この記事で分かること
- 6か月制限とは:中国が米国向け輸出許可の有効期限を発行日から6ヶ月間に限定する措置です。
- 制限の理由:中国はレアアース供給のコントロールを強化し、必要に応じて輸出を制限することで、外交・経済的な影響力を高める狙いがあります。
- 脱中国は可能か:国一極集中の状況は徐々に緩和されつつありますが、サプライチェーン全体の安定化には、さらなる多角化と精錬・加工能力の分散が必要となっています。
中国レアアースの輸出制限
中国は、米国の自動車メーカーや製造業者向けのレアアース輸出許可に、6カ月の制限を設ける方針であると報じられています。
これは、米中貿易摩擦が再び激化した際に、中国が影響力を行使できるようにする狙いがあると見られています。
6ヶ月制限の意味は何か
「6ヶ月の制限」とは、米国向けのレアアース輸出許可が、発行から6ヶ月間のみ有効であるということを意味しています。
- 有効期限: 中国から米国へレアアースを輸出する際には、許可証が必要ですが、その許可証の有効期間が発行日から6ヶ月に限定されるということです。
- 短期的な見通し: 輸出を行う企業は、6ヶ月以内に輸出を完了させる必要があり、長期的な供給計画を立てることが難しくなります。
- 中国のコントロール強化: この措置は、中国政府がレアアースの輸出をより厳密に管理し、必要に応じて供給を制限できる体制を強化する狙いがあると見られています。特に、米中間の政治的・経済的緊張が高まった際に、レアアースを「交渉のカード」として利用する可能性を示唆していると考えられます。
- 不確実性の増大: 米国の企業にとっては、レアアースの安定的な確保に対する不確実性が増し、サプライチェーンのリスクが高まる要因となります。
この「6ヶ月の制限」は、中国がレアアースを戦略的な資源として位置づけ、その供給を国家の利益のために活用しようとする姿勢の表れと言えるでしょう。

レアアースの6ヶ月制限とは、中国が米国向け輸出許可の有効期限を発行日から6ヶ月間に限定する措置です。これにより、中国はレアアース供給のコントロールを強化し、必要に応じて輸出を制限することで、外交・経済的な影響力を高める狙いがあります。米国にとっては、供給の不確実性が増すことになります。
レアアースを輸出規制する理由は
中国がレアアースの輸出制限を行う理由は多岐にわたりますが、主に以下の点が挙げられます。
- 国家安全保障と国益保護の強化:
- レアアースは、ハイテク製品(EVモーター、風力発電、半導体、スマートフォンなど)や軍事転用可能なデュアルユース(軍民両用)の技術に不可欠な戦略物資です。中国は、これらの物資の輸出を管理することで、国家安全保障を強化し、自国の国益を守ることを目指しています。
- 特に、軍事転用される可能性のある物資の拡散を防ぎ、国際的な安全保障のバランスが崩れることを防ぐという名目も掲げています。
- 自国の需要優先と産業の高度化:
- 中国はレアアースの世界最大の生産国であると同時に、最大の消費国でもあります。自国の産業の高度化に伴い、国内でのレアアース需要が増加しており、将来的な需要を優先的に確保する狙いがあります。
- レアアースの採掘から精錬、加工、最終製品製造までの一貫したサプライチェーンを国内で確立し、高付加価値化を進めることで、産業競争力を強化しようとしています。
- 環境保護と資源管理の適正化:
- 過去には環境保護を理由に輸出規制を行ったこともありましたが、世界貿易機関(WTO)に違反と認定された経緯があります。しかし、レアアースの採掘や精錬は環境負荷が高いことも事実であり、無秩序な採掘や違法な取引を抑制し、資源の持続可能な利用を促すという側面も指摘されています。
- 外交・経済的な交渉カードとしての活用:
- レアアースは中国が世界の供給量の大部分を占めているため、これを外交や貿易交渉における「カード」として利用する可能性があります。他国に技術移転や中国にとって有利な条件での海外企業の誘致を促すなど、経済的な影響力を高めることを狙っています。
- 特に米国との貿易摩擦や技術覇権争いにおいて、レアアースは中国にとって強力な武器となり得ます。
- 違法な輸出の取り締まり強化:
- 「レアアース管理条例」の施行などにより、レアアースの採掘から流通、輸出入まで含めたサプライチェーン全体を追跡管理するシステムを構築し、違法な採掘や密輸を防ぐことを目的としています。これにより、市場の秩序を維持し、国家による管理を徹底しようとしています。
これらの理由が複合的に絡み合い、中国のレアアース輸出制限の背景を形成しています。特に、近年は「国家安全保障」の側面が強く強調される傾向にあります。

レアアースの輸出を制限する理由は、主に国家安全保障の強化、国内産業の需要優先と高度化、そして外交・経済的な交渉カードとしての活用です。戦略資源であるレアアースの供給を管理することで、自国の利益を最大化し、国際的な影響力を維持・拡大する狙いがあります。
中国のレアアースの埋蔵量は
中国のレアアース埋蔵量は、最新のデータ(主にUSGS – 米国地質調査所)によると、世界の埋蔵量の約37%〜48%を占めるとされています。
具体的な数字としては、
- 約44百万トンという報告もあります(USGS Mineral Commodity Summaries 2024より)。
- 世界のレアアース埋蔵量全体の約半分近くを占める形になります。
ただし、埋蔵量だけでなく、生産量、特に精錬・加工能力において中国が圧倒的なシェアを誇っている点が重要です。
レアアースの採掘は中国以外でも行われていますが、精錬や分離、さらに磁石製造などの高付加価値工程は中国に集中しており、この点が中国のレアアース市場における影響力を大きくしています。
このように、中国はレアアースの埋蔵量と、それを最終製品に加工するまでのサプライチェーンにおいて、依然として世界の中心的な存在であり続けています。
中国以外の、レアアース産出国はどこか
中国以外のレアアース供給先は、近年、中国への依存度を低減するために各国が多角化を進めており、主な国としては以下が挙げられます。
主要な生産国(鉱石ベース)
- アメリカ: 中国に次ぐ世界第2位の生産国で、カリフォルニア州の「マウンテンパス鉱山」が有名です。近年、生産量を大きく伸ばしています。
- オーストラリア: 「ライナス・レアアース」がマウント・ウェルド鉱山を操業しており、日本の重要な供給元の一つです。
- ミャンマー: 近年、生産量を増やしていますが、政治情勢の不安定さや、資源保護を目的とした採掘規制の可能性など、供給リスクも指摘されています。特に中・重希土類を多く産出します。
- ベトナム: 比較的豊富な埋蔵量を持つとされていますが、本格的な開発はこれからという段階です。韓国などとの協力が進められています。
- ブラジル: 埋蔵量は多いものの、生産量はまだ限定的です。
- ロシア: 埋蔵量も多く、今後の開発が注目されます。
- インド: 埋蔵量がありますが、生産量は大きくありません。
精錬・加工能力を持つ国
レアアースは、鉱石を採掘するだけでなく、それを精錬・分離して高純度のレアアース化合物にする「中流工程」が重要です。この工程では依然として中国が圧倒的なシェアを占めていますが、中国以外でも能力を強化しようとする動きがあります。
- マレーシア: オーストラリアのライナス社が精錬・分離施設(ライナス・マレーシア)を保有しています。
- エストニア: 加Neo Performance Materials社がSilmet工場を保有しています。
- アメリカ: 国内での精錬・加工能力の再構築を進めています。
- 日本: 過去からマレーシアのライナス社と協力関係にあり、一部の精製能力を持っています。また、使用済み製品からのリサイクル技術開発にも力を入れています。
将来的な供給源として注目されるもの:
- 南鳥島沖のレアアース泥(日本): 日本の排他的経済水域内にある南鳥島周辺の海底には、莫大な量のレアアース泥が確認されており、特に重レアアースが高濃度で含まれるため、「夢の泥」として開発が期待されています。

中国一極集中の状況は徐々に緩和されつつありますが、サプライチェーン全体の安定化には、さらなる多角化と精錬・加工能力の分散が課題となっています。
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