この記事で分かること
- 型板ガラスとは:片面に凹凸模様を施したガラスです。光は通しますが、模様が視界をぼかすため、外部からの視線を遮りプライバシーを保護する目隠し効果があります。
- すりガラス:透明なガラス表面を砂や研磨材で擦り、微細な凹凸を付けて乳白色にしたガラスです。光を拡散するため、視界を遮りながらも柔らかな光を採り入れる目隠し効果があります。
型板ガラスとすりガラス
ガラスの用途は多岐にわたります。主な用途は、建物の窓ガラスや自動車のフロントガラスなどの建築・輸送機器です。また、ビール瓶や食品容器などの包装材、テレビやスマホのディスプレイ基板、光ファイバーなどのエレクトロニクス分野でも不可欠な素材です。
そのためガラス製造市場の規模は非常に大きく、2024年時点で2,350億米ドル(約35兆円)を超えると推定されており、今後も年平均成長率(CAGR)5%以上で着実に拡大すると予測されています。
この成長は主に、世界的な建設・建築分野での需要増加や、包装(リサイクル可能なガラス瓶の需要増)および自動車分野での用途拡大に牽引されています。
前回はガラスの透明性に関する記事でしたが、今回は型板ガラスとすりガラスとは何かに関する記事となります。
型板ガラスとは何か
型板ガラス(かたいたガラス)とは、ガラスの片面に凹凸のある模様を施したガラスのことです。
この凹凸によって光が拡散され、ガラスの向こう側の景色や人影をぼかして見せる効果があります。そのため、光を室内に採り入れながらも、外部からの視線を遮り、プライバシーを保護する目的で広く使われています。
型板ガラスの主な特徴
- 目隠し効果(視線遮断): 表面の凹凸が光を屈折・拡散させるため、視界がぼやけて向こう側がはっきりと見えなくなります。
- 採光性: 透明ガラスとほぼ変わらない光を通すため、室内が暗くなる心配はありません。拡散された光は柔らかく感じられます。
- デザイン性: 「霞(かすみ)」「梨地(なしじ)」といった一般的な模様のほか、「モール(縦線)」「ダイヤ」「チェック」など、多種多様なデザインがあり、インテリアとしても利用されます。
- 手入れのしやすさ: 模様のある面(凹凸面)を室内側に向けて使うのが一般的ですが、すりガラスに比べて凹凸が大きいため、汚れや水垢が付きにくく、比較的掃除が簡単です。
- 製造方法: 一般的に、溶けたガラス生地を、模様が彫られたロールと平らなロールの間を通し、圧延して模様を転写する「ロールアウト法」で製造されます。
主な用途
プライバシーの確保と採光を両立させたい場所に最適です。
- 窓: 浴室、トイレ、洗面所、玄関など、外からの視線が気になる場所の窓ガラス。
- 室内建具: 室内ドアのガラス部分、間仕切り、和室の障子の代わりに用いる明かり取り窓など。
- 家具: 食器棚や収納棚の扉(中身を適度に隠すため)。
- 照明: ランプシェードや照明カバーの一部としても使われることがあります。
現在、住宅で最も一般的に使われている型板ガラスは、厚さ4mmや6mmの「霞(かすみ)」柄です。

型板ガラスは、片面に凹凸模様を施したガラスです。光は通しますが、模様が視界をぼかすため、外部からの視線を遮りプライバシーを保護する目隠し効果があります。浴室やトイレなど、採光と目隠しを両立させたい窓に広く利用されています。
凹凸はどのように作られるのか
型板ガラスの凹凸(模様)は、主にロールアウト法という製造方法で作られます。これは、まだ高温で軟らかい状態のガラス生地に、彫刻された模様を直接転写する工業的な手法です。
ロールアウト法(Roll-out Process)の仕組み
- ガラスの溶解: まず、珪砂(けいさ)、ソーダ灰、石灰石などの原料を高温の溶解炉で溶かし、不純物を取り除いた溶融ガラスを作ります。
- 圧延(あつえん): 溶融ガラスを、水冷された2本の金属製ロールの間に流し込みます。
- 模様の転写: この2本のロールのうち、下側(または上側)のロールの表面には、あらかじめ作りたい型板ガラスの模様が彫刻されています。
- 成形: 溶融ガラスが2本のロールに挟まれて板状に引き伸ばされる過程で、彫刻された模様が軟らかいガラスの表面に押し付けられ、そのまま転写されます。
- 冷却: 模様が転写されたガラスは、徐々に温度を下げるための徐冷窯(じょれいがま)を通り、内部のひずみを取りながら冷やされ、強度と耐久性が確保されます。
- 切断: 冷却・固化されたガラスは、規定のサイズに切断されて製品となります。
この製造方法により、連続的に安定した厚みと模様を持つ型板ガラスが大量生産されています。

凹凸は、ロールアウト法という製法で作られます。高温で溶けたガラス生地を、模様が彫刻された金属製のロール(型)と平らなロールの間で挟み込み、圧延することで、模様をガラス表面に直接転写させます。
すりガラスとは何か
すりガラス(磨りガラス)とは、透明な板ガラスの片面を、細かい砂や金剛砂(研磨材)を吹き付けたり擦ったりする加工によって、表面に非常に微細で均一な凹凸をつけたガラスのことです。この加工は主にサンドブラスト加工と呼ばれます。
この微細な凹凸が光をあらゆる方向に乱反射させるため、ガラス全体が乳白色の半透明に見え、向こう側がはっきりと見えなくなります。
すりガラスの主な特徴
- 高い目隠し効果: 表面が均一に白く曇るため、視線をしっかりと遮断できます。
- 柔らかな採光: 光を強く拡散させるため、直射日光を和らげ、室内全体に均一で柔らかい光を取り込むことができます。
- 用途: 和室の障子代わりの建具や、光をやさしく取り入れたい室内窓、目隠しが必要なオフィスなどのパーテーションに使われます。
- 質感: 表面はザラザラとした手触りです。
型板ガラスとの大きな違い
型板ガラスと、すりガラスはどちらも目隠し効果がありますが、製造方法と特性に違いがあります。
| 特徴 | すりガラス | 型板ガラス |
| 加工方法 | 完成した透明ガラスに、サンドブラスト(砂を吹き付け)て傷を付ける。 | ガラス製造の工程で、ロールの型模様を転写させる。 |
| 凹凸の形状 | 非常に細かく均一な傷(凹凸)。 | 比較的大きく規則的な模様(霞、梨地など)。 |
| 水に濡れると | 表面の凹凸に水膜ができ、光の乱反射が減るため、透明度が大きく増し透ける。 | 凹凸が大きいため、ほとんど透けない。 |
| 適した場所 | 和室の建具、室内窓(水がかからない場所)。 | 浴室など水がかかる可能性のある場所の窓。 |
この「水に濡れると透ける」という特性があるため、すりガラスは外窓に使う場合、凹凸面を室内側に向けて設置し、雨に濡れないようにするのが一般的です。ただし、冬場には結露で透けてしまうことがあります。

すりガラスは、透明なガラス表面を砂や研磨材で擦り、微細な凹凸を付けて乳白色にしたガラスです。光を拡散するため、視界を遮りながらも柔らかな光を採り入れる目隠し効果があります。水に濡れると透明度が増すのが特徴です。
サンドブラスト加工の方法はどのようなものか
サンドブラスト加工は、圧縮空気の力を使って、砂やその他の細かい粒状の研磨材(メディア)を加工物の表面に高速で吹き付け、物理的に表面を加工する手法です。
もともとは研磨材に「砂(サンド)」が使われたためこの名がありますが、現在ではガラス、セラミック、樹脂、金属などの多様な研磨材が使われます。
1. 必要な機器
サンドブラスト加工を行うには、主に以下の要素が必要です。
- 圧縮空気供給源(コンプレッサー): 研磨材を高速で飛ばすための高圧の空気を作り出します。
- ブラスト装置(キャビネット・ブラストガン): 研磨材を格納し、圧縮空気と混ぜてノズルから噴射させるための機器です。
- 研磨材(メディア): 加工目的に応じて選ばれる細かい粒状の素材(例:ガラスビーズ、アルミナ、ガーネットなど)。
2. 加工の主な方式
研磨材をどのように加速させて吹き付けるかによって、主に以下の方式があります。
- 重力式(サクション式/吸引式): 最も一般的で簡単な方式です。圧縮空気の流れがノズル内で負圧(吸引力)を作り出し、その力で研磨材を吸い上げて噴射します。
- 加圧式(直圧式): 装置内のタンクに直接圧縮空気を送り込み、高い圧力で研磨材を押し出して噴射する方式です。噴射速度が速く、加工能力が高いのが特徴です。
- ブロワ式: コンプレッサーではなく、送風機(ブロワ)の弱い風を利用して研磨材を吹き付けます。仕上がりがソフトできめ細かいのが特徴です。
3. 加工の実行(ガラスの場合)
すりガラスを作る場合、このサンドブラスト加工は次のように行われます。
- マスキング(任意): ガラスの特定の領域だけを加工したい場合(模様や文字を入れる場合)、それ以外の部分をマスキングシートなどで保護します。
- 噴射: 圧縮空気で加速された研磨材が、マスキングされていないガラス表面に衝突します。
- 表面の変化: 研磨材の衝突によって、ガラス表面に微細でランダムな凹凸(傷)が大量に形成されます。この凹凸が光を乱反射させ、ガラスを乳白色のすりガラスの状態にします。
- 仕上げ: マスキングを剥がし、付着した研磨材や粉塵を洗浄して完了です。
この手法は、ガラスのつや消しやエッチング(彫刻)だけでなく、金属のサビ取り、表面の密着性向上(アンカー効果)、表面硬度向上(ピーニング)など、幅広い用途に使われています。

サンドブラスト加工は、圧縮空気の力で研磨材(砂など)をガラス表面に高速で吹き付け、微細な凹凸を物理的に形成する手法です。これにより光が乱反射し、ガラスが乳白色のすりガラスになります。

コメント