PIDの欧州における基板材料事業からの撤退 基板材料とは何か? FR-4の特性はなにか?

この記事で分かること

  • 基板材料とは:電子回路の「土台」となる材料で、プリント基板に使われれる材料のことです。FR-4、CEM3、ポリイミド、BTレジンなどがあります。
  • FR-4とは:Flame Retardantの略で、プリント基板に最もよく使われている絶縁材料で強度・耐熱性・電気絶縁性・コストのバランスが非常に優れています。
  • エポキシ樹脂の役割:絶縁性の提供や熱硬化性、耐薬品性の付与
  • ガラス繊維の役割:機械的強度の付与や寸法安定性、耐熱性の向上に寄与している。

PIDの欧州における基板材料事業からの撤退

 パナソニックインダストリー(PID)は、欧州における基板材料事業からの撤退を決定しました。​この決定は、品質不正問題の影響と事業の再構築を目的としたものと考えられます。​

パナソニックインダストリー、欧州で基板材料の生産撤退 アジアから輸出に切り替え - 日本経済新聞
パナソニックホールディングス(HD)傘下で電子部品を手掛けるパナソニックインダストリーが2025年内に欧州での電子基板材料の生産から撤退することが15日、わかった。主要顧客の工場がアジアに集まり、欧州事業の成長が見込みにくいと判断した。生産終了後、オーストリア法人を清算し、約140人の従業員の雇用契約は解除する。欧州向...

基板材料とは具体的にどんな材料なのか

 基板材料とは、電子回路の「土台」となる材料で、プリント基板(PCB:Printed Circuit Board)に使われます。電子機器の中にある緑色や茶色の板をイメージすると分かりやすいです。

基板材料の構成

主に次のような素材で構成されています。


1. 絶縁体(ベース材料)

 これは電気を通さない層で、回路のショートを防ぎます。

  • FR-4(ガラス繊維 + エポキシ樹脂):最も一般的。バランスが良く、コストも安い。
  • CEM系:安価な家電製品などに使われる。
  • ポリイミド、BTレジンなど:高耐熱・高周波特性が必要な用途(車載、5Gなど)で使用。

2. 銅箔

ベース材料の上に貼り付けられる導電層です。ここをエッチング(腐食加工)して電気回路を作ります。


3. 接着剤(プリプレグ)

多層基板を作る際、各層の絶縁材を貼り合わせるために使います。


用途による種類の違い

  • 民生用(家電・PCなど):FR-4が中心
  • 自動車用:高耐熱・高信頼性材料(ポリイミド、セラミック入り材料など)
  • 通信・5G用:低誘電率・低損失材料(LCP、PTFE系など)

パナソニックインダストリーは、高信頼性・高周波対応の高機能基板材料でも評価が高かったため、今回の撤退は欧州の高度技術産業にも影響が出る可能性があります。

基板材料とは、電子回路の「土台」となる材料で、プリント基板に使われれる材料のことです。

プリント基板とは何か

 プリント基板(PCB:Printed Circuit Board)は、電子回路の部品を取り付け、配線するための土台です。現代の電子機器にはほぼすべて使われています(スマホ、PC、自動車、家電、医療機器など)。


【プリント基板の特徴】

■ 主な構造
  1. 基板本体(絶縁材)
     → FR-4(ガラス繊維+エポキシ樹脂)が主流。熱や電気に強い。
  2. 銅配線層(回路パターン)
     → 銅箔を貼り、不要部分を化学的に除去(エッチング)して配線を作る。
  3. レジスト層(緑の塗装)
     → 銅が酸化したりショートしないように保護する絵の具のようなもの。
  4. シルク印刷
     → 部品の位置や型番を白文字などで印刷。
  5. はんだレベリング(表面処理)
     → 部品をはんだ付けしやすくするため、端子部に金や錫などをめっきする。

【種類】
種類特徴用途
片面基板配線が片側だけ安価な家電など
両面基板両面に配線汎用性が高い
多層基板複数層を重ねて内部にも配線高性能機器、5G、サーバーなど
フレキシブル基板(FPC)曲がる、軽いスマホ、カメラ、医療機器など
リジッドフレックス基板硬い部分+柔らかい部分高密度・小型デバイス


【なぜ重要?】
  • 高速・高密度の配線が可能(チップの性能を活かす)
  • 小型化・軽量化に不可欠
  • 熱やノイズ対策も担う

プリント基板は電子回路の部品を取り付け、配線するための土台であり、現代の電子機器にはほぼすべて使われています。

FR4とは何か

 FR-4(エフアールフォー)は、プリント基板に最もよく使われている絶縁材料です。特に、強度・耐熱性・電気絶縁性・コストのバランスが非常に優れており、電子機器の標準材料とされています。


【FR-4の基本情報】

■ 名前の意味

  • FR = Flame Retardant(難燃性)
  • 4 = NEMA規格での分類番号(他にFR-1、FR-2などもある)

【構造】

 FR-4は以下のような積層構造です

  • 基材:ガラス繊維クロス(織物)
  • 樹脂:エポキシ樹脂(熱硬化性)

 これらを高温・高圧でプレスして、板状に成形します。


【特徴】

特性内容
難燃性UL94 V-0(自己消火性あり)
絶縁性高い絶縁抵抗と耐電圧
耐熱性ガラス転移点(TG)約130~150℃(高Tgタイプは170℃以上)
機械強度曲げ・引っ張り強度に優れる
吸水性低吸水で環境変化に強い
コスト比較的安価で量産に適する

【用途】

  • コンシューマー機器(スマホ、テレビ、PCなど)
  • 工業用電子機器
  • 一般的な回路基板(片面・両面・多層)
  • 一部の車載・医療機器(※高Tgや改良版が必要)

課題

  • 高周波用途では誘電率・誘電正接が高めで、信号損失が課題。
  • 高熱環境や柔軟性が必要な用途には不向き。

FR-4( Flame Retardant)は、プリント基板に最もよく使われている絶縁材料で強度・耐熱性・電気絶縁性・コストのバランスが非常に優れています。

エポキシ樹脂とガラスクロスそれぞれの役割は何か

 プリント基板材料の主成分であるエポキシ樹脂ガラスクロスは、役割がきっちり分かれています。両者を組み合わせることで、強くて安定した「FR-4」などの基板材料ができあがります。


【エポキシ樹脂の機能】

1. 絶縁性の提供

 → 電気を通さないことで、回路間のショートを防ぎます。

2. 接着・固着

 → ガラスクロスや銅箔をしっかり接着する役割。

3. 熱硬化性

 → 加熱して固まることで、強固で耐熱性のある構造に。

4. 耐薬品性・耐湿性

 → 化学薬品や湿気に強く、長寿命化に寄与。

5. 成形性

 → 液状から硬化するので、複雑な形状や層構造も対応可能。


【ガラスクロスの機能】

1. 機械的強度の付与

 → 基板の曲げ・引っ張り・ねじれに耐える強さを出す。

2. 寸法安定性

 → 温度変化に対して膨張・収縮しにくい素材(CTEが低い)。

3. 耐熱性の向上

 → 熱に強く、高温環境下でも形状を維持する。

4. 電気的安定性

 → 絶縁体としても優れており、高周波特性にも貢献。


それぞれの役割を例えると

  • ガラスクロスは「骨組み(フレーム)」
  • エポキシ樹脂は「接着剤兼外壁(ボディ)」

→ 2つが合わさることで、軽くて強く、電気を通さず、熱にも強い材料になるわけです。


 どちらかの特性を強化するために、樹脂の種類を変えたり、ガラスクロスの織り方を工夫したりすることもよくあります。

エポキシ樹脂は絶縁性の提供や熱硬化性、耐薬品性などに、

ガラスクロスは機械的強度の付与や寸法安定性、耐熱性の向上に寄与しています。

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