レアアースの価格高騰 価格高騰の理由は何か?レアアースにはどのようなものがあるのか?

この記事で分かること

  • 価格高騰の理由は:中国による輸出規制の強化による供給不足が高騰の背景になっています。
  • 中国が輸出規制を行う理由:国内の産業の優先や外交、貿易戦略、資源の枯渇の防止などの理由から規制を行っています。
  • レアアースの種類:原子番号57番のランタン(La)から71番のルテチウム(Lu)までの15元素に、化学的性質が類似するスカンジウム(Sc)とイットリウム(Y)を加えた、計17元素がレアアースとされています。

レアアースの価格高騰

 2025年5月現在、レアアース(希土類元素)の価格が急騰し、一部の元素では3倍以上に達しています。

 https://finance.yahoo.co.jp/news/detail/9d4e470de0c14dbbb85fb74805ffde56824602dd

 この背景には、中国による輸出規制の強化があり、特に電気自動車(EV)や風力発電、軍事用途に不可欠な元素であるジスプロシウムやテルビウムの供給が逼迫しています。

 レアアースのひとつである、ジスプロシウムはEVモーターの永久磁石に不可欠であり、テスラなどの自動車メーカーは在庫が5月末までしか持たないと懸念しています。

レアアースとは何か

 レアアース(希土類元素)とは、周期表の中で原子番号57番のランタン(La)から71番のルテチウム(Lu)までの15元素に、化学的性質が類似するスカンジウム(Sc)とイットリウム(Y)を加えた、計17元素の総称です。

レアアースの特徴

  • 名前の通り「珍しい(rare)」と思われがちですが、実際には地殻中に比較的豊富に存在します。ただし、単体で高濃度に存在する鉱床が少なく、抽出・分離が困難なため「希土類」と呼ばれています。
  • 化学的性質が似ていて分離が難しく、製錬や精製には高度な技術が必要です。

主な用途

レアアースは現代のハイテク産業に欠かせない資源です:

  • 永久磁石(ネオジム、ジスプロシウムなど):電気自動車(EV)、風力発電、スマートフォン
  • 蛍光体(ユウロピウム、テルビウムなど):液晶テレビ、LED、蛍光灯
  • 触媒(セリウムなど):自動車の排ガス浄化装置、石油精製
  • 研磨剤:ガラスやレンズの精密研磨

産出と地政学的リスク

  • 世界のレアアース生産の約60〜90%は中国に依存しており、供給の地政学的リスクが高い資源です。
  • アメリカ、オーストラリア、ミャンマーなども採掘を試みていますが、製錬・精製まで含めると中国の独占的な地位は依然として強力です。

レアアースとは、原子番号57番のランタン(La)から71番のルテチウム(Lu)までの15元素に、化学的性質が類似するスカンジウム(Sc)とイットリウム(Y)を加えた、計17元素のことであり、電動化・デジタル化・再生可能エネルギー推進において不可欠な「戦略的資源」であり、経済安全保障上も重要視されています。

中国が輸出規制を行う理由は何か

 中国がレアアースの輸出規制を行う理由には、以下のようにいくつかの戦略的・経済的背景があります。

ハイテク産業の国内優先

 レアアースは電気自動車(EV)、風力発電、軍事機器、半導体などに不可欠な資源です。

 中国はこれらのハイテク産業の競争力を高めるため、自国内での供給を優先し、輸出を抑えることで国内産業を保護・強化しようとしています。

外交カードとしての利用

 レアアースは中国が世界供給の約60~90%を占める戦略資源です。

 これを「交渉の切り札」として、米国や日本、EUなど他国との貿易・安全保障交渉において有利な立場を確保するために利用しています。

資源の枯渇防止と環境保護

  レアアースの採掘には環境汚染が伴います。中国政府は過剰採掘や違法採掘による環境破壊への批判を受け、資源管理と環境保護の名目で生産・輸出を制限しています。

対抗措置としての側面

 米国や西側諸国が中国に対して半導体・ハイテク機器の輸出規制を強化していることへの「報復措置」として、レアアース輸出を制限している側面もあります。技術覇権争いの一環です。

高付加価値化の促進

  原材料としての輸出ではなく、レアアースを利用した製品(磁石、電池など)として輸出することで、より高い付加価値を国内に留める戦略です。原料のまま輸出するのではなく、加工貿易を優先する意図があります。

中国は国内の産業の優先や外交、貿易戦略、資源の枯渇の防止などの理由から規制を行っています。

この輸出規制は、短期的な市場へのインパクトだけでなく、今後のグローバルなサプライチェーンの見直しや資源外交に大きな影響を与えています。

産業で利用されることが多いレアアース

 レアアース(希土類元素)は全部で17種類あり、それぞれが異なる産業で使われています。世界全体の推定年間需要ベースにした代表的なレアアースの利用量が多いものは以下のようなものがあります。

  1. ネオジム(Nd)
    • 使用量:約30–35%
    • 主な用途:強力な永久磁石(Nd-Fe-B磁石)として
    • 利用産業:電気自動車(EV)、風力発電、スマホ、家電モーター
  2. セリウム(Ce)
    • 使用量:約25–30%
    • 主な用途:ガラス研磨剤、自動車触媒、酸化防止剤
    • 利用産業:ガラス製造、自動車、金属加工
  3. ランタン(La)
    • 使用量:約15–20%
    • 主な用途:ニッケル水素電池、光学レンズ、石油精製用触媒
    • 利用産業:ハイブリッド車(HV)、光学機器、石油化学
  4. プラセオジム(Pr)
    • 使用量:約5–8%
    • 主な用途:Ndとともに磁石に使用、合金、蛍光体
    • 利用産業:モーター、光ファイバー、航空機用金属材料
  5. ジスプロシウム(Dy)
    • 使用量:約2–4%(価値は高い)
    • 主な用途:高温用磁石の耐熱性強化
    • 利用産業:EV・風力発電のモーター(高温対応)
  6. ユウロピウム(Eu)
    • 使用量:1–2%
    • 主な用途:蛍光体(赤色発光)、セキュリティ印刷
    • 利用産業:ディスプレイ、照明、ユーロ紙幣の偽造防止
  7. ガドリニウム(Gd)
    • 使用量:1–2%
    • 主な用途:磁性材料、医療用MRI造影剤、磁冷媒
    • 利用産業:医療、電子材料
  8. サマリウム(Sm)
    • 使用量:〜1%
    • 主な用途:Sm-Co永久磁石、高温磁石
    • 利用産業:航空宇宙、軍事機器、電動工具
  9. テルビウム(Tb)
    • 使用量:〜0.5–1%
    • 主な用途:蛍光体(緑色)、磁石の性能強化
    • 利用産業:ディスプレイ、磁石材料
  10. その他(スカンジウム、イットリウム、ホルミウムなど)
  • 使用量:微量だが価値が高い
  • 用途:特殊合金、セラミックス、研究材料

使用量の傾向

  • 軽希土類(La, Ce, Nd, Pr)は使用量が多く、主にバルク用途(磁石、触媒、電池)で使われます。
  • 重希土類(Dy, Tb など)は使用量は少ないが高価で、特殊な高性能用途に利用されます。
  • ネオジム磁石関連の需要が現在もっとも急成長しており、NdとDyの重要性が増しています。

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