光触媒による再生航空燃料(SAF)製造 SAFとは何か?光触媒とは何か?

この記事で分かること

・SAFとは:再生航空燃料のことで、従来のジェット燃料(化石燃料)に代わる環境負荷の低い航空燃料となっている。

・SAFの問題点は何か:前駆体材料の光触媒による改善(CO₂還元や水の分解効率向上)と、SAF合成のための実際の化学合成工程(中間生成物から燃料への転換)の両方での改善が必要

・光触媒とは:光を吸収して化学反応を促進する材料のことで、太陽光や紫外線を利用して環境浄化やエネルギー変換などに応用されています。

触媒による再生航空燃料(SAF)製造

 三菱重工業や住友商事が出資する米国の脱炭素スタートアップ、シジジー・プラズモニクスが2027年にも光触媒による再生航空燃料(SAF)製造を商用化する見込みであることがニュースになっています。

光触媒でSAF製造へ 三菱重・住商出資の米新興が27年に - 日本経済新聞
三菱重工業や住友商事が出資する米国の脱炭素スタートアップ、シジジー・プラズモニクスは2027年にも光触媒による再生航空燃料(SAF)製造を商用化する。家畜の排せつ物から排出されるバイオガスに発光ダイ

 SAFとは、持続可能な航空燃料であり、SAF製造は、航空業界の脱炭素化に向けた重要なステップとなると考えられます。

SAFとは何か

 SAF(Sustainable Aviation Fuel、再生航空燃料)とは、従来のジェット燃料(化石燃料)に代わる環境負荷の低い航空燃料のことです。主に以下の原料から製造されます。

  1. バイオマス由来(植物油、使用済み食用油、藻類、木質バイオマスなど)
  2. 合成燃料(e-fuel)(二酸化炭素と水素を合成して製造)
  3. 廃棄物由来(廃プラスチック、都市ごみなど)

SAFの特徴

  • CO₂排出削減:燃焼時にCO₂を排出しますが、原料の成長過程でCO₂を吸収するため、トータルで排出量が大幅に低減。
  • 既存の航空機と互換性あり:現在のジェットエンジンや燃料供給インフラでそのまま使用可能。
  • 持続可能性:化石燃料に依存しないため、資源の枯渇リスクが低い。

SAFの課題

  • コストが高い:従来のジェット燃料よりも2〜5倍高価。
  • 生産量が少ない:世界の航空燃料需要の1%未満しか供給されていない。
  • 技術開発が必要:高効率な生産技術や原料の確保が課題。

 各国政府や航空業界は、2050年までにCO₂排出を実質ゼロ(カーボンニュートラル)にする目標を掲げ、SAFの導入促進を進めています。

SAFはSustainable Aviation Fuel、つまり、再生航空燃料のことであり、航空業界のカーボンニュートラルにかかせない技術とされています。

SAFはどのように合成されるのか

 SAFは、主に以下の4つの方法で合成されます。それぞれの方法で原料や化学反応が異なり、特徴があります。

1. FT法(Fischer-Tropsch法)

原料

 バイオマス(木質、農業廃棄物)、廃プラスチック、都市ごみ、CO₂+水素(Power-to-Liquid)

工程
  1. 原料を高温でガス化し、合成ガス(一酸化炭素と水素)を生成
  2. FT合成で炭化水素を合成
  3. 分別・精製してSAFを製造
    特徴:炭素資源を広く利用でき、規模拡大が可能。

2. HEFA(Hydroprocessed Esters and Fatty Acids)法

原料

植物油、使用済み食用油、動物脂肪、藻類油

工程
  1. 原料油を水素化処理(脱酸素反応)
  2. 炭化水素を分解・異性化し、ジェット燃料に適した組成に調整
    特徴:現在最も商業化が進んでおり、大手石油会社やバイオ燃料メーカーが採用。

3. ATJ(Alcohol-to-Jet)法

原料

エタノール、ブタノール(サトウキビ、トウモロコシなどから発酵)

工程
  1. アルコールを脱水してオレフィン(アルケン)に変換
  2. オレフィン重合で炭化水素を生成
  3. 精製しジェット燃料に調整
    特徴:バイオエタノール産業と連携しやすく、供給網を活用可能。

4. PtL(Power-to-Liquid)法(合成燃料/e-fuel)

原料

CO₂(二酸化炭素)と水素(再エネ由来)

工程
  1. 水の電気分解でグリーン水素を製造
  2. CO₂と水素を反応させて合成ガスを生成(逆水性ガスシフト反応)
  3. FT合成で炭化水素を合成し、SAFを製造
    特徴:カーボンニュートラルが可能だが、再エネ電力が大量に必要。

SAFは主に四つの方法で合成され、以下のような特徴があります。

方法原料メリット課題
FT法バイオマス、廃棄物、CO₂多様な原料、スケールアップしやすいガス化技術が必要
HEFA植物油、廃食油商業化が進んでいる原料供給が限られる
ATJバイオエタノール既存の発酵技術を活用可能変換効率が課題
PtLCO₂+水素(再エネ)カーボンニュートラル高コスト、大量の再エネが必要

SAFの課題は何か

 光触媒を利用してSAFを実現するためには、主に以下の2つの要素が必要です

前駆体材料(CO₂やH₂O)の改善

 光触媒は、CO₂とH₂Oを有用な化学物質に変換するために重要な役割を果たします。この前駆体材料の変換効率を向上させることが、SAFを製造するための基盤となります。

 特に、光触媒材料の改良により、光の吸収効率(特に可視光)や水の分解(水素生成)能力、CO₂還元効率を高めることが求められます。

実際のSAF合成(燃料の生産)

 光触媒がCO₂やH₂Oをメタン、メタノールなどの中間生成物に変換した後、これらの中間生成物をさらに化学反応で航空燃料に適した長鎖炭化水素に変換する必要があります。

 具体的には、フィッシャー・トロプシュ法(FT法)やメタノール・ガソリン転換(MTG法)、あるいは水素化などの方法で、これらの生成物をジェット燃料に変換します。

SAF普及には、前駆体材料の光触媒による改善(CO₂還元や水の分解効率向上)と、SAF合成のための実際の化学合成工程(中間生成物から燃料への転換)の両方が重要です。

光触媒とは何か

 光触媒(Photocatalyst)は、光を吸収して化学反応を促進する材料のことです。代表的な光触媒材料として酸化チタン(TiO₂)が知られています。

 光触媒は、太陽光や紫外線を利用して環境浄化やエネルギー変換などに応用されています。

光触媒の原理

  1. 光の吸収:光触媒材料(例:TiO₂)が紫外線や可視光を吸収
  2. 電子の励起:光のエネルギーで電子(e⁻)が価電子帯から伝導帯へ移動し、正孔(h⁺)が発生
  3. 化学反応の促進
    • 酸化反応(h⁺):有機物の分解、水の酸化(O₂発生)
    • 還元反応(e⁻):CO₂還元、水素生成

光触媒の主な用途

1. 環境浄化
  • 空気浄化:NOx(窒素酸化物)やVOC(揮発性有機化合物)の分解
  • 水浄化:有機汚染物質の分解、細菌の除去
  • セルフクリーニング:建物の外壁やガラスの防汚コーティング
2. エネルギー変換
  • 水の光分解(水素生成):水をH₂とO₂に分解し、水素エネルギーを得る
  • CO₂還元(人工光合成):CO₂と水を反応させてメタノールや一酸化炭素を生成
3. SAF(持続可能な航空燃料)の合成
  • CO₂と水を光触媒で反応させ、炭化水素(燃料)を生成する技術が研究されている
  • 光エネルギーだけで燃料合成が可能で、カーボンニュートラルを実現

光触媒の課題

  • 効率の向上(特に可視光応答型材料の開発)
  • 反応の選択性制御(望ましい生成物を得るための触媒設計)
  • 大規模応用のためのコスト削減

光触媒(Photocatalyst)は、光を吸収して化学反応を促進する材料のことで、太陽光や紫外線を利用して環境浄化やエネルギー変換などに応用されています。

SAFの合成にはどんな光触媒が使われているか

 SAF(持続可能な航空燃料)の合成に使われる光触媒には、主に二酸化チタン(TiO₂)をベースにしたものや、可視光応答型の半導体材料が研究されています。

 これらの光触媒は、水の分解(水素生成)やCO₂の還元反応を促進し、炭化水素やアルコール類などの燃料前駆体を合成する役割を担います。


1. SAF合成に使われる主な光触媒

(1) 酸化チタン(TiO₂)系光触媒
特徴
  • 安価で安定性が高い
  • 紫外線(UV)領域の光を吸収
  • 単独ではCO₂還元効率が低いため、改良が必要
改良例
  • 金属ドーピング(Pt, Cu, Ni, Coなど):電子の再結合を抑制し、還元反応を促進
  • 表面修飾(有機色素、グラフェン複合化):可視光応答を向上

(2) 可視光応答型半導体光触媒
目的

 紫外線だけでなく、太陽光の可視光領域(400-700nm)を利用し、より効率的にCO₂還元を行う

代表的な材料
  • 窒化炭素(g-C₃N₄):非金属で安定性が高く、可視光でCO₂還元が可能
  • 酸窒化タンタル(TaON):水の分解とCO₂還元に優れた特性
  • 硫化カドミウム(CdS):可視光応答性が高いが、毒性が課題
  • ヘテロ構造(TiO₂/g-C₃N₄、CdS/TaONなど):異なる半導体を組み合わせて光吸収と反応性を向上
  • 金属ナノ粒子修飾(Ag, Au, Pd):表面プラズモン共鳴効果を利用し、光吸収を強化

(3) CO₂還元特化型光触媒(人工光合成系)

CO₂を直接炭化水素に変換するための触媒設計が進められている。

代表例
  • Cu-TiO₂(銅ドープ酸化チタン):CO₂ → CH₄(メタン)、CO への高選択的変換
  • Fe-Ni複合光触媒:CO₂ → C₂H₄(エチレン)生成効率を向上
  • ペロブスカイト型酸化物(SrTiO₃, LaCoO₃):光エネルギー利用効率が高い

2. SAF合成プロセスにおける光触媒の役割

(1) 水の光分解 → 水素生成(H₂)

 水を分解し、水素(H₂)を生成。H₂をFT合成やメタネーションに利用。

(2) CO₂の光還元 → 炭化水素合成

 CO₂とH₂Oを光触媒で反応させ、CO, メタノール(CH₃OH)、炭化水素(CnH2n+2)を生成。

(3) 生成物をSAFに変換
  • FT合成(Fischer-Tropsch法):COとH₂を炭化水素燃料に変換
  • メタノール→ガソリン変換(MTGプロセス):メタノールを触媒反応で炭化水素に変換

二酸化チタン(TiO₂)をベースにしたものや、可視光応答型の半導体材料がSAF合成ににおける原料や炭化水素やアルコール類などの前駆体の合成への利用が検討されています。

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