PFUのリチウムイオン電池検知システムの実証実験どのように感知するのか?X線でリチウムイオン電池を感知できる理由は何か?

この記事で分かること

  • リチウムイオン電池を感知する方法:X線とAIを組み合わせて感知します。コンベヤーを流れるごみをX線で透過撮影し、その画像をAIが解析してリチウムイオン電池を検出しています。
  • X線でリチウムイオン電池を判別できる理由:X線は物質を構成する元素の原子番号が大きいほど透過しにくい特性があります。リチウムイオン電池は、銅やコバルトといった重い金属を含むためX線が透過しづらく、周りのプラスチックや紙より黒く映るため、AIがこれを判別できます。
  • 元素の原子番号が大きいほど透過しにくい理由:X線が物質を透過する際、この軌道電子によって吸収される現象が起こります。原子番号が大きいとこの吸収が起こりやすくなるため、X線が透過しにくくなり、X線画像では黒っぽく写ります。

PFUのリチウムイオン電池検知システムの実証実験

 リコー傘下のPFUは、IHI検査計測と共同で、廃棄物に混入したリチウムイオン電池を検知するシステムの実用化に向けた実証実験を東京都町田市で行っています。

 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000160.000053253.html

 このシステムは、廃棄物処理施設での火災事故を減らすことを目的としています。

どうやって感知するのか

 リコー傘下のPFUが開発した、廃棄物に混入したリチウムイオン電池を検知する装置は、X線とAIを組み合わせて感知します。具体的には、以下の3つのステップで動作します。


1. X線撮影による透過画像取得

 装置は、ベルトコンベヤーを流れる燃やせないごみなどをX線で透過撮影します。これにより、ごみ袋の中など、目視では確認できない場所にある物体を画像として捉えることができます。

2. AIエンジンによる画像解析

 PFUが開発したAIエンジンが、X線で撮影した画像を解析します。このAIは、ドキュメントスキャナーの開発で培われた画像認識技術を応用しており、リチウムイオン電池特有の構造や形状を学習しています。ごみの中からこのAIがリチウムイオン電池を識別します。

3. プロジェクションマッピングでの位置通知

 AIがリチウムイオン電池を検知すると、その位置をプロジェクションマッピングでコンベヤー上のごみに直接照射します。これにより、作業員は視覚的にリチウムイオン電池の位置を把握でき、手作業で安全に分別・回収することが可能になります。

 このシステムは、ごみ処理施設での火災事故の原因となるリチウムイオン電池を効率的に取り除くことで、火災リスクを低減することを目指しています。

X線とAIを組み合わせて感知します。コンベヤーを流れるごみをX線で透過撮影し、その画像をAIが解析してリチウムイオン電池を検出し、検出した位置はプロジェクションマッピングで作業員に知らせ、手作業で分別します。これにより、ごみの中から効率的に電池を回収できます。🗑️

PFUはどんな企業なのか

 株式会社PFUは、かつては富士通グループの会社でしたが、2022年にリコーグループの傘下に入り、現在はリコーの完全子会社となっています。この会社は、コンピュータ開発で培った技術を基盤に、以下の3つの事業を柱としています。

1. ドキュメントイメージング事業

  • 業務用イメージスキャナーの分野では、世界トップクラスのシェアを誇ります。
  • 「RICOH fiシリーズ」や、個人・SOHO向けの「ScanSnap」といった製品は、紙の書類を高速かつ高精度に電子化するソリューションとして広く知られています。
  • この分野で培った画像認識技術が、廃棄物中のリチウムイオン電池を検知するシステムにも活かされています。

2. エンベデッドコンピューティング事業

  • 組込みコンピュータやボードコンピュータを開発・製造しています。
  • 製造現場や医療現場などで使われる、様々な機器に組み込まれるコンピュータ製品を提供しています。

3. インフラ・サービス&インテグレーション事業

  • 企業のITインフラの設計・構築、運用支援を行っています。
  • ハードウェアやソフトウェアの提供だけでなく、セキュリティや文書管理などのサービスも手掛けています。

 また、PFUは「Happy Hacking Keyboard」という、プログラマーなどに愛用されている高性能なキーボードでも有名です。

 このように、PFUはハードウェアからソフトウェア、サービスまで、ITに関する幅広い製品とソリューションを提供することで、社会のDX(デジタルトランスフォーメーション)に貢献している企業です。

PFUは、リコーグループのIT企業です。主力事業は、世界トップシェアの業務用スキャナー開発で、この技術を応用して、セキュリティやITインフラ、組込みコンピュータなど、幅広いソリューションを提供しています。プログラマーに人気のキーボード「Happy Hacking Keyboard」も手掛けています。

X線で透過で判別出来る理由は

 X線でリチウムイオン電池を判別できるのは、X線の透過率が物質の構成元素によって異なるという性質を利用しているからです。


X線の透過性と構成元素

 X線は、物質を透過する際に、その物質を構成する元素の原子番号が大きいほど吸収されやすく、透過しにくくなります。逆に、原子番号の小さい元素(水素、炭素、酸素など)で構成されるプラスチックや木材は、X線が透過しやすいです。

リチウムイオン電池の構成

 リチウムイオン電池は、電池の正極や負極、電解液などに、コバルトニッケルマンガンアルミニウムといった比較的原子番号の大きな金属元素を多く含んでいます。一方、一般的な燃えるごみは、主に紙やプラスチック、生ごみなど、原子番号の小さい元素(炭素、水素、酸素)で構成されています。

判別の仕組み

 この元素組成の違いにより、X線を照射すると、リチウムイオン電池は周りのごみよりもX線を強く吸収するため、X線画像では黒っぽく映ります。ごみの多くがX線を透過して明るく映る中、リチウムイオン電池だけが明確な影となって現れるため、これをAIが識別して判別することが可能になります。

X線は物質を構成する元素の原子番号が大きいほど透過しにくい特性があります。リチウムイオン電池は、銅やコバルトといった重い金属を含むためX線が透過しづらく、周りのプラスチックや紙より黒く映るため、AIがこれを判別できます。

なぜ原子番号が大きいほど、透過しにくくなるのか

 原子番号が大きいほどX線が吸収されやすく、透過しにくくなる主な理由は、光電吸収と呼ばれる現象が起こりやすくなるからです。


光電吸収のメカニズム

 X線が物質に当たると、そのエネルギーが原子の軌道電子に吸収され、電子が原子の外に弾き飛ばされます。この現象を光電吸収といいます。

  • 軌道電子の数: 原子番号が大きい原子ほど、原子核のプラスの電荷が強くなり、それに引きつけられる軌道電子の数も多くなります
  • 相互作用の確率: X線と原子核の間の電磁場が強くなると、X線が軌道電子にエネルギーを渡す相互作用が起こりやすくなります。原子番号が大きいほど原子核のプラスの電荷が強いため、この相互作用の確率が高まります。

 これにより、X線が物質を通過する際に、原子番号の大きい原子ほど多くのX線光子が吸収されるため、透過しにくくなります。

散乱との違い

 X線が物質を通過する際に起こるもう一つの現象に散乱がありますが、光電吸収は特に原子番号の影響を強く受けます。散乱はX線が軌道電子と衝突して方向を変える現象で、原子番号にほぼ比例しますが、光電吸収は原子番号の5乗に比例するとされており、元素の違いによる吸収の差が非常に大きくなります。この特性が、レントゲン撮影やX線による物質判別に応用されています。

原子番号が大きい原子ほど、より多くの軌道電子を持っています。X線が物質を透過する際、この軌道電子によって吸収される現象(光電吸収)が起こります。原子番号が大きいとこの吸収が起こりやすくなるため、X線が透過しにくくなり、X線画像では黒っぽく写ります。

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