んだ後にどうやって優遇を廃止し、税収を確保するか」という課題の先行事例となります。
- 寒冷地での性能証明: 「EVは寒さに弱い」という懸念を、北極圏を含むノルウェーが「9割以上の普及」で払拭したことは、カナダや北欧諸国、日本の積雪地域などにとって大きな後押しとなっています。

ノルウェーの手法は、「EV普及のロードマップ(手順書)」としては世界中に波及していますが、その「スピード」については、ノルウェーほどの好条件を備えた国がないため、他国はより緩やかなカーブを描いて追随することになると予想されます。
ノルウェーのEVメーカーごとのシェアは
ノルウェーの2025年通年の新車販売データに基づくと、メーカー別シェア(ブランド別)ではテスラが圧倒的な強さを維持し、5年連続で首位を獲得しました。
1. 2025年 ブランド別シェア(上位)
市場全体の約96%がEVという環境下で、上位3社が市場の約4割を占めています。
| 順位 | ブランド名 | 市場シェア | 特徴 |
| 1位 | テスラ (Tesla) | 19.1% | 圧倒的首位。特にモデルYが独走。 |
| 2位 | フォルクスワーゲン (VW) | 13.3% | 前年の10.9%からシェアを拡大。IDシリーズが好調。 |
| 3位 | ボルボ (Volvo) | 7.8% | 安定した人気。新型のEX30などが貢献。 |
| 4位 | トヨタ (Toyota) | 約7%前後 | bZ4Xがモデル別で上位に食い込み健闘。 |
2. 中国メーカーの躍進
2025年は中国ブランドの成長も目立ちました。
- 中国車全体のシェア: 13.7% にまで拡大(前年から大きく上昇)。
- BYD: 販売台数が前年比2倍以上に増加し、トップ10の常連となっています。
- その他、XPeng(シャオペン)やZeekr(ジーカー)といった新興勢力も急速に登録台数を伸ばしています。
3. 人気モデル(車種別)トップ3
車種別で見ると、特定のモデルに人気が集中する傾向があります。
- テスラ モデルY: 15.4%(4年連続のベストセラー。ノルウェー史上最高の年間販売記録を更新)
- フォルクスワーゲン ID.4: 約5%
- トヨタ bZ4X: 約4%
:2026年1月からの増税(付加価値税の適用範囲拡大など)を前に、2025年末は特にテスラなどの人気モデルで「駆け込み登録」が爆発的に増え、12月単月のEVシェアは98%近くまで達しました。

ノルウェー市場は現在、「テスラ 1強」を「欧州勢(VW、ボルボ)」と「急成長する中国勢(BYD等)」が追いかける構図になっています。

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